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銀河機動戦記~紅蓮の飛鳥~  作者: 恥骨又造
第三章:『破壊と希望のヒカリ』篇
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守って……あげたい

「え、エリスッ!」


突如、おしとやかだったエミリアが声を荒げた。

飛鳥はなにが起こったか、判断できなかった。


ただ、エミリアの鬼気迫る様子を見て、事態は急速に展開したと理解していた。


「姉上。その様子だと知っていたのですね……」

「なんて、愚かなことを……」


エミリアは阻止することができなかった。

それは地球――日本の富士山に降り立ったマリアの戦艦に自爆プログラムが起動した瞬間だった。


人知れずエミリアは、起爆装置を模索していた。

しかしながら、その目的は先ほど絶たれた。


残酷なことにエリスは、両親から貰ったペンダントに起爆装置を仕込ませていた。


エミリアはどこか心のなかで、分かっていたかもしれなかった。

それでも彼女は、唯一の肉親である妹を信じていたかった。

そう願っていた。


その思い虚しく彼女の願いは潰えたのだった。


「あ、姉上――! これがせめてもの、私なりの罪の償い……。

この戦いが終わり次第、いかなる罰も受け入れ……」


バシっ! 


空気が弾ける音とともにエミリアの感情が弾けた……。


「いい加減になさい、エリスっ! 

あなたは銀河帝国メルディアスだけではなく、地球までも破滅させるなんて。

そんなこと、お父様やお母様は望んでいない!」


エミリアは初めて、妹のエリスに手を上げていた。

無理もなかった。


本来、戦艦などが轟沈・撃墜した場合、疑似型の超新星機関プロト・ビックバンエンジン

【縮退暴走】しないように制御が施されていた。


もし仮に縮退暴走が起こってしまうと、ギガフレアを起す。

その威力は凄まじく、富士一体――地球は死滅してしまう。


しかし、それが現実に地球で起ころうとしていた。


「そんなの知ってる……! でも、私にはこうするしかなかった。

姉上に私の気持ちは理解できません。滅びゆく星と、そこに住む人の運命。

それでも、生き抗うためにわ、私は死力を尽くした」


「ごめんね、エリス……。

エリスが一番辛いときに、お姉ちゃんは……」


そう言うとエミリアは妹の頬を叩いた手で、彼女を優しく両手で抱きしめた。

エリスは暖かいエミリアの『愛』を全身で感じ心に流れていた。


――ふと、エリスは幼き日頃、大好きだった母親に、

抱きしめられていた懐かしさを思い出していた。


優しく甘い母性の香りがした記憶の中の母性に満ちていた母親の姿。

エリスはかつての母親の面影を、エミリアに重ねていた。


「エミ……リア……。お姉ちゃん……」

「エリス……」


飛鳥は二人が互いの名を呼び合ったとき、一筋の光が見え自然と笑みが零れていた。


「エリス。二人でもう一度、やりなそう……」

「ごめんね、お姉ちゃん。わ、私……」


宇宙の星々が煌めく『銀河』に流星が混ざり、蒼き星地球とメルディアスの未来を紡ぐ、

扉が静かに開かれようとしていた。


――そして、姉妹は飛鳥の方に振り返ったのだった。


『――飛鳥!!』


姉妹は同時に飛鳥の名を口にしていた。


「お二人とも……」


「またしても、私は……あなたに過酷なことを望んでしまいます。

だけど、この場で遠慮してる暇はありません、飛鳥。地球を救って下さい!」


エリスも自分の口で、飛鳥に願ったのだった。


「……紅蓮の飛鳥。いや、剣持飛鳥。

これまでの無礼を許してくれなど、言うつもりはない。

それでも、申し訳なかった……。飛鳥――地球を救ってくれ!」


本当の意味でエリスは、銀河帝国メルディアスの繁栄を思い出した。

飛鳥に懺悔の気持を持ち合わせていた。


ただ、事態は一刻を争っていた。


「エミリアさんにエリスさん。

僕は信じておりました。しかし――どうすれば?」


流石の飛鳥も干渉に浸っている暇はなかった。

守ろうとした世界、地球が無残に破滅しようとしていた。


地球時間にして、十分しか残されていない蒼き星に住む人々の日常の運命。


「飛鳥! 丁寧に説明してる暇はありません。

私たちとともに紅蓮丸の元へ!」


エミリアが先導して彼らは、玉間を後にした――。

格納庫には待機していた紅蓮丸が静かに眠っていた。


「ただいま、紅蓮丸……!」


手動で紅蓮丸のコックピットを開けて、愛機を眠りから目覚めさせた。


――その瞬間、紅蓮丸の機体中に血液が流れたかのようだった。


「おかえり、飛鳥。でも悠長に喜べる、状況じゃなさそうね」


エンゲージ・リンクシステムのコアであり、彼の母でもある渚は息子のシンパシーを共鳴させている。

彼と同じ心境――それ以上の感情を抱くのに時間は無用だった。


「飛鳥に渚! 時間がありません。

いまからお教えする方角へ、進んで下さい」


『了解ッ!!』


紅蓮丸はエミリアが指す方へと進んだ。

しかし、狭い格納庫では思うように進めず、復旧間のない紅蓮丸は動きが鈍かった。


「こ、このままだと。母さん!」

「そうしたいのは、やまやまだけど……」


人間で言うと“生命維持装置”から出たばかりの状態。

しかも幾度に渡り、闘い疲弊し切った機体はとうに限界点を超えている。


「そ、そんなモノなのか……。我らを打ち破った地球の力とはっ!」

「え、エリス……」


エリスは剣持親子に謝罪の意、懺悔の想いを口にせず親子へ檄を飛ばしていた。

ただこれは彼女なりの叱咤だった。


「へへ。エリスちゃんも、可愛い顔して結構無茶言ってくれるわね♡ 

おばちゃん。もう少しだけ頑張ってみるわね☆」


紅蓮丸の出力が上がり、格納庫の壁に到着した。


「エミリアさん。行き止まりですが?」

「構いません、飛鳥。このまま、突き進んで下さい!」


飛鳥はその言葉を聞いて、躊躇うことなく紅蓮丸で壁を破壊した。

そのあと、姉妹を紅蓮丸の手に乗せ、一同は螺旋階段を上って行った。


その最中――エリスは幼き日のことを思い出していた。


「いま、言うのはよくないけど懐かしいね、お姉ちゃん」

「そうね、エリス……」


紅蓮の機体に揺られながら、二人は幼き頃見ていた風景をいまと重ねていた。

手を繋ぎ互いを助け合いつつ、愉しげに星々が照らす蒼い星を瞳に焼き付けていた。


「大丈夫よエリス。

飛鳥なら、私たちの『希望』を託すことができます。信じるのよ!」


「うん。そうだねお姉ちゃん……!」


螺旋階段の頂上に到達し、重苦しい扉を破壊して紅蓮丸たちは希望が待つ部屋へ突入した。


「ここは!?」

「私たちの始まりの場所であり、追憶の在処になります」


守護していた扉とは裏腹に、部屋の中は寂しく物置に使われている雰囲気。


「かつて、お父様にここで【地球】を教えていただきました。

あの頃は、夢にも思いませんでした。だけどこれも運命でした」


紅蓮丸から優しい声が部屋に響いた。


「様々な人の意思――願いが織り交ざって私たちは生きている」


「渚の言う通り、私とエリスはお父様・お母様が抱いた“夢”を実現させます。

でもそれは、鳳凰紅蓮丸に搭乗している剣持飛鳥に委ねることになります……!」


飛鳥は言葉の真意に触れるのだった。


「飛鳥。ここから私たちは自分の足で歩み、あなたを導きます。さぁ、エリスも!」

「……うん!」


エリスは静かに頷いて、二人は手を繋いで奥へと歩を進めた。

極力紅蓮丸は物を壊さないように彼女たちのあとを追った。


「飛鳥。そこで待っていて下さい!」


エミリアの手はなにもない壁に、吸い込まれるようにして触れる直前に停止した。


その様子を隣で静観しているエリスは飛鳥たちと同じ心境だった。

――すると、カシャと壁の奥で作動し始めたのだった。


「解除されました。では行きましょう!」


飛鳥と渚は驚きを隠せなかった。

その後、エミリアが先導しさらに奥へと進み、大きなゲートが出現した。


『こ、これは!?』


丁度、機動機甲兵器が一機収まる規模の機械的なゲートだった。

エミリアだけが、この存在を知っていたように思える。


「これは『超次元の扉』蒼き星、地球と銀河帝国メルディアスを繋ぐ、希望の架け橋なのです。

私とエリスが二人揃って、はじめて超次元の扉は起動されます」


先ほど、エミリアが隠し扉を解放したのが、言わば第一段階。

これは二人の内、どちらかだけでも解除できる仕組み。


ただそれらを知っていたのは、エミリアただ一人だった。


それには、少なからず理由……事情があった。


賛否はあるにしても、いまは保留となる。

古き仕来りにより皇帝の長男もしくは、長女のみ超次元の扉の存在が脈々と受け継がれていた。


ことは単純で、情報漏洩を防ぐのと規律の問題だった。


エミリアは亡くなる直前の皇帝から伝承されいまに至るのだった。

そのため、長い刻を経て第二段階、初起動を迎えようとしている。


「地球の方々……。メルディアスの未来を飛鳥に託します。

さぁ、エリス! いまこそ、私たち――お父様、お母様たちの願いを!」


「うん、お姉ちゃん! 私は現実から目を背けない」


姉妹が同時に超次元の扉に手をかざすと、ゲートが起動され、幻想的で未知の異空間が出現した。


「……飛鳥。いま超次元の扉は、地球と繋がりました。

この中を通れば、一瞬で地球に到着しているはずです。

ただし、転送可能なのは一回きりで、機動機甲兵器一機がやっと通れるほどの大きさになります」


「エミリアさん、エリスさん。僕は……僕にしかできないことをやるだけです。

だから、地球に帰還します。それに僕には紅蓮丸――母さんもいますから大丈夫です!」


飛鳥に迷いなど微塵もなかった。

姉妹の胸の内にある懺悔の心は、彼の明るさと気高い志によって浄化されていた。


「みんなには悪いけど、一足早く剣持親子は地球に帰還するだけよ。

さぁ、飛鳥! ラストミッション片付けるわよ☆」

「うん、母さん!」


飛鳥は紅蓮丸の超新星機関の出力を上げた――。


『鳳凰紅蓮丸、発進ッ!!』


紅蓮の飛鳥、鳳凰紅蓮丸は超次元の渦の中に姿を消した。

その最中、渚だけはこれから起こる事態を察して、妙な胸騒ぎを感じていたのだった。


――そして、息つく間もなく剣持親子を見送った姉妹は次の『行動』を実行していた。


エリスは戦闘区域全てに回線を開き、銀河帝国メルディアスの想いを伝えた。


「銀河帝国メルディアスを守護する勇者たち、戦いは終わった。

地球の方々も、争いは終わった……」


『こ、この声はエリス……!』


「艦長!  こ、この声は一体?」


風間艦長、剣持副長は声の主を理解していた。

ただし、戦場の戦士たちは聞き耳を持っていなかった。

双方の戦闘は止まない。


「銀河帝国メルディアスより、停戦が声明されましたが――依然、第一部隊・第二部隊交戦中の模様。

水城戦術補佐官、ルカさん大丈夫ですか?」


実際、エリスの声を聞いて戦闘を辞めた者もいた。

それでも、黄金騎士がいないいま、メルディアスの指揮系統は麻痺していた。


「風間オペレーター。第一部隊はなんとか大丈夫だ。だが、第二部隊がヤバい!」

「狂気のエナジーが蔓延している。僕は問題ない。でも、紅蓮機甲隊の隊員たちが……」


暴走した流星が銀河の中を駆け巡るかのように、戦場は混沌としている。


「紅蓮の飛鳥はどうなったんだ? このままじゃ」


グランドアース号の緋音もこの異様な光景に憤りを感じていた。

緋音が全域に魂の叫びを上げようとした矢先、ピースが彼女を制止させた。


「緋音、待って! なにか聞こえる……」


緋音はピースの言葉に耳を貸し思い止まり、心を落ち着かせた。


――すると、微かに声が聞こえていた。

エリス姫とは違い弱弱しくもあったが、どこか人の気持ちを落ち着かせ、

冷静にさせる不思議な口調であった。


「私は……。銀河帝国……メルディアスの第一皇女、エミリア……。

みなさん、戦いは終わりました。我らは蒼き星――地球の人々と分かり合える未来を見つけました。

だから、もう憎しみや悲しみの連鎖はやめましょう。

私たちは同じ生命体であり、地球人なのです。


そして、地球戦艦ノアの方々。

剣持飛鳥こと“紅蓮の飛鳥”は地球の危機を救うため、地球へ帰還いたしました。

私があなた方をここまで導いておきながら、裏切ってしまい申し訳ございません。

それでも、飛鳥は銀河帝国メルディアス、地球のために……」


「お姉ちゃんが謝ることはない。すべては私が独断で行った過ちなのだから……。

それでも、剣持飛鳥――紅蓮の飛鳥は地球の未来とメルディアスを守護するため飛翔した。

機動戦艦ノアの艦長。我らの停戦に偽りはありません」


二人の言葉を聞いた戦士たちはようやく、瞳に宿っていた闘志の炎が焼失したのだった。


『戦いは終わりました。今は私たちにできることは、

二つの世界の希望と平和の架け橋である紅蓮の飛鳥の無事を祈るしかありません』


風間艦長は正式に二人から提案された停戦を受け入れた。

こうして銀河に安息が訪れた。


しかし、機動戦艦ノアの第一艦橋にいる命は心の導火線に火がついてしまっていた。


「お父さんや飛鳥君のお父さんは平気なんですか? また……飛鳥君、一人が辛い思いをすることに」


「平気な訳ないだろ命。ただ我々も使命を忘れてはいけない。

私たちは銀河帝国メルディアスと戦争をするために、ここまで来たんじゃない! 

飛鳥君が行動したように我々も動き出す」


「命ちゃん、私も飛鳥と渚は心配だよ。でもね私はあの二人を信頼してる。

きっと、地球を守ってくれる。なんの確信や根拠もないけど、

私はもう一度、再会できると思っている」


命は二人の言葉を聞いて冷静になり、剣持副長の思いが彼女に届いた結果だった。


「飛鳥君はいつもそうですよね。でも、いまは紅蓮丸――渚さんがそばにいてくれます。

だから、私も剣持飛鳥……紅蓮の飛鳥を信じます!」


命が願いを込めて祈りを捧げた。


同時期に飛鳥は超次元の扉の中で『次元』を跳躍している。


鳳凰紅蓮丸の飛鳥は、彼女のシンパシーを感じていた。


「ありがとう、命ちゃん。それに父さんたちも……」

「どうやら、二人は上手くやったようね。飛鳥、そろそろ出口みたいよ!」


鳳凰紅蓮丸は幻想的な空間を抜け出し、飛鳥は懐かしい光景を目の当たりにした。

辺り一面は夜空で優雅に宇宙を映し出していた。


さらに月明かりが『富士山』を照らしている。

飛鳥たちは間違いなく地球――日本に帰還していた。


「母さん。本当に僕たち……地球に戻ってきたんだね。

そして、ここは富士山」


「ええ、そうね飛鳥。あの戦艦に熱源反応ありだわ。

エリスちゃんの言う通りあの熱量の爆弾が爆発すれば日本だけではなく、

地球そのものが死滅してしまう威力……」


超次元の扉を抜けて来たおかげで起爆するまでに五分間残っていた。

無論、この二人は考えるまでもなく、行動を起こしていた。


「母さん! 今すぐ爆弾を地球から切り離そう!」

「そうね、飛鳥……。爆弾だけ取り除き宇宙へ行きましょう」


紅蓮丸は一度、地上に降り立ち戦艦の内部に突入した。

迅速に正確にそして、落ち着いた様子で飛鳥は戦艦から爆弾のみを取り除いた。


「こんな小さいモノで、これまでの全てが“無”に還ってしまうなんて……」

「――そう。本来、私たちは滅んでいたかもしれない。

だけど、諦めず辿り着いた。飛鳥、行きましょう!」


鳳凰紅蓮丸は爆弾を抱え込み、背中の翼部を展開させて飛鳥たちは『紅の流星』となり、

地上を駆け上り宇宙に羽ばたいた――。


「ふぅ、どうにか大圏突破……。だけど、まだ安心できない。

この爆弾の威力だと、ここからでも爆風によって『地球』に甚大な被害が……。

いまはできる限り距離を取りたい。母さん! 太陽系の中心に進もう!」


「……」


飛鳥の投げかけに渚は無言だった――。


「か、母さん。どうしたの!?」

「飛鳥……。残念だけど、ここまでのようね……」


間を置いて渚は冷静になにかを悟った口調で飛鳥にその訳を告げた。


「も、もう動けないのよ……飛鳥。鳳凰紅蓮丸は本当に限界を迎えてしまった」


飛鳥は超新星機関ビックバンエンジンを確認すると、

僅かにエネルギー残量はあった。


ただ、いまにも消えてしまいそうな残り火のようだった。


「母さん、諦めちゃ駄目だ。僕らはまだ戦えるよ!」

「飛鳥、ありがとう。でもお母さんは選択したわ。ごめんね……」


――突然、鳳凰紅蓮丸の翼部である『鳳凰丸』が分離した。


「か、母さん! なにを!!」

「飛鳥、あなたは本当によくやったわ。あとはお母さんに任せてちょうだい!」


鳳凰紅蓮丸は完全に分離され、剣持親子も離ればなれになってしまった。


「まだ終わってないよ、母さん! もう一度合体して――」

「いま、紅蓮丸、鳳凰丸の全権限は私にあるわ、飛鳥。

合体はおろか、自分で思うように操作することもできない」


それでも、飛鳥は『エンゲージリンクシステム』が繋がっていない状態で手動により、

鳳凰丸を動かそうと試みた。


「――鳳凰丸。もう一度、紅蓮丸の元へ戻るんだ! でないと……」


「飛鳥、もういいのよ。爆弾が爆発するまで一分を切ったわ。

だから、飛鳥わかってちょうだい。ここから先は“紅蓮丸”だけで大丈夫」


鳳凰丸は飛鳥の操作に応じなかった。


「だったらなおさら、鳳凰丸の推進力が必要だよ! かさ……」


「いい加減にしなさい、飛鳥! 

確かに鳳凰紅蓮丸なら、最後のエネルギーを使用すれば

地球圏に爆弾の爆風波が届かない距離まで進めたはず。

で、でもね……。そのあと、どうするのよ……?」


渚の怒号が銀河に響いた。飛鳥は生まれて初めて【母】の怒りを体感する。


「……お母さん。心の底から、飛鳥と再会できて嬉しかった。

幼い飛鳥が成長していく姿を重ねて、私はとても幸せだった。

――これまで、飛鳥にはなにもしてあげられなくて、色々迷惑かけて寂しい想いをさせてしまった。


それでも、飛鳥は懸命に立ち向かい、勝利を勝ち取った自慢の息子。

私は……そんな飛鳥の明るくて可能性がある『未来』を守り抜きたい。

いや、守る使命がある。


飛鳥は地球に戻って、命ちゃんやお父さんを迎えて上げて。

――あと、さっきは怒鳴ってごめんね……。

でも、これは『飛鳥の母親』として選んだこと。


きっと、お父さんもこうしていたと思うわ。

飛鳥……あす……か。最後は笑って最愛の息子を見送るわ。

さようなら、飛鳥。お母さん……。

私、本当に飛鳥のお母さんになれて幸せでした。お父さんによろしくね……」


「ま、待って母さんッ!」


鳳凰丸は彗星の如く旅立ち、飛鳥が母と叫ぶ声はすぐさま無音と化した。


「あと少しだったのに僕は……」


飛鳥は辿ってきた星の道を逆走し、煌めく星々の銀河を瞳に焼き付けていた。


「紅蓮丸――母さんは……」


飛鳥が後ろを振りかえると、目を疑う光景が移り込んだ。

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