一難去ってまた一難
「みねぇ~顔だな? お前俺たちになにか用か?」
「おい。行こうぜ! どきな、あんちゃん!」
青銅騎士の投げやりな言葉にも飛鳥は一切動じず、
頑なにその場に仁王立ちしていた。
「……その子は嫌がってます。だから……」
「おいおい。いい加減笑えないぞ。どけよ、赤毛!」
苛立つ青銅騎士の一人は、飛鳥に手加減のない突き飛ばしをした。
飛鳥は、反射的に避けて青銅騎士の突き飛ばし攻撃は空を突いた。
「てめぇ。俺らを銀河帝国メルディアスの騎士と知って
からかってるのか?」
「あなた方を知ってます。決してからかってはいません。
……でも、この場はゆずれませんッ!」
完全に空気は、一触触発の雰囲気。
慌てて藤崎小隊も木の木陰から飛び出して
飛鳥に合流した。
「ったく。《紅蓮の飛鳥》さんは、ニュータ○プでも予測不能だぜ。
飛鳥。このまま……どうするんだ?」
「お婆さん。大丈夫ですか?」
翼は、口を尖らして目を片方瞑って飛鳥に問いかけた。
命は、迅速かつ慈愛に満ちた手でテトラの祖母を介護して戦線を離脱した。
「また出て来たな。それはさておき、赤いガキ。俺らとやるのか?!」
……。
飛鳥は、目線を翼と蘭大尉に送った。
その目には、意思という豪炎が宿っていた。
「だ、だけど飛鳥。俺たちは機体やみんなの休息をとるためにこの星にきた。
ここで騒ぎを起こせば、確実に……」
飛鳥とは対照的に翼は否定的で感情に流されずいる。
この場から、ランナウェイすれば音沙汰なくノアは無事修復を行える。
だが、翼ももともと熱い血潮を体に秘めている男子なので葛藤していた。
「とっとと。アンタらは、この星から出ていきな。
そして、お家に帰りな! 私らの事情はは私らで解決する。
だけど、無理なときはみんな塵になってしまえばいい!」
この日一番にテトラは自身の想いを飛鳥たちにぶつけた。
さすがの青銅騎士もこれには、動揺が隠せなかった。
「たまには、いいことを言うな、テトラちゃん。ようはそういうこった」
飛鳥もテトラの悲痛の叫びに後ずさりしていまい、一気に覇気が失せた。
しかし、藤崎小隊の【小隊長、蘭大尉】は違った。
「飛鳥君。いや、紅蓮の飛鳥。彼らを倒しなさいっ!」
「……蘭大尉、了解しました!」
飛鳥は、帯刀していた二本の刀を手にして、『二刀流』を開放した
「テトラさん。これが僕たちの答えです……!」
「へへ。やるのか。まぁいいぜ! 俺がやる。
お前は相方の傍で赤いガキが真紅に染まる姿をその目に焼き付けな。
見せしめにしてやるからよ」
スタンダートな青銅騎士は、手持ちの槍を構え躊躇なく飛鳥めがけて突いた。
すでに攻撃動作を予知していた、飛鳥は完全に見切り、突き攻撃を回避した。
「……すでにあなた方、青銅騎士の攻撃動作は、
型に捉えてます。僕を倒すなら、二人がかかりで……」
余裕が見て取れる飛鳥は、右手の紅蓮刀で反撃に出た。
すると、先ほどまで威勢があった青銅騎士に明らかに動揺が見えた。
飛鳥の縦横無尽に繰り出される、太刀筋に盾と槍で受け止めるのが精一杯。
「確かに一人では、手に余すな。だが貴様が言い始めたのだ。騎士道精神に
背かず二人でお前を討たせてもらう!」
「飛鳥! 俺はいつでも、戦えるぜっ!」
雨の如く槍のみだれ突きにも、飛鳥は巧みに『二刀流』を使いこなし
青銅騎士を圧倒し翼の申し出も、受け入れなかった。
「大丈夫、もうじき終わらせるから!」
「調子に乗るなよ、赤毛のガキが。行くぜっ!!」
二人の青銅騎士は一斉に槍を前に構えて、突進体制に入り猛突した。
だが、本気を出した飛鳥に効果はなかった。
ひらりひらりと、猛牛を避けるマタドールのように躱して青銅騎士の覇気と
誇りある鎧の一部を破壊させた。
「グっ。コイツは、銀騎士級の強さか。
も、もしくは……」
「銀騎士とも戦ったことがあります。さらにその上の黄金騎士とも僕は……」
粗こうが目立つ青銅騎士たちだが、己の武威には自信は持ち合わせていた。
しかし、それゆえに格上の存在も知り得ている。
「もはや、僕たちとお話は無用ですね。ですから、この次で決めます!」
飛鳥は、紅蓮に煌めく二刀流を逆手に持ち替え回転した――。
「あ、あいつは一体?!」
「テトラさん。さっきも話したように飛鳥君……。
『紅蓮の飛鳥』は、私たちの星地球を
銀河帝国メルディアスの魔の手から救った英雄よ!
あの子は、メルディアスの最上位、《黄金騎士》にも
勝利している」
蘭大尉の解説ポジションにも驚きだが、それ以上にテトラは
飛鳥のギャップに衝撃を受けていた。
先ほど自分が罵倒して、委縮していた飛鳥の姿はない。
戦う男の姿、紅蓮機甲隊隊長、『紅蓮の飛鳥』。
「流転……」
加速した赤い斬撃が青銅の鎧を破壊する手前蘭大尉は、テトラに語りかけている。
「だから、飛鳥君は地球と同じ境遇の星とテトラさんをほっておけなかった。
飛鳥君も戦いで得たモノもあれば、かけがえのないモノも失った。
だけど、逃げなかった……」
「……」
茶化すこともなくテトラは真剣に蘭大尉の話に耳を傾け、
視線は飛鳥を見つめていた。
そして、飛鳥の刃が青銅の鎧をとらえた。
「双刃覇!」
刀の峰と言えど、遠心力を加えた飛鳥の回転斬りは凄まじく
槍を吹き飛ばし青銅の鎧を半壊させた。
「勝敗は着きました。この村から、いますぐ出て行って下さい……」
「情けをかけるか。いいだろう。後悔するなよ。テトラに赤毛のガキ!」
青銅騎士たちは、ボロボロなりつつも最後に一噛み加えて荒野に姿を消した。
いつの間にか、集まっていたギャラリーも彼らと同じタイミングで散らばり
藤崎小隊とテトラたちだけとなった。
「お疲れさま、飛鳥隊長! 流石の剣撃だったぜ」
「とにかく、テトラさんと飛鳥君が無事でなにより!」
テトラの祖母も立ち上がり、テトラは祖母に寄り添った。
「飛鳥さん、ありがとう……。でも……」
「いいのよ、お祖母ちゃん。アイツが勝手にやったことなんだから!
私たちは家に帰りましょう?」
テトラの祖母は飛鳥に労いの言葉をかけてくれ、
飛鳥たちに降り注ぐ脅威を案じた。
ただ、テトラの剣幕は薄れたが憎まれ口は減らなかった。
テトラの言葉に怒りを覚えた翼は身を乗り出そうとしたが、そっと飛鳥が止めた。
しばらく、耐えがたい沈黙が続いたがテトラの祖母が会釈をして
テトラを連れて姿を消した。
蘭大尉も軽く会釈を交わして、『藤崎小隊』は、機動戦艦ノアに帰還した。
「ただいま、帰還しました!」
風間艦長、剣持副長に高らかに蘭大尉は、無事帰還したことを報告した。
そのあと、風間艦長たちにこの星で体験した出来事と
事態を続けて報告を上げた。
「……以上が、この星でのご報告です。私が付いていながら勝手なことを
してしまったことは申し訳ありません……」
「詳細の報告をありがとう、藤崎君。それは……仕方がない」
「か、風間艦長! その件については、僕が……」
ミ○ーズ・レポートならず、LAN・REPORTを聞いて
風間艦長は神妙な顔になった。
「いいんだ飛鳥君。仮に私もその場にいたら、藤崎君同様君に許可していただろう。
なぜならば、私たちは一度経験している。
その光景を見逃したら、この作戦そのものを
否定することにもなる。
どっちみち、私らはこの星に地球時間で一週間程滞在して
機動機甲兵器やノアを修復しなくてはいけない。
我々は、守る姿勢ではなく銀河帝国メルディアスに先手を打つ!」
「私も飛鳥少尉も同じ気持ちで戦闘を許可しました。
となると、私藤崎に提案があります……!」
蘭大尉は、メインモニター一面に作戦案を映し出し
補佐官の水城翼もサポートする形で基地攻略作戦が提出された。
少数精鋭による、電撃作戦で基地の機能と囚われの人々を救出作戦。
「まず、紅蓮機甲隊の一小隊。私藤崎と林技術長。
それと風間命さんの構成です。
紅蓮機甲隊の隊長、『紅蓮の飛鳥』を主軸とした、
水城翼、ルカの陽動で敵の騎士たちの注目を集め、
私を軸とした林と命さんで基地の能力と救助活動にあたります。
この作戦には、迅速かつ大胆さが求められます。
よって、この人選になりました」
第一艦橋の人々は、深く頷き蘭大尉の作戦案に賛同した。
ノアの戦士たちは、戦うことは恐れなかった。
地球と同じ運命に置かれた星の可能性を信じた。
ただ、それにはこの星に住む、生命にも意思が不可欠だった。
しかし、思わぬ人物が『協力者』として名乗り上がることになる。
それはあておき、一同は解散して飛鳥は聖騎士マリアと遭遇した。
「久しいな、紅蓮の飛鳥……。意外と、元気そうだな?」
「マリアさん……。こんにちは。僕も立ち止まれないからね。
あ、それと『あのとき』マリアさん、ありがとう!」
壁に寄りかかり腕を組みアリアは、飛鳥にあの激戦からの様子を気にしていた。
飛鳥も飛鳥で色々とマリアに感謝の言葉や確かめたいことがあった。
「そのお気楽さは健在だな。思うこともあるが、
それが貴様の宿命なのさ。
……あのとき、私は無我夢中で……」
「覚悟はしてました。だから、もう迷ったりしてはいけない。
そ、それであの黄金騎士の二本の槍を持ったロボットに乗っていたのは
マリアさんの弟さん……なの?」
以前のマリアなら、たとえ同志もしくは弟に討たれても
その運命に甘んじて、機動戦艦ノアと共に生涯を終えていただろう。
だが、マリアの心境の変化と環境の変化により、
マリア自身でもコントロールできない状況になった。
その因果関係こそ、命や飛鳥との『心』を通わせたことの賜物。
「私もそろそろ、自分自身の答えと姫様が追い求める、真実に答えを
出させなければいけない。
あぁ……この船にとどめの一撃を放とうとした
【聖槍のシン】こそ、私の弟だ……!」
飛鳥は、地球でマリアと激戦をしていたときに出た『シン』を覚えていた。
黄金騎士には、マリアと肩を並べる実力者とそれらを凌駕する存在である
シンやバーンといった、黄金騎士を代表する戦士。
「ふっ。少しショクだぞ! あの死闘で私の口から出た伏線を覚えていたとは!」
「こう見えて、記憶力はいい方だからね。まぁ、ホテルのチェックインとかで
あえて偽名にして、鎌をかけたりしないけどね!」
マリアは少し呆れた表情ながらも飛鳥に笑みを見せて、答えた。
「私もいずれ、自分の運命にはケリをつけるさ。それまでは、
見届けさせてもうぞ! 『紅蓮の飛鳥』」
飛鳥も爽やかな笑みを浮かべて、マリアに宣言した。
その後は、自身の部屋に戻り泥のように眠りに就いた。
それから、二、三日後……。




