夢であった
「か、艦長このままではマリア大尉が……!」
あのアスカ大佐の出来事は体感でいうところ、ほんの数秒間ほどの出来事だった。
まさに彼は時の流れさえも支配して超越した。
「ここは……。そうか、ミコト……。まだ私にも」
赤い彗星のアスカは機体のエンジンを起動し反転させた。
アク○ズが落下するなかで抗う白い悪魔に隣接した。
「あ、アスカ……!?」
「……どうやら、マリア。私も年を取ったようだな……。
つい先ほど、ミコトに小言を言われてしまってな……。
マリア! 私ももう少しだけ人類に未来を託そうと思う。
きっと、近い将来、人類全てがニュータ○プへ覚醒を遂げることになるだろう……。
これはその通過儀式に過ぎん!」
ミコトの遺志を汲み取り、いま一度、人類に希望を抱く赤い彗星のアスカだった。
しかし、現実はそれを許さない。
マリア大尉のνガン○ムはサイコ・フレームにより、大圏の熱量を完全に遮断していた。
ただ、アスカの愛機、サ○ビーでは緑色の光の膜の恩恵を受けられず、
マリア大尉も自分を守ることで精一杯だった。
「この期におよんで、まだ私を心配するか……。だがなマリア、これは私自身の責任だ。元より、君を巻き込むつもりはなかった。なんなら、君だけでもこの場から退避して、
マリアとミコトが望む優しくて平和の世界――そんな理想の未来を作ってくれ!」
「もともと、お前のことなど心配はしていない。それに私なんかが、
世界をまとめられる器なんかじゃない。むしろ、お前ほどの男なら、世界を統一できただろうに……。
私だって、ミコトには感謝し返しきれない恩がある。それに――償えない罪もあった。
だから、逃げない」
マリア大尉の発言にアスカ大佐は不敵な笑みを浮かべ、
二人は一斉に機体のエネルギー源を全て推力に回していた。
『でぇやあぁぁあ!!!』
――その瞬間、マリア大尉のνガン○ムの碧の光はさらに煌めいた。
アスカ大佐のサ○ビーも同様の現象が発現して真紅に輝いた。
「未完成だった、サイコ・フレームが私にも反応をしたのか……! できそこないのニュータ○プである私が……。そうか、ミコト……」
碧と赤の光のオーラは等しく広がり、次第に混じり合い、紫色に変色した。
そして、そのまま――ア○シズを包み込み地球圏の落下軌道から逸れた――。
「マリア……」
「アスカ……」
淡紫の光の繭は宇宙から消え去り、超越した意識下のまま、マリア大尉のνガ○ダムと、アスカ大佐のサ○ビーも宇宙から忽然と姿が消えた――。
そして、刻は二〇九九年十二月三日。宇宙空間に機動戦艦が航海をしていた。
その一室にて、赤毛の美少年は飛び起きた――。
「ま、マリア! ミコト!」
横たわっていた、飛鳥は飛び跳ね起きるとなにやら、柔らかい物にぶつかった。
「……! な、なにをする」
「きゃ! あ、飛鳥君ったら……」
どうやら、主人公の剣持飛鳥は寝ぼけていて《逆襲のアスカ》という、エセSFの夢を見ていたらしい。ようはこれまでの幼気な、件は飛鳥の夢の中で繰り広げられていた出来事。
現実の飛鳥は目覚めて早々、母性の象徴であるマリアの胸に埋もれている訳。
「や、柔らかい……。しかもそれでいて弾力が!」
まだ、夢と現実の狭間にいて、世界線がごっちゃの飛鳥はいつもみたく、爽やかな声ではなく、
あえて掠れてダンディーな声で実況していた。
――と、飛鳥は恐る恐る視線を上げるとマリアと目線が合った。
ようやく、我らが『紅蓮の飛鳥』は事態を把握したのだった。
「ま、マリアさん。こ、これは誤解です! だ、だから……」
「貴様が寝込んでる間、苦しそうにして、叫んでいたから、私と命殿は懸命に看病してたのに貴様ときたら……!」
ギュイーンと脳内でSEが鳴り、飛鳥は身の危険を察し、
蘭大尉にも劣らない居心地のいいマリアの胸から逃げようとしたが、因果律はそれを許さなかった。
マリアから右手の平手打ち――左からは命の竹割チョップが飛鳥の脳天と頬で交差した。
「む、無限交差……! や、病み上がりにはキツイです……」
万をじして、飛鳥は復活するも翌週には沈黙。
DBだと仙豆を貰って、次のコマで即退場。
そもそも、飛鳥がこれまで悪夢を見ていたのには理由がある。
現実の世界において、黄金騎士が支配する植民地星で飛鳥は戦っていた。
そこで協力者の裏切りに合うも、飛鳥はその行いを許して共に戦った。
しかし、卑劣なガンマの策により、協力者であり裏切ったはずの少女、テトラが人質にされてしまった。飛鳥は罠を承知で飛び込み、テトラを救うため、その身を犠牲にした。
結局は飛鳥とマリアの勇気ある行動により、植民地星の攻防は飛鳥たちが勝利を収めた。
ただ、飛鳥は聖断ガンマから受けた傷により、身体に血液が足りなくなった為、輸血を余儀なくされた。
しかし、飛鳥の血液型は珍しく【機動戦艦ノア】の乗組員では適任者はいなかった。
一同、藁にも縋る想いでマリアへと輸血が委ねられ、奇跡的に適合した。
幸い拒絶反応もなく、無事飛鳥の体内にマリアの血液が張り巡りされた。
当初、マリアは血液を提供するだけだった。
そうはいっても、嫌々ながら命と一緒に飛鳥を看病して、紅蓮の飛鳥が目を覚ますのを待ち望んでいた。
そして、そうこうしている内に飛鳥はもう一度、目覚めた。
「……それで、ノアはいまどこに向かってますか?」
「通常航海でこの艦は、銀河帝国メルディアス本星へと向かっておる……」
まるで、十四年間眠っていたかのような錯覚を起こしている飛鳥だった。
目の前にいる彼女たちから、これまでの経緯を詳しく教えてもらった。
大きく時間というカセがなくなった機動戦艦ノアは、少しだけ歩幅を緩めていた。
理由として、機動機甲兵器の修理と、紅蓮機甲隊の再編成。
その中でも、黄金十二騎士の一人である『聖騎士マリア』の参入はノアにとって、
地球側に大きな『戦力』となった。
だがしかし、戦力と引き換えに紅蓮機甲隊内にわだかまり。
マリアへ信を置くことのできない隊員との摩擦が生じて、少なからず不穏な影が紅蓮機甲隊へと重くのしかかった。
それでも、飛鳥や翼。
艦長たちの計らいによって、一人の騎士として誓いを立てたマリアの気高さを前にして、
紅蓮機甲隊の戦士たちは心を静めた。
――そうして、部隊が再編成され決定が下された。
紅蓮機甲隊の攻撃の要である、隊長、紅蓮の飛鳥率いる【第一部隊】副長は水城翼。
次に閃光のルカ率いる、量産機主体の不知火、神風タイプによる中距離の【第二部隊】。
そして、聖騎士マリアを主体とした【第三部隊】。圧倒的な後方支援なのがコンセプト。
戦況によっては《鳳凰紅蓮丸》にも劣らない火力で戦場を斬り裂くことも想定されている。
こうして、紅蓮機甲隊は戦力を上手いこと分散し、戦術的かつ、
戦略的な戦法を磨いていくことになるのだった。
某漫画いう、紅蓮の飛鳥。そなたを“千人将”に命じる……。
『よっしゃ――!』といった具合なのだ。
ざっと、二人の話を聞いた飛鳥はいてもたってもいられず早速、二人を連れて病室から飛び出て第一艦橋へ向かった――。
しかし、現在第一艦橋では主要人物たちによる作戦会議中だった。
それでも、飛鳥はお構いなく中へ突入し命とマリアも彼の後に続いた。
電子扉がシューンと開いた瞬間――。
突如、なんのまいぶれもない状態で元気過ぎる飛鳥の出現に一同は言葉を失った。
その数秒後……蘭大尉が、一方的な抱擁により進展が起こり、
飛鳥はみんなに『おかえり』と言葉をかけてもらえた。
そのまま、紅蓮の飛鳥は『銀河帝国メルディアス本星』攻略を想定した、
大規模なブリーフィング(作戦案)を蘭大尉・水城翼や風間艦長と作戦を練った。
命とマリアはただただ、元気そうな飛鳥の様子を見守っていた。
しばらく、作戦を練り上げること数時間――。
やっと、大まかな作戦が形になったところで、飛鳥へ再び眠気が襲いかかった。
“天才高校生”と言えど、病み上がりなのとこれまでの疲労がまだまだ体から抜けずいた。
そのため、飛鳥は一人、一足早く第一艦橋からし退出し、休息を取るため自室のベッドに横たわった。
「ふわぁ~。疲れたな……寝るかな……」
「……おやすみ、飛鳥!」
飛鳥はウトウトしながら、おもろに右腕へ視線をやった。
すると、立体映像に映し出された小さい女性が瞳を潤わせ彼をを見つめていた――。
飛鳥を優しい瞳で見つめる女性は飛鳥と同じで、赤みかかった綺麗な瞳をしている。
ジー……。
「か、母さん。久しぶり! もういままで出てこないでさぁ!」
「わ、私は……愛する息子になにもしてやれなくて。ただでさえ、ラブラブなフラグが立つ場面で母の登場はやぼってもんよ、飛鳥……。とにもかく、無事でよかったわ❤」
この女性こそ紅蓮丸の生体コアであり、エンゲージ・リンクシステムを司る剣持渚。
普段は飛鳥の腕輪の中や紅蓮丸のシステムに潜んでいる。
現在は、息子と二人きりなので、立体映像として登場しいていて、
夫の剣持博士以外には姿をほぼ見せない。
――と、まぁ軽く剣持ファミリーのおさらいをしたところで、飛鳥は渚が言う、
ラブラブなフラグの意味を理解せずいた。
ことその手に鈍感な飛鳥はなんのことか、思い当らなかった。
他人や大好きなアニメやゲームだったら、フラグ立てに敏感なのだが……。
とにもかく、飛鳥の一番の理解者である母、渚との再会を果たしたのだった。
「母さん。そもそも、命ちゃんとマリアさんは大切な『友達』だよ!」
「我が息子、飛鳥よ……。そりゃ、罪ってもんだ。命ちゃんはともかくねぇ……。
マリアちゃんは――確実に飛鳥へ心を開きつつあるのに飛鳥は小さい頃から……。
まぁ! それはこれからのお楽しみよね☆ それはそうと、いよいよ“最終章”って雰囲気ガンガンよね!」
ヒロイン・命の幼馴染補正は言わずとも絶大だった。
けれど、新参マリアも敵が味方になる王道パターン。
しかも、二人は体の一部である血液を共有してしまっている。
こちらの行方にも目が離せない。
今後、間違っても片方だけが不自然に退場することはないはず。
近い将来、飛鳥はロボット乗りの枷とは別に葛藤を抱くかも知れない!?
それはそれで一旦置いておいて、渚の口から出たように地球と銀河帝国メルディアスとの戦いも最終局面を迎えようとしていた。
「まさにそうだね。
でも僕たちは最後まで、話し合いによる和平を望むよ母さん。たとえ、決裂してもきっと悲しみや怒りに支配されず、手を取り合うこともできると信じる。だから、僕たち《鳳凰紅蓮丸》に懸かってるんだっ!」
汚れなき瞳で力強く発する息子の言葉を聞いて、渚も力強く頷いた。
それからは、久しぶりに親子の会話に花を咲かせ飛鳥は眠りについた。
星々の光りに照らられ、飛鳥は目覚めた――。
手短に朝の準備を済ませて、この日一番にノアの道場へと向かって行った。
「一、二……!」
マイロッカーに閉まっていた道着に袖を通し、飛鳥は誰もいない道場で懸命に――、
それでいて、ひたむきに竹刀で素振りをしている。




