論争
「マリア……。てめ~のことは、てめ~が一番わかってる。
多分、お前も少し前からわかってるはずだ。
だから、俺から最後の願いだ。聞いてくれ! せめてとも、お前の手で俺を殺してくれ。
でねぇと、俺は俺は……」
「キHE。ガん魔、輪TAシが、損なこTOをさせますか?」
ガンマだけではなく、いままで宇宙機械獣を飼い慣らしていたはずのザードも、
彼等と融合したことで結末を悟っていた。
いかに無限の生命体でも自己修復機能を超えたダメージを負えば死に絶える。
仮にこの戦いに生き残っても、元の体へ戻ることは不可能だと理解できていた。
それでも唯一、可能性を秘めていることがある。
それはザードが信仰している“あの方”へ縋ること。
「分かってる。私は……シンやバーンたちの想いに答えなくてはいけない『使命』がある。
宇宙機械獣――ザードだけを取り込んでいた者なら容赦なく斬れた。
しかし、ガンマ。お前はもう、黄金十二騎士として誇りを持っている。
私は同志を斬れん……!」
「甘ったれてんじゃねぇぞ、マリアっ!
どっちみち、やらないとお前が死ぬんだ……!
お、俺はそんなことを望んじゃいねぇ。やらないと、俺はお前を一生怨んじまうぞ。
だから、コイツらと一緒に消し飛ばせ!」
――ときは残酷だった。
マリアは決断を迫らせて、逃げ場をなくして、幾度も試練を与える。
それでもついに彼女は聖断のガンマの想いへ応える。
マリアは愛機、エクスカリバー・クィーンナイトのシャイニングブレード形態を解いたのだった。
通常形態である聖剣状態で突進した。
マリア――エクスカリバー・クィーンナイトは、
ヴァーチカル・ミーティアの如く光の閃光と化した。
彼女はエクスカリバー・クィーンナイトを通して、ガンマと心が触れ合っていた。
不思議と彼らはある“記憶”を共通していた。
第一印象、お互いの印象は真逆だった。
マリアはガンマに対して、良くない噂を耳にしていた。
ただ、実際に顔を合わせるまで彼女は人を決めつけたりしない性格。
しかし、実際に会って、噂とおり小ズルく卑怯者だと諦め、
マリアは彼に対して嫌悪感を持っていた。
――対照的に、ガンマは彼女に対して、男が美女に抱く性を全開にさせていた。
ただ、意外にもその思惑は今日に至るまで、ガンマは己の胸の内に秘めていた。
二人をあえて、例える水と油。
もっと適切な表現なら『光と闇』。
それでも、マリアはどこかガンマのことを気にかけていた。
ミトラの星で対峙したとき、彼女が“ガンマ”に止めを刺さなかった理由であったのだ。
――さらにマリアは黄金の志に目覚めた漢に対して、恋愛感情とは別の『愛』を抱いていた。
ただし、彼女が《剣持飛鳥》に抱く甘く、切ない恋心ではない。
生物――母親が生まれてきた我が子に注ぐ、無償の愛情にも似た想いだった。
人を愛することは、愛する想い人ではない人であっても愛情は平等である。
ガンマは痛いほど、マリアからの無償の愛を悟り彼は覚悟を決めていた。
そして、惨めに生き抗おうとする、ザードにガンマはこう言い切ったのだった……。
「……ザード。お前は一人でよくやった。
このあとのことは、コイツらに任せてみようぜ。俺もお前も、結局は孤独だった。
だけどよ。俺は最後に『黄金十二騎士』の誇りを取り戻せたかも知れねぇ~。
まぁ、あっちではお手柔らかに頼むぜ……!」
「……!?」
もはや、彼が話す言葉を理解できずいるザードだった。
しかし、次の瞬間――運命の終わりを目の当たりにするザードだった。
「か、身体が動かないだと……? う、宇宙機械獣……。こ、これはどういうことだ」
「賢いお前なら、理解しているはずだ。死ぬまで俺に付き合えや! ザード、宇宙機械獣」
ガンマは最後に命の力を振り絞り、宇宙機械獣の『全自律神経』を己の支配下に置いた。
ただし、ほんの数秒間しか制御できない。
これは最初で最後の“決死”の行いだった。
その瞬間――ガンマのなかで、なにかが弾け飛んだ。
そのまま、鬼気迫る形相でガンマは叫んでいた……。
「やれ! マリアぁぁ!!」
先ほどまで閃光に包まれていたマリアは、光の繭から解放され『エクスカリバー・クィーンナイト』の聖剣を宇宙機械獣に突き刺したのだった……。
「す、すまん……。ガンマ……」
透きとおった雫を頬へ伝わらせマリアの『心』も張り裂けた――。
「私は無力だ……。
だが、残された者として、生きていかなければならん。
――エクスカリバー・クィーンナイト。
私に『力』を……。エターナルフォース――!」
ヴァーチカル・ミーティアと違いエターナルフォースは外見上変化がなかった。
しかし、宇宙機械獣に変化が見られた。
いままで、暴走していたはずなのに静まり返った。
エターナルフォースは、脈々と黄金十二騎士の聖騎士――エクスカリバー・クィーンナイトへ受け継がれてきた。
これによって、斬られた者は痛みや苦しみを感じることなく、
対象者を昇天させることができる。
かつての聖騎士マリアならば、使用することはないと確信していただろう。
だが、こうして彼女は仲間へと刃を向け、聖剣で貫いていたのだった……。
「……!」
「こ、これは一体……?」
宇宙機械獣ともども、聖寂のザードは感覚が失われていった。
それは、彼らと融合しているガンマも同じ境遇だった。
「へ。感覚がなくてもマリア、お前の優しさは心に……滲みるぜ。
俺は最後の最後まで半端者だったけどよ……。お前に見届けられながら死ねる。
だから、マリア。最後に俺の戯言を聞いてくれ……。
俺は密かにお前に好意を抱き尊敬していた。多分、弟のシンは俺の好意を見抜いていた。
だけど、こうして俺の口から、お前に俺の想いを告げられた。――聖騎士マリア。
あとは頼んだ……ぜ。それと、最後に俺様からの助言だ……。
もう少しだけ、自分に『素直』になれ! あばよ……」
「が、ガンマ――!」
そうマリアに言葉を残し『聖断のガンマ』の命は燃え尽きた……。
ザードも破滅を迎える死神の足音を感じ取っていた。
「……まんまと、あなたたち姉弟――ガンマにしてやられました。
完敗だったと認めて上げましょう。ですが、これから『本当の戦い』が、
待ち受けていますよ、マリア? きっとすぐにこの“意味”を理解し、
エリスや地球人は後悔するでしょう。
あのお方”宇宙機械皇帝”様の前では、全てが【無力】と化します。
まぁ、私は地獄の底で、優雅に見物させていただきますよ……」
絶命する瞬間まで『聖静のザード』は黄金騎士たちに謎を残していった。
それでも、彼の大いなる野望は、黄金騎士たちによって潰えたのだった。
「望むところだ、ザード。最果ての世界から見届けていろ。
我らはこの先――二つの世界の未来を切り開く責任があるっ!
エリス姫様、蒼き星の人々と共に、希望の未来へ羽ばたくまでだ。
だがみんな。どうやら、私もここまでのようだすまない……。
ここからは紅蓮の飛鳥……。エリス姫様……。エミリア様をたの……だぞ……」
至高の黄金十二騎士、聖騎士マリアのエクスカリバー・クィーンナイトも完全に沈黙した。
戦場に残った人々は、悲惨な光景から目を背けず、
蒼き星地球と銀河帝国メルディアスの架け橋となる“紅蓮の少年”の帰還を待ち望み、
命は第一艦橋から、祈りを捧げた――。
――玉間でエリス姫と対峙し極限まで『感覚』が研ぎ澄まされた飛鳥に伝わった。
飛鳥は命のシンパシーによって理解した。
それは黄金騎士たちの激戦の終焉を意味していた。
「……エリス姫。僕たちがこうしている間に彼らの戦いが終わりました。
もう、エリス姫もわかったはずです。僕たちは、互いに手を取り合って共存できると!」
「わかったような、口を利かないで欲しいものだ。
まだ、貴殿は肝心な『根』の部分を理解しておらん。
ただし、剣持飛鳥。それだけ、感覚が優れているのならとっくに気づいているはずだ。
我ら――銀河帝国メルディアス人と蒼き星、地球人は同じだったと……」
エリス姫が言う前から、飛鳥は薄々感じ取っていた。
姿形はさることながら、色んなことが巡り巡って、飛鳥は一人で認識していた。
ようやく、飛鳥は他人の口から“真実”を耳にして、答えを導き出せた。
「――僕自身、真実を聞くまで確信は持てませんでした。
もしかしたら、父さんや風間艦長たちは知っていたかもしれません。
でも、僕はさほど気にしていなかったです」
「蒼き星の人々は、とうに忘れてしまっただろう……な。
我らは片時も地球を忘れたことはないのだ! 剣持飛鳥。
なぜ我らがここにいながら、地球へと『闘い』を挑んだかをな。
それは遡ること、紀元前――。文明レベルは今と同等、それ以上だった。
この時点で貴殿が知る歴史とは違うはず。
それでも、現代と同じで人類は争い犇めき合っていた。
さらに追い打ちをかけるように、地球人口は限界点を迎えていた。
そのため、人類は苦肉の策として、宇宙の辺境の地へと“移民計画”を企てた。
当時――銀河帝国メルディアスの前身だった、帝国メルディアスは
後にヨーロッパと称される地域で機械産業を中心に栄え平和に暮らしていた。
しかし、弱小国家であった。
故に帝国メルディアスは移民計画の礎とされ、技術大国の威信と誇りを奪われ、
帝国メルディアスは地球と一直線上に存在する惑星へと追いやられた。
しかし、実際には複雑なことが絡んでいた。
まず名目上、移民にしては規模が小さすぎた。
それもそのはずだった。
なぜなら、人類は帝国メルディアスを地球から迫害するのが目的だった。
中立で小規模な『独立帝国』であっても、地球人類――彼らは『我らの力』を恐れていた。
多分、貴殿ならば自ずと理解できるだろう。
平和への抑止力は人の心を蝕む。
帝国メルディアスを守護する【機動機甲兵器】の存在が世界を暴走させた。
結果的に世界を見放した当時の皇帝は雄姿を引き連れて、宇宙へと飛翔した。
辺境の星で祖先たちは、不屈の精神で抗い、帝国メルディアスは飛躍的に発展し、
銀河帝国メルディアスとなった。
そして、この話にはまだ続きがある。
帝国メルディアスが去った後、地球人たちは帝国メルディアスのテクノロジーを使って、
戦争をし戦果を広げていった。
そのあと薄々、想像できるだろう。
禁忌の“神炎”を使い文明は滅んだ。
しばらくして、生き残った僅かな人によっていまの世界が築かれていったのだ……」
ただただ、飛鳥はエリス姫が告げた真実の歴史を耳にして愕然としていた。
「――我らは故郷である【地球帰還】を計画し、
亡き両親にかわり藁は地球帰還作戦を実行したのだ。
とは言っても、あとあと気づいたが、古の頃から『奴ら』は着々と準備をし地球と銀河帝国メルディアスを狙っていた……。
実際問題、銀河帝国メルディアスは宇宙機械獣から狙われ、
星そのものの寿命も尽きようとしている」
「僕もそれは理解でき……ました。ただ、もっと平和的な『解決方法』があったはずです。
そうすれば、誰も【血】を流すことなく、僕たらは理解できました」
「それは机上の空論だよ、剣持飛鳥。
仮に我々が歩み寄っても、おいそれと蒼き星の人々は受け入れなかっただろうに。
いまなお、地球全体レベルでも小競り合いを続けていて、
地球外生命体が飛来したとあれば、混沌を招く未来など安易に想定できる」
二〇九九年――。
先の大戦を節目に人類の殺し合いの歴史は閉じられていた。
しかし、それでも少なからず、小規模な戦闘は展開されていた。
ようやく、仮初の平和を維持した状態で『銀河帝国メルディアスの人々』が、
正式な形であっても、地球に帰還したことを想像しただけで飛鳥は震えた。
究極を言えば、純粋な《武力》による戦争は勝った方が支配できる。
現代社会のように民主的かつ、人道的な手段を取ると終わらない論争へと突入してしまう。
最終的には、銀河帝国メルディアスを取り組んで、利害が一致した国や組織同士で地球統一戦争が勃発し、天才的な飛鳥でも人知を超えた地獄の世界へ誘われる……。
「きっと、大人たちはそれも承知で、あなた方を受け入れたかもしれません。
一つだけ、ハッキリしていることがあります! 僕たち――地球人は、銀河帝国メルディアスを一方的に侵略するつもりなんてないんです!」
「そなたの言うことは、まやかしに過ぎぬ。
ならば、どうして剣を抜き我らに楯突くのだ?
武器を捨てて、大人しく銀河帝国メルディアスへと吸収されれば、此度の戦争は丸く収まった」
殺戮の波動を斬り裂いたときのように、飛鳥は全身に灼熱の太陽並みの熱を感じている。
ただし、エリス姫から無情の現実をつけ付けられ、いまの飛鳥は冷静を失っていた。
「エリス姫のおっしゃるとおり、僕たち地球に住む人々が【無条件降伏】して地球を、
差し出していればとっくにこの戦争は、終戦していたでしょう。
だけど、僕たちの暮らしはどうなりますか?
確かに遠い昔、祖先たちはあなた方に酷い仕打ちをしました。
だけど、これでは銀河帝国メルディアスも同じ――いや、それ以上に“残酷”な行いです。
だから、僕の父さんや母さん。NETEROの人々は、抵抗するために『力』を有しました。
これについては、双方ともに憎しみと悲しみの連鎖があります」
「かつて、地球で対峙した際、マリアからも言われただろうが、優秀な人材は我らが請け負う。
ただし、基準に適応していない者には、我らが与えられた【屈辱】を受けさせる。
それを実行する、わらわには覚悟と業がある。
確かにそなたの言うとおり、憎しみの連鎖は互いにもう充分だな……。
ならば、いま一度、地球の“救世主”である『紅蓮の飛鳥』に問う……。
我らの同士になれ! さすれば、機動戦艦の搭乗員……。
離反した黄金騎士たちも同志として迎え入れようぞ。
そうなれば、忌まわしき宇宙機械獣たちを駆逐でき、我らとで地球を支配下に置ける!」
個のレベルで見た場合、決して悪い条件ではない。
地球の当事者たちは、この条件を承諾してしまえば、
地球圏においてなに不住なく暮らしていける措置であった。
しかし、はなっから飛鳥を始め、機動戦艦ノアの戦士たちに甘い誘惑は効かない。
個々の認識を超えて、地球意思を代弁していた。
揺らぐことのない『信念』を持ち、愛しい人や家族を残して、地球を離れた。
――そのため、飛鳥は真っ直ぐな瞳で、ぐっと自分を抑え込みエリス姫に返答したのだった。
「僕……僕たちの意思に迷いはありません。
それは志半ばで散って逝った人たちもです。だから、その条件は飲めません。
エリス姫! もうわかっているはずです……。
僕たちは、わかり合えて、愛し合うこともできると思います」
「交渉決裂か……。
まぁ、よい。ならばどうする? この場でわらはを殺すか?
さすれば、この戦争も終わり、銀河帝国メルディアスも滅び、全てが【無】と化かすだろう……。
どっちみち、戦争とは妥協点を見いだせなければ、どちらかが根絶されるまで繰り広げられる。
我らは――地球人によって、滅亡させられる……」
飛鳥が掲げる理論を前にして、エリス姫は開き直ることしかできなかった。
――いよいよ、二人の論争に終わりが見えなくなり、メビウスの輪のように意思が交わらない。
「銀河帝国メルディアス……。
帝国の人々の幸せを本当に願うのであれば、僕らと手を取り合いましょう。
父さんが作った技術を……死にゆく星にも未来を築け、宇宙機械獣の脅威からも逃れられます」
「ふ、そのようなまやかしなど。
我らとて地球でなに不住なく生活を営む権利は存在する! もはや、それも叶うはずもないがな」
密かに剣持副長は、銀河帝国メルディアスを研究し、彼らの行動原理を解明していた。
人間で言う病気にかかった人へ注入するワクチンを惑星用に開発し成功させていた。
そもそも、このワクチンに関しては、元より交渉の道具にすることは考えてはいなかった。
ただ、彼らが地球上でなに不住なく、生活できる保障は誰も確約はできないのが真実。
万策尽きた飛鳥は沈黙してしまった……。
しかし、そんなときだった――。
黄昏の空間で聞いたことがある『声』が玉間に奏でられたのだった。
「エリスに飛鳥……」
「ついに来たか、追憶の姉上……」
飛鳥は玉間に現れた女性を目にして、彼女の名を口にしていた――。
「あ、あなたはエミリアさんですかね?」
「飛鳥、お久しぶりです。いえ。こうして会うのは初めてですね……」
二人は夢の空間で何度かコミュニケーションを取っていた。
その都度、エミリアは飛鳥に助言をし再会できる日を心待ちにしていた。
やっと、彼らは『再会』を果たした。
「え、エミリアさん……。ぼ、僕らは……」
「――飛鳥。よくぞ、ここまで来てくれました!
渚に十三も、よくやってくれました。
エリス。彼らは自分の力で、ここまでやってきて銀河帝国メルディアスと、
地球との未来をも切り開こうとしています。
ですから、エリス。もうおやめさない……!」
エミリアは心の底から、飛鳥たちの功績に労いの言葉をかけていた。
しかし、妹のエリスには毅然とした態度で地球との和平を受け入れるよう諭していた。
「姉上、それは正論です。が、地球全体規模――あくまでも、彼らの意識レベルの話です。
もう我らに残された道はありません。
このままでは、戦いで死んでいった同志たちが、浮かばれません」
「それは違うわ、エリス。
あなたは傷つき弱っている民を【宇宙機械皇帝】の魔の手に落とし込みました。
それこそが――宇宙機械獣の正体。お父様やお母様。
祖先たちは、そうまでしても、地球への《帰還》は望んでいないわ!
お願い、エリス。まだ間に合うわ。今一度、銀河帝国メルディアスを見つめ直しなさい!」
明日に絶望していた民に対して、エリスはザードに新たなる道として宇宙機械獣へと誘った。
それこそ、飛鳥やマリアが戦っていた“相手”だった。
飛鳥は事実を耳にして、身の毛が立っている。
「そ、そんな……。どうして……」
「先ほども言ったろう……。
奴らは遥か古の頃から、存在したと。
それに民は――メルディアスのためならばと喜んでいた。
わらはその者たちの願いを叶えたまで!」
このとき、エリスは自分を見失っていた。それをわかってはいた。
けれども、理解し共感できる存在がいなかった。
しかし、エミリアは違った。
「エリス……。その方々は、銀河帝国メルディアスのために命を捧げた訳じゃないです。
大切な者……愛する者を守るため、破滅の道を選び『修羅』になったのです」
「それでも、銀河帝国メルディアスを守るためには仕方がなかった。
お気楽で楽観的な、姉上に私の気持ちは理解できないしょう……」
エミリアの言葉によって、
エリスは宇宙機械獣へと【修羅の道】を選んだ民の悲しい瞳を思い出していた。
「エリスの言うように、いままで私は自分の運命――宿命から眼を背けていました。
でも、これからは違う……!」
エミリアは深い闇に閉ざされていた“心”を解き放った。
その彼女の綺麗な瞳には、世界を照らす眩い光が注がれていた。
『……!!』
「もう、エリスだけ辛い思いをさせない。私は逃げない!」
エミリアは固く閉ざされていた目蓋を解放させた。
飛鳥は初めて、彼女と目線があった。
「え、エミリアさん……!」
「飛鳥――あなたは私の想像とおりでした。
いえ、それ以上の心の持ち主であり、とても優しい少年です……。
私は……蒼き星、地球に住む人々や、黄金騎士たちの勇気と誇りを無駄にしないためにも、
エリスを止めますッ!」
――そのまま、エミリアは目線を横にやった。
二人の姉妹は本当の意味で、数十年ぶりに再会したのだった。
「姉上……。いつの間に視力が……」
先ほどまで、淡々としていたエリスに明らかに変化が生じて声が震えていた。
「酷いです。姉上は私を騙していたのですね? い、いまになってどうして?」
「それは違うよ、エリス。
私はお父様とお母様が亡くなった“あの日以来”現実から目を背けるように光を閉ざした。
だけど、こうして今、私は大切な家族――愛する妹の姿を目に焼き付けてる」
エリス同様にエミリアも体が震えていた。
それは勇気を振り絞り、得た代償だった。
封印を解かれた扉の先は、眩い光ではなかった。
エミリアの眼――脳には一種のショック現象が起こっていた。
それでも、彼女は気丈に立ち振るまっている。
「エリス姫……。エミリアさんは勇気を持ってここに来られました。
はなっから誰も戦いなど望んではいません」
「いまさら、どうにもならん。紅蓮の飛鳥に姉上。
どの道、我らは【宇宙機械皇帝】に支配されるだろう……。
どうせ、手に入らないなら壊れてしまえ……!」
エリスは首から下げていたペンダントを手にし蓋を開けて奥の手を使った。




