2.義妹襲来
注意:ストックが基本的にないのでかけたら投稿するスタイルです。
「あ」
「 」
「ごめんなさい!」
完全なるラブコメ展開。
『朝顔を洗おうとしたらシャワー浴びていた異性が体を拭いている、もしくは着替えている最中に遭遇する』
を同居3日目にしてやらかしました。
所謂ラッキースケベと言うやつでしょうか。
覗かれたのが俺じゃなければね!
―――――――
「せ、雪菜くんごめんなさい!」
「いやいや、顔を上げてくださいよ!」
昨年のミス北條に選ばれた校内一の美少女に土下座を食らう俺。
「で、でも」
「こちらこそ御見苦しいものをお見せしました」
「いや、そんな、鍛えられたいい感じの胸板とか、二の腕とか全然見てないから!」
それ見たって言ってるのと同じですよ。
…詩音さんに言われた通り俺はそこそこ鍛えているつもりである。
誰に見せる訳ではないが腐れ縁に悪人顔ならいい感じの体の方がよりいいよね!と言われ、筋トレと朝の5㎞ジョギングは日課となっている。
そのジョギング後のシャワーを浴びていたら見事にバッタリだったのだ。
いや、男の最重要部位はしっかりとタオルで隠していましたよ?
「お詫びと言っては何だけど、私が朝食作りました」
「 」
「あ、あの朝はパン派でしたか?」
いい匂いにつられ、体は勝手にテーブルへ。
見事な和食の典型例から味噌汁を持ち上げ、ひと口。
「毎朝俺に味噌汁を作ってください」
「え、あ、ちょっと雪菜くん!?」
気が付いたら手を取り跪いていた。…指が綺麗だ。
それに対して詩音さん顔真っ赤。
耳まで綺麗に赤くなっている。
って。
「すみません、あまりの美味しさにちょっと我を忘れていました」
和食すきなんですよ、特に味噌汁。と付けたし誤魔化す。
一時自分で味噌を作ることにハマっていたり居たものだ。
「……い」
「え、あの」
「許してあげますから、さっきの録音させてください!」
「は、はい?」
…え、まさかの黒歴史保存ですか?
後で何か買ってこいと脅されるんですね、わかります。
変なこと言ったブサメンの俺はあきらめ半分。
謎のリテイクを食らいながら彼女のスマホに録音させられた。
「もうちょっと低く」
「耳元でささやくような感じで」
「圧倒的俺から目線な感じで!」
だから、そのリテイクの度にやらされるそれは何ですか?
解放されたのは湊と凪ちゃんが下りて来てからだった。
○○
「おいおい、せっつん。今日ももっさりしてんな」
「意味が分からん、日本語を喋ってくれ」
朝、教室入り流れるように自分の席に突っ伏すが、忌々しいチャラ男に声をかけられる。
「俺チャラ男じゃないぞ」
「チャ・ラオか」
「ニュアンスの問題じゃねえから」
「!?」
「何で心底驚いたみたいな表情をすんだよ」
半ば呆れたように、相槌を打ちつつさりげなく俺の机に乗るチャラ男の名前は浅田忍。
無駄に血統が英国人と日本人のクオーターであり、金髪は地毛となっている。
顔立ちは爽やか風の美形。身長はそれなりに高くスラっとした手足が装備されている。
そして全身の80%が幼女愛でできており、残りが歌と英語でありその上からシスコンでコーティングされている。
現在小学6年生の妹を溺愛する極めて安全な変態。
「ま、それはともかく今日も俺のMy sisterが起こしてくれたおかげで俺は超元気なんだぜ」
「で、修学旅行に行っていた有栖ちゃんが帰ってきてハイテンションだと」
「そう!3日ぶりに会った妹は本当に天使だった」
有栖ちゃんが学校行事である修学旅行に行っている際に完全にテンションが下がり過ぎてシスコンを拗らせていた変態だが、如何にか回復していたらしい。
「あ、そうそう。親父からの差し入れな」
「あー。あの人アフターケアが微妙過ぎんだろ」
そう言って机に置かれるのは半透明で茶色っぽい色をした瓶で90mLほどしか入っていないのにそこそこ高い栄養ドリンクである。
この変態の父は重度ワーカーホリックであり、知り合いのお手伝いと言う名目で何か声優の様なことをさせるプロデューサーである。
昨日の日曜も、こいつを使って朝一から呼び出しをかける人なのだ。
この前は確かカロリーメ○ト(チーズ味)を貰ったな。
それにバイト代もそこそこもらっているので何とも言えん。
「そう言うなって、親父もお前みたいな才能の塊見つけりゃそうもなるって」
「俺のどこに才能があるのやら」
「才能ない奴は1時間で少女から爺さんの声まで出せねえよ」
…
「あ、そうだ。今度またやってほしい仕事があるんだと。母さんも張り切ってたぞ」
「あーマジか」
こいつの母親は声優。
ヒロインキャラを多くこなしたベテランで、今もなお現役である。
中学校に上がってすぐ位の時に忍の家に遊びに行ったときに、挨拶をした次の瞬間なんかトレーニングさせられてた。
お手伝い金と言う名目の元御駄賃を貰えると言うのは中学生には抗えないことであり、今もなおそれを引きずって手伝いをしているのだ。
「おっと、そろそろチャイムか。んじゃ、これ読んどけよ」
「うわ」
丁寧に付箋が張られたA4サイズの紙の束を渡され思わず苦笑い。
一枚めくった紙には、この話のザックリとした話が掛かれてあり、俺の配役部分が雑な赤いボールペンで丸を付けられていた。
『ナレーション:若○風に』
“今宵、一人の女をかけた仁義なき戦いが繰り広げられようと---しなかった!?”
“羽空がついにスマホゲームに”
“本編完全無視のほのぼの日常系に括目せよ”
…ギャグパートなのかこれ。
って、俺もサブキャラでいくつか声担当させられんのかよ。
……俺、本職学生なんだが。
○○
「あれ、他校の子かな」
と、昇降口から出ると周囲で小さく話題になっているので皆の視線の集まる校門へ目を向けると、凪ちゃんが。
「おいおい、何あの美少女。ウチの生徒待ちなのか?」
「分からん」
何故だろうか嫌な予感しかしない。
「…なんかこっちに手を振ってねえか」
「振ってるな。忍の知り合いか?」
「いや、ロリコニアの俺にはあんな美少女の知り合いはいない」
うわーなんかこっち見て手を振ってるじゃないですかヤダー。
「うわ、今度はこっちあるって来たぞ」
「…」
「どうした、せっつん」
「お兄ちゃん、無視は酷いじゃないですか」
やや離れた位置から少し大きめの声で駆け寄ってくる義妹様
その言葉に周囲絶句。
そして始まるこそこそトーク。
「せっつん、一人っ子だったよな。あれかまさかの新手のお兄ちゃんプレイ?これは同志が増えたとして喜んでいいのだろうか。親友が変態以上性癖に目覚めたことに驚愕したほうがいいのだろうか、いや、だがしかし」
「とりあえずその口閉じろ」
「いや、でも」
「…取りあえず行くぞ」
忍と凪ちゃんの手を引いて移動を開始した。
ずっと目立っているよりはいいだろう。
○○○
学校からある程度離れた位置まで来たので近くのファミレスへ。
「えーと、キミはせっつんと、どのような関係で」
「男女のただならない関係です」
「 」
「兄妹だよ、キョウダイ」
「速攻ネタばらしはつまんないですよ!」
4人座れるテーブル席に着き、さりげなく凪ちゃんが俺の隣へ座る。
「いや、チキンボーイのせっつんが大人の階段を上ったのかと思って驚いちゃっただけだ」
「誰がチキンだ」
「せっつん」
「忍。後で覚えておけ」
「わー、怖い怖い。あ、んじゃ自己紹介。中1の時からの腐れ縁の浅田忍です。気軽に“お兄ちゃん”って呼んでくれ」
忍が軽く馬鹿にしてきたので、あの仕事は断っておこうか。
理由は“忍が馬鹿にしてきてもう立ち直れそうもないので”でいいか。
「分かりました、お兄ちゃん」
「忍さんノータイムで答えられても逆に困っちゃうっ!」
凪ちゃんはノリがいいのか、からかう様にそれに乗ってくる。
「あ、でもこれじゃお兄ちゃんが二人に…」
A.もしかして天然。
「冗談、冗談だからね妹ちゃん」
「貴方みたいな兄がいた記憶はこの方14年一度もありません」
「え、なにこの返し。どう返答して良いのか分かんないっ!」
「ネタですよ?」
「先ほどの会話をネタで行えるなんて、妹ちゃんなんて恐ろしい子!」
先ほどからネタを挟むたびに変顔をするのはやめてほしい。
「それはともかく。私は和原凪です。ちょっと雪菜さんと交流を深めるために帰りにどこか寄ろうかと思ったのですが、ご友人もいると言うことなので雪菜さんがどういった方なのかじっくり聞かせて貰おうと思います」
「ふっ任せるがいい凪ちゃん。せっつんの中学校三年間を知り尽くした俺が詳しく解説しようじゃないか!」
ここで和原と城山の違和感を感じないんだなお前は。
---この後滅茶苦茶黒歴史を告発された。
○○
「いやー、思っていたよりも雪菜さんがお茶目な方で驚きました」
「…男にお茶目って言い方はどうかと思うのだけれど」
「それにしても驚きましたよ中学三年の時の劇中のジュリエットをやるなんて。しかも見せてもらった写真は美少女にしか見えませんでした」
「やめてくれ、俺の黒歴史を掘り返さないでくれ」
…中学校の時クラスメートにやたらメイクに詳しい奴がいて、じゃんけんで負けた末ドレスを着せられ、ウイッグを被され、メイクもされ、挙句の果てには忍の母にその情報が言って女性っぽい声を出せるように練習をさせられると言う悪夢の記憶だ。
その後卒業まで男子3人に告白をされると言うエピソードもあるのだが、これは絶対に言えない。
「でも、安心しました。雪菜さんが怖い人じゃなくて」
「え?」
「なんでもありませんよ、ささ帰りましょう」
そう言って今度は俺が手を引かれる形となり、
「これからよろしくお願いします、雪菜お兄ちゃん」
そう言って夕暮れの中告げられたのだ。