決意。
しかし、聖痕のナナミは彼らを見向きせず、ノアへの追撃をやめなかった。
「にゃ~。この船しぶとい❤ それにあたしの周りを飛ぶ、ポンコツどももそろそろ、
うるさったいニャん!」
「隊長は……こんな奴らをいつも、相手してたのか……!」
相原と無燈による、挟み撃ちは失敗していった。
それでも、確実にナナミの集中力を削ぎノアへの手数が減っていた。
結果的にヴァイタルクローの脅威を抑え込む形となった。
目に見えて聖痕のナナミは苛立ちを見せはじめる。
次第に黄金の豹は野生の牙と爪を剥き出しにしていくのだった。
「おし。イケる! このまま、俺たちで黄金騎士の攻撃を止める。
そうすれば、ノアのバリアは持ち堪えられる」
「そうですね、無燈さん。残りの紅蓮機甲隊の隊員も安心して戦えます!」
この二人の勢いが、各部隊へと伝わり――地球を守護する戦士たちは息を吹き返した。
ルカやマリアでさせ、彼らの勢いに心を焚きつけられ乗せられた。
しかし、その勢いは長続きしなかった。
「認めるニャん。下手な【銀騎士】より使える。
でもニャ、あたしは黄金十二騎士の一角を担う者。
アンタらには、退場してもらうニャン☆」
ようやく、ナナミは無燈と相原を敵と認識した。
それゆえに獣として、ヴァイタルクローは爪を剥き出し、無燈が搭乗する神風タイプを斬り裂いた。
その威力は凄まじく、一振りで神風の右肩を崩壊させた――。
「だ、大丈夫ですか! 無燈さん……」
「ゆ、油断したぜ……。いや、正確には追いつけなかった。これが『黄金騎士』の力……!」
ナナミはヴァイタルクローを通して、凄まじい闘気の中にも、野生のオーラを持ち合わせていた。
彼女は防御を捨てヴァイタルクローの爪撃により、彼女自身も獰猛さを増しみるみる瞳が鋭くなっていった。
「だけど、致命傷じゃない。相原……このまま俺たちでアイツを引き付けるぞ」
「りょ、了解です……!」
二人は決死の覚悟で、このままナナミを迎え撃つ。
「チっ。量産型の癖に生意気ニャン! 先のボロい方を葬る……」
ナナミは標的を絞り、無燈に闘気を剥き出しにするのだった。
そして――、ヴァイタルクローは臨戦態勢の獅子の如く機体を前かがみに縮め丸めた。
野生のネコ科生物が見せる獲物を仕留める動作そのものだった。
「ビースト・スタング!!」
――次の瞬間、黄金の豹が神風タイプに覆いかぶさった。
ヴァイタルクローの両手の爪は神風の両肩をいとも容易く貫いた。
さらに口部がパージされ、牙が剥き出しになった。
その体勢のまま、鋭利な牙で神風の頸根っこの部分に突き刺さった。
「ぐっ! し、しまった……!!」
「む、無燈さん……!」
相原は神風の悲惨な姿を目の当たりにして、絶句してまった。
神風の姿は、まさに野生の豹に襲われた人間の姿そのものだった。
無燈――神風はヴァイタルクローの牙と爪が機体にめり込み一切身動きが取れない。
不知火の相原は助けに行くにも、つけ入る隙がない状況下。
そんな絶望的な中で、無燈のコックピットから飛鳥へ通信が飛んだ。
「紅蓮の飛鳥……。隊長……。それにみんな……」
「む、無燈さんしっかりして下さい!」
ヴァイタルクローによって装甲板が斬り裂かれ、コックピットまで到達していた。
ただ、無燈は危機的な状況であっても冷静だった。
飛鳥は無燈の声を聞いて、胸が張り裂けそうになる。
「……そんな、情けない声でどうするんだ『紅蓮の飛鳥』。
みんなが心配しちまう。俺はまだ大丈夫だ。俺は……なにも、守られるためにここに来たわけじゃない。
地球に住む大切な人のために戦っている。でも、滝本や散っていた奴らの意志は紅蓮の飛鳥や、隊員たちが受け継ぐ……。相原、俺が一瞬だけスキを作る。だから、絶対に無駄にしないでくれ」
無燈は悟りを開いたかのような、口調で飛鳥へ静かに語りかけた。
僚機の相原には口数少なく訴えた。
「……了解です……」
「無燈さん……! 相原君も……」
飛鳥の意識は完全に二人へ向いてしまった。
その刹那――剣持親子に戦慄が走った。
この男の前でその行いは“死”を意味する。
「そんなに仲間が大事か……。お前は戦士ならば割り切れ。
でないと、お前はアイツらより先に俺の手によって殺されるぞ!」
「一瞬の油断が命取りになる。こうなれば……母さんッ!」
飛鳥は早くも渚に『ある承認』を得ようとする――。
「駄目です、飛鳥隊長! 超新星機関の“解放”は温存しておいて下さい。
無燈さんと僕を信じて下さい!」
相原は飛鳥の奥義発動へ、待ったをかけ『彼ら』を停止させた。
「ありがとうよ、相原……。俺にはチャンスがある」
機体が軋み鋼の装甲が潰されても、無燈の“眼”は諦めるどころか生気が宿っていた。
無燈は力を振り絞り、神風タイプに装備されている刀を取り出した。
逆手にして刀を握り、刃をヴァイタルクローの脊髄部分を突き刺した。
「アンタは強い……。だけど、接近し過ぎた。己の力を過信した……」
「……!」
先ほどまで死に体同然の神風だった。
それでも、搭乗者の無燈が復活を遂げたことにより共鳴し、
神風はヴァイタルクローの黄金装甲を貫き、衝音が響いた――。
無燈の言葉とおり、接近した状態ではヴァイタルクローのビースト・スタングは諸刃の剣だった。
こうなってしまっては、どちらが先に敵を離し、諦めるかの根競べ。
潜在能力的には“黄金十二騎士”ヴァイタルクローのスペックと神風では雲泥の差。
それでも、無燈はナナミと互角以上に渡り合っている。
実際、無燈の覚醒はナナミの予想を大きく超える展開だった。
それ故に、留まることを知らない神風の刃は脊髄部を抉り突破していた。
――ついに神風の刃は“聖痕のナナミ”本人を捉えた。
その衝撃により、彼女の黄金の鎧は振動していた。
「へへっ。このままだと、よくて相打ち。下手すれば俺の刃がアンタを刺すぜ……」
「にゃ! 地球人の分際で……。しかも量産型の鉄クズごときに……!」
鬼気迫る無燈の覇気により、ナナミは慄き自分の意志とは裏腹に機体の出力を緩めてしまった。
無燈は見逃さなかった。いまや神風と一心同体に彼らは千載一遇の好機に吠えた。
「相原――! いまだッ!」
無燈が叫ぶ最中、すでに相原はヴァイタルクローへ突っ込んでいた――。
黄金騎士であっても、避けられない奇跡のタイミング攻撃。
相原が搭乗する不知火タイプが一閃の弧を描き、黄金の衣を弾き飛ばした。
「……それでいい」
「こ、このクソどもが……! 本気で起こったニャン」
そして、その攻撃で機体が緩まった無燈は、損傷を気にも止めず攻撃に転じた。
相原とツインアタックを決めて、ヴァイタルクローの左腕を斬り裂いた――。
愛機ヴァイタルクローが損傷したことにより、彼らはナナミの逆鱗に触れた。
喜びもつかぬ間……。
猛獣の如く、ヴァイタルクローの攻撃により、無燈が搭乗している神風タイプは躯と化した。
同じくナナミのプライドを傷つけた、相原の不知火タイプも甚大な被害状況だった。
さらに追撃を行い、ナナミのヴァイタルクローは標的を不知火タイプの相原へと狙いを変えた。
怒号のナナミは不知火のコックピットを貫く悲痛な一撃を放った。
「相原。まだだ、お前はまだだよ……」
絶対絶命の瞬間――。
相原は時が停止したかのような錯覚に陥る。
その瞳には傷つき、ボロボロだった神風タイプが彼の視界を埋め尽くした。
神風タイプは不知火の盾となって、ヴァイタルクローの攻撃を機体で受け止めた……。
神風タイプが盾になったことにより、ヴァイタルクローの威力を完全に殺していた。
しかし、黄金の豹の右手は確実に神風タイプを貫いて聖痕をつけていた。
『む、無燈さん……!』
神風タイプは衰弱し切り、いまにも爆発しそうだった。
無燈は意識が朦朧とするなかで、飛鳥へ語りかけた。
「……隊長、すまない。俺はここまでのようだ。
地球に帰ったら、俺の生き様を家族に伝えてくれ……」
「む、無糖さん! いま行きます!」
「諦めろ。あれは敗れた者の姿であり、あの男の生き様だ。
貴様はその眼で部隊の長として――瞳に裂きつけろ……!」
ショウが邪魔立てし、飛鳥は無燈の言葉を聞くことしかできないでいる。
無燈は飛鳥に別れを告げる……。
「紅蓮の飛鳥……。いや、剣持飛鳥。アンタは俺より、年下で青い奴だと思っていた。
だけど、どこか心の奥底ではアンタを尊敬していた。あとは……頼んだぜ……!」
『無燈さん――!』
無燈が搭乗している神風は爆炎に包まれ、彼の命は宇宙へ昇華された。
その爆炎からは、煉獄の炎すら凌駕する、憎悪にまみれた黄金の豹が現れた。
彼女はさらなる殺戮を行うため、相原の不知火タイプに向かって聖痕の一撃を放った。
ヴァイタルクローが不知火に触れようとしたとき、緑色のビーム砲が阻んだ。
「どうにか、間に合ったか……。すまない、地球のみなさん。私たちも戦いに来た!」
「あ、あなたたちは……!?」
後方から、機動戦艦ノアを超えた巨大な戦艦が見えた。
ノアより古代のテクノロジー感が出ていて、厳かなデザイン。
「紅蓮の飛鳥。ノアの護衛は私たちに任せて欲しい。
テトラ==ミトラは地球へ恩返しに来て、未来を掴みに来たんだ!」
「て、テトラさん。ありがとう……。母さん、無燈さんは最後に僕に言い残しました。
それは地球に帰り、あの人の生きた証を語りづくこと。
僕は“紅蓮機甲隊”のみんなに託された気持ちに応えてみせる……!」
『超新星機関、解放……!!』
ついに、飛鳥は《鳳凰紅蓮丸》の切り札を発動した。
燃えさかる炎を纏ったかのように“鳳凰紅蓮丸”はさらなる次元へ加速する。
飛鳥は手始めに聖輪のショウの【ダークネスデスサイズ】を斬り裂き、置き去りにした。
「噂に聞いていたが、これが蒼き星の『力』か……!」
かろうじて、ショウは鳳凰紅蓮丸の直撃を防いだ。
それでも、機体への損傷は無視できる程ではなかった。
留まることを知らない飛鳥――鳳凰紅蓮丸は次々へと、紅蓮機甲隊が踏ん張っている戦域を制圧した。
「ごめんなさい、相原さん。僕がもっと早く決断していれば……」
飛鳥は後悔し、感情が爆発寸前だった。
無燈と同じ時を過ごして、共に戦った相原が紅蓮の少年を静めた。
「隊長……。無燈さんは紅蓮の飛鳥に地球の未来を託して、一足早く地球に還りました。
僕たちは……ここで終われない。だから……頼みました」
「そうだね、相原君。僕がこの戦いを終わらせるんだ! 母さん。
マリアさんにも援護にいきこの戦況を打破するよ!」
飛鳥と渚は阿吽の呼吸により、波長が合わさり赤い流星の如く、
鳳凰紅蓮丸は宇宙を駆け巡り聖騎士マリアに加勢した。
「すなまい紅蓮の飛鳥……。わ、私は……」
「マリアさんはなにも悪くないです。だから、一緒に」
紅蓮の飛鳥も隊員たちによって、心に信念の炎が宿っていた。
彼はマリアの心にあった、迷いを断ち斬った。
さらにマリアは、恩人からの声援で心に太陽の光が注がれた。
「マリアさん。あたなはもう迷わなくていい。一人の騎士として、己の信念のために
剣を奮い戦って下さい。きっと、マリアさんと飛鳥君なら大丈夫です」
紅き黄金が混ざり合った焔が時田のデルタサムライを通り過ぎって行った――。
「……な、なんと!」
「悪いな時田。私もやるべきことがある」
こうして、聖騎士マリアと紅蓮の飛鳥は『デルタサムライ』を捻じ伏せた。
彼らは戦況を立て直すためにも、ルカの第二部隊と合流した。
「ルカさん……!」
「恩に着るよ、ムッシュ飛鳥。彼は強い……」
飛鳥は合流して、彼と波状攻撃フォーメーションをグースに仕掛けようとしたとき。
生体コアの渚が飛鳥へ待ったをかけたのだった――。
「飛鳥! 二時の方面から!」
「くっ!」
グースの弓とはまた違った殺戮の閃光が鳳凰紅蓮丸を横切った。
もし、渚の呼び止めがコンマ数秒遅れていたのならば、鳳凰紅蓮丸は無傷ですまなかった。
「グースさんよ。色々とまずいなぁ。いよいよ、ザードも出撃体制に入った。
俺もアンタと共闘して蒼き星の戦士たちを駆逐するさ!」
「頼んではいないが……懸命だな。
シンやバーン。ナックルズたち連合軍と戦い生き残った奴らだからな……」
遅れること、ジーク・シュナイダーこと『聖殺のジーク』が参戦した。
中距離を得意として真価を発揮する。
その愛機はサウザンドマーク。
光りの速度でナイフを投げ、敵を封殺する。
新たな黄金騎士登場により、超新星機関が解放状態の鳳凰紅蓮丸でも、
勢いが止まってしまった。
「鳳凰紅蓮丸でも、距離を取られるとやっかいだ。
しかし、牽制はできる。すみません、ルカさんはマリアさんと、一緒に一度『ノア艦隊』へと合流して下さい!」
「承知した『紅蓮の飛鳥』。この場は君に任せる。僕たちは一度立て直す!」
ボルテージが最高潮に達しても、飛鳥は冷静だった。
ノアを中心にして、ルカとマリアの部隊の再結集。
テトラたちが発掘した、戦艦により艦隊編成。
再び、地球は銀河帝国メルディアス本星までの突破経路を割り出し流れを生む。
のちにこの飛鳥の機転により、ノア艦隊は救われることになる。
「飛鳥。今度は左九時の方向から飛んでくるわ!」
「了解、母さん!」
鳳凰紅蓮丸は――太陽刀と月詠刀で、投げナイフと弓矢を斬り裂いた。
ひたすら出口のない迷宮を歩んでいるかのような疲弊感だった。
それでも、飛鳥は機を伺い、グースとジークの呼吸……一つ一つの癖を読み取ろうとしていた。
渚は鳳凰紅蓮丸の演算システムをフル回転させ、解析を進めている。
剣持親子たちは黄金騎士たちが阻むその先を見据えていた――。
「紅蓮の飛鳥が、注意を引いてくれてる間に我々は進む! 総員、警戒を怠るな」
「ノアも行くのであれば、我らも行くよ。命!」
地球の戦力は再度、銀河帝国メルディアス本星を目指して進撃した。
「飛鳥。わかってるかも知れないけど、もうじき鳳凰紅蓮丸は解放時間の臨界点を迎える。
お父さんやマリアちゃんたちが、戦線を上げてくれたから、私たちも一旦下がりましょう!」
「そうだね、母さん。
このままだと、僕らはマトになってしまう。それに黄金騎士たちは、時間を稼いでるようにも思える」
鳳凰紅蓮丸は肩のキャノン砲をバーストさせて、剣持親子はノアの格納庫へと帰還した。
その後、鳳凰紅蓮丸は解放時間の臨界点を迎え沈黙した。
しばらくして、鳳凰紅蓮丸は再起動された。
「みなさん、すみません。
少しだけ感情的になってました……。みなさんのおかげで、どうにか戦況を持ち堪えられました。
テトラさんもありがとうございます!」
「いいんだ、飛鳥。私たちは、あなたたちに恩義がある。それに未来を勝ち取るには
自分たちの手でやらなくてはいけない。だから、気にしないで!」
飛鳥たちはテトラの肩を借りる形で寄り添った。
機動戦艦ノアは旗艦として、紅蓮機甲隊と発掘戦艦のテトラは銀河帝国メルディアス本星を目前とした。
すると、銀河帝国メルディアス側にも動きがあり、騒がしくなった。
「情けないですね~。これだけの戦力を投入して、あの方々を討てないとは……」
「出たか! 道化が……」
意気揚々と銀河帝国メルディアス本星から一機だけ出撃してきた。
その機影に対して、聖輪のショウはあからさまに悪態をついた。
「まぁ。私が出たからには、あなた方も少しは楽できますよ。さぁ、ショータイムの始まりです!」
『……!?』
これまでの黄金十二騎士とは違った、独特の雰囲気。
武人とはかけ離れたオーラを持っていた。
彼はなに喰わぬ顔で慣れた手つきで、聖寂のザードは愛機”スパニッシュトライデント“で指を鳴らした。
その音と同時に宇宙空間が歪み、なにか得たの知れない不気味なモノが突如出現した。
「!?」
一見、機械のようにメタリックな体を持っているように思えた。
ただ、生物らしさも抜けていない。
限りなく生命の波動を感じ、生き物が放つであろう波長を出していた。
「な、なぜ宇宙機械獣がここに……?」
「その謎は簡単ですよ。彼らは私が手懐けているからです。さて、愚かな蒼き星の人類を抹殺しちゃって下さい!」
ザードがそう命令すると、宇宙機械獣たちは一斉にノア艦隊に襲いかかった。
矢継ぎ早に飛鳥――鳳凰紅蓮丸は再度、宇宙へ飛翔した。
「みなさん、聞いて下さい! いまから、戦力を僕と翼。マリアさんとルカさんに分けます。
マリアさんとルカさんは、ノア艦隊を防御しつつ支援援護をお願いします。僕らで謎の部隊を掃討します!」
一瞬にして、飛鳥は紅蓮機甲隊を再編成させ、みんなを鼓舞させた。
その甲斐あって、ほぼ損害なしで宇宙機械獣を撃破させることができた。
「意外とやりますねぇ~。まぁ、そうでなくては面白くありません。では……」
再びザードが得意げにパチっと指を鳴らすと、ノア艦隊を挟む形で左右から出現した。
予期せぬ事態であっても、風間艦長指揮のもと、蘭大尉が柔軟に対応してみせた。
そして、風間艦長の愛娘、命が総員に正確無比に情報を伝達させた。
残弾を惜しむことなく、ノアは使い切り危機を乗り超えたのだった。
それとは、裏腹に銀河帝国メルディアス側では、不可思議なことが起こった。
「はは。これだけの戦力が揃えば、俺たちの勝ち……!」
悠々と混沌の渦を眺めている青銅騎士や銀騎士たちだったか、事態が一転した。
「グシャ……シャ――!!」
「えっ!?」
宇宙機械獣たちは本能のゆくまま、敵味方見境なく襲い始めた。
当然、銀河帝国メルディアスの指揮系統は乱れ、次々と宇宙機械獣の餌食となった。
――、宇宙機械獣たちは機動機甲兵器の残骸と融合を遂げるのだった。
「そ、そんな……馬鹿な! 撃墜されていった機動機甲兵器が復活を……」
「ざ、ザード貴様!!」
この異様な光景を目の当たりにして、『聖輪のショウ』がザードへ威を放つ。
それでも、ザードは涼しい顔をしてショウを流しつつも、やれやれとばかりにショウへ返答した。
「なにをそんなに激怒していますか『聖輪のショウ』。私が指を鳴らすと、たまたま宇宙機械獣たちが出現して、さらにもう一度、指を鳴らすと彼らが暴走して無差別になりふり構わず襲いかかるとでも?」
全てを見据えた眼差しで、ショウを煽る聖寂のザードだった。
それに呼吸するかのように他の黄金騎士たちが動き出す――。
「俺は……蒼き星の戦士もやるが、仲間を助けるぜ……!」
「なら、俺はイキがいい『赤ツノ』ともう一度、やり合うぜ!」
混沌と化した戦場で唯一、独自権限を持つことを許されている『黄金十二騎士』は、己の騎士道に従った。
仲間のために働き、傷つく黄金の衣。
主君を思い、地球人とともに戦い未来を切り開く黄金の煌めき。
各々、動き出した黄金の羅針盤によって、戦況は瞬く間に展開されていった。
――さらに、この空域へ戦艦が四隻ワープアウトしてきた。
「もう、はじまっていたか……!」
「だが様子がおかしいぞ、シン!」
黄金騎士連合は銀河帝国メルディアスと、機動戦艦ノア艦隊に挟まれる形でワープアウトしていた。
あたり一帯が停止している間にも、聖槍のシンはゲイボルグ・ラーハルトにて出撃して、
バーンとナックルズを置き去りにして独断で先行した。
「もう大丈夫だ! ここは任せろ!」
「し、シン様! よくぞ、ご無事で!」
シンは『ゲイボルグ・ラーハルト』の聖なる黄金の二本の槍で、宇宙機械獣を斬り裂いた。
だが、ゲイボルグ・ラーハルトの後方へと、高速で宇宙機械獣たちが編成をなしてシンを襲ったのだった。
「次からは次へと……!」
「元気そうだな、シン!」
ゲイボルグ・ラーハルトへと水平に斬撃が放たれ、後方にいた宇宙機械獣を滅殺させた。
この斬撃こそ、彼の姉である聖騎士マリアによる『エクスカリバー・クィーンナイト』による太刀筋であった。
「感動の再会とは、いかなそうだね、マリア姉さん……」
「ふっ。元気そうだな、シン……。我らに言葉は無用だな。
私は己の騎士道と、銀河帝国メルディアスのために剣を奮うのみ!」
一糸乱れぬ、阿吽の呼吸で聖騎士と聖槍で無双した。
二人は剣持親子を超えるほど、シンパシーがシンクロしていた。
実は少し時をさかのぼること――、マリアはあることを飛鳥に伝えていた。
「すまん。紅蓮の飛鳥。しばし……」
「いいんです、マリアさん。弟さんと騎士の方々を助けてあげて下さい! こっちは、問題ないです」
飛鳥は彼女の意志を尊重し、マリアを送り出していた。
「事態はよろしくない……」
「……みたいだね」
たとえ、交わす言葉が少なくてもこの姉弟だと十分だった。
シンの姿を見て、バーンとナックルズも愛機に搭乗して、黄金兄弟に続いた。
彼らもまた、銀河帝国メルディアスのために己の意思でこの場に存在していた。
その頃、黄金騎士連合と同時刻にワープアウトした残りの一隻は機動戦艦ノア艦隊の真横についていた。
「……!? こ、ここは!」
『か、海賊船? も、もしかしたら……』
地球の戦士たちの脳裏に“ある少女”がよぎった――。
「痛てて。あの『赤ツノ』の超新星機関を追ってたら……。
って、よく見たら真横にみたことある戦艦が!」
「赤い海賊船に髑髏のマスト――それにその声ってことは、やはり『真紅の緋音』さんですね! お久しぶりです☆」
飛鳥は確信を持ちつつも、声の主に尋ねてみた。
「ふふ。なんだか、君とは運命を感じるわね『紅蓮の飛鳥』。
君たちを追って、来たものの最悪のシュチュエーションね? この空域にも、宇宙機械獣がいるとは……!」
海賊船の船長・真紅の緋音こと、星森緋音は気さくに飛鳥へあいさつを交わした。




