それぞれの想い
「みんな、長旅もついに最終局面を迎えた。地球時間にして一時間後……。
いよいよ、本艦は銀河帝国メルディアスへ到着する」
「くれぐれも、警戒を怠ることなく頼んだ。それでは各自健闘を祈る!」
『了解!!』
紅蓮機甲隊は有事の際に備え『警戒態勢』のまま、格納庫でスタンバイ中。
ノアは通常航海モードでひたすら、静かな宇宙を突き進んだ――。
元々、人類はメルディアスとは和平交渉を望んでいた。
しかし、あまりにも彼らは無反応だった。
これだけ、機動戦艦ノアの接近を許せば銀河帝国メルディアスからの迎撃を予想はしていた。
そのため、ノアの搭乗員たちは彼らに対して、淡い期待を抱きつつあった。
そして……ついに、ノアは『地球』と酷似している惑星を目の前にしたのだった。
すると、銀河帝国メルディアス本星から――威厳ある声がノアの艦内に響き渡った。
『ついに来たか……【蒼き星の戦士】どもよ……!』
「こ、この声は――!?」
光りの速度で急遽ノアに緊張感が走り、風間艦長や剣持副長は身構えた。
『まずは褒めて遣わすぞ。ただ、貴様らは我々を本気にさせてしまった。
悪いことは言わん。いますぐ“無条件降伏”しろ! さすれば、貴様らは我が銀河帝国メルディアスで大いなる礎になりえるだろう……』
「姫様……エリス姫さまのお声……」
「この声の主こそが、僕たちの住む地球を脅かす人なんだ……!」
マリアの意志とは無関係に彼女は自然とエリス姫の名を口にしていた。
マリアの隣にいる飛鳥ははじめて、エリス姫の名を聞いたにもかからわずなにかが頭を過っていた。
「我々はあなた方に屈する気はない! ただただ、一つだけ願うとすれば平和だ」
「あなた方と争い続ければ、尊い命が犠牲になり悲しむを生むだけ……。
だから、我々とともに歩む道を選択して欲しい……!」
『ふっ、随分と大口を叩くようになったな地球人よ。よほどの力を得て増長してるな。
ならば、腹いせに貴様らが我らメルディアスに牙を剥くかも知れんな……』
「仮にそうだとすれば、我々は和平の交渉などしない! だから、わかって欲しい……」
地球人類は鳳凰紅蓮丸をはじめ、武力を手にしている。
その気になれば、NETEROだけで世界征服できるほどの戦力。
けれども、正義のためにその力を発揮し、これまで銀河帝国メルディアスを撃破してきた。
「こ、これは――『彼女』も望んでいて、託された思いであり“力”なんだ」
風間艦長と剣持副長の呼びかけに対して、エリスは沈黙を貫く。
やがて……エリス姫は口を開き、沈黙を破った。
「そうか、そうだったか……。ならばなおのこと、蒼き星をこの手に治めなくてはな。
我が騎士たちよ、敵戦艦を駆逐せよ……!」
彼女の固く閉ざされた口からは和平交渉決裂の言葉。
すなわち、武力行使による解決。
エリス姫の命令とともに一斉に銀河帝国メルディアス本星から、
機動機甲兵器騎士タイプがロールアウトされ、瞬く間に『機動戦艦ノア』の進路を塞いだのだった。
機動戦艦ノアでも『――紅蓮機甲隊、緊急出撃!』と、命の声が格納庫中に響いた。
「……みなさん、すでに彼らは散開してます。ですから、僕率いる第一部隊でノアの進路を切り開きます。
そのあと、続いてルカさんの第二部隊は援護をお願いします! マリアさん率いる第三部隊はその後方から援護を頼みます」
『了解!』
紅蓮機甲隊隊長『紅蓮の飛鳥』は真っ先に出撃し、宇宙を駆けた――。
まずは隊長である紅蓮の飛鳥が率いる第一部隊で、青銅騎士と銀騎士群を迎え撃つ。
ルカの第二部隊は少し後ろから、敵の動きを様子見て敵の戦力を削り取る。
さらにその後方では、黄金騎士マリアが戦場全体を見通す。
「翼! 僕が突破口を切り開く。みんなとの中継伝達を頼んだよ!」
「合点承知、飛鳥。とりあえず、ノアを守る防衛ラインを引かなきゃな!」
二刀流を解禁して、鳳凰紅蓮丸は赤い稲妻の如く突き進み羽ばたいた。
瞬くなに、数十機ものの敵機を斬り裂き、敵の第一波を退けた。
しかも、よく見ると敵機への急所を外しての神業だった。
「飛鳥、あまり飛ばし過ぎてはダメよ。きっと、長期戦になるわ……!」
「ええ、母さん。でも僕はどうにか、無益な戦いを早く終わらせたいんだ」
そうこうしていると、息つく間もなく、さらにメルディアス本星から敵増援が送られた。
しかも、その増援部隊は分裂し、左右から同時に機動戦艦ノアを強襲する戦法をとった。
――そして、その二つの激流の先には、黄金の衣を身に纏う、黄金十二騎士たちが戦場を照らしている。
「ニャハハ! よもや、メルディアス本星へ敵が来るとは恐れ入ったにゃ」
「……これも、運命なのか……」
マリアは地球側でいち早く黄金の輝きに気付き、紅蓮の飛鳥へ伝えた。
「……紅蓮の飛鳥! 黄金十二騎士が来るぞ。しかも、二人同時にだ!」
「やはり、あの輝きと『オーラ』はそうでしたか、マリアさん」
現在、マリアが登場している『エクスカリバー・クィーンナイト』は
全身を覆い尽くすオーバーマントを装備している。
飛鳥や命からの配慮でマリアへの気遣いであった。
林が発狂寸前で覚醒して仕上げた品。
レーダージャミングやアンチ・ビームコーティングがされているらしい。
それはともかく、地球側にとって『聖騎士マリア』は切り札。
黄金の輝きがなくても存在感はあった。
ただし、敵として戦場で黄金の閃光を垣間見ると何度体感しても、飛鳥をはじめ戦々恐々とした。
その反面、早くもマリアの力を借りる場面を迎えることになる。
「ルカさんは左翼の部隊をお願いします! 僕は……」
「紅蓮の飛鳥。その必要はない!!」
飛鳥は第二部隊のルカ部隊へ左翼を迎撃させた。
緊迫した通信の最中、マリアが彼らの通信に割って入った。
出撃当初、マリアの第三部隊は機動戦艦ノアの後方を陣取っていた。
彼女は独断で行動し、残りの第三部隊をそのまま待機させた。
臆することなく、マリアはエクスカリバー・クィーンナイト一機で右翼を迎え撃つ。
「お前たち、退くんだ……!」
「単機で出しゃばって偉そうにしやがって!」
エクスカリバー・クィーンナイトを覆っている、
頭部へのオーバーマントを少しだけ出して機体超しにマリアは――黄金騎士を見つめた。
「ニャニャ。こ、この闘気は……!?」
「……!」
――しかし、マリアの目の前にいる敵には関係がなかった。
黄金騎士の背後から、屈強の銀騎士
の三機が連なって、
彼女が搭乗しているエクスカリバー・クィーンナイトを襲った……。
「さらば、蒼き星の戦士よ――!」
「……やめるんだ……」
次の瞬間、ガッキーンドゴと、金属が弾け飛ぶ鈍い音が三連続で響き破片が飛んだ。
「な、なんてパワーだ……!」
「これは黄金騎士<ゴールドナイト>級の強さ……」
マリアは見事に右翼部隊の出鼻を砕いた。
さらに彼女はエクスカリバー・クィーンナイトのオーバーマントを脱ぎ捨て、真の姿をパージさせた――。
みるみる、辺り一面へと黄金に煌めく金色の波動が伝わっていった。
「え、エクスカリバー・クィーンナイト!?」
「黄金十二騎士の聖騎士マリアがなぜここに……!」
さっきまで――目の前の敵へと、注がれていた集中力と視線はマリアの登場により削がれた。
戦場の戦士たちの視線は一気にマリアへ釘点けになった。
無論、マリアはこうなると確信をもって実行した結果であった。
「噂では聞いていたが……。まさか、おめおめと現れて、この銀河帝国メルディアスに牙を剥くとは、許せないにゃん☆」
「みんな、聞いてくれ……! 私はエリス姫様のため……銀河帝国メルディアスのため。
そして、自分の騎士道精神に従ってやっている。私は――一刻も早く、この無益な戦いを終わらせたいのだ……!」
「……聖騎士マリア。貴公は自分で口にしてる、意味は理解しておるか?」
一見、神風タイプや不知火タイプに似たフォルム。
それでも、黄金の衣を纏った機動機甲兵器騎士タイプ。
それに搭乗する、寡黙な黄金騎士・時田が口を開く。
「承知してるつもりだ。だから、私はこうして無様な醜態をさらしてまで、生き長らえてお前たちの前にいる! このままでは――銀河帝国メルディアスは“破滅”の未来を歩んでいく」
「そのために一方的な地球侵略は間違いだった。そして、我らは『蒼き星の力』を見やまっていた。
彼らは強い。また、彼は他人を思い他者のために行動でき力を使える。
ただ、全ての地球人はそうではない。
それでも、あの船にいる『方々』と、我らは理解し合えるはずだ……!」
「ニャニャ。聖騎士マリアともあろう者が世迷言を……!」
マリアの言い草に呆れている左翼の『聖痕のナナミ』だった。
広い意味で黄金騎士たちに動揺や迷いはなかった。
しかし、他の者たちはそうはいかない。
マリアを前にして、動揺が伺え、明らかに迷いが見え士気が低下している。
「騎士として……。お、俺は……」
「俺はエリス姫様を信じて……!」
迷い気を斬り払う如く、黄金波動が銀騎士と青銅騎士の間を駆け巡った――。
鋼鉄の集団のなかから、鉄が引き裂かれた甲高い衝撃が放たれた。
「……お前たち、なにをしてる! 目の前の敵を殺すことだけに集中しろ……。
聖騎士は俺が相手する。残りの奴はあの船を沈めろ! さもなければ……」
「あぁ。時田は我慢弱いニャん。さてさて、ボクはと――」
寡黙な騎士は憤怒していた。
戦士時田は部下に喝を入れ、マリアと一騎打ちに出た。
「と、時田……。『聖閃の時田』。お前は言葉でどうこう言う人間ではないな」
「……その通りだ。だから、覚悟しろ聖騎士マリア!」
研ぎ澄まされた【デルタサムライ】の薙刀と、聖剣の名を冠する、
エクスカリバー・クィーンナイトが激しく衝突し、マリアは戦闘を開始した。
――対して、左翼のルカ隊はノルマンディー・ヌーボが『主役級』の活躍をしていた。
第二部隊は思いがけない連携により、制圧する程の戦果を上げていた。
しかし、ここにもまた黄金の光が注がれる。
「……! し、しまった」
「おっし! まずは一機だぜ」
流星を彷彿させる弩級の弓矢が、不知火タイプを紙切れのように貫いた。
「……俺はグース。人呼んで、『聖血のグース』狙った獲物は必ず貫く!」
「みんな下がって! 私を後方から援護してくれ! 彼はこのノルマンディー・ヌーボで止める……!」
ルカはすぐさま第二部隊を小隊編成させ、自分より戦線を下げ事態の悪化を防いだ。
その後、彼はノルマンディー・ヌーボにより、グースの『スクラッシュ・アーチャ―』との距離を詰めた。
「アーバンストラトス!」
ノルマンディー・ヌーボの防御を捨てた攻撃は同時期にグースが放った、
スクラッシュ・アーチャ―の弓矢を一切触れず、ルカはグースの制空権へ侵入した。
しかし、後方で爆風が発生した――。
「……!? ど、どうして」
「アンタは想像以上にやる……。だから、保険をかけさせてもらった。まぁ、狙い通りといえば狙い通りだった。俺はアンタがこの距離であっても、完全に避けることを計算して、矢を放ち、後衛にいた一機を撃ち抜き爆破させた!」
寸分狂わぬ針の穴を通す精密度により、ノルマンディー・ヌーボの射線軸上にいた
神風タイプの頭部を撃ち抜き、グースはルカを圧倒してみせた。
「アンタはよくこの寄せ集め集団をまとめてよくやってるよ。
命令は的確だ。アンタが突進してこなきゃ、もっと被害は出ていただろう。
でもな『ゴールドナイト』の俺はなにも中距離戦だけが取り柄じゃないぜ!」
「くッ。私としたことが抜かっていた。
そんなのは……百も承知。だけど彼は、懸命に若輩の私を支えてくれてる。故に私は君を止める……!」
二機――仲間を失っても、第二部隊の戦士たちはルカの懸命な姿に鼓舞された。
有効ではない小銃による援護であっても、彼らはグースの集中力を削ぎ落すことへ徹底した。
彼らも『紅蓮機甲隊』として意地があった。
これまで――若い世代にただ縋っていた。
自分たちはなにもしない、できないまま後方で見守るだけ。
そんなことをするために地球を離れた訳ではなかった。
大人として、愛する者を守るため、若き未来への希望のヒカリを絶やさないために紅蓮機甲隊は強くなった。
「士気も悪くない。今のメルディアスだと一部を除いて勝っている。
だが、俺もゆずれないモノはある。だから、蒼き星の戦士よ全力で来い!」
「彼らは“紅蓮の男”によって、心の炎を焚きつけられてる。実は私もその一人だ……。
私はアナタを打ち破って――今後は『閃光のルカ』となる!」
二人は境遇が違っても、わかり合っていた。
幾度なく短剣とレイピアが交差し、その度激しく火花を散らして互いを極限まで高めていった。
――一方その頃、機動戦艦ノアは危機に直面していたのだった。
「……か、艦長囲まれました。その数、約二十機あまり……」
「全砲門開け! 我々はこのまま、やられる訳にはいかん。打ち尽くすんだ……!」
「予想はしてたけど、キツイわね……」
銀河帝国メルディアスと地球。
この二つの星が平和的な方法で平和への道を歩むのが、『機動戦艦ノア』の目標ではあった。
しかし、その夢も無残に朽ち果てようとしていた。
それでも、このまま黙ったまま、一方的にやられる訳にはいかない。
第一艦橋の乗組員は表情を曇らせていても、眼は死んでいなかった。
「林技術長! 例の『装置』はいけそうかね?」
「風間艦長。どうにか、実装には間に合いました。が、確証は持てません」
刻一刻と追い詰められる最中、風間艦長は林に賭けダイスを振った。
「了解した。ひとまず、この場を乗り切るにはバリアを展開する!」
「丈さん。バリアなら、多少は検証できてる問題ない!」
密かに動いていた剣持副長から心強い後押しをもらい、
林はコスモブラックホールエンジンの余剰エネルギーを制御し、艦全体を覆い尽くすバリアを張り巡らせた。
「よし! バリア展開成功!」
「屋ッタゼ! 林の大将」
634もフル稼働して――この大一番、ノアは強固な守りを手にする。
「紅蓮の飛鳥。これで本艦はしばらく大丈夫のはずだ。黄金騎士たちとの戦闘に集中してくれまたえ!」
「了解です、風間艦長。みなさん“僕たちは”このまま突っ切ります!」
鳳凰紅蓮丸が羽ばたこうとした瞬間――紅蓮の機体へ黄金の輪が描かれた。
「あ、飛鳥! 上昇しないと!!」
飛鳥をよそに渚は重力を一切がっさい無視して、鳳凰紅蓮丸は急速発進した。
飛鳥はGでもがき苦しんでいる間、渚は敵機体を捕捉した。
「ここから先はこの『聖輪のショウ』が相手だ……!」
怪しく光る黄金の鎌から弧を描いて、残像だけがビジョンとして飛鳥の目に映っていた。
背筋が凍る感覚に襲われた殺気により、剣持親子は警戒した。
「飛鳥。あの『カマカマ』は私たちで止めないと……。甚大な被害が出るわ……」
「うん。一瞬にして理解させられた。あれは、マリアさん……。他の“黄金騎士”たちを
凌駕すうる程の戦力かも知れない……」
上昇している鳳凰紅蓮丸は二刀流を交差し、急降下して聖輪のショウを強襲した。
ショウのダークネスデスサイズの縦斬りと衝突した。
その衝撃は凄まじく、他の紅蓮機甲隊の機体を揺さぶる痛烈無比な衝撃波だった。
「ほぅ。マリアを討ち破ったことはあるな……!」
「――あれだけ、加速した一撃を止めてビクともしないとはっ!」
ついに紅蓮の飛鳥の進撃が止まり、紅蓮機甲隊は破滅への道を辿る。
それでも、地球の希望は抗い諦めず、戦い続けるしかなかった。
しかし、希望の箱船である機動戦艦ノアが危機を迎える。
「ニャハハ。全方位バリアには少しだけ、ビックリしたニャん! でもでも、船底はがら空き状態。にゃ~!!」
聖痕のナナミが搭乗する、黄金の豹“ヴァイタルクロー”が確実にノアのバリアを削り裂いていた。
「し、しまった――!」
「おっと、余所見はいかんな……!」
ルカはノアの危機を察知して旋回しようとするも、ノルマンディー・ヌーボの前を
スクラッシュ・アーチャ―こと、グースが立ちはだかる。
同時期に行動を起こした飛鳥とマリアも、目の前の敵――黄金騎士たちへ集中し、
相手することがやっとの状況だった。
「みんな、ノアはそんなにヤワな船ではない! だから、目の前のことを集中してくれ!」
「そうだとも、飛鳥に渚。どうにか、メルディアスまでの道を切り開いてくれ!」
自分たちが危機に晒さらされている最中、風間艦長と剣持副長は戦場にいる仲間に向けて檄を放ち鼓舞させた。
だがそうは言いつつも、聖痕のナナミからの集中攻撃を受け続けバリアの限界点も迫っていた。
そんなとき、紅蓮機甲隊のなかで動きがあった――。
「アンタらは青銅騎士と銀騎士を頼んだぜ……。俺はノアを援護しに行く!」
「ま、待って下さい。僕もノアを助けに向かいます……」
最近、着々と力を付け始めている、相原と無燈の若き戦士。
二人はこの場を仲間に託し、二手に分かれノア船底にて合流した。
その途中に『紅蓮の飛鳥』へ通信が入る……。
「紅蓮の飛鳥さんよ……。年は俺の方が上だけど、アンタは立派な人だ……!」
「隊長! 機動機甲兵器の操縦以外にも、勉強を教えていただきありがとうございます。
そうした中でも、僕は――剣道稽古がとても楽しかったです」
相原と無燈の通信へ飛鳥の意識は自然と耳を傾けていた。
しかし、飛鳥は彼らの言葉をゆっくり聞いていられなかった。
『聖輪のショウ』のダークネスデスサイズが邪魔立てした。
「もらったぞ! 赤き戦士……!」
「それはどうかしら?」
鳳凰紅蓮丸は飛鳥の意思……脳波を逆らって、月詠刀で狙い澄まされたダークネスデスサイの一撃を受け流し、
一旦距離を置いた。
「あのタイミングで殺れないとは。それにさっきから女の声もするし、変わった兵器だな」
「へへ、女は女でも、私は飛鳥のお母さんですもの。飛鳥! 少しだけ私が“メイン”になるわ。だから……あの二人との通信を……」
鳳凰紅蓮丸の生体コアであり、飛鳥の母である渚は息子を気遣ってメインとなり操縦を代わった。
すぐさま、飛鳥は彼らとの通信を再開した。
「む、無燈さん……。それに相原君……」
「隊長、しっかりして下さい。なにも今生のお別れではないので」
意を決した二人を前にして飛鳥は動揺を隠せずいた。
いままでの飛鳥だったら、いの一番に彼らを止めていただろう。
それでも、決断した男の声を聞いて『いますぐ帰還して下さい』を言うことができないでいた。
「そのとおりだ相原。俺たちが紅蓮の飛鳥やノアを助けなきゃいけないんだ。
たまには、俺たちにも“活躍”させてくれよ! 止めたってもう無理だしな」
「確かにこのままではノアは危ないかも知れません……。し、しかし……」
このやりとりの最中にも、相原と無燈は【聖痕のナナミ】の黄金の豹、ヴァイタルクローを挟み込む。
「やられに来たにゃん♪ さてさて……」
「相原。まずは俺が切り込む。援護を頼んだ……!」
「了解しました」
神風タイプに搭乗している無燈が抜刀し、エンジンをふかし切り込んだ。
その姿を見て、相原が搭乗している不知火タイプは、拳銃で援護射撃を行った。
そして、相原も抜刀し息つく間も与えず、黄金騎士を強襲したのだった。
「……飛鳥。彼らのことも大事だけど、こっちもマズイわ。
このままでは――、地球と銀河帝国メルディアスを繋ぐ《鳳凰紅蓮丸》が……」
「わかってる、母さん。僕らは絶対にここでやられる訳にはいかない! いままでの全て……地球で待ってる人。僕らとともに戦って人たちの思いが、無駄になってしまう……」
飛鳥の気持ちは前面に押し出され、そのまま渚と入れ替わった。
再びメイン――となり、鳳凰紅蓮丸の操縦のを手にした。
飛鳥はダークネスデスサイズの勢いを削ぎ取った。
「くっ。さっきまで、鉄壁の守りと思えば次は烈火の如き攻めときたか!」
「母さん。少しだけ飛ばします。サポート頼んだよ!」
数々の敵を屠ってきた、二刀流……。
飛鳥の鳳凰紅蓮丸は太陽刀と月詠刀で乱舞した。
――その頃、ノアは無燈と相原が与えてくれた時間により、体制を立て直した。




