生きるため
あるとすれば、極秘裏秘のノアの進撃こそが最大の誤算であった。
「そういえば、シン様。こないだ、ちょっとした次元観測を確認しましたが
ご確認されましたかね?」
「あぁ……。原因は、不明だけど確認はしたよ。いまのところは問題なかったよ。
いつも、報告をありがとう。ミュウ!」
この次元観測こそ、ノアと宇宙海賊が発生させたモノとは夢にも思わなかった。
そして、バーンはもう一度艦隊を整列させ、ワープ航法に突入した――。
こちら、機動戦艦ノアサイドでは、飛鳥率いる紅蓮機甲隊が演習を終えて
格納庫に帰投して各々、自室へと帰る最中だった。
「まだまだ、荒削りだけど光明は見えてきた。銀騎士級なら
三人一組の小隊で渡り合えるかも知れない。
だけど、マリアさんをも凌ぐ黄金騎士となるとしかも三人相手となると……」
飛鳥は疲労しきった体をベッドに倒れ込んで苦悩していた。
蘭大尉の戦略・戦術も大事だが、こと戦闘が始まってしまえば混乱はわかっていた。
そのためにも、飛鳥は愛機である《鳳凰紅蓮丸》を
完璧に使いこなさなくてはと、急いでいる。
横たわっていた体を起こして、飛鳥は腕を組み、目を閉じて答えを模索した。
すると、腕の方から、何やら雑音もしくは音声が飛鳥の鼓膜を震わせた。
「……スカ、飛鳥……」
「こ、この声は母さんなのか?!」
音声が次第にクリアになり、確実に渚の声が飛鳥の名を呼んだ。
「ご名答なのだ、息子よ! 最近、飛鳥疲れてそうだけど大丈夫?」
「へへ。母さんは、お見通しか……。まぁ、そうなるかね」
片目を瞑り、右手で頭をカキながら、飛鳥は自嘲していた。
そんな愛息の姿に渚は、母の仕事をすべく紅蓮丸から転送してきた。
「は~い。紅蓮の飛鳥さん! ママは木星から、ワープしてきました。テヘ☆」
「か、母さん?! まさか、若干死に設定だった腕輪から立体ホグライゾンで
出現するとは」
いままでは、特別な場所や紅蓮丸のなかでその可憐で美しい姿を見せていた。
剣持博士や蘭大尉の計らいで腕輪に改造を施していつでも、
どんなときでも、渚は民衆の前で姿を見せられるようになっていた。
ちなみに、非戦闘時は白いワンピース姿で戦闘時は、飛鳥と連動した
紅蓮のピチピチ、パイロットスーツスタイルになる。
「フフ。そこら辺は、大人の事情なのよ?」
「僕もそこには、触れないよ。それにしても、母さん。
いままでどうして姿を見せなかったのさ?」
そもそも、紅蓮丸の秘密を知る人は数少ない。
命や翼もエンゲージ・リンクシステムそのものは、知っている。
しかし、いまだに渚の姿を見ていない。
そのことについて、渚から意外な理由が明かされる。
「だって、私おばさんだから恥ずかしいだもん」
「恥ずかしさで出番がなかったとですか。
怪我の巧妙で母さんは、若い頃のままの姿なんだから、大丈夫だよ。
むしろ、現実世界なら驚異的なアラフォーだよ!」
渚の内なる秘密を知り得たところで飛鳥は、話のベクトルを戻した。
「だから、明日からはみんなの前に出てね。それはそうと、
僕は紅蓮機甲隊の隊長として、みんなを守れるだろうか……」
「そうね~。この頃出番なかったし。飛鳥、それはお母さん違うと思うわ」
天真爛漫な渚の雰囲気が一転して、表情に鋭さが増した。
「紅蓮機甲隊の人たちは、飛鳥に守られるためにノアに来たわけじゃない。
むしろ、その逆で彼らは飛鳥と一緒に戦うために勇士として、立ち上がってきた。
飛鳥は彼らを『心』で認めて、信頼して命ちゃんや翼くんたちのように絆を
深めて立ち向かって行くのよ。そのための私であり、紅蓮丸と鳳凰丸が存在する。
だから、飛鳥。黄金騎士たちに負けないよう頑張りましょう!
以上、お母さんからの小言でした~」
「彼らは僕と同じで守るべき者のために立ち上がった。
紅蓮機甲隊のみんなを信じて、僕はもう孤独な戦士じゃない!
へへ。母さんありがとう!」
飛鳥は渚のアドバイスを真摯に受け止め、もう一度自分を見つめ直して、
大いなる思いを抱き、これからの激戦に向けて明日を見据えた。
飛鳥なら、きっとこれからの事態を受け止められることができるだろう。
そして、【加速的】に時は流れてノアの人々は決戦前夜の日を迎えた。
「諸君、いよいよ明日で計画の第一段階である黄金騎士連合との激戦を迎える。
我々は明日の戦いに勝ち、彼らの星である銀河帝国メルディアスまで行き、
地球の平和を勝ち取る! だから、明日の戦いでみんな無事でいてくれ
機動戦艦ノアは、地球に帰還してはじめて成功の証なのだからッ!」
ノアの艦内中に風間艦長の激は響き渡り、各所の勇士たちを奮い立たせた。
地球時間の二十四時間後には、黄金騎士連合と戦闘している。
ノアの人々は、その激戦に勝利するために立ち上がった。
さらに、紅蓮の天才剣士による檄も紅蓮機甲隊だけではなく、
機動戦艦ノアを熱くさせた。
「明日がノアの始まりとなる日です。明日は勝利して、みんなで祝杯をあげましょう。
ですから、その景気つけに僕がいまから、音頭を務めさせてもらいます。
愛する人と愛する地球のために、戦おうっ!」
『おぉぉお!』
機動戦艦ノアは、初期起動並みに船体が揺れたような衝撃。
地球の希望を乗せた機動戦艦ノアは、目標座標に突き進んだ。
飛鳥率いる、『紅蓮機甲隊』の真価。
圧倒的な主人公補正を手にしつつある、飛鳥の《鳳凰紅蓮丸》の力の全てが
いま、試されるときでもあった。
地球と銀河帝国メルディアスの運命の決戦まで残り数十時間……。
DBで言うところ気を溜めて、一話の尺を稼いでいるかの如く時は進み
地球と銀河帝国メルディアスを繋ぐ中間座標で黄金騎士連合は、
ワープ航法に入ろうとしていた。
「シン様やナックルズ様も準備はよろしいですね? では、バーンさま。
ワープの音頭をお願いいたします!」
「シンは元から、几真面目な奴だが。ナックルズの闘気が
船にいても刺さるように感じる。このバーンは、安心したぞ」
「……バーンのおっさん。静かに! この気配、何かマズイ気がする。
即刻、ワープの中止を進言するっ!」
豪快豪傑のバーンは、微塵も心配の素振りは見せていないが
二人の黄金騎士は、この宇宙での違和感をその身で覚えていた。
「ミュゥ! もう一度、探索と警戒レベルを上げて……」
【聖槍のシン】が副長ミュゥに警鐘を鳴らした矢先――。
艦隊の横から、えぐるような蒼い波動が横切った。
『……!?』
「どうやら、一杯喰わされたな」
「ミュゥ。いますぐ、出撃体制に入れ!!」
一瞬だが、黄金騎士連合の指揮形態が停止した。
そのスキに、もう一度蒼き波動と透明に反射する物体が黄金の艦隊に
強襲を駆けていった。
「第一段階は成功よ、みんな。あとは、敵さんがマヒしてる間に
紅蓮機甲部隊で白兵戦に持ち込み、ノアの援護射撃により
敵艦隊を駆逐します!」
「剣持飛鳥。《鳳凰紅蓮丸》で出撃します!」
飛鳥を筆頭に機械集団も次々と宇宙に旅立っていった。
百機近い、機動機甲兵器がこの空域に広がり
シンが乗る、戦艦に襲いかかった。
しかし、いち早く指揮系統を戻したシンの騎士団が
すぐさま、ロールアウトされた。
青銅騎士と銀騎士の
機動機甲兵器が現れ、【聖槍のシン】が乗り込む黄金の鎧を纏った、
ゲイボルグ・ラーハルトも姿を見せた。
機動戦艦ノアの奇襲は終わり、戦況は混戦へと移行する――。
「ミュゥ。君は、左翼の騎士たちを率いて突破してあの船を狙え!」
銀騎士でシンの右腕のミュウは、瞬く間にノアに
目標を定めて、突撃体制に入った。
「ちっ。作戦は、第二段階ね。となれば、飛鳥少尉!」
「了解しました、蘭大尉。隊のみんなは、予定通り、三機一組の小隊で
各個撃破の作戦でお願いします。ルカさんは、左翼に展開されてる
部隊の迎撃をお願いします!」
紅蓮機甲隊も負けず、臨機応変に作戦指揮官・蘭大尉の作戦の元
ミュウの部隊には、ルカの碧に煌めく
『ノルマンディー・ヌーヴォー』を筆頭に対抗させた。
こうして、約百機近い紅蓮機甲隊が二手に散開した。
「さぁ~て、紅蓮の飛鳥。俺たちもあの金ピカとやりますか?!」
「うん、翼。いや、我が副隊長。僕たちは黄金騎士を叩いて
他の艦隊も叩かないとじり貧になってしまう。
だから、電撃攻撃で僕は黄金騎士と一騎打ちをやる!」
自称、碧き閃光のルカが乗る、『ノルマンディー・ヌーヴォー』。
機体性能は、まだまだ、未知数だがあのマリアと引き分けた事実がある。
さらに剣術でも飛鳥に匹敵才を有する。
数で勝る紅蓮機甲隊は、猛然とした勢いで槍の精鋭たちに挑んだ。
「怯むな、我が騎士たちよ。これは、神が与えたチャンスだ。
ここで奴らを討てば、地球の戦力はないも当然だ!」
しかし、シンは内心焦っている。
予想だにしていなかった強襲作戦。
ましては、中間座標地点での対面。
ことはなるべくして動いていると、察し背中に冷たい汗を感じていた。
残りの黄金騎士たちは、ノアの主砲によってバーンの戦艦は麻痺している。
ナックルズは、音沙汰なしだった。
紅蓮機甲隊の隊長“紅蓮の飛鳥”は、決してこの期を見逃しはしなかった。
シンの手慣れた槍の騎士たちは、三機のフォーメーション波状攻撃に苦しんだ。
「一機撃破――ッ! 互いに協力して隊長を黄金騎士の元へ行かすんだ」
「えぇ、そうね。私たちは数で勝ってる。
今のうちに敵の指揮官を潰しておかないと」
神風タイプと不知火タイプの機甲部隊は連携として、
青銅騎士と銀騎士の騎士型機甲兵器を次々と撃破して、爆竹の勢いで突破した。
それに続いて、ルカの部隊も思いのほか士気が高く
シンの右腕、ミュウの攻撃を止めていた。
「シン様。こやつら、案外やります。こうなっては、シン様も前線で武威を奮っては?」
「君の言う通りかもな。粗削りだが、この部隊はできる。
それに赤いツノに羽を生やした奴は、報告で上がっていた
機動機甲サムライのタイプに酷似してる。
とにかく、俺はこっちの部隊を殲滅させて、あの船を討つ!」
黄金騎士シンの激で槍使いたちの精鋭は、震えあがり【聖槍のシン】は
紅蓮機甲隊の中心に二本の槍で襲いかかった。
「俺の槍は、お前らでは避けれんよ……!」
研ぎ澄まされた二本の槍が神風と不知火を軽々と横一線に斬り裂き、
四つの爆炎が宇宙に燃え上がった。
「残りは、約九十機あまりならイケる。だが、赤ツノは……」
神技と言うべき正確さと速度で、瞬く間に四機も紅蓮機甲隊の戦力が削がれた。
そして、恐れていた連鎖がはじめる。
「よくもよくも……。滝本をやってくれたな!」
「いや――っ。死んじゃった。私は私は……」
紅蓮機甲隊の一糸乱れぬ呼吸は停止した。
戦場全体の流れは、一気に黄金騎士連合に傾きはじめた。
非情のシンは、錯乱する女性が乗った機甲兵器に
鬼神の如き突きを放った――。
「ダメ……だ……」
女性パイロットがあきらめて、目を瞑ったときだった。
赤い機体と太陽のように燃えさかる刃が聖なる槍の暴挙を止めた。
「っつ! ようやく、出て来たか」
「これ以上は、やらせませんッ! みんなも、心を強く保って下さい」
右手の太陽刀でゲイボルグ・ラーハルトを切り払い一旦距離をとって、
鳳凰紅蓮丸は月詠刀を抜刀して、『二刀流』になった。
その頃、ルカが率いる部隊では――。
ある程度、損傷している機体がチラホラいるが死者はまだ出ていなかった。
「やるね。だけど僕を相手するなら、せめて金色の戦士でなくては……」
「くっ。やるな! 蒼き星の戦士よ。私は限りなく黄金騎士に近い、
銀騎士なのだ!」
ルカがシンの右腕ミュウを無効かしているおかげで、
こちらの紅蓮機甲隊は戦力を維持したまま戦線を保っていた。
「紅蓮の飛鳥率いる、紅蓮機甲隊が善戦してます。
風間艦長、我々は主砲により再度敵艦に攻撃を浴びせましょう!」
「主砲装填、発射ッ!!」




