悠久の時。
いつもの冷静沈着なマリアに戻ったが、瞬時に聖気を解放して飛鳥に喰らい付いた。
飛鳥も疑似刀剣を両手で握り、念を込めて空中を舞うのだった。
「サイキックザー○!!」
「でぇええい!!」
紅蓮を纏った念動斬りと、聖なる剣の一撃がぶつかり重なり合って……。
飛鳥とマリアの疑似刀剣は同時に砕け散った。
その威力は、某RPGでいうところのマダン○級の破壊力。
二人は切り合った予備動作のまま、交差したまま停止していた。
「ふっ。よもや、相打ちとは……」
「僕たちとって『剣』は、生命にも等しいです。
仮に己の生命力を糧として剣を生成していたならば、肉体は滅んでいたでしょう。
とにもかく、疑似刀剣が砕け散ってしまっては」
人の領域を超えた、闘いの果てに紅蓮機甲隊の面々は言葉を失っている。
しかし、そんななかで格納庫中にパチパチと拍手が響いた。
「ブラボー。飛鳥にミスマリア。悔しいけど、いい死合いだったよ」
拍手の主は、飛鳥に美味しいところを持っていかれたルカだった。
ルカは悔しさや憎しみの心を忘れ去り、純粋に飛鳥とマリアの剣技に称賛を送った。
さらに、立会人の命や翼も、ルカにつられ拍手をしていた。
「二人とも流石です! これぞ、超次元バトル☆」
紅蓮機甲隊の隊員たちも拍手加わり、拍手喝采となった。
この瞬間――飛鳥の脳内では、残酷だけども漉き取ったメロディーのピアノ音が流れていた。
――そして、徐々に心のATフィール○がひび割れていった。
『おめでとう。おめでとう』と脳内再生されている。
飛鳥は顔を上げ、「ありがとう」と呟いた。
誰にも元ネタを悟られず、悲しくも誇らしげにこの場は終息したのだった。
この日の飛鳥は再び英気を養うため眠りについた――。
ある宇宙では、黄金の艦隊が銀河を駆け巡っていた。
艦隊の先頭を行く戦艦から、図太い声が後方の戦艦へと通信が入った。
「バーンだ。シンよ、いま大丈夫か?」
「あぁ。大丈夫だバーン」
バーンの呼び掛けに澄んだ声のシンが応答した。
「してバーン。用件とは?」
黄金十二騎士を束ねるその長、バーンは若き黄金騎士、聖槍のシンを気にかけていた。
まるで、思春期の息子を心配する父親のようだった。
様々な『運命』が混じり合う因果により、シンは唯一の肉親である黄金騎士こと、
実の姉聖騎士マリアと生き別れになっていた。
当の本人シンは、あまり気にしていない素振りをしている。
ただ、逆にその態度により、バーンは煮え切れない心情であった。
「うぬ。これと言って用件はない。きっと、整備も順調に進んでおるだろう。
まぁ、たまにはお前とこうして雑談でもと……」
「ハハ、珍しいなバーン! 察しの通り俺の《ゲイボルグ・ラーハルト》は整備・修理が完了してる。
それだったら、バーンは最近どうなんだ……?」
「吾輩のグレートアックスは健在だ。むしろ、武人として餓えておる。
とにかく、あの一戦以来、静かだな……」
「あぁ、そうだな。しかし、あの戦いは燃えた。
紅蓮の機械兵器には戦慄が走った。
正直、生まれて初めて討ち存じた。バーンやナックルの協力なくしては
あの超新星機関二個の性能差は埋められなかった。
それ以前にあいつは『剣技』も姉さんと互角以上の腕だった」
黄金十二騎士の戦力は、代々拮抗を保ち銀河帝国メルディアスを支えてきた。
それでも、ときたまある世代によっては『個々の戦力』に差が生じる。
聖断のガンマの戦力を例にしていくとこうなる。
まず、乗り手が同じ機動機甲騎士兵器に搭乗した場合、青銅騎士級だと一戦機。
その次に上の銀騎士級で百戦機となる。
さらにその上に君臨しているのが、黄金十二騎士たち。
彼は最低、一千戦機級の強さを持っている。
いきなり、DBやハンターハン○―のように強さの基準値を出しているが
あくまで、強さの物差し程度の数値だと思ってもられば大丈夫。
そして、先ほど例に出したガンマだけども黄金騎士にも関わらず『五百戦機級』の強さ。
実に中途半端で黄金十二騎士最弱の強さなのだ。
黄金でもなく、銀でもない強さ。
そのため、数千戦機の強さを誇るマリアの前にガンマは無力にも等しかった。
ただ現状、ある程度の強さでも黄金騎士になれてしまう。
その鍵を握るのが銀河帝国メルディアス本星にいる人物たち。
ちなみに飛鳥の戦機も数千戦機級。
いずれは万も夢ではないかも知れない。
また思い出したかのように、戦機の値が出てくるかも知れないので
頭の隅にでも置いておいておいて下さい……。
――と、話の線路は戻り、バーンとシンは昔話に花を咲かせていた。
「確かに紅蓮の戦士は『未知数』であった。あの負けず嫌いなシンにそこまで
言わせるとはな。まぁ、マリアの敗戦も頷けた……。おっと、いかん」
「確かに俺はガキの頃から姉さんやバーン相手に負けて悔しかった。でも正直、黄金騎士になって初めて、互角以上の好敵手に出会えた。俺はもう一度戦いたい! ったく、
バーンらしくもない。姉さんのことはなにも禁忌にしなくていいよ」
シンもシンでバーンや、もう一人の黄金騎士の気遣いに感謝していた。
だがしかし、彼は逆にその優しさによって、息苦しく感じていた。
「そ、それはすまなかった。だとすればいま頃、マリアはなにを思い耽っているのやら」
「う~ん、姉さんは気難しいからなぁ。でも、姉さんの行動には意味があると俺は思う。
でないと、あのとき俺を止めず聖騎士マリとして死んでいた。だから、俺はもう一度、
姉さんと顔を合わせて話したい! そのために【銀河帝国メルディアス】に戻り、エリス姫が想い描いた、地球帰還作戦の真相も解き明かさなくてはいけない」
たとえ、離ればなれでいても、シンとマリアは心で通じ合っている。
黄金騎士マリアではなく、一人の騎士として行動した姉の行動を弟のシンは
信じ再会を待ち望んだ。
「な~に、マリアちゃんとの再会を待ち焦がれてるのはシン君、君だけじゃないんだぜ?」
「ん? その声は貴様……」
シンとバーンが会話する通信のなかに、軽やかでひょうきんとした声が混線した。
「その声はナックルズだな! 元気だったのか?」
「よっ! シン君。俺はクールな男だから、あまり表に出ないだけで健在。
バーンのおっさんは相変わらずだなぁ~」
この男はどこか、掴みどころがない雰囲気をしていて黄金騎士連合最後の騎士である。
聖拳のナックルズ。
彼は黄金十二騎士で唯一、己の拳のみを武器とする騎士。
自称「俺の拳で星は砕ける」程の威力を持つ。
機動戦艦ノアとの“死闘”では真っ先に、剣持飛鳥駆ける《鳳凰紅蓮丸》と交戦し彼の愛機、
グレートブレーカーで鳳凰紅蓮丸を追い詰めた。
しかし、鳳凰紅蓮丸の超新星機関の解放エネルギーで一度は沈んだ。
だが、ナックルズは密かに力を蓄え独自の言い回し『バーストモード』になり、
再度飛鳥を強襲し、バーンと協力してシンに道を開いて沈黙した。
そんな、時折見せる生真面目な一面により、ナックルズは銀河帝国メルディアスでは、
女子や子供からも人気がある。
なにかと、ギャップがあるのが《聖拳のナックルズ》なのだ。
「それはそうと、バーンのおっさん。この艦隊もそろそろワープして行かないと、
地球の船がメルディアスに到着しちまうぜ?」
「それは知っておるわ! そのために貴様の船の修理・修復を待っておった! それにもかかわず、貴様の言い草ときたら――」
凸凹のバーンとナックルズ。
この二人は基本的に現代社会の若者と中年を代弁した“水と油”の関係性。
二人の口論を見かねて、優等生のシンが間に入った。
「二人とも仲がいいは分かった。俺たちも早急に本星に戻ろう。全艦、ワープ準備!」
見事に彼は二人を黙らせた。
そして、シンの号令で一斉に黄金騎士連合は、連続ワープ航法に入った――。
ときは同じくして《機動戦艦ノア》は――。
ようやく、銀河帝国メルディアスの最終航路へと進路を取っていた。
「風間艦長。通常航路で本艦は時刻にして一週間……
168時間後に銀河帝国メルディアス圏内に到着いたします」
「ついに彼らとの対面か……!」
聖断のガンマとの一戦以来、大規模な戦闘はなく、ノアは順調に航海し最終局面を迎えた。
本来、ここまでノアの接近を許せば、自ずと反撃が来ると蘭大尉や飛鳥は予想していた。
しかし一向に反撃がない。
むしろ、いままでの航海のなかで一番静かで落ち着いていた。
暗黒の宇宙を照らす、星々を見とれていても大丈夫。
でも、この静け気さに一部の人間は警戒した。
「我が本星は内政面で色々と荒れているが……。
だが、ここまで接近されなにもないのは異常だ! エリス姫様は和平か、
銀河帝国メルディアス本星の最終決戦を望まれてる。
どっちみち、警戒は怠れん……」
「ええ、そうねマリアちゃん。きっとそう簡単にはいかないと思うわ」
飛鳥の腕輪から、渚の声が聞こえ立体映像で写し出された。
「マリア君と渚君の言う通り油断は出来ない。
だけど我々は諦めない。あくまで、対話による和平。その為に協力者から『力』を授かった」
「そうだね、丈さん。あの子の想いと、地球にいる人たちの想いを届けなくては!」
かつて、絶望にいた剣持副長と風間艦長。ある協力者によって蘇った剣持渚。
この三人の運命を巡る航海も、もうじき終焉を迎える。
その鍵を握るのが『紅蓮の飛鳥』こと、剣持飛鳥であり、剣持夫妻の愛息なのだ。
飛鳥も手にした力を使うのに器として、成長を遂げていた。
各々、重い留まることを想い、機動戦艦ノアは銀河を突き進んだ――。
そして、168時間たった。
最終決戦前夜、全乗組員は格納庫に集結していた――。
決意を固めた表情で『風間艦長』は口を開いた。
「みんなに集まってもらったのも、他でもない。
本艦……機動戦艦ノアは地球時間にして、約八時間後に銀河帝国メルディアスへ到着する。
これまで、様々な困難……犠牲を経て、ようやく彼らと対話するチャンスを得られた。
だが、生半可気持ちではいかないと思う。
だけど、私は決して諦めない! だから、みんなも明日、全力を出し切って地球に還ろう……」
剣持副長、蘭大尉をはじめ各々の搭乗員たちは、片手にグラスを持ち風間艦長の瞳一点を見つめていた。
「まあ。普段口下手な私だが、今日だけはみんなの心へ直接言訴えさせてもらった。
と、中年のボヤキはここまでにして、景気づけに乾杯を上げよう!
ただし“未成年”はジュースだがね☆」
「ちぇ。流石にそこまで大判振る舞いではないか……!」
丁度、背伸びをしたくなる年頃の翼へ人生の先輩は助言をした。
「水城よ。あと少しすればいやでも、大人の仲間入りなんだ……」
「蘭大尉は素敵な大人の女性ですもんね。私はこれからも、お手本にさせてもらいます!」
命の尊敬の眼差しを受けて、うんうん頷いて腕を組んでいる蘭大尉。
しかし、思いも寄らぬ人物が割って入る。
「ダメですぞ! 風間オペレーター。ズルズル婚期を逃して『三十路』になります!」
「こら林! 命さんに変なことを吹き込むなっ! それに私はストイックな『大人』のレディー。
だから、これまで恋愛に縁がないだけだ。言うならば、私はまだ“本気”を出していないだけなの!」
冗談交じりに林が蘭大尉をイジってみたが、思いのほか蘭大尉がムキになってしまった。
たまらず、副長の剣持博士はワザとらしく咽た。
「ゴホン! では風間艦長。乾杯の音頭を頼みました!」
「では皆さん、お手元のグラスを掲げて頂き……乾杯~!」
『かんぱ~い!!』
ガラスでできたグラス同士でカッカッと、ぶつかり合い無数の快音を奏でた。
分け隔てなく、風間艦長や剣持副長たちは日頃、活躍するクルーたちや
紅蓮機甲隊の隊員たちと酒を飲み交わし、上機嫌だった。
そして、碧い青春組みの飛鳥たちは蘭大尉と飲み交わしていた。
しかし、蘭大尉は早くも酒が回り始めていた。
「うぅ~飛鳥君。アンタも少しだけお酒飲んじゃいなさいよ~」
「ら、蘭大尉。もう相当、酔われてますね……?」
早くも蘭大尉は出来上がり、少しエッチで陽気なお姉さんモード。陽気なお姉さんは、
飛鳥の肩に絡みついた。
「もう仰々しいわね~。ったく、相変わらず可愛んだから~。えへへ❤」
「……!」
酒の匂いをさることながら、蘭大尉の大人の『女性フェロモン』が若き飛鳥を底なしに、
グングンバンバンと刺激させる。
余所余所しくなった飛鳥に対して、さらに蘭大尉は彼へ畳みかけた。
ご自慢の豊満バストを使って、紅蓮の飛鳥を制圧してみせた――。
飛鳥の利き腕である、右腕は肌色のマシュマロに包まれ、彼は男の性が呼び起こされ、
下半身の『甲冑』がいまにも暴れ出そうとしていた。
「飛鳥もいまの蘭大尉には敵わんか!」
「もう蘭大尉、不潔ですよ。飛鳥君が嫌がってます、辞めてあげて下さい」
これまで、翼も飛鳥みたく何度か蘭大尉のハイパーモードを見ている。
その都度、蘭大尉からエンドレスな愚痴とパワハラを受けて、翼は大人になっていた。
純粋な乙女、命はこの光景にモヤモヤが隠せない。マリアとはまた違った感情であった。
今回の相手は正真正銘、大人のレディー。同
性の自分でさせも羨むボディの持ち主。
物語上、起こってはいけないシュチュエーショが発生してしまう胸騒ぎ。
『あ、飛鳥君――! だ、ダメ……』
『もうダメです……。ぼ、僕は……ら、蘭大尉――!!』
いつしか、命の頭のなかでは【十八禁】の画が浮かび上がっていた。
「あらら~。ウチの子は年上の“お姉さん”もイケちゃうのね?」
愛息、飛鳥の危機に母が駆けつけ――いざ、渚ママ参上!
「ダメよ、飛鳥~。このお歳のお姉さんはね、必殺技を持ってるからね!
だから、飛鳥。これからの人生を捧げられるなら反対はしないけど、要注意☆」
とてつもなく、意味を持たして渚は飛鳥へ問いかけ檄を飛ばして上げた。
しかし、功を奏し飛鳥の腕輪から突如、出現した渚に見とれている蘭大尉のスキを
彼は見逃がさなかった。
心を落ち着かせ、一部下半身の力を抜き、蘭大尉のエロティックな香りがしワクワクどきどき、
してしまう谷間からようやく脱出した。
「ナイス母さん! 危うく昇天してしまうところだったぜ」
「フ、フ~ン! これ以上、進行しちゃうと命ちゃんが伝説のスー○ーサイヤ人になっちゃうので!」
冷や汗をかき、息切れの飛鳥はようやく呼吸を整えた。命は命で渚からのフリにより、
赤面しつつも心のなかでは……
『ナイス、おばさま! 年増のお姉さんに飛鳥君は上げません!』
もう一人の命――ダークな彼女が見事にガッツポーズを決めていた。
「こ、これは剣持科学長! ご子息に失礼いたしました……」
「ふふ、そんないきなり改まっちゃって、藤崎さん。今夜は無礼講よ~!」
酔いが冷めた蘭大尉は唐突に林へ標準を変えた――。
林は安全確保のため、風間艦長や剣持副長がいる方へ逃げっていて、
蘭大尉も同じ方向画へフェードアウトしていった。
それとさることながら【剣持渚】にもいつの間にか『役職』が与えられていた。
元々、科学長は夫である十三博士が受け持っていた。
しかし、愛妻の渚が現世に復活してからは『科学長』の肩書は妻に継承されていた。
これまで本職――渚の大きな役割としては『紅蓮の飛鳥』を支える生体コアだった。
生前の渚は科学者として、その道筋で――、有名だった。
それに端整な顔立ちでもあったので、TVなので美人過ぎる科学者などと取り上げられ、
特技の剣道によっても世間に名が知れ渡っていた。
だから、当時――冴えない剣持十三との結婚は大いに世を騒がせた。
しかも、猛アタックを仕掛けたのは渚からだった。
周囲が騒ぎ立てるなか、若かりし風間丈は二人を支え見守り続けた。
最終的には、十三博士が男になり、彼からプロポーズをした。
渚は二つ返事で十三の愛を受け止めて、彼らは永遠の愛を誓い合い、
めでたくゴールインし『飛鳥』が生まれた。
だが、いまになっても渚が十三博士を選んだ理由は不明であった。
もしかしたら今後、解明されるかも知れないがそれは別の物語。
――と、昔懐かしい記憶を思い出す渚だった。
「か、母さん……? どうしたの呆気にとられてさ。みんなの前が久しぶりだから、緊張してるの?」
飛鳥の声を聞いて、渚はいまこの瞬間を――ときめかせていた。
「まぁ~。え~と、最終回直前ってこんな感じじゃん? それにしても命ちゃん、大きくなったわね!」
「はい、おば様。おば様もその……変わらずお綺麗ですね!」
逞しく成長した息子を誇りに思いつつも、渚は飛鳥の幼馴染、
命の成長も飛鳥と同じくらい微笑ましかった。
幼き頃はよく飛鳥と三人で一緒に遊んでいた。
まだ幼かった飛鳥は、時折命と遊ぶ最中でも、母である渚に甘える仕草を見せていた。
いまだとあまり、想像はできない。
そんな姿に命は幼心に渚に少しだけ焼きもちを妬いていた。
でも、命は命で母から愛を注がれていたので納得できていた。
それは、純粋に子供なら欠かすことができない存在――母性だと命は満足していた。
――しかし、ある日突然、渚は亡くなってしまった。
その頃、命は現実に死を実感できなかった。
だけど、泣き崩れ父親の剣持博士に寄り添う飛鳥をまじかにして意識が変わった。
渚の死をきっかけに、人一倍『飛鳥』を思う気持ちが強くなっていった。
「いや~ね、命ちゃん。本当なら、私はア・ラ・フォーなのよ! ピチピチの『十代』には勝てないわよ。よくて、妖艶の美魔女かしら!」
テンション上がった渚と会話をしていて、命は安心していた。
命が幼い頃、飛鳥と一緒に遊んでくれた優しい渚の姿を重ねていた。
改めて、彼女はこの奇跡的な時間――瞬間に感謝して、彼らは銀河帝国メルディアスとの決戦に備えた。
「飛鳥のお母さん! どうも~」
餓えた若者の一人、水城翼が始動した。
翼はお酒を飲んでいないが、この場の独特な雰囲気に酔った彼はとち狂って、
渚へアタックしていた。
「おやおや、あなたは水城翼君ね。いつも、飛鳥がお世話になってるわね~!」
「なんだか翼、様子がおかしいね……?」
立体映像ながら、生前の全盛期、剣持渚を忠実に再現されている。
いつもフランクな『紅蓮機甲隊』の縁の下の力持ち、翼が美魔女に仕掛けた。
若気のいたり。言わば――弾けまくるハジケリスト。
「やっぱり、飛鳥のお母さんは綺麗だな~。
俺、もろに【タイプ】っす! あぁぁ~~。渚さんみたいな彼女が欲しい」
「あはは。もう翼君ったら、おばさんをからかって……」
どっちらかと言えば、飛鳥は異性からアプローチされたり、周りから可愛がられる愛される人格者。
対して、翼は顔が学年――学校一広く自分から行動を起こすタイプ。
そして、意外にも昔堅気な、硬派で浮いた話を聞いたことがない。
しかし『Dの一族』ではないらしいから抜け目がない。
きっちり、やることはやっている。
とにもかく、翼からは『危険なオーラ』が放出され、翼の魅力は普段の三倍の効果が働いていた。
我が子、飛鳥を前にしてその友人から、言い寄られてもまんざらではい渚。
「ちょ、ちょっと母さん……!」
慌てて飛鳥は彼へ聖なる制裁を下そうとするも――。
翼は飛鳥からの断罪を華麗に避けて翼は息子から強制的に『承認!』を得たのだった。
いよいよ、そうなると残る山場は遥か彼方の頂に存在するあの男だけ。
しかし、このような事態になっても、当の本人は相変わらずだった。
立体映像の渚は両手で赤面した頬を抑え、下を俯いていた。
「待ちたまえ、水城戦術補佐官。渚に話がある」
「あ、あなた~。久しぶりね♪」
先ほどまで頂に君臨していた中年の博士はいつの間にか、渚の立ちすくしていた。
彼女は瞳に剣持副長を映し込んだ瞬間――目をキラキラと輝かせた。
若武者の翼を完全スルーして愛する夫へ近づいて行った。
ただ、立体映像により、渚を映し出すことができる距離が限界だったので、
飛鳥は気をきかせて父の元へ寄り添った。




