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中央編:12

「お父さんごめんなさい」

領地に戻って最初にしたのは領主の執務室へ出向いての謝罪だった

「シルディは何も悪いことはしていない。むしろ国を救ったのだから胸を張りなさい」

意気消沈している私に父は晴れ晴れとした笑顔で迎えてくれた

「でも…領地が大変なことに…」

循環の規模を拡大し出来る範囲の変質した魔素による精神汚染を無効化したが正常化によりさらなる混乱も生じた

元凶であった王女様達へも行使した正常化

端的にいえば魔素の正常化でブリアンナ王女様達は逃げた

現実世界から自己の作る幻の世界へと

変質した魔素でしか魔術が使えず普通の魔素では何もできなくなった

ジェラルド様は纏いなしの剣での攻撃を仕掛けてきたが無意味

纏いを行使しての攻撃すら防がれていたのだから簡単に防がれる

そして唐突に糸が切れたかのように大人しくなった

わたくし達は愛されるのだと呟き現実世界に意識を向ける事が出来なくなってしまった

親に愛されず育つと自己肯定力、自信が持てなくなる事が多い

何故なら他の子とは違い能力が低い事が多く、その事実が一層自信を持てなくする

私も度々体感した

幼馴染や兄弟と共に自転車を乗る練習をしたが最後の一人になっても乗れず他の者より遥かに時間をかけ長時間続けて練習して何とか乗れるようになった

またある時は掛け算の九九が覚えられず毎日他のクラスメイトと一緒に居残りをしていた

そして最後の一人になっても覚えられず一人教室に放課後取り残された

他の人は出来るのに私だけが、いつまで経っても出来ない

自分の目で見て体験して自分にとっての厳しい現実を理解する

その積み重ねが益々自分に自信が持てない状態となる

何かあれば自分が間違っているのではないかと常に不安に襲われる

しかし今生の彼女達は恵まれていたはずだ

親には愛されていなかったかもしれないが思いあえる相手がいた

能力も人より劣る事も無かくどちらかといえば優れていた

それぞれのコースでも上位成績だと聞いている

変質した魔素しか使えなかったとしても健康な体がある

気付いてほしい健康なだけでも幸せなのだと

自分の意思で自由に動く事が出来る健康体を持つことの尊さを

彼女達の幸せを願った

現実を見つめてほしかった

思いあえるお互いがいるだけでも幸せなのだと

過去の私は側に誰もいなかったから外へ求めた

彼らにはすぐ側にお互いがいた為に外へ目(意識)を向ける事が出来なかったのかもしれない

今生で最後に彼女達が選んだ幸せは現実からの逃避

幸せな自分達だけの偽りの世界に閉じこもってしまった


「以前から独立の準備はしていたし公言していたこともあるだろ?」

確かに以前冗談のように口には出していた

父は中央会議の度に魔獣を素材にした魔術具による魔素の変質について危惧して使用中止を訴えていた

改ざんされていた事を知り兄達に再度直接王城へ持ち込ませた

ただ魔術具の素材の6割近くを北の辺境が担っていたことから自領の影響力強化にしか受け入れられず聞き入れてはもらえなかった

父は幻獣ポーとの契約により魔素の変質を敏感に感じ取っていたが一般人には関知できない変化の為理解を得られなかった

大昔は魔術具の素材100%のシェアだったのが現在6割

魔術具の量が増えているが北の辺境から出荷される素材は昔も今も変わらないそうです

つまり増えた分だけ魔獣素材が使われている

魔獣を直接見て気付いたことですが恐らく魔獣は変質した魔素を受けて生まれた存在

幻獣が純粋な魔素で魔獣が変質した魔素から出来ているように感じる

ウルルもポーも同意見だった

私を中央へ行くようにと言ったのもこの機会を逃すと今後は難しいと考えての事だったそうです


後の事は任せてゆっくり休みなさいと父に促されて部屋を出て領主館へ戻ります

兄達と3人久しぶりの我が家でのお茶です

「兄さん達は結婚しないの?」

中央セレス王国と大国チャンゴ王国との外交問題

国へ混乱をもたらした精神汚染の発生源がチャンゴ王国王女ブリアンナ様

知っていて送り込んでいたので完全なる悪意

知らなかったと白を切って国際問題

相手は大国であり武国

逆にブリアンナ王女に濡れ衣を着せているとチャンゴ王国に事実隠蔽と情報操作をされてしまうと難しい

ブリアンナ王女様達の現状が現状なのでさらに厳しい

当然、王族は事実を知っていて国対国の対応を求める

小国とはいえ唯一神である創造神様が降り立った地といわれるセレス王国

魔術具の生産数量も技術もトップクラス

その為に属国としたい国は多い

特に素材や研究トップの北の辺境であるこの領地を狙っている

今回の問題で兄達は単位はすでに取得していることから飛び級での卒業手続きをとった

好きな人、結婚したい相手がいたのなら卒業とともに連れ帰ることもあったかもしれない

「「今のところ結婚の予定はないよ。結婚したいと思える相手がいないからね」」

本当だろうか?

兄達なら私の為に自分の幸せを捨ててしまうのではないかと心配

足を引っ張って無ければ良いけれど…

「「シルディはどうなんだい?少しの間だけだったけど学園にも通っていたし、僕達がいない間に領地の子達とも交流して相手は見つけたかい?」」

兄達がいない間の交流なんてほとんどない

それに結婚なんて考えたこともない

相手が出来れば結婚したいと思うかなって程度でまだまだ子供なのかもしれない

それとも中身アラフィフで枯れている?

恋愛感情自体が理解できないだけに難しい

恋に恋するお年頃も経験したことが無い

情緒面で未発達?

性別未定の副産物?

前世では女性だったが理解も経験もしなかったのだから個体差?

モテた記憶もあまりない

就職活動の面接でも全て落ちていたから人並み程度だと思っていた顔面偏差値は人並み以下だったのかもしれない

一部マニア受けはしたのか好まれる事もあったのだが…

普通の就職より簡単に応募できる派遣でも書類選考後の職場見学があり見学後不採用になっていた

あれは面接以外の何物でもないのでは?

紹介予定派遣なら理解できるが職場見学という名の実質面接は違反行為だと思うのだが地域によるのか?

背が低く童顔で7~9号サイズを維持していたので見苦しくは無かったはず

全体的には悪くないと思っていたが客観性に欠ける判断だったのかもしれない

化粧も苦手で休日はスッピンで過ごし仕事の時は軽く塗るくらいしか出来ず下手だったと思う

今更ながら落ち込む

女子力も底辺だった

今生では平凡な顔立ちだと思っていたのだが違っているかもしれない

私の美醜判断レベルは一般人とは違うのかもしれない

色彩が派手な事は確かだと思う

芸術的センスを問われる領地ではないので今まで考えたことも無かった

前世でも好みのタイプが一般受けしないタイプを好んでいた気がする

玉の輿を狙うより二号さんどころか三号さん以下の愛人狙いが良いよねと友人達と話していた

社交も後継者も必要が無くむしろ不要で責任を何も負わなくて良くて生活できるならラッキーだと大富豪の現地妻って良いよねとも言っていた

年に数度相手をすれば良いだけで数年に一度だともっと良いよねと夢や欲があるのか無いのか楽しい妄想ネタだったが盛り上がった


父は中央へ出向き独立する許可を得た

大国からセレス王国の陰謀として抗議が入っていたそうで事実を証拠をつけて訴えても情報戦争に負けの色が濃厚

セレス王国の責任ではなく北の辺境の責任として王国から切り捨てたと対外的に公表することとなった

中央と北の辺境の付き合いは国内取引から国外取引となるが今までと変わらない

変わるとすれば中央の守護が得られないということ

中央から派遣されている文官医官武官には希望を聞き中央へ戻る者、領地に残る者、領地に残り家族等を呼び寄せたい者等の対応に大忙しとなった

森が認めなくても森に入れないだけで少し不自由かもしれないが森以外で暮らすことは可能だ

学園を卒業した兄達は父の補佐として能力を十二分に発揮した

他に出来る事の無い私は皆の邪魔をしないように気をつけつつ変質した魔素を元へ戻す為の魔術具開発に集中した


中央から密かにチャンゴ王国が北の辺境へ進軍していると情報が届いた

殿下達からだ

少しでも恩を返すのだと頑張ってくれている

セレス王国としては進軍を止めることも出来ず、積極的ではないものの協力することとなり進軍はスムーズにおこなわれていた

進軍経路に被害が無ければ良いと父達が望んだ事でもあった

魔獣素材の魔術具での攻撃

森は魔獣素材の攻撃も防げるが攻撃に使われた魔力が変質した魔素となって領地を覆う

変質した魔素を元へ戻す魔術具は完成しているがチャンゴ王国の物量に追いつかない

正常化を最大限に展開する

調整を必要としないのであればイルさんの魔術具で一人で展開できる

そばを離れないウルルとイルさんを気にしていられない

兄達は父達と共に進軍してきたチャンゴ王国の前線で相手をしている

領地館にいるのは闘うすべのない幼い者や年老いた者たち

防御に徹していても現状を打破する手立てが無い

『シルディ!?』

正常化に集中しているとウルルの悲鳴のような声が伝わってきた

長く伸ばされた髪が毛先から徐々に金色に変色している

イルさんが瞳の色が銀色に光りだしたと教えてくれる

人の器の限界を超え体が変化していく

痛みは無い

どちらかというと開放感のように清々しい

外で歌っていた時のように空気に溶け込むよう

本能が告げる

このまま体内の魔素の純度が高まり変化すれば人ではなくなる

皆を守れるのなら

大切な家族

たくさん愛してもらっている

優しくしてもらっている

幸せを教えてくれている

常に溢れる幸せに優しく包んでくれている

死ぬ気はない

元気に老衰は無理かもしれない

でも幸せになる事を諦めない

もっともっと幸せになる

前世では全てを諦めていた

その時その時を後悔の無いように生きることを目標にし実行したけれど今は違う

甘やかされて凄く我儘になった

愛されて初めて欲張りになった

諦めるばかりだった前世

昔から怒りが持続しなかった

諦める事に慣れ過ぎていたのかもしれないし体力が無かっただけなのかもしれない

でも今生では子供の頃から愛されて育ったことで何も諦めず全てを手にしたいと望むようになった

愛されて自信が付き自己肯定力が上がる

私になら出来る

絶対に

誰も悲しませない

皆が幸せになる

大切な大好きな家族を悲しませるようなことはしない

“守る”とは自身も守れて初めて”守る”になる


人としての限界を超える


霧散する私としての個


バラバラになり、そして全てと繋がる

世界と繋がり私という個を再構築

優しく美しい魔素へ戻す

世界に輝きが戻るように祈りを込める

チャンゴ王国の進軍も止まった

彼らも精神汚染されていた

精神汚染は略奪や破壊衝動に駆られるようだ

闘う必要などないのだと魔素を通じて伝える

遠くにいるブリアンナ王女達へも伝える

世界はとても優しいのだと貴方達は愛されているのだと

どうか殻を破って現実を生き幸せになって欲しい


戦場は混乱を期したが父や兄達の活躍でそれも収まった


北の領地、セレス王国、チャンゴ王国の三国間協議が始まった

このまま平和へと

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