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銀河機動戦記~紅蓮の飛鳥~  作者: 恥骨又造
第三章:『破壊と希望のヒカリ』篇
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邪の道を逝く者

そのため、ザードは【スパニッシュトライデント】が完全沈黙する前に本気を見せた。

かつてのガンマならば、一瞬にして【絶望】するほどの実力差だった。

動物なら恐れおののき尻尾やとぐろ巻いて退散する。

もしくは死を選ぶだろう。


しかし、いまのこの漢は違った。


挑発気味に不敵に笑い不思議と『自信』に満ちている表情をしていた。


「こ、これだよなザード。お前は黄金十二騎士の中でも群を抜いて【闇】を持つ。

俺はお前の闇に呑まれ、姑息に生きて辺境の地でお山の大将をしていた。

だけど、いまこの瞬間は違う。俺はお前をぶん殴りてぇ~。

しいては騎士として勝利を、この手に納めたい!」


「――あなたは潜在的にこちら側の人間でした。

それにしても、あなたのその貪欲さだけは私も負けます。

ただ、あなたのようなクズが、騎士などと口にされるのは心外です!」


静寂のザードの【異名】を持つ彼はガンマの大口に珍しく怒りを覚え眼を細めた。


――そして、愛機、スパニッシュトライデントの三つ又の矛で反撃をした。


矛先はガンマ本人を狙い定めていた。そのまま、スパニッシュトライデントの矛先はガーベルサイズの胸部――コックピットを貫いた。


スパニッシュトライデントの鋭利な矛がガーベルサイズに触れようとした瞬間――

ガンマは完全に矛の軌道を見切っていた。

ガンマはあえて、ギリギリまで寄せ付けたかのようだった。


その後、ガンマは大鋏で横振りによって、ザードの一撃を遮断させた。

このとき、互角以上に渡り合うガンマを見て、黄金の姉弟と時田すら目を奪われていた。


「私ですら、あのような状態のザードを初めて見た。あやつはいつも【氷】よりも冷たく、ブラックホールより底が見えない奴だった。それなのにガンマは落ち着いて、完全に矛筋を見切っている……」


「俺もザードが戦っているところは、あまりみたことがなかった。

主にメルディアスでは政を摂関している印象だった。だけど、いまは違う。

恐ろしいほど、張りつめて極限のオーラがザードの回りを包み込んでいる!」


その証拠にいつもなら、大抵のことへ興味を示さない時田でさえも、

ザードの変化を眺めていた。


また、ガンマの獅子奮迅の戦いぶりに関心を抱いている。


「ザードを本気にさせた……。ガンマよ、見事なり……!」


嫌味や妬みが一切なき、純度の高い時田なりのガンマへの称賛。

機動戦艦ノアの第一艦橋の面々やテトラたちがその雄姿に胸を熱くさせるほどであった。

敵味方隔てなく、覚悟を決めている漢の姿は長らく銀河を照らしている星の輝きを霞め、

悠然と咲き誇る華の如く、美しくあった。


「お前ら見せもんじゃねぇぞ! てめーの戦いに集中しやがれっ!」

「あぁ。そうだったな……!」


回りを置いてけぼりにしまうほど、ガンマの心は清く澄んでいた。


それは――。


一滴の水滴が湖に垂れ、波紋を打ち寄せ広がりゆく『明鏡止水の境地』に似ていた。


「ザード……。互いに時間がねぇ~。どうだ? 

自分が持つ最大の攻撃でケリつけねぇか?」


「図に乗るのもいい加減にして下さい、ガンマ。 

ですが、それもいいでしょう。無様に死ぬのはあなたなのですから……!」


蛇の道を行く者は“蛇”であるように本質的に同族の性質を持つ。

彼らは自身の最大の奥義のよる決着を望んだ。


二人の闘気は共鳴するかのように高まり、一旦『無』と化した。


そして次の瞬間――。


爆発的にガンマとザードの闘気が膨れ上がった。

極限まで高まった闘気はやがて、オーラとなり変り、

機体へ纏わりついて眼で読み取れるようになった。


闘気――すなわち、オーラの総量は全くの互角。

ただ一点、ガンマの目は死を超越したモノが宿っていた。


騎士道や現代科学では解明できない、気迫や意思が彼を駆り立てていた。


「さて。これまでの行いに懺悔はできましたか、ガンマ? では行きますよ……」

「ケっ。お前ほど、修羅の道を好んじゃいねぇ~。

お前も死んであの世で罪を償え――!」


スパニッシュトライデントは、ガーベルサイズの頭上より飛来する矛を襲撃させた。


『神々の黄昏ラグナロック


ガンマは頭上より投擲された矛を迎撃すべく、機体を起し特大級の鋏を召喚して迎撃。


『ギガントシザースぅう~~!』


ザードとガンマを結ぶ中央地点で三つ又の矛と、

鋏が交差する地点で衝突し犇めき合っていた。


やや、押され気味の特大級の鋏だったが、ガンマは必死に持ち堪えている。

彼の後方には力尽きた黄金騎士たちが存在していた。


不思議と完全沈黙しているはずなのにガンマは彼らから背中を押されているように思えていた。

ガンマはさらにギガントシザースへ力を込めた――。


「お前らはそんなになっても、俺を信じるのかよ……。

大馬鹿野郎だ。だが、安心しろ! もうじき銀河帝国メルディアスの【闇】を、叩きぶった斬ってやるぜ……!」


「う。流石に“重たい”ですね……。それにしても、あなたの行動原理には驚きましたよ。まさか、人としてそのような感情により、あの方へ刃向うとは愚かですね~」


ザードとしては、ガンマが他人のために“剣”を握ったことへ『嫌悪感』を抱いていた。


――しかしながら、他人のために力を行使することは、

本人や周りの想像以上の力を生み出すこともある。


それでも『諸刃の剣』としての脆さも兼ね備えていた。

他人――なにかをきっかけとしないと、己の能力を発揮できない。

聖断のガンマは完全に諸刃の剣の枷を乗り越えて『潜在能力以上』の力を発揮していた。


そのため、聖寂のザードは無意識の内に氷水が、解けたような冷汗をかいていたのだった。


「おいおい。ザードさんよ、殺っちまうぜっ!」


「……お見事です、ガンマ。確かに私は久しぶりに“死”を悟れました。

むしろ、深く感謝しております。まだ、私にも人間――生命体として、

このような感情を持ち合わせていたとは新たな発見です! 

これは是非とも、あの方にお伝えしなくては」


ザードはガンマによって、人間として欠落していたであろう生気を感じ取っていた。

それは長らく体内を駆け巡っている、血液も同時に流動を思い出させる。


「へ、それなら、お望み通りあの世に行きやがれっ! 

少ししたら俺もきっと、そっち側だからよ……。待ってろ……」


悲哀の表情でガンマは特大級の鋏に渾身のエナジーを送り込み、

裁きの三つ又の矛を切断した。


――まるで、ダイヤモンドが砕けたかのうような鈍い音は、

確実にガーベルサイズが放った、ギガントシザースによって、

スパニッシュトライデントは挟まれていた。


この瞬間――ガンマは勝利を確信した。


彼は残りの全てを注ぎ込み、刃でザードを切り裂けばあのザードを倒せる。

そう思って疑わなかった。


しかし、スパニッシュトライデント越しにでも、ザードは一向に諦める様子がないでいる。ましては、彼が無様に命乞いをするなど、考えられなかった。


「ごふッ。……よもや、この私があなたに“負ける”とは思っておりませんでした。

流石に直撃はまずいです……。認めましょう。この戦いは私の負け……です。

ですが、最終的な勝負に負けるつもりはないですよ!」


パチーンと、小鳥の囀りよりかよ弱い音が宇宙に木霊した。

――このとき、ガンマは極度の緊張と疲労で、この音を耳で聞くことはできなかった。

それでも、聖騎士マリアは聞き取っていた。


彼女はガンマ名を叫んでいた――。


マリアの叫び声は虚しく、ガンマの耳に届かず『聖断のガンマ』は死角から

出現した宇宙機械獣に喰われた。


――一瞬にして、ガンマは肉体――精神の感覚が失われた。

さらにガーベルサイズと融合を果した宇宙機械獣はザードの元へ行き衝撃を巻き起こした。


「……さぁ。私を喰らいなさい……」


神秘の黄金の衣は無残にも、宇宙機械獣に噛み砕かれ、二機と二つの精神が共鳴された。


「人生とは【予定】通りいきませんね。それだから、多少なりとも、面白味もあります。あと一歩およばず……。そうすれば、進化した生命体へなれました。

ですが、死んでしまっては意味もあったものじゃありません」


「お、俺は一体……?」


当事者たち以外、この惨状にただただ、言葉を失い呆然としていた。


「ふへへ、喜びなさいガンマ。たったいまあなたは、無限の命を得ました。

――ただし、私と宇宙機械獣とで、未来永劫運命をともにすることになりますがね……」


「ふ、ふざけるんじゃね。ザード――!!」


彼らを取り込んだ宇宙機械獣は悍ましかった。

何度か【宇宙機械獣】と戦闘を交えている、真紅の緋音ですら、戦々恐々としている。


そのため、グランドアース号の『ピース』は戦闘継続を、拒絶してしまうほどであった。


「しかし、この状況下マリアとシンを殺さないと、こちらが殺られます……。

時田。あなたはこの空域から離脱しあの方へ『鳳凰紅蓮丸が発現』させた現象を報告して下さい!」


時田はザードたちが豹変した姿にも眉毛一つ反応をみせなかった。

彼はそのまま無言で頷き颯爽とデルタサムライは離脱した。


そして、マリアとシン。

ここから、二人の真の死闘が始まるのであった――。


たちまち、ザードとガンマを取り込んだ宇宙機械獣は――。

さらに“形態変化”していった。


触手のような物体で黄金姉弟を攻撃した。

それはまるで意思を持った繊維の如く動きマリアとシンを翻弄させた。


また、一見、機体そのものは宇宙機械獣に支配されているようにみえる。

実態は違った。ザードは一度死んだぐらいでモノともしなかった。


むしろ、彼は融合を果す前――生身の肉体の頃よりも、

宇宙機械獣を真にコントロールして、飼い慣らしていたのだった。


「ヒャハハ、ガンマ。とてもいい光景でしょ? 

もうじき、シンとマリアは己の命を燃やし尽かせ、見るも無残な姿となります。

他の黄金騎士もろとも、この宇宙機械獣へ融合させます。そうすれば、目障りな小娘だけではなく、地球人どもの艦隊を駆逐して【あの方】へ献上いたします!」


「こ、このクズ野郎が……!」


これまで、表面的にしか感じ取れなかったザードの底知れぬ悪意と憎悪。

共鳴をしているガンマの精神回路を駆け巡った。


僅かの間、人々の心を勇気つけた『光』は無限の闇へと堕ちそうだった。


――絶望の淵のなか、ガンマは自分の名を懸命に呼ぶ聖なる響音を耳ではなく心で聞いた。


「ガンマ、ガンマ……。生きているか? 

しっかりしろ。いま助けるから、待っていろ!」


「くっ。一瞬の気の緩みで俺たちも、奴に“吸収”されてしまうかもしれない。

だけど、このままなにもしないで待っていても、超新星機関の解放時間の臨界点を迎えてしまう」


ザードはマリアの声によって、どうにか自我を保てていた。

そして、彼はあることに気づくのだった。


それは『融合生命体』となったことにより、自分も【宇宙機械獣】の肉体を動かせることだった。これを利用すれば、黄金姉弟は突破口を開ける。


ただし、宇宙機械獣・ザードと一心同体となってしまった以上、

彼らを導くのには障害があった。


けれど、ガンマは唯一の打開策を思いつき決行するのであった。

聖断のガンマは、ザードに悟られることなく、人生の終着駅へ向わせる線路を敷いた。


「へへ、ザード。この肉体気に入ったぜ! 俺はやっぱり、アンタへ倉替えする。

かねて、俺様は永遠の命――無限の知的生命体として宇宙に君臨するぜっ!

さぁ、てめら。血祭りに上げてやるぜ……!」


またしても、ガンマは狡猾な男へ逆戻りしてしまった。

その姿を前にして、マリアは肩を落とし落胆した。

だがしかし、マリアは意気消沈している余裕などなかった。


悪魔に魂を売ったガンマは彼らを容赦なく責めたてた。


宇宙機械獣が放った触手は、四方八方から迫り、

思考停止してその場で立ちすくしている姉の『エクスカリバー・クィーンナイト』を、

守るためシンはゲイボルグ・ラーハルトを盾にした。

マリアの機体への被弾は防げた。    


ただ、目に見えてゲイボルグ・ラーハルトの機体が損傷していった。

それでも、派手に見える宇宙機械獣の一撃そのものは軽かった。


また、攻撃の軌道も疲労困憊状態のシンでも、手に取るようにわかる軌道であった。

防御の最中――シンが宇宙機械獣を横目でみると狡猾で脱落した“ガンマ”と目線が合った。

少し前の言動とは裏腹に彼の『瞳』には曇りどころか闘志……。


なにかを決断した漢が、輝かせるものを瞳に宿して、シンに訴えかけているように思えていた。

このとき、シンは――ある想いが、脳裏を横切っていた。  


それは、ガンマが『紅蓮の飛鳥』を救ったとき魅せた高潔の雄姿。

さらには姉に抱いている『愛』を不器用にも伝えようとする人間の“純粋”さを取り戻したガンマの姿。


シンはその眼差しを信頼し、彼はマリアに喝を入れた。

シンは恐れることなく、死と隣り合わせになる間合いへ踏み切った。


「姉さん。現実から目を背けてはいけない! 

あれを止めないと、バーンやナックルズ。

……銀河帝国メルディアスの尊き未来が、奪われてしまう……!」


「そのとおりだったなシン。

私は……彼らを止めなくては!」


黄金姉弟は隊列を組みシンが前列に回った。

彼はゲイボルグ・ラーハルトの聖槍を駆使し宇宙機械獣へと突撃したのだった。


――対して後列のマリアが搭乗しているエクスカリバー・クィーンナイトも

聖剣を抜刀して弟の背中を追っていた。


そして、ときを遡ること突撃前、二人は【ある約束】を交わしていた。


シンがマリアの『盾』となって、どんなに残酷な結末が待ち受けていても、

必ずマリアが彼らを阻止する……と。


――それは宇宙機械獣たるザードとガンマをその手でとどめを刺すことを意味していた。

悲しき運命であっても『黄金騎士』としての使命を全うするためにも、

マリアの心は揺らぐことができない。


その決意があって、マリアとシンは侵攻を妨げる魔の手、かすり傷をモノともせず、

宇宙機械獣の眼前まで迫っている。

この事態について、ザードはガンマへ疑心暗鬼を抱いたのだった。


「ここまで彼らを寄せ付けるとは誤算でした。いや、ガンマ……。

これはあなたの計算の内ですかね? まさか、私たちを彼らに討たせるべく、あえて触発させてあまつさえ、自分が宇宙機械獣を【コントロール】できることを、試していたなんて訳じゃ、ありませんよね?」


「ギャハハ、ザード。そんな訳……あるぜっ! そろそろ、俺たちもお開きとしようや。

お前も俺も充分過ぎるほどやっちまった。

コイツらには、気高い騎士道を汚させちまうかもしれんがな。

だけど、きっと――この二人なら、銀河帝国メルディアスの『明るい未来』を託せる。

だから、俺様は礎となるのさ!」


ガンマは初めて、あのザードを欺いた。

ザードでも刻すでに遅し。


これだけ、接近されては宇宙機械獣といえど、分が悪い。


稲妻のように凄まじい勢いで、シンのゲイボルグ・ラーハルトは間合いを詰め、

五月雨突きを放った。


マリアも一糸乱れぬ呼吸によりエクスカリバー・クィーンナイトから連撃を喰らわせた。

瞬く間に宇宙機械獣は十連撃を浴びせられた。


しかし、残念ながら黄金兄弟の会心連撃は虚しく、

損傷したはずの宇宙機械獣の体は瞬く間に傷が癒えていった。

彼らは他の生命体と融合するだけの能力以外にも『自己修復機能』を備え持っていた。


流石にナノレベル――ミクロまでの修復はできない。

ただ、四肢が切れて千切れるほどの損傷なら、モノともしない強靭な“生命力”を持っている。 例えて言うなら、セ○までいかないにしても、ピッ○ロさんぐらいの自己再生能力を有している。


宇宙機械獣は逆襲に出た。

それでも、黄金姉弟はどうにか触手を捌き切った。

この攻防は体感的に本の数秒程度。


その僅かに思えるトキの流れの間で、常人が目で追うどころか、感じることができないほど、

一進一退の攻防が続いるのだった。


それ故に両陣営とも、決定打を打てずいた。

だが痺れを切らした宇宙機械獣の精神を司る主が暴走を始めた――。


「ケヘヘ。ひゃ、亜はハハ……。ま、マ李アにシん。いいかげン、死んでくだしゃいヨ。 でないと、私は……」

「ね、姉さん! 逃げてッ!」


宇宙機械獣は【無尽蔵のエネルギー】を爆発させて、さらに醜い姿へと変貌を遂げた。

その反動によって、聖寂のザードの精神は急速に浸食された。

その後、彼の抵抗も虚しくザードは宇宙機械獣に支配された。


――やがて、宇宙機械獣は暴走を始め無機質で冷酷な獣へと成り下がった。

この暴走は誰も予想していないできごとであり、当の本人でさえも予測していなかった。

不意を突かれた、エクスカリバー・クィーンナイト――マリアの反応が極端に遅れてしまった。


暴走した宇宙機械獣の触手の鋭利な刃がマリアへ直撃する手前――

シンのゲイボルグ・ラーハルトが“盾”となった。

これにより、ゲイボルグ・ラーハルトの輝きは風前の灯と化したのだった。


それでもシンは後退せずラストアタックを仕掛けるためさらに前進していった。


シンは銀河帝国メルディアスの未来を姉のマリアに未来を託した。

彼は全身全霊を持って掟破りの二度目のレイボルグを零距離で放ち【宇宙機械獣】聖なる槍が撃ち抜いた。


それと同時に、ゲイボルグ・ラーハルトの機体はスパークした。

搭乗者のシンは意識が朦朧し、視界が暗転していく最中――シンは悲痛の断末魔を聞きつつ、

愛機・ゲイボルグ・ラーハルトとともに完全沈黙した。


マリアはシンの想いを受け入れ彼の雄姿を心に刻んだ。

悶え苦しみ怯んでいる、宇宙機械獣を前にしてまたとない好機に聖騎士マリアは、

捨て身の特攻へ転じた。


「これで……終わりだ……! シャイニングブレード!」

「ひゃはへバ。そ、祖れは?×カ奈??」


もはや、かつて聖寂のザードと謳われた男の面影は微塵も残されていなかった。


狂気に満ちた言動と行動であっても、エクスカリバー・クィーンナイトの光りさす、

黄金の光芒たるヴァーチカル・ミーティアだけは警戒していた。


だが、マリアは恐れることなく、光輝く大剣を振りかざした寸前――勢いが、

完全に止まってしまった。


エクスカリバー・クィーンナイトの剣先は、宇宙機械獣の肩をぶち抜く太刀筋。

そのあとは、星々の光へ誘う流れだった……。


しかし、突如ガンマの顔面が宇宙機械獣の肩の部分に浮き上がった。

マリアは全力で愛機、エクスカリバー・クィーンナイトを停止させた。


「が、ガンマ……」

「そ、そんなことはいい! と、とにかく俺らを殺れッ!」


こうなってしまった、ガンマはマリアに殺してもらうことが、唯一の救いだった。

彼女を傷つけて理性を失った【殺戮生命体】として生きることは望んでいない。


だがしかし、マリアは活動限界三十秒を切った状況下で攻撃の手を止めてしまっている。

聖騎士マリア自身、己の最上の一撃ヴァーチカル・ミーティアを放てば、

必ず決着がつくと理解していた。


それでも、万に一つでも、ガンマを救う方法を模索していた――。


「◆×マり亜……! シん出コウカイなざいッ!」

「マリアッ! 避けろ……」


目に見えない糸が『エクスカリバー・クィーンナイト』を雁字搦めにした。


それでも、ガンマの一声により、彼女は自分の肉体のように匠に

エクスカリバー・クィーンナイトを制御し絡まっていた糸が解れる。


そして、光り輝く聖なる剣、シャイニング・ブレードを横持ちに持ち替えて、

暴走する宇宙機械獣の攻撃を捌いていた。


「すまないガンマ……。し、しかし……」


マリアも宇宙機械獣の暴走を目の当たりにして、

心のどこかではガンマを救出することを諦めていたかも知れなかった。


むしろ、ガンマはすでに諦めていた。自分自身の肉体、精神は当に限界を超えていた。


だが、皮肉にも宇宙機械獣と融合したことにより、生きながられていることの真理。

それ故に彼は、想い人のマリアにある懇願をした。

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