やすらぎのトキ
「ここは……。そして僕を呼ぶ声は……」
「やっと、応答してくれましたね! 私自身もこの空間はわかりません。
ですが、『剣持飛鳥』とこうして語り合えることが叶いました」
飛鳥はこの声に聞き覚えがあった。
父や風間司令が巨大モニター越しに会話して人物だと瞬時に理解した。
優しく綺麗な声がこの空間に木霊している。
「あなたとはいつだか、少しお話しましたよね? それにしても僕はなぜ裸で
こんなところにいるのだろう……」
「あはは。そういえば、自己紹介がまだでしたね。
私はエミリアと申します。それについては、私にもわかりません。
私自身も肉体は、睡眠しており
意識だけがこの空間に存在しております!」
「僕も自己紹介がまだでしたね。僕の名前は、剣持飛鳥です。
階級は少尉で機動機甲兵器部隊、紅蓮機甲隊の隊長をしております!」
飛鳥も持ち前の紳士精神を全開にして、エミリアに丁寧に伝えた。
「はい。あなたのことは父上や風間さんからお聞きしております。
紅蓮丸……紅蓮鳳凰丸のパイロット。
そして、端整なお顔の持ち主だとね☆」
飛鳥は照れながらも、否定はしなかった。
「ゆえに紅蓮の飛鳥は、地球と銀河帝国メルディアスを繋ぐ
存在だと認識しております」
「僕もこの力の正しいあり方。さらにこの戦いの結末を迎えるのに
必用な力だと思っています!」
エミリアは、改めて飛鳥に鳳凰紅蓮丸を託してよかったと再認識していた。
また、今後の行く末の『鍵』を握っている、
ダイレクト型エンゲージ・リンクシステムも着々と
進化を遂げていると飛鳥の言動や雰囲気から伺えた。
そして、飛鳥はエミリアに真相を訊いた。
「エミリアさん。あなたはこの戦いが始まる前から
僕の父さんや風間司令と接触していて、さらに地球に対して
援助してくれてる。あなたの目的はなんですか?」
先ほどまで楽しげに飛鳥と会話をしていたエミリアだったが、
飛鳥の本質的な投げかけに数秒間、沈黙が続いた。
その後、エミリアは可愛らしい声で飛鳥に返答した。
「賢い『紅蓮の飛鳥』なら、疑問に思いますよね?
ですが私にやましい考え事は、ありません。
強いて言うのであれば、銀河帝国メルディアスと“ある子”を思って
地球に託しました」
「僕もそういう意味でエミリアさんに真意を訊いた訳では、
ありませんでした。ただ、一つ引っかかることが」
エミリアが地球にしてきたことを考えれば、飛鳥は納得できた。
しかし、飛鳥には引っかかることがあった。
「エミリアさん。一つ疑問があるんですが……。
なぜ、メルディアスはもっと戦力を投入して、
地球を【攻略】しなかったんですかね?」
実際に幾度も刃を交えた飛鳥は、黄金騎士の脅威は凄まじかった。
もし、仮に《黄金十二騎士》が、一斉に地球に進軍していたらと思うと
身の気がよだつ心境。
「やっぱり、そう思いますよね? それには深い訳がありまして。
現状、銀河帝国メルディアスは、皇帝が亡きあとその娘であるエリス姫が
メルディアスをまとめています。しかし、エリス姫が掲げた
地球攻略作戦に疑問を抱く者の少なからずいまして。
実はいま銀河帝国メルディアスは未知の敵勢力とも、交戦状態にあります。
そのため、黄金騎士長バーンを始めとする黄金騎士側とそれに異を唱える
『聖寂のザード側』で対立関係にあります。
そのため、地球攻略作戦はエリス姫に忠を誓った、バーン側の黄金騎士に
委ねられマリアが最初に出陣しました。
端的に言いますと、いまメルディアスも未曾有の危機に晒されております」
剣持博士や風間司令は、知っているかも知れないが、
飛鳥はやっと銀河帝国メルディアスを知った。
「ま、まさか。そんな複雑な情勢だったとは……。
でも確かにマリアさんと聖断のガンマはなにか因縁じみた関係性でした」
地球と銀河帝国メルディアスを繋ぐ様々な憶測。
その陰で蠢く、闇の勢力たち。
単にメルディアス本星を目指して
中枢を叩いて終わる戦いではないと飛鳥は予感した。
それでも、地球の希望、『機動戦艦ノア』は
一刻も早く向かはなくてはいけない。
「これが現状の銀河帝国メルディアスとなります。
マリアも苦労はしましたが、紅蓮の飛鳥や素敵な娘と出会って、
変わったようですし安心できました。
と、そろそろこの空間も歪みが生じてきましたので……」
「僕たちは、その可能性を信じて前を突き進みます!
待って下さい。最大の疑問はあなた正体……」
意識だけが飛び交う、この空間が閉じようとする最中、
飛鳥は最後に全てを知る存在であろう『彼女』の素性を聞いておきたかった。
「えへへ。それは、秘密です! 是非とも、
銀河帝国メルディアスでお会いしましょう。
きっと、その頃紅蓮の飛鳥に“素敵な力”も発現すると思いますし!
では、飛鳥。ごきげんよ~」
「はい。近い内にお会いできることを楽しみにしてます!
エミリアさん。さよなら……」
二人は、再会し現実世界で出会うことを約束して幻想的な意識の空間は消滅した。
飛鳥はまた、夢の世界へと戻った。
エミリアも本体が休まる元へと還った。
こうして、地球と銀河帝国メルディアスを巡る戦いは両陣営とも
一時の安らぎのひと時に浸った。
しかし、その間にも業を背負いしエリスは大いなる野心を胸に
地球を見据えていた。
着々と近づきつつ地球の希望、機動戦艦ノア。
飛鳥駆ける、鳳凰紅蓮丸も修復も完了し紅蓮機甲隊も復活を遂げ
さらなる、激戦を繰り広げ飛鳥が絶望の先で見たモノとは……。
様々な人々の想いが交差して、混沌の闇が支配する。
それに反して“希望の光”も飛鳥たちの前に出現して飛鳥は覚醒する。
次回、『破壊と希望のヒカリ』篇。
この次も買って読んでくれないと、月にかわってお仕置きよ!
それじゃ、スペース・ランナウ○イ――。




