表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河機動戦記~紅蓮の飛鳥~  作者: 恥骨又造
第三章:『破壊と希望のヒカリ』篇
52/59

最上の一撃

マリアは真剣な眼差しでグースたちに問いかけた。

彼らも彼女の言葉にそっと耳を傾けた。


彼らの中で一番気難しい聖輪のショウが最初に答えを出した。


「聖騎士マリアよ、姫様を止められるのは俺たちしかいない。

俺は――地球の戦士たちと共にテーラズキャノン破壊の協力をする」


「だな。このままだと、本当に【死の星】になっちまう。それに残りの騎士たちも守らなくては!」


現時刻をもって、ザードの指揮下にいた黄金騎士たちは己の意志で呪縛を断ち切った。


まだまだ戦力が足りていない地球にとって少しだけ希望が見え始めてきた。


「ふふ……。あなた方も哀れな地球人に味方するのですね。

ですが、それも立派な黄金騎士として一つの『権利』でしょう! さぁ、ナナミ。あなたはどうします?」

「ニャニャ! 私は自由気ままに楽しく戦いたいだけ。まぁ、テーラズキャノンを破壊する方が楽しい! てな訳でザード、バイバイ!」


ザードの元から、黄金に光輝く騎士たちが離脱していった。


ついには、ザード陣営の黄金騎士はデルタサムライの時田のみとなった。


「みなさん、そんなに死に急ぎたいですかね……。

大人しくしていれば『あの方』から永遠の命を授かれたかも知れないのに……。

どっちみち、遅かれ早かれ、聖騎士長バーンやマリアさんたちを始末していましたけどね……!」


「……それもまた、黄金騎士の性だ。

俺は“未来永劫”この命が尽きるまで戦う。だから、敵が誰であろうと容赦はしない……」


これで、ザード側の黄金騎士は二人だけとなった。

ノア艦隊は一時と言えど、黄金十二騎士中の八人が戦線に加わった。

しかし……聖痕のナナミと、紅蓮の飛鳥の間に不穏な空気が淀んでいた。


「ニャハハ。どうやら、望まない者だったかにゃん!? 特に紅いツノを生やした機動兵器からは、おぞましい気を感じ取れる」

「ナナミよ。貴様は紅蓮の戦士を侮辱しておるのか? ことによっては……」


紅蓮機甲隊の無燈・相原両者の『活躍』によって、

深手を負ったナナミは飛鳥へ皮肉を込めて挑発した。


その見え透いた悪態にバーンは騎士長として、怒りを覚えていた。  

それでも、飛鳥本人は落ち着いた声でナナミにこう返した。


「……バーンさん、いいんです。“僕たち”は本気でナナミさんの【ヴァイタルクロー】と戦って互いに『傷』を負うことになりました。でもそれはそれです。これから、テラーズキャノンを破壊するのに私情は禁物です……」


「そ、そうであったな……」


表面的に飛鳥は紅蓮機甲隊の隊長として、誠意を持ってナナミを対処した。

あらかた、ナナミが予想していた飛鳥の言動と違っていた。


少ない言葉のなかに、彼は有無を言わさぬ、殺気でナナミの野性を威圧させた。


以後、彼女はノアの艦隊に対して挑発的な行動や言動を慎んだ。


先ほどの飛鳥とナナミのやり取りはノア艦艦隊から見れば飛鳥は大人過ぎる対応に映っていた。


しかしながら、バーンは飛鳥の本質的な闘争心、激情の波動を感じていた。

それは凄まじく悍ましかった。


歴戦の『猛者』であるはずのバーンが、背中全体で悪寒を感じ取り、

氷のように冷たい汗を感じてしまうほどであった。


ゆえに横目にいた彼が飛鳥の心の奥底から溢れ出た激情を体感したからには

直接、紅蓮の波動を身に浴びたナナミの心境を察するのは容易だった。


先ほど彼女が口外した、悍ましさと殺意が彼女の全身を支配した。


ハンターハ○ターで例えるなら、ゴ☆さんがモ×ウさんに向けた殺意オーラすら軽く凌駕するほどかも知れなかった。


飛鳥が胸の内に秘めた思いを、どうにか噛み殺したところで、

銀河帝国メルディアスの『エリス姫』はプライベート通信ではなく、

オープンチャンネル――全域に肉声で告げたのだった。


「地球の戦士たち――機動戦艦ノアとその他の者たちよ。

貴殿たちはよくやった。その健闘を讃えて、矛を納めれば貴殿たちを『銀河帝国メルディアス』へ、

向かい入れようぞ。ただし、これは“最終警告”だということは肝に銘じておくのだな!」


「我々は地球から和平に来ました、エリス姫。しかし、その結果数多くの命が失われた。

だから、我々は地球にいる人や志半ばで散って逝った者たちの意思を受け継ぐ責任がある。

残念がらエリス姫、交渉は決裂です」


風間艦長は地球の総意を代弁した。


すると、せせら笑うエリス姫の声が聞こえた。


「ふはは。もう少し賢い人間だと思ってたのに残念だ。

いくら、機動戦艦とエンゲージ・リンクシステムを搭載した機動機甲兵器があっても、

この銀河帝国メルディアス最強の『力』の前では無力だ。

貴殿らは次の一撃により、肉体が滅び魂は蒼き星・地球に還ることになるだろう。

――そして、聖騎士マリアに黄金十二騎士たちよ! 

この際、お前らが決断したのなら何も言わん! 私は全てを手にするだけのこと……」


「エリス姫様ッ!」


マリアがエリス姫にとり付こうとしたが、エリス姫は一方的に彼女からの通信を遮断した。


これにより、二人が言葉を交わした最後のやり取りとなる。


「姉さん、俺たちも迷ってられない。前を向いて行こう! そうすればきっと道が開ける」

「あぁ、シン。元からそのつもりだ……。バーンたちも行くぞっ!」


黄金騎士たちは飛翔し、漆黒の機械生体を蹴散らした。


ノア艦隊も彼ら共に『最終戦闘』に突入したのだった。

両軍ともに激しく鋼と鋼をぶつけ合い、火花を散らした。


肉体の源である命を燃焼させ、見事に昇華させていた。


ザードも後方支援でなく、時田を従えて自ら武威を奮い地球の戦力を削いだ。

テラーズキャノンが発射されるまで間――停止した時の中で、もがき苦しむ悲壮感。


ゆずれない思いと願いが交差して、戦場に芸術的な花が咲き誇っていた。


そして、この戦いへ終焉を告げるであろう、運命の第二射のエネルギー充填が完了となった。


「ザードよ、奴らとの戦いを終わりにする。だから、くれぐれも余計なことはするな。

テラーズキャノンで地球の夢と希望を打ち砕く。

その後、地球の覇権をいただき、宿願の地球帰還を果たす……!」


「それは懸命な判断であります、姫様。我が方の戦力は著しく削がれております。

どっちみち、もうじき彼らと私どもの運命へ決着がつきます。ではよしなに……」


ザードはエリス姫に従い、射線軸からそっと逸れていき、フェードアウトしていった。

それに応じて、ノアも最終作戦フェイズへ突入した――。


「銀河帝国メルディア本星のシールドにて、超高エネルギーを確認! 

第二射のテラーズキャノンが充填された模様。艦長、それに飛鳥君……」


風間艦長は愛娘の命に頷いて、飛鳥に託した。


「ノアと発掘戦艦のテトラさんは、左右から援護射撃をお願いします。

真紅の緋音さんは、お任せしますが、一度休まれた方がいいかと思われます。

僕以外の紅蓮機甲隊は翼とルカの指揮の元、待機でお願いします。

僕はマリアさんをはじめ黄金騎士の方々と、テラーズキャノン破壊作戦にあたります!」


「さぁ、バーンやナックルズ。そして、シン。共に行くぞ――!」


鳳凰紅蓮丸を筆頭に黄金騎士たちはノア艦隊の前に出た。


「なんども言うが、チャンスは一度切りだ。だから、己の力をぶつけるんだ……!」

「シン君、気合い入ってるな! 俺はマリアちゃん、エリスちゃんのためにも❤」


宙域全体が緊張により、震えている状況下でもナックルズは陽気だった。


「ハハ。初めて貴様の洒落もいいと思ったぞ、ナックルズよ?」

「それは嬉しいね、バーンのおっさん。俺はやるぜ……!」


「ニャン。ナナミも少しだけ頑張っちゃう☆」


これまで、黄金十二騎士たち同士で会話はなかった。

たとえ会話したところで、業務的な会話のみだった。


「それでグースさんよ。俺たちこのあとどっすか?」

「おいおいジーク。それは俺の台詞だ。本来なら、この戦争は終わっていた。

今頃、どっかの星系を漂流して旅行気分のはずだった……。それなのに……」


ジークとグースは、腐れ縁の間柄であった。

戦場で一緒になっては他愛もない会話をし、いつも気を紛らわしていた。


ただし、聖輪のショウは気がかりだった。


「相変わらずお前たちは『緊張感』がないな。これから我らは、一世一代の作戦を行う前というのに!」

「まぁまぁ、ショウさん。そいつらは緊張感……シリアスとは程遠いキャラだからな!」


『お前が言うなしッ!!』


時折、死亡フラグが立っているキャラのように、意味ありげな表情を見せるナックルズ。

まだまだ、黄金の同志からはお調子者キャラとして認識されていた。


「ふふ、黄金騎士の子たちも十人十色なのね。ベリ~ナイスなキャラが沢山☆」

「渚殿。なんだか、聖騎士長として嬉しくも恥ずかしもあります・・・」


照れつつも誇らしげな表情をしているバーンを見て、渚は笑みがこぼれていた。

いよいよ、一同持てる力の全てを集結させる場面を迎えた――。


「みなさん、いよいよです。それでは、健闘を祈ります!」

超新星機関ビックバンエンジン解放リノベーション!』


七機の黄金騎士たちは、光の繭に包まれ宙域を震わせた。


紅蓮の戦士も母と波長を合わせ、最後の輝きに全身全霊、鳳凰紅蓮丸に注ぎ込んだ。

こうして、運命を共に過ごす八機は足並み揃えて、激動の三分間へと突入したのだった――。


「フハハ、まるで神話のような光景ですね。

まさに……圧巻の一言に尽きます。エリス姫様。さぁ、彼らに神罰を下すのです!!」

「貴様に言われるまでもない。テラーズキャノン……発射ッ!!」


エリス姫の念も込められた星々すら焼き尽くす殺戮の波動が放たれた。


「それじゃ、イキますか! 『バーストモード』。スター☆ シューティングバースト!!」

「吾輩もゆく……。ジャイアント・トマホーーク!!」


同じ形状をした強大なグレートブレーカーの拳と、キングアックスの斧の形状をした超エネルギー体が少し先行していった。


そして、同タイミングで高熱源エネルギーに対し、複数の超エネルギーの塊が八つ同時に集結した。

少しだけをときを遡る。


「狙い撃ち抜くぜ……! デビルデストロイヤー!」

「狙わなくても、当たるだろうにっ! ザ・キルマジック!」


魔弓と呼ぶのに相応しい禍々しい弓矢と、無数の狂気なナイフも同じ方向へ放たれた。。


そして、光り輝く黄金の姉弟も奥義を使用していた。


「姉さん……。俺たちでエリス姫様を止めてだから……。

ゲイボルグ・ラーハルトよ、頼んだぞ! 『レイボルグ』」

「元より、迷いは捨てた身。闇を滅するシャイニングブレード! 

はぁぁあ――、ヴァーチカル・ミーティア――!!」


神だけではなく、魔神すら殺戮してしまうであろう聖槍シンの奥義。

彼の姉である“聖騎士マリア”は優しさの中にある思いが流星のように『心』から零れ落ちた。


それは、まるで涙のようにも思えた。


「エリス姫、私はあなたにも“忠誠”を誓っておりました……。

ですが、このショウは『あのお方』へも義があります。

ダークネスデスサイズよ! 戒めのカタルシス――!」


「いちいち、ショウは重いニャン。

私は殺たいヤツを殺るだけニャン❤ アグレッシブ・ダンシング!」


――刹那、黄金の七騎士たちが最大奥義を発動していた。


コンマ数秒遅れること、鳳紅蓮丸の飛鳥と渚は、最大攻撃力を放つ準備を終えていた。

ただ、飛鳥は鳳凰紅蓮丸の型に疑問を感じている。

必殺の『二刀流』である太陽刀と、月詠刀を鞘に納めてしまっていた。


「母さん。ここまで、なりゆきで刀を納刀してしまったけど大丈夫? そもそも、鳳凰紅蓮丸って、超新星機関解放中は、機体強化による性能で圧倒するはずだよね?」

「ピンポーン! だけど、それだと鳳凰紅蓮丸と言えど焼け焦げちゃうわ。だからこそ、実は接近戦特化機の最大武器が、遠距離武器だったパターンよ☆ 弓矢にありったけのエネルギーを込めて、あれにぶち込むわよ!」


某ロボット大戦だとたま~に存在する系統の機体。

鳳凰紅蓮丸は付け焼刃であっても、他の黄金騎士の一撃にも見劣らない豪炎の一矢であった。


『大鳳凰天翔――!』


鳳凰を彷彿させる《鳳凰紅蓮丸》の弓矢と、黄金騎士たちによる“奇跡”の同時攻撃がテラーズキャノンと衝突した……。


その衝撃は凄まじく、ノア艦隊が相殺したエネルギー係数を軽く凌駕していた。


小惑星やデブリ群を一瞬にして融解させ、宇宙機械獣の残骸もろとも宇宙と一体化した。

宙域全体は震えあがり、星が砕けて、死に逝き新たな命が誕生する――ビックバンの前兆のようだった。


静寂の中数分後……ようやく、モニターが回復した。

飛鳥はいの一番に銀河帝国メルディアス本星を、赤い瞳に移し込む。


「そ、そんな……馬鹿な……」


飛鳥の一言が全てを物語っていた――。


八機の戦士たちによる、同時攻撃でテラーズキャノンしかり、

銀河帝国メルディアスを【守護】しているシールドは七割ほど損傷していた。


それでも完全にテラーズキャノンの脅威を排除した訳ではない。

こうしている間にもエリス姫は周囲の反対を押し切り、破滅の第三射の充填を開始していた。


幸なことに八機の戦士たちの機体には『ある異変』が生じていた。

本来ならば、超新星機関を解放するとほぼ無限に等しいエネルギーを糧にして、

飛躍的に機体性能を向上させる。


ゆえに一度、発動活してしまうと活動時間に制限がかかる諸刃の剣。

ましては、最上の一撃を放つと、機体は完全に機能を停止してしまう仕組み。


先ほどの特異点現象の超エネルギーの波動により各機、五%~十%ほどエネルギーが残った。

だが、八機は衝撃によって大きく後退し、超新星機関の解放も解除されていた。


「ぐっ。こ、これほどの衝撃とは――先ほどとは比べ物にならん。

まだテラーズキャノンは撃てる。充填急げ!」


「くふふ。まさに怪我の功名と言う訳ですね、

聖騎士長バーンさん? ですが、死に体も同然です。私が直接、手をかけて差し上げます!」


満身創痍の黄金騎士を前にしてもザードは心弾ませていた。

彼らを死の淵に追いやるべく、スパニッシュトライデントのザードと、

時田のデルタサムライは猛攻をしかけた。


二人も超新星機関を解放させた。

ザードは今度こそ、テラーズキャノンの餌食にさせようとした。


「ザードに時田よ……。確かに我らは偶然にも一刻の猶予を得た。しかしだな、そう長くもない」

「あぁ、そうだなバーン。俺に一つ『提案』がある」


虫ような声で聖輪のショウは、バーンに起死回生の作戦を投げた。

バーンはショウからの提案を承認したことにより、黄金の姉弟に銀河帝国メルディアスの運命を託すことを決断した。


「マリアにシンよ、よく聞け! いまから、我らは二人に残った全エネルギーを託すことにした。

とにかく、賛同する者は彼らの元へ集え!」


バーンの言葉に賛同したナナミ以外はこの言葉に乗っかった。


「ニャン!? な、なぜマリアとシンだけニャン?」

「限られた時間の中でザードと時田を迎え撃つには、共闘が必須なのだ。いまこの場で、それができるのは二人しかいない。ゆえに我はショウの博打に乗った! だが、紅蓮の飛鳥。貴殿には一番の試練を残してしまう。許してくれ……」


機動機甲兵器騎士タイプ……黄金十二騎士が搭乗する機動機甲兵器は兄弟機。

唯一、彼らはエネルギーを共有できる緊急措置が備わっている。


こればっかしは、鳳凰紅蓮丸には備わっていない裏仕様であった。

飛鳥はショウの提案に乗り気じゃない“ナナミ”に檄を飛ばした。


「バーンさん、僕らは諦めません! だから、安心して下さい。

ナナミさん。どうか、マリアさんとシンさんを信じて下さい! 僕はお二人に対してどうすることもできません。でも、あなたにはできます!」


「そ、それは……」


飛鳥の純粋な投げかけによって、ナナミの心が動き出した。


いままでの人生で、ナナミは誰かに頼りにされたことがなかった。

彼女自身、飛鳥の言葉に耳を傾けて、心が動いてしまったことが不可解だった。


それは、彼女が初めて抱いた心の葛藤であり、解放だったかも知れない。


ナナミが加わり、五人の黄金十二騎士たちはマリアとシンに未来を託し機能を完全に停止させた。


「行くぞ、シン! 『紅蓮の飛鳥』テラーズキャノンを任せた……!」

「わかってる、姉さん! 頼んだぞ紅蓮の戦士……飛鳥!」


狂騒の二重演奏、ザードと時田を黄金の姉弟が遮った。

その四機との間にできたわずかの隙間を鳳凰紅蓮丸が突破したのだった――。


「彼らにも熱い友情……命を懸けて他者を思いやる気持ちが備わってたのね? ただ、私たちがピンチなのは変わらないわ。鳳凰紅蓮丸に残されたエネルギーは少しで火器兵器はジリ貧……」


「僕は少しだけ彼らを羨ましく思っちゃったよ、母さん。えへへ。

いっけね僕ったら、紅蓮機甲隊の隊長なのにね☆ だけど、命ちゃんや翼。

蘭大尉や父さんたちも僕らを信じてる! だから母さん。たとえ、どんなに可能性が低くても、僕は立ち向かうよ。いざとなれば――」


鳳凰紅蓮丸も黄金騎士たち同様に機体は著しく損傷していた。

そのため、紅蓮の弓矢である『大鳳凰天翔』を撃てず、二度と鳳凰が羽ばたくことができなかった。


黄金騎士たちから思いを託された時点で飛鳥は《鳳凰紅蓮丸》にて

直接、テラーズキャノンを破壊するしかないと理解していた。


このとき、飛鳥は孤独であった。

それでも、彼はエンゲージリンク・システムを通じて、仲間たちの『想い』を感じていた。


その姿に渚はどこか遠いところを見つめ、優しい表情をしていた。

しかし、早くもザードと時田がマリアとシンを圧倒し始めた――。


「本来のあなたたちならば、このザードは容易いでしょう。ただ現実はそうはいきません。その傷ついた機体と心。私と時田を討ち取るどころか、相打ちも叶わない。ですから、お二人は降参して私と共にあの“お方”へお仕えしなさい!」

「……ザード。確かにお前が言うように俺も姉さんも、すでに限界を超えている。

ただ、お前のように裏でコソコソ暗躍し、エリス姫様を毒した貴様には屈しない」


「それでこそ、私の弟であり『聖槍のシンだ。』私はお前の野望を阻止し、エリス姫様も止める。

――だから、これ以上、邪魔立てしないでくれッ!」


マリアが一縷の希望を乗せた聖剣がザードの矛を制止させた。

がしかし、パワーが足りず切り崩されてしまう。


すかさず、ザードは正確無比な矛捌きでスパニッシュトライデントはマリアが搭乗している胸部のコクピットを突いた。


間一髪、シンが搭乗しているゲイボルグ・ラーハルトの二本の槍がザードの矛先の威力を抑え込んだ。

どうにか、エクスカリバー・クィーンナイトは無傷だった。


「チっ。もうあなた方の美しい“姉弟愛”にはコリゴリです。時田、あとはお任せします。

私は剛情で傲慢な聖騎士長、バーンを血祭りに上げますので!」


「……承知した」


そう一言、時田はザードに返答し黄金の兄弟を斬り裂いた。

ザードは他の黄金騎士に一切目もくれず、躯同然の【バーン】のキングアックスを

目の前にして感傷に浸っていた。


彼らは『修業時代』から幾度も争い合っていた。


しかし、バーンが聖騎士長になってからは、決定的に二人の歩む道が違くなり、

決して混じり合うことがなくなる。


そうした経緯があって、ザードは黄金騎士の中で唯一、

銀河帝国メルディアスの政への進出を果たすことになる。


それでも、どこかザードとバーンの間にはそれでいいと思っていたはずだったのに。

「バーンさん、聖騎士長……。これであなたとはお別れです。

良くも悪くも、私は心の底では愉しく思ってました。さようなら……!」


ザードのスパニッシュトライデントが、キングアックスを貫く瞬間、

完全に沈黙している黄金騎士たちの周りにレーザー光線が撒かれ停滞していた。


「思い出したよ。その身の毛のよだつ口調に黄金の三つ又の矛! あんたは私と因縁がある。

あの【宇宙機械伯爵野郎】と、うり二つだ。ピースに野郎共、戦闘準備だよ!」


グランドアース号はノア艦隊と連携していた。

緋音はなにかを思い出したように目の色を変えて艦隊から離脱していた。


そしてこの頃、発掘戦艦のテトラだけは、自分の星付近からこの空域に接近する物体に気づいたが、

目まぐるしく戦況が変化する場面で、目の前の戦闘に集中するため気にも止めなかった。


飛鳥と渚を乗せた鳳凰紅蓮丸はテラーズキャノンとの距離、百メートルを切っていたのだった……。


玉砕覚悟の飛鳥たちの気迫に圧倒され、エリス姫は出力三十パーセントの状態で、

テラーズキャノンの発射を強行させた。


これが、正真正銘――最後の一撃であった。


「飛鳥! 距離八十メートル先にテラーズキャノンが……」

「……母さん。どっちみち、僕たちが受け止めたないと、この射線軸上の黄金騎士たちや

ノア艦隊に甚大な危害が及んでしまう。だから……!」


飛鳥は《鳳凰紅蓮丸》の超新星機関の解放エネルギーを、ありったけ両手に流し込んだ。

剣持親子は殺戮の閃光を真っ向から受け止めるつもりのようだ。


「飛鳥に渚――! そのままでは……」

「あ、飛鳥君! 渚さんッ!」


二人の家族である剣持博士、幼馴染である命の悲痛の叫び声も届かず、

テラーズキャノンの第三射目が鳳凰紅蓮丸へ直撃した――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ