抵抗する瞳
この星の調査を終えた紅蓮機甲隊と蘭大尉たちは
聖断のガンマが待つ、基地攻略作戦を練詰めた。
第一艦橋では、珍しく張りつめた空気が漂っている。
「紅蓮機甲隊は、士気が低下するどころか隊長の僕が言うのも照れますが
確実に前を向いて一歩ずつ、進化してると感じてます」
「それはありがたいわ、紅蓮の飛鳥。だけども、現時点で《鳳凰紅蓮丸》は
戦力として換算はできない。他の不知火タイプや神風とルカさんの
ノルマンディー・ヌーヴォは出撃できますが」
機動機甲兵器による、戦闘は極力避け今後の銀河帝国メルディアス本星での
決戦に備えて、戦力を温存してこのままやり過ごすのが定石ではあった。
しかし、人類はテトラやこの星の置かれている状況を見過ごして
安息を求めてはいなかった。
葛藤劇を繰り広げる最中、命の声が響いた――。
「生体反応をキャッチしました。メインモニターに映します!」
時間にして昼間だったが、地形的に砂ぼこりで映像が荒くなっているので
一同は目を少し細めて、モニターに噛り付いた。
すると、飛鳥はその人影に気づいた。
「!? て、テトラさん……」
飛鳥の声に命、翼蘭大尉が反応した。
「風間艦長、どうされます?! この子は先日、出会った子でして……」
「藤崎君の報告に上がっていた子か。とにかく、事情を聞いてみるかね」
威勢よく蘭大尉は、返事を済ませ飛鳥と命、翼を連れて藤崎小隊はテトラを
迎えに行き、数分後第一艦橋に戻ってきた。
「藤崎小隊、ただいま戻りました! 風間艦長。
テトラさんをお連れしました」
「了解した。おかえり藤崎小隊! さて、なにから話していいのか」
テトラは、萎縮するどころか、胸を張って風間艦長が居座る座席を見つめている。
飛鳥と翼は、念のため蘭大尉から無言のメッセージを受け取り、
テトラの背後に立ち非常事態に備えていた。
「あなたがこの船の最高権力者ね? ちょっとした耳よりの
情報を提供しに来たわ!」
「いかにも私は、地球防衛軍NETEROの機動戦艦ノアの艦長、風間だ。
それは、ありがたいことだが。君はなぜ? その情報を私たちに教えるのだね」
以前、テトラが飛鳥たちに向けた眼差しは冷たく、
瞳に光はともなっていなかった。
飛鳥たちの滞留に否定的なテトラだったが、
なにやら想い詰めた表情で一呼吸終えて、テトラは口を開いた――。
「理由は簡単さ。ついにガンマが支配する基地の経路と情報を収集ができた。
私たちは、いつしかこんな日を待ち受けていた。
ガンマを倒して、バラバラのなった家族と再会して失った誇りを取り戻すと。
だから、恥を承知であんたらに協力を求めにきた!」
密かにテトラは、飛鳥の想いに賛同していた。
自分と同じように、銀河帝国メルディアスの脅威にあだなす者がいることに。
テトラは、一か八かノアの勇士たちに賭けてみることを決断した。
「私たちも君と同じく、メルディアスに苦しめられてる。
しかし、それは信用できる情報なのか……」
風間艦長、剣持副艦長はテトラの話を真剣に耳を傾けている。
だが、立場上即答は難しかった。
それを見かねた、透きとおった声で赤毛の少年が名乗り出た。
「これは、チャンスです。テトラさんの情報の真偽はわかりません。
だけど、僕たちには現状策はないです。それに黄金騎士の
一角の牙城を落とせれば、今後のアドバンテージにも繋がりますッ!」
『紅蓮の飛鳥』により、蘭大尉は瞬時に『聖断のガンマ』攻略作戦を立案した。
作戦自体は、簡単で人的による基地の制圧にあった。
紅蓮機甲隊少数と蘭大尉、林、634、翼、ルカでの電撃作戦。
しかし、黄色いツインテールが自ら名乗り出た。
「ら、蘭大尉……! 私も参加させて下さいッ!」
激戦を予想される作戦だったが、命は志願した。
命はかつて自分をテトラに重ね、歯がゆい思いをしていた自分を見た。
「み、命さん。この作戦は……。し、仕方ない。
その目で訴えられたら、私は白旗を上げます☆」
「ありがとうございます。蘭大尉!」
風間艦長に似ている眼力の前では、蘭大尉はタジタジ。
でも、蘭大尉は命にも参加して欲しいと願っていた。
「いZAというトキ派、おれガ盾になルぜヨ!」
「こら、634。その役目は俺だろ。俺みたいなガタイのキャラは
ヒロインをかまってその後、主人公が覚醒するきっかけを与えるキャラだ!」
ドラゴ○ボールのピ○コロさん。幽遊白○の桑○さん。
活路を開き、主人公を覚醒させてきた名脇役たち。
だが、残念ながら林では飛鳥を覚醒できない。
よってこの展開は御座いません。
林の若干寒い場面で作戦会議は終了したが、
その後各々想いを胸に持ち場へと戻り、電撃作戦の決行日の朝を迎えた。
「諸君、健闘を祈ってる。それでは、頼んだぞ!」
風間司令は電撃突撃部隊に激励の言葉を送り飛鳥には、
無言で娘の命を託したと言わんばかりの鋭い視線で訴えかけた。
飛鳥もその思いに気づき笑みを見せて、
期待に答え全員で帰還することを制約した。
夜風にあたり、月夜の明かりに照らされて最初の目標ポイントで
テトラ・ミトラと一同は合流した。
「まずは問題なさそうだな……。それじゃ、ここからは私が案内する」
一同はテトラに委ね、肌寒い荒野を突き進んだ。
約三十分歩いた地点で盛り上がった、丘にテトラの指示で一同は立ち止まった。
「ガンマの基地はもう目と鼻の先。ここで私たちは、囮になってもらう
協力者の反乱を待ちそのスキに手薄になっている、警備のなか別の入り口から
突入する。今日は特別に警備が手薄だから、赤毛の男たちの部隊で
制圧してもらうわ! だから、頼んだわよ……」
「わかってます、テトラさん。僕ら紅蓮機甲隊の働きによって作戦の
成功が賭かってると。だから、全力で挑み勝利します!」
そのやりとりの最中、渚は一人違和感を覚えている。
「……飛鳥。少しいいかしら?」
一番後ろにいた飛鳥は腕輪から聞こえる渚の声に気づき体を逸らした。
「ど、どうしたの母さん? それに今度からは堂々とみんなの前で
現れんじゃないの」
「まぁ、それはいいとして。いきなり現れて、この作戦に異論を説くのは
頂けないでしょ。確信はないけどなんだか、いやな雰囲気が漂ってる……」
飛鳥は、渚の気持ちもわからなくもなかった。
実は飛鳥も薄々違和感を覚えていた。
だが、飛鳥は踏み切れずいる。
「僕ら二人で注意していこう……」
「うん? 飛鳥そろそろ行くぞ!」
そっぽ、向いている飛鳥に翼は声をかけ飛鳥は二つ返事で
再び前線へと戻った。
「……それじゃ、そろそろはじまるからみんな準備して!」
テトラが時計を見ながら全員にそう促した。
すると、夜が更けった基地に複数の影が現れた――。
「メルディアスはこの星から、出てけー!」
「父ちゃんや母ちゃんを返せッ!!」
テトラの祖母やテトラと年が近い子たちの一団が
ガンマの基地の前に集結した。
「こ、これは一体?!」
「この星には、私みたく抗う意思を持つ人たちがいる。
今日は銀河帝国メルディアスの聖断のガンマから、
親や友人、隣人を奪われて一年経った日なのさ。
だから、この騒動の内に行くよ……!」
飛鳥たちは、援護射撃を無下にしないためにも迅速に動きどうにか、
ガンマのいる基地内部へと突入に成功した。
内部は恐ろしく、静かだった。
颯爽と一行は基地内を突き進むなか、634。
ただひとり、一機遅れている。
「おい、634! どうした遅れてるぞ?」
「ハヤしの大将。ド卯や羅、カラだ画錆びついてる」
仕方なく、林技術長は634のメンテナンスため最後尾に付き
みんなを先に行かせた。
しばらくして、一行は迷路のような道で行き止まりに着いた。
「さっきから、見慣れた道ばかり……」
「おかしいね。これは……」
命とルカが疑問を抱くと飛鳥が直接、テトラに訊いた。
「テトラさん。僕たちは迷ってしまったのかな?」
「いや、到着したさ。だけど、ごめん……」
テトラはチョコンと後ろにさがり、そう呟いた矢先――。
ブオーン、ブオーンとサイレンが基地内に響き渡り
飛鳥たち一行は、赤いレーザー線で囲われた。
「ど、どういうことなの?!」
困惑し疑問を抱く命の瞳は、テトラを映していた。
テトラ目線を下にやりやり過ごしている。
「ギャハハ。これで、一件落着だな☆」
サイレンが鳴り静まり、虚無な空間に品のない声が基地内部に響いた。
「テトラ、よくやった。これで、こいつらはチェックメイトだぜッ!」
「さぁ、ガンマ。これで約束通りみんなを解放してちょうだい……」
飛鳥をはじめ一行は、理解した。
自分たちはテトラに“裏切られた”と。
「へへ。約束は果たそう。だが、こいつらは生かしておけねぇ~」
ガンマの声と同時に赤いレーザー線が動き出し飛鳥たちに迫ってきた。
「ちょ、ちょっと! 彼らには一切危害を加えないと!」
「それは、お前の注文だろ? 俺は知らねぇ~。
あぁ。可哀想に裏切られた挙句機械に焼き殺され
一生を終えるなんて……。とにかく、テトラ面よこしな!」
司令室にいるガンマは、部下に命じて、背後の裏ルートからテトラを誘拐して
煙の如く、テトラは姿を消した――。
その場に取り残され飛鳥たちは、絶体絶命の危機に陥った。
「クソ。話が上手すぎたか……。作戦補佐官の俺が……」
「水城作戦補佐官……。この一件は私のミスよ……」
士気が著しく低下していくなか、紅蓮の少年の士気だけは衰えていなかった。
「責任は全員にあります。それにテトラさんは、
ここまでの内容を把握していない素振りでしたし。
それにテトラさんが過ぎ去っていくとき、僕は彼女の瞳に
慈愛の精神と希望の光が宿ってるようにも思えました」
「やれやれ。僕たちの隊長は、おめでたいよ、まったく……。
だけど、この状況は非常にマズイよ?」
ガンマの罠により、一時は士気が低下して重苦しい雰囲気が漂っていたが
飛鳥の天真爛漫な発言により、この場は持ちこたえた。
それでも現実は非情だった。
しかし、希望は残っていたと女性の一言に気づかされる。
「そういえば、林技術長と634君がいないわね?」
「た、確かに母さん。あの二人はどこに……」
『た、確かに……。えっ、お母さん?!』
何気なく会話に加わった渚に一同は仰天してしまった。
「みなさん、お初にお目にかかります。飛鳥の母、剣持渚です。
水城翼君。飛鳥がお世話なになってますね。
それに命ちゃん。可愛くなって素敵なレディーになったわね?」
「い、いえ。自分も飛鳥君と仲良くさせてもらってます!」
「渚おばさま。お久しぶりです。はい、ありがとうございます!」
マイペースの渚に圧倒され、翼と命は律儀に返していた。
すかさず、飛鳥のツッコミが繰り出された。
「母さん。いま、そんな暇あらへんやろ! いまにもお赤い光線が
迫って、僕らを斬り裂くよ?」
「あらら、そうだったわ。飛鳥! さて、どうしましょ?」
参戦してみたが、渚は特に打開策を考えていなかった。
せっかく、飛鳥による巧妙の兆しが見えたが。
――そんなときだった。
複数の足音と声が飛鳥たちの元に近づいてくる。
「こら、634! 急がないと活躍できず丸々俺のシーンがカットになって
エンディングでキャスト欄に載らない回になるぞ!」
「写楽セ! おイ裸ハ、矢ルと気はヤる!」
そして、ついに小走りで駆け付けた林と634は、飛鳥たちと合流した。
「は、林さん。やっと来ましたね!」
「林ッ! チャチャとこれを解除しなさいよ」
林と634の顔を見るや、蘭大尉は鬼気迫る勢いで林に食らいついた。
「ゲゲ! これってかなりヤバい状況。
おい、634。よかったな、お前の活躍シーンの尺はあったぞ!!」
「大将。こ理ゃ、望まない活や九シーンでっせ。とに角、やる師か……」
林たちは飛鳥に補足説明を訊きながらも瞬時に理解した。
自分たちがやらねば、みんなが死んでしまう。
そんな、間一髪の大活躍が約束された場面にいざ、直線していると。




