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銀河機動戦記~紅蓮の飛鳥~  作者: 恥骨又造
第三章:『破壊と希望のヒカリ』篇
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紅蓮創聖剣

「マリアちゃんには悪いけど、ヴァーチカル・ミーティアが可愛く思えちゃうわ❤ 

どうにか、ギリギリ受け止められてるけど飛鳥、多分無理かもしれないわ……」


「うっ! はぁはぁ……。

機体もデッドラインへ突入したね。だけど、受け止められた。

幸いあっちも、連続掃射によって、限界が見えている!

こ、このまま、持ち堪えることができれば『突破口』が開けるはず……」


飛鳥はマリアとの戦いでやってのけた戦法を応用していた。

それが見事方程式にハマっているように思えた。

しかし、『生体コアの渚』はこのままいけば

確実に鳳凰紅蓮丸が先に力尽きてしまう“未来”が見えてしまっていた。


「……飛鳥。よく聞いてちょうだい。

このままでは、鳳凰紅蓮丸が耐え切れず二人とも絶命してしまう……。

だから、飛鳥だけでも分離して鳳凰丸で離脱して欲しい」


「か、母さん……。で、でも……」


この言葉は親として……母親から飛鳥へ向けた最後のメッセージだったかもしれない。

肉体が滅んでしまっても現世において愛息、飛鳥を守ることが母の使命。

そのためになら彼女はいつでも死ぬ『覚悟』は決めていた。


しかし、そんな母の気持ちとは裏腹に飛鳥は素直に聞き入れなかった。


「駄目なんだ……母さん。

こんなところで諦めたらみんなに笑われちゃうよ。

僕の心臓はまだ鼓動がある。母さんや鳳凰紅蓮丸も健在だ。

そしてなにより、みんなまだ絶望していない!」


「あ、飛鳥――!」


飛鳥の諦めない闘志が渚の心を再び燃え上がらせた。

剣持親子と鳳凰紅蓮丸は未知の領域へと踏み入れいた。


テラーズキャノンの閃光の先にいるエリス姫との闘いが継続していくことになる。

それでも、飛鳥の闘志は他の戦士たちにも伝染した。


時田と死闘を繰り広げているマリアとシンも瞳に希望が宿っていた。


「エリス姫様はあわよくば、私ごとテラーズキャノンで殺戮する計算でしたか。

私も私で計算外でした。まさか、あの紅蓮の兵器がここまで活躍するとは! 

でしたら、彼らを先に片付けたあと、本計画を始動させるとしますか。

ラストアス・ジャッチメント!」


宇宙空間を震わせる電撃波が鳳凰紅蓮丸の頭上を襲った。

その電撃は「ズギューン」黄金の物体にとって弾かれ弾道が変わった。


「きひひ、ザードよ。久しぶりだな……!」

「あ、あなたは!?」


――かつてテトラや飛鳥を苦しませた不吉な笑い声に聞き覚えがあった。

その者は黄金の衣に身を包んだ機体に搭乗し、巨大な鋏を肩で担いでいた。


「が、ガンマ……。貴様生きていたのか……!」

「おいおい! 直接、俺に手をかけた奴が言う台詞かよ!!」


このそぐわない軽快な乗りツッコミでマリアを困惑させるガンマだった。

とにかく、ガンマは殺意の宿ったザードの一撃を粉砕して、飛鳥の鳳凰紅蓮丸を救った。


「ケっ。柄にもなく体が勝手に動いちまった! ザードさんよぉ~。

どうやら、俺にもプライドってもんがあるみたいだ。

コイツらの可能性に賭けてみたくなったぜ。

どうだい、俺様と少しの間だけ遊んでみないかい? んじゃ、超新星機関解放――!」


「ガンマ……」


このとき、マリアは複雑な心境であった。

自身の手によって、ガンマを深い闇に追いやってしまった罪悪感によって胸が苦しかった。

弟のシンは彼の『本質』を見抜いていた。


「……姉さん。ガンマは初めて騎士として、己のために剣を振るじゃない。

ガンマは誰かのために剣を振ることにしたんだ……」


――出会った頃、シンはガンマに対し決していい印象を抱いていなかった。

いまのガンマは【腐敗】しきっていた邪気が抜け切っていることに気づいていた。


それは、男として――彼のある気持ちに気づいたからだった。


「とにかくよ~。ザードは俺様に任せて、お前たちは時田に集中しろ! 

赤毛のガキは、俺を打ち負かした根性を見せやがれってんだ!」


これまで、ガンマは粗こうが目立ち口調は荒かった。

彼は彼なりにマリアとシン。飛鳥へ檄を飛ばし戦士たちを鼓舞させた。


「へへ。ガンマさん、軽く言ってくれますね~。

俄然負けられない!」


「あの人もどこか『心』で、迷っていたのかもしれない……」


実はあの戦いにおいて聖騎士マリアは、出力三十パーセントぐらいのヴァーチカル・ミーティアでガンマを屠っていた。


その後、辺境の地でガンマはザードに助けをこうも軽く一瞥され無様に生き恥を晒していた。


――そんなとき、ザードは銀河帝国メルディアスと機動戦艦ノアが決戦をするのを耳にした。


そのため、彼はテトラたち発掘戦艦の後を密かに尾行して好機を伺っていた。

そのガンマの行いにより、テラーズ・キャノンの脅威からみんなを守る盾となっている“飛鳥”を救った。


これまで、数々の奇跡によって、困難を乗り越えてきた飛鳥。

銀河帝国メルディアスを目前にするも、彼の気力だけではカバーできない。

鳳凰紅蓮丸も限界点を迎えようとしていた。


「飛鳥。追い風だったけど、そろそろ限界かも……しれ……ない」

「まだだ、まだ諦めない……」


この日、二度目の超新星機関の輝きは静かに消え去り鳳凰紅蓮丸は沈黙した。

テラーズ・キャノンが直撃した瞬間――飛鳥は『ある女性の声』を耳……心で聞いた。


『紅蓮の飛鳥……。まだ、希望は残ってます』


『あ、あなたは!?』


飛鳥の《心》に直接語りかける清らかで優しい声。


それは以前、飛鳥が夢の中で出会った女性だった。


彼らは『運命的』な再会を果たすのだった。


『約束とおり再会できましたね? 飛鳥……』

『はい、そのようです……』


その心地い囁きに飛鳥の心は満たされているがそんな場合ではなかった。


――この瞬間にも現実の時間軸の理から逸れた意識空間外の通常空間では

地球の仲間たちの悲痛の叫び声がこだましていた。


「あ、飛鳥君――!」

「紅蓮の飛鳥ッ!!」


殺戮の衝撃波が《鳳凰紅蓮丸》に触れた瞬間マリアと命は声を出させずにはいられなかった。


二人とほぼ同タイミングで蘭大尉からも悲鳴が聞こえていた。

また、鳳凰紅蓮丸に搭乗している剣持博士の愛すべき息子と妻の名を叫んでいた。


「な、渚――! 飛鳥!」


現実の時間軸の“理”から外れた空間で飛鳥は悲壮の声とシンパシーを感じていた。


『飛鳥。あなた方、地球の人々は本当によくやってくれました。

当初、無力に等しかった力でマリアの侵攻からはじまり……。

黄金騎士たちとの激闘。その都度成長し地球の人々の未来を飛鳥が切り開いてきました。

ただし、結果的に私はなんも罪もなにもない剣持一家に酷い仕打ちをしてきました……』


『これまで、僕は母さんの影響で剣道に一筋でした。

それと娯楽によって生活に満足していました。もちろん、翼や命ちゃんがいてくれたからです。

僕は一端の高校生として幸せでした。

それでも、僕は逃げられない“運命の糸”によって紅蓮丸と出会いました。

僕は……心の底から紅蓮丸に乗ったことはよかったと思っています』


学校生活……飛鳥は幸せで青春を謳歌していた。

だけど、飛鳥はどこか母の面影を探し求めて生きていた。

そうした、闇を心に抱えていた。


しかし、彼は忘れかけていた温もり、母性の愛を思い出す。


紅蓮丸との出会いで飛鳥は失っていた『親子の絆』を取り戻した。


紅蓮丸が様々な人を飛鳥と巡り合わせ心を通わすことで飛鳥は成長できた。


――だからこそ、飛鳥は女性が口にした謝罪の言葉に同調ができなかった。


『僕は一度たりとも紅蓮丸に乗ったことに後悔したことありません。

きっと、これからも母さん――鳳凰紅蓮丸とともに世界を守ります。

その上で素敵で優しい未来を切り開いていけると信じています! ですから、僕はまだ死ねないッ!!』


清らかで美しい女性は飛鳥の嘘偽りのない言葉を聞いて決心できた。


『やはり、飛鳥。あなたに《鳳凰紅蓮丸》を託して正しかったかもしれません。

渚や剣持博士も浮かばれます。

飛鳥――もうあなたなら紅蓮丸の『本質』を理解していると思います。

あとは本能に従って、解き放つのです……!』


美しい声を持つ女性は、飛鳥の成長を喜び祝福した。


前回、彼女は幻想的な意識下の空間で“飛鳥の中”に宿っていた志――《鳳凰紅蓮丸》の真の力が、

この瞬間、解き放たれようとしていることを予感していた。


そして、飛鳥の意識下は現実の戻り、渚の声によって目を覚ます。

そこでふと、彼の雰囲気に渚は疑問を抱いた。


「あ、飛鳥。なんだか、少し成長したわね? お母さん、びっくり~!」

「はは。愛する息子は転んでも、ただじゃ起きないよ!」


そのあと、飛鳥は静かに瞳を閉じて、一呼吸し己を落ち着かせた……。

飛鳥は完全に鳳凰紅蓮丸と一体となった。


限界を超えた極限状態で、飛鳥と鳳凰紅蓮丸はさらなる次元へと飛翔したのだった――。


「はぁぁぁああ!!」


飛鳥はエンゲージリンク・システムが描くビジョン超えて『覚醒』する。

飛鳥と連動している鳳凰紅蓮丸にも変化が生じた。

眩い碧色の光に包まれ、機体は紫色のオーラが発現された。


殺戮の閃光たるテラーズキャノンの螺旋の渦を掻き消した。


「あ、飛鳥これは一体なに!?」

「ぼ、僕にもわからない」


――すると、どこからともなくこの空域で飛鳥は再び、優しい音色に触れる。


『飛鳥に渚……。ついに鳳凰紅蓮丸の“真の力”を目覚めさせましたね……』


「そ、その声は――!」

「あ、あなたは!」


この優しい声を聞いて、ノアの第一艦橋にいる風間艦長と剣持副長は顔を見合した。


「お二人とも鳳凰紅蓮丸のその姿こそ、エンゲージリンク・システムの真髄なのです。

これまで、システムは飛鳥と渚を繋ぎとめる『絆』でした。

だけど、いまはそれを超えて、飛鳥は――鳳凰紅蓮は人々と“心”で繋がっております!」


すでに鳳凰紅蓮は活動時間の限界を迎え沈黙していた。

しかし、飛鳥の覚醒により息を吹き返した。


それでも、周辺機器や機体はボロボロでエネルギーも底を着いていた。


本来、身も心も満身創痍の飛鳥であっても、不思議と彼はいつもより感覚が優れている。

耳ではなく、心で自分を呼ぶ声や想いを感じ取れていた。


『あ、飛鳥君……。無事でよかった……』

『紅蓮の飛鳥。渚殿、ご無事で……!』


決して、聞こえるはずのない彼の名を呼ぶ命とマリアの声援が飛鳥に聞こえていた。

しかし、気のせいではなく直接飛鳥の心に伝わり、血液のように体全体を駆け巡った。


さらに飛鳥は彼女たち意外とも心が繋がった――。


『飛鳥君。いまだからこそ言える。

正直、最初の頃は疑心暗鬼だったわ。本当にこんな可愛らしい男の子が地球を救えるのかってね……。

でも、次第に成長していく、飛鳥君をまじかで見てきて、私は確信できたわ。

剣持飛鳥――紅蓮の飛鳥こそが人類、地球を救えるんだとね。だから、飛鳥君頑張って!』


『頑張れ、頑張れ! 君は主人公だ。

覚醒したら彼らを『圧倒』するのはお約束だよ。

俺と634の分の【元気】を分けるから、頼んだよ紅蓮の飛鳥!』


第一艦長でいつの間にか寄り添っている蘭大尉と林技術長。

二人は弟のように可愛がり、面倒見てきた飛鳥に地球の希望ある未来を託し願った。


「蘭大尉に林さん……。それに634君もありがとう」

「あらら、藤崎さんと林君ったらいつの間に……。ふふ」


飛鳥は胸に手を当てて蘭大尉たちの熱い想いを感じ取った。

渚も飛鳥同様に覚醒状態にあった。

それゆえに、蘭大尉と林の微妙な関係性の進展を見抜いていた。


そして、清らかで優しい声の女性は飛鳥と渚に最後の想いを告げた。


『飛鳥に渚。それこそが、鳳凰紅蓮丸の力のあり方なのです。

いま、飛鳥を呼ぶ声――。想いがダイレクトに感じ取れるのです。

そして、飛鳥。体の奥底から湧き上がってくる力を創造し、

鳳凰紅蓮丸で具現化させて殺戮の兵器を破壊して!』


飛鳥は言われたように自分が思い描く力のあり方を念じて、感情を爆発させた。


『紅蓮創聖剣――!!』 


そう、飛鳥が宇宙へ高らかに告げると《鳳凰紅蓮丸》が飛鳥に答えた。


胸部に燃えさかる光の剣が出現したのだった。


「こ、これが――。みんなの期待や思いを『具現化』させた力なんだ!」

「な、なんてエネルギーかしら! これは、凄いわッ!」


不思議と光の剣には威圧感がなかった。

紅蓮創聖剣を具現化させた鳳凰紅蓮丸のエネルギー係数は人知のなりわりをすでに超えていた。

第一艦橋の命は、鳳凰紅蓮丸のエネルギー数値を計測して驚愕した。


「う、嘘……。999999999999999……」

「……飛鳥ハン。これこそ、無刀流の境地なり……!」


超新星機関の解放を二度行い、限界点を迎えた状態で鳳凰紅蓮丸は理論上、無限のエネルギー得た。

通常、超新星機関の通常稼働なら、機動機甲兵器は補給なしで活動ができた。


しかし、あくまでも戦闘や超新星機関の解放を抜きにしての条件下ではあった。

だが、鳳凰紅蓮丸は仕様を超えて“真の無限エネルギー”を証明させた。


「な、なんだあの光は――!」

「予想外とはまさにこのことです」


さすがに鳳凰紅蓮丸――飛鳥の覚醒にザードは動揺を隠せずいた。

エリス姫も超兵器を撃ち破った紅蓮の煌めきに愕然としている。


それでも、エリス姫は悪あがきにとして危険を顧みず、

出力十パーセントあまりのテラーズ・キャノンで覚醒した鳳凰紅蓮丸を追撃していた。


『飛鳥、あの子……。エリスを止めてあげて。

それができるのが、いまのあなたちと鳳凰紅蓮丸だけだから。

その光の先で――私、エミリアはお待ちしております……!』


ついに、明かされた清らかで優しい声の持ち主、エミリア。

彼女は悠然と最後にそう言い残しこの戦いの真実が語られる最後の道しるべである、

銀河帝国メルディアスまでの道を飛鳥に示したのだった。


「エミリアさん……。不思議と初めて聞いた名前に感じなかった。

きっと、僕たちは顔を合わせさせすれば、すべてのことが分かる気がする……。

母さん、行くよ!」


「エミリアちゃんも決心したのね……。

えぇ、飛鳥。了解よ!」


飛鳥は胸部に出現している燃えさかる紅蓮の剣を両手で握り締め振り下ろした――。


瞬く間に殺戮の波動は『紅蓮創聖剣』に斬り裂かれ、

聖なる紅の閃光によりテラーズ・キャノン全体を破壊した。


そして、そのまま『紅蓮創聖剣』はエリス姫を斬り裂いた――。

肉体的に損傷はなく聖なるヒカリとなった、飛鳥の意思がエリス姫の精神と触れ合った。


『エリス姫。もうあなたなら、わかってるはずです!』

『……な、なにをこの期におよんで……』


直接、語り合ったことがない彼らだった。

覚醒を遂げた鳳凰紅蓮丸の創聖剣を伝って、飛鳥とエリス姫は互いの過去と思想を共有した。


『あなたも大切なご両親を……。でも、身近に“唯一の家族”がいてくれた。

確かに銀河帝国メルディアスは破滅の道を歩んでいます。

それだったら、始めっから地球への友好的で平和な解決方法があったかもしれません!』


『貴殿も愛すべき者を失った悲しみや苦しみを経て、ここにいるのだな……。

それは違うぞ、紅蓮の飛鳥。いままで、地球人は我がもの顔で蒼き星を支配していた。

でも、違うのだ。……いいだろう、紅蓮の飛鳥よ。会いまみえようとしよう』


――いよいよ、エリス姫と飛鳥の対話が始まる。


その役目を終えた『紅蓮創聖剣』は鳳凰紅蓮丸の胸に納められた。

かくして、飛鳥は銀河帝国メルディアス本星へと突入した。


機動戦艦ノアの第一艦橋にいる人々は、紅蓮の少年の帰還を祈った。


「飛鳥君……。お願いだから、無事に還ってきてね……」


飛鳥が銀河帝国メルディアス本星の格納庫に到着すると鳳凰紅蓮丸の輝きは失われつつあった。

例えると、夏の終わりを静かに告げる蛍の命の輝き。ようはウルトラ○ンだった。


「飛鳥。どうやら、鳳凰紅蓮丸は今度こそ、限界のようだわ。

私は万が一に備えて、脱出するとき用のために、鳳凰紅蓮丸のエネルギーを供給しなくてはいけない。

生体コアである私がこの子と一緒に眠りにつけば、少しだけ回復できるはずよ」


「うん。鳳凰紅蓮丸だけではなく、母さんにも無理をさせちゃったね。

ここからは、僕だけで大丈夫だよ。きっと、ここでは武器さえもいらないと思うんだ。

だからさ、安心して僕の帰りを待てて!」


飛鳥は渚に帰還を誓った。

彼は母から離れエリス姫が待つ玉間へと歩み始めたのだった。


再会して、このときまで意識したことがなかった愛息、飛鳥の後ろ姿の背中。

いつしか彼女が愛している夫、十三博士を彷彿させるほど、

逞しく成長していたことに母親として、喜びを噛みしめ、渚は無情の雫を頬に垂らしている。


その後、静かに鳳凰紅蓮丸と生体コアの渚は一時のやすらぎの眠りへとついた。

――その頃、格納庫から出発した飛鳥の歩みはいたって順調だった。


はじめてきた場所にも関わらず、迷うことなくなにかに導かれるまま、

本能と『魂』がエリス姫へと飛鳥を突き動かしていた。


そして、螺旋状の階段を上りきり、エリス姫が待ち受ける玉間の扉を開けた――。


「え、エリス姫……」

「よくぞ、ここまで来たな紅蓮の飛鳥よ……!」


緊張感漂う雰囲気で対面した二人。

飛鳥と目線が交わり合うと、エリス姫は不敵な笑みを浮かべた。


飛鳥は飛鳥で心の中が覗けない不思議な表情をしている。

さらに彼はエリス姫の元へと近付いて行った。


「マリアさんや父さんたちから、あなたのことは聞いてました。

いますぐ、争いを辞めて地球と和平を結んで下さいッ!」


「ふっ。貴殿の聞いていた話よりも、我は容姿端麗だろ? 

それは、できない相談だな。そもそも、銀河帝国メルディアスと蒼き星・地球との関係は――」


開口一発、飛鳥は王手に出るもエリス姫によって拒絶された。

しかも、彼女は飛鳥に今回の戦いの意味と【歴史】を語りはじめた。


――その頃、ザード・時田と対峙しているマリアたちは窮地に追い込まれていた。


「もう時間の問題です。だけど、楽に死なせはしませんよ」

「チっ。つくづく、ムカつく野郎だぜ……!」


「緋音、彼の前で自分を見失うと思うツボよ! ここは耐えて」


人々の心を魅了した《鳳凰紅蓮丸》の創聖のヒカリによって、一時マリアたちはザードたちを押し返した。しかし、緋音率いるグランドアースの健闘も虚しく戦況は劣勢だった。


時田の勢いは留まることを知らず時間の枷が迫るに連れてより一層研ぎ済まされていった。


だが、ここにきて『聖断のガンマ』が躍動しこの戦況を持ち堪えさせていた。


「ったく、それでも聖槍と聖騎士様かよ? しょうがねぇ。ちょいと俺んとこきな!」

「な、なんだというのだ!?」


突拍子もなく、ガンマはマリアとシンを呼びつけた。

ただ、シンだけは彼が発言した意味を理解していた。


むしろ、その思惑が違ったらお手上げの状況ではあった。


その流れでシンは言葉ではなく、ゲイボルグ・ラーハルトづての目線で彼がやろうとする意思を伝えた。

マリアはシンから視線を受け冷静になり、意味を汲み取り集結した。


「それでガンマよ、どうするのだ……?」

「そうやって、鈍感キャラを押しにやっていくつもりか? 先が思いやられるぜっ。

まぁ、俺もついさっきはじめて知ったことだけどよ、俺様の機体エネルギーをだな。

お前らに分けてやる。だから、急いで手を出しやがれてんだ!」


三人がそうこうしている間にも、時田のデルタサムライは猛追していた――。

すかさず、三機はガンマを中心とし手と手を取り合った。


すると、悲鳴を上げていたゲイボルグ・ラーハルトとエクスカリバー・クィーンナイトは、

みるみるエネルギーが供給されていった。


いまにも、枯れてしまいそうな花が天からの恵みを得たように二機は蘇った。


「これで、イケるはずだ! いつまでも、手を握ってねぇでお前らは時田をやれ。

俺様はザードをこの手でぶち殺すぜっ! それじゃ!」


「あぁ、すまないガンマ。恩にきる!」


再び黄金の三機は散らばり、マリアとシンたちは時田へ反撃を開始した。

先ほどガンマはハン○ーハンターで言う総オーラ。


すなわち、エネルギーの半分を姉弟に分け与えさらに分配させていた。

これらはすべて、短期決戦に向けての手段だった。


そのため、聖騎士マリアを破滅から救うべく残酷な未来が待ち受けていても、

彼女は真の男の生きざまを見届けなくてはいけない。


「ほう……。ガンマ。素直にあなたを侮っておりました。

それだけできるのならいま一度、私が“あの方”へ取り合って差し上げましょう!」


「この期に及んで、てめぇ~に褒められるとは俺も焼きが回ったな……! 

だけど、ザード。俺ははなっから、アイツに対して誰に対しても忠誠心はねぇ。

俺は俺自身のやりたいように気に喰わない奴を八つ裂きにしたいだけだ!」


ガンマはガーベルサイズの自慢の強大な【鋏】で、スパニッシュトライデントを撃ち抜いた。

およそ、生身だったら、骨の隅々まで響き渡る鈍い衝撃と痛みの二重演奏。


「ガンマ、素晴らしいです。

ただ、私のスパニッシュトライデントをよくも傷つけてくれましたね。

お遊びはここまでとしましょうか……!」


「やっと、本性見せやがったな……!」


あの非情なザードですら、ガンマの改心ぶりに驚きを隠せなかった。

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