秘密の始まり
「そ、それはわからないな。
紅蓮丸には、そのような『意思のある』ロボット。
鉄腕ア○ムのようなアニメ設定はないのだ、飛鳥」
額に汗を垂らし、ぎこちない父親の姿だった。
ただ、この謎の声に関してはもう少し解明の余地があるようだ。
「そうだ、飛鳥君。
これが我々NETEROであり、十三博士が君に『紅蓮丸』を託した想いなのだ!」
飛鳥は声がする方向へ視線を向けた。
セントラル・アースの一番上の椅子には人影が見えていた。
「久しぶりだね、飛鳥君。
君の活躍はよく娘から聞いていたよ」
その口ぶりから彼をよく知る人物だと伺える。
「み、命ちゃんのおじさん……。どうして、ここに?」
数十年ぶりに命の父、風間丈と再会した飛鳥だった。
「ひ、久しぶりです……。ご無沙汰しておりました」
緊張により飛鳥はかしこまっていた。
「そう、仰々しくならずに。昔みたく命ちゃんのおじさんって言っておくれよ」
飛鳥の頭の回路はまた、困惑のメビウスの輪に逆戻りだった。
「あの方こそ、このNETEROの最高司令官、風間丈司令よ!」
蘭大尉が彼の耳元でささやいて、教えてくれた。
「命ちゃんのおじさんがこ、この最高司令官?!」
頭脳明晰な飛鳥でもついていけずいた。
「飛鳥も風間司令と久しぶりの再会で喜んでいるな」
十三博士は楽しそうにしながらも、彼の癖である眼鏡の位置を右手で直していた。
「とにもかく、この星の有様であり『日本』のいまだよ」
風間司令官の言葉に飛鳥は深呼吸し、気を取り直して頷いた。
「わかったよ、父さんたち。僕の秘められた力。これは『運命』なんだね!」
彼は開き直り運命を受け入れた様子だった。
「飛鳥君にはこれから、NETEROの一員として正式に紅蓮丸の専属パイロットになってもらう。
……いいですな、十三博士?」
このとき剣持親子は、最後に確認の意味を込めて目線を交わした。
「はい、みさなん。よろしくお願いします!」
この瞬間から飛鳥の日常が変わりゆく。
彼が幼い頃から夢見た世界がやってきた。
人類の命運を握る『救世主』へなるか……。
時は流れ――。
東京の進学校で剣道に打ち込む天才剣士の剣持飛鳥。
容姿端麗だが、たま~にオタクが発動してしまう。
イケメンなのにどこか残念な属性持ち。
しかし、彼は普通の高校生とは違っていた。
人類の運命を任された地球防衛軍・特殊秘密機関NETEROの『特別少尉』である。
(いきなり少尉って親の力かw)
機動機甲兵器タイプ侍紅蓮丸の専属パイロットの二つの顔を合わせ持つことになった。
しかしながら、飛鳥がNETEROに所属することは他言無用であった。
幼馴染の風間命や水城翼でさえ、飛鳥の素性は把握できなかった。
命については、父でありNETEROの最高司令官風間丈からも釘を刺されている。
「……飛鳥君。一人の親としてお願いをさせてくれ。くれぐれも娘の命には正体を明かさないで欲しい。
きっと飛鳥君の素性を知ってしまったら……」
NETEROの最高司令官ではなく、一人の父親としての願いだった。
「僕も命ちゃんには、安全で幸せに暮らして欲しいです。
だから、僕は『紅蓮丸』に乗って戦うことを決意しました。約束は守ります!」
飛鳥は男と男の固い約束を交わしたのだった。
そんな決意の元、彼がNETEROに入隊してから一週間が経過して――。
「さて、今日もあそこに行って訓練かな……」
あの襲撃からどうにか、学校は修復されて通える状況になっている。
最近の飛鳥は、剣道部に参加しないで『ある場所』に出没していた。
この日も放課後、彼はNETEROに呼び出されていた。
「ごめん、命ちゃん。
いや、風間マネージャー。僕は今日も用事だから帰るね……」
命は最近の飛鳥の行動に納得しないでいた。
それでも、幼馴染の彼には甘くしぶしぶ飛鳥の申し出を承認していた。
「剣持君、しっかりしてよね! 次こそはちゃんと、部活に出てもらいますから」
語尾は強いものの、命の表情からはどこか寂しさが感じられていた。
「ありがとう、命ちゃん……。それじゃ、翼やみんなによろしくね!」
申し訳なさそうな背中で部室から帰っていく彼を命は見送った。
「なぁ、風間マネージャー? 最近の飛鳥だけどなにか、様子がおかしくないか……」
たまらず彼の親友で剣道部の副部長翼も彼へ疑問を抱いていた。
それほど、いままでの飛鳥からだとありえない行動だった。
「そうね、水城副部長……。絶対なにか隠してるわね」
幼馴染である命は飛鳥が隠し事をしていることを見抜いていた。
いや、女の感がそう告げていた。
翼もあの襲撃以来、胸の奥でムヤムヤを抱えていた……。
「そういえば、あれ以来飛鳥君の様子が急変したよね?
私たちが遭遇した謎の騎士のカッコをしたロボットや大型トレーラーにいた女の人たち。
ニュースやTVでは報道されてないけど、あのあと、一体なにが……?」
「俺もそれはわからない。結局再会できたのも休校明けの先週だしな。
も、もしかしたら……女でもできたりして!?」
飛鳥はよくも悪くも器用に高校生とNETEROの生活をこなしていた。
翼は冗談交じりで、命に女の影をチラつかせてしまった。
「え?! そ、そうなの……! あ、飛鳥君に……」
チャームポイントのツインテールが下向きになり、命はトタンに潮らしくなってしまった。
「マネージャー、冗談です。と、とにかく飛鳥の真相は不明だよ!」
「も~う。心臓が止まるかと思ったわ。この私を差し置いてそんな女は!
私らで知らないじゃ、他にあてもないし」
素性を明かすことができない彼の苦悩や葛藤。
それを認識してあげられない命たち。
仮面ラ○ダーやウルト○マンのような葛藤劇の光景。
「ならよ、風間マネージャー。試しに飛鳥を尾行してみるか! ハハ……」
翼から思いがけない提案が命に出された。
それこそ、ポビ○ト・おもいがけない冒険の予感?!
……しばらく狼狽していたが、命は決断した。
「これは私たちだからできる友情の確認。
決して、やましいことではない!」
少なからず、彼女は罪悪感に囚われていた。
その思いよりも、飛鳥の身に起きていることを知りたいという思いが勝っていた。
「――そうとなれば、風間命の王子様を追いかけますか!」
夏の大きな大会に向けて剣道の稽古に励まなくてはいけなかったが、
二人は顧問のおじいちゃん先生や後輩に剣道部を任せて、意気揚揚と道場を出て行った――。
この日も藤崎大尉こと蘭大尉に放課後、NETEROへ呼び出されていた。
その場所とは、彼が通う高校から二駅ほど離れたところだ。
電車に揺られ、NETEROがある最寄り駅に着いた。
そこから、トボトボ歩いて彼は国運営の記念博物館を目指した。
表向きは、のほほんとした博物館。
しかし、その地下では人類……地球を守るNETEROが収容されていた。
飛鳥は博物館に着くと、奥へと進んでいった。
日本の歴史。数々の日本人が発明したあらゆる歴史的な者が展示されていた。
彼の父・十三博士の発明品である『超電磁コマ』も展示されていた。
平日の夕方ということもあってか、来客がいないのはいつもとおりだった。
ただ、彼は警戒をしていた。
辺りを見回し、L型の道の行き止まりの壁にめがけて「開けごま」と唱えた。
本当はIDカードを扉へかざすだけで数秒後に自動で開く秘密のドア。
飛鳥はいつも癖で言ってしまう。
開いた秘密のドアの薄ぐらい闇のなかを進み、飛鳥は鉄製の滑り台を勢いよく滑った。
彼は落下していく過程で妙な気配を感じていた。
思えば地元の駅から、誰かに見られて、監視されているように思えた。
まぁ、いつもの自分の『悪い能力』が発動しているだろうと
気にせず数百メートルある鉄製の滑り台を優雅に降りた――。
「まぁ、僕の考え過ぎか……。一瞬だけど命ちゃんの香りを感じた」
――次の瞬間、まばゆい光と近未来の機械たちが彼を迎えてくれた。
この空間は何度目にしても、現実とはかけ離れた世界だった。
「来たわね、飛鳥君。いや、『特別少尉』の剣持飛鳥殿」
飛鳥の直属の上官である蘭大尉が奥から出てきて迎えてくれた。
その右隣には大男の林の姿もあった。
「こんばんは、剣持少尉殿。本日もご苦労様です!」
いきなり、林は飛鳥に対して堅苦しいあいさつと敬礼をした。
「や、やめて下さいよ、林さん。僕はただの高校生ですから。
少尉なんて飾りですから。前みたく『飛鳥君』って呼んで下さい!」
SF戦争映画やガン○ムなどで見られるぐらい飛鳥の階級は異例だった。
一戦交えたら昇格する金髪や魔術師もビックリだ。
「はは。こりゃ、林もウカウカしちゃいられないわね。
飛鳥君はもう出世コースだわ(笑)」
毎度のことだけど、蘭大尉は嬉しそうに林をからからっていた。
鉄板ネタだった。
いつものように林は唇を尖らせ少しばかりスネていた。
「俺はどうせ、アス○ナージさんです。
飛鳥君みたく、親父が博士じゃありません。
その上、容姿端麗で優秀ではありませんよ……」
暗黒面へ落ちそうな林を見かねて、
飛鳥はすかさず、彼へ励みの言葉をかけていた。
「林人がいてくれるから僕は紅蓮丸を操縦できるんです。
だから、誇りを持って下さい! 林さん」
飛鳥の言葉に林は元気を取り戻し、目をキラキラ輝かせて飛鳥の手を握った。
「そんな君だから、紅蓮丸は飛鳥君を選んだ。俺も嬉しいよ!」
男と男の友情を確かめ合う場面で、横から強烈な槍が投げ込まれた。
某スポーツ漫画でいう、スピアタ○クルの威力だった。
「はいはい、そこまで林。
ごたくはこの辺にして、セントラル・アースに行きましょう?」
飛鳥は苦笑いで、「ハハ」と笑いながら蘭大尉たちとともに、
NETERO中枢区で父たちが待つ作戦司令室に歩いていった。
――その頃、地上では男女が狼狽していた。
「嘘?! 飛鳥君。どこに消えたの……」
飛鳥を尾行してきた命と翼はいま一歩のところ肝心の飛鳥を見失い、誰もいない博物館の中で立ち往生していた。
「っても、さっきまで飛鳥はこの目で見てたぜっ!
だが、このL字通路でいきなり消えやがった」
ときたま飛鳥の『天賦の才』による、気配察知により危ない場面もあった。
素人では十分見事な二人の尾行だった。
まさに、『大切な貴女の思い出を』
「絶対になにかある! 私の女の勘と飛鳥君が日頃、よく口にするように。
ニュータ○プの波長がそう、私に確信させる」
命も飛鳥に影響されて、このような症状が親しい人の前で発症するようになっていた。




