機動戦艦ノア発進
はたから見ては、いまにも警察騒動だが。
神代大文字やルカの執事、じいは観点が違った。
「飛鳥ハン、楽しそうやな~。あの坊やに嫉妬してまう☆」
「坊ちゃま……。じいは、うれしゅうございます。
強敵とめぐり合えて。まさに、《めぐりあい宇宙》」
二人の天才をそばで見守ってきた、二人にはそう見えていた。
現に飛鳥の心境がそうであった。
聖騎士マリアとは、また違った剣士。
それにとても、面白い人だと。
飛鳥は無数の斬撃が飛び交うなか、愉しんでいる。
ルカも想像より斜め上の実力に歓喜していた。
むしろ、マリアと同じように戦慄させ覚えている。
それでも、ルカは飛鳥に勝ちたい訳があった。
実はルカもマリア率いる、銀河帝国メルディアスと交戦していた。
彼の身なりや言動から、予想できるようにルカは裕福な家庭育ち。
それも、E・Uを五十%占める機械産業の御曹司。
フェルナンド家は密かに、NETEROの機密データを買収し、
独自に機動機甲兵器を作り上げていた。
飛鳥と同じようにルカは、マリアと生身とロボットによる
戦闘で引き分けている。
それゆえ、マリアに勝利した飛鳥に対して嫉妬心と対抗意識が
芽生え敵対視していた。
「君に勝ち、世間に私の凄みと名誉を讃えさせる。悪いが今後の主役は、
私であり、『機動銀河戦記、閃光のルカ』になるのだ!」
刃を交えて一旦距離を置いた場所でルカは、レイピアを
飛鳥に向けて、様々な方向へと突いた。
「僕は剣士として、あなたの実力に驚愕しています。
ましては、マリアさんのエクスカリバー・クィーンナイトと交戦しているなんて
でも……それでも、僕は主人公の『紅蓮の飛鳥』ですッ!!」
両者一歩も退かない気迫と気迫のぶつかり合い。
そのやりとりのなかで、少し気になるワードが出ているが。
とにかく、この二人の死合いの終わりが近づいている。
「さて、終わらせるか……。この突きが、ファイナルアタックだ!
○童ではないが、全身全霊で君を討つ!」
「僕も決着の刻がきたと感じてました。
やぁぁあって、やるぜ! 断空○牙剣!」
ルカはこの日、最上の突き体制に入り飛鳥を見据えた。
飛鳥は、何かの必殺技を叫んだあと静かに瞳を閉じた――。
そして、紅蓮の刀を鞘に納刀してしまった。
「!? この期におよんで私を侮辱する気か、紅蓮の飛鳥?」
「いいえ、ルカさん。いまから、大文字先生の奥義で
あなたを倒すのに必要な、工程です」
飛鳥は冷静に言い放ち、目を開け両手で刀を握った。
ルカの見解では、さしずめ宇宙戦で見せた、
【抜刀術・居合斬り】だと踏んでいた。
ルカの突進に合わせた、最上一撃カウンター。
二人のビジョンは、一致していた。
しかし、この未来だと、ルカの突進が勝り飛鳥が討ち取られる。
この時点で飛鳥の負けが予想されている。
まさにこの光景は、思春期の少年の翼が折れて、ゼ○システムに答えを
求めているようだった。
『教えてくれ、ゼロ! 俺たちの未来をッ!!』
――その刹那、碧き稲妻が飛鳥を襲った。
飛鳥からも紅蓮の斬撃が二本放たれた。
すさまじい轟音とともに、二人の天才は停止した。
「ぐっ……」
「あ、危なかった!」
この光景を見るに、決着がついた。
飛鳥の右手の刀がルカの喉元手前で停止していた。
ルカの召使、じいはこの光景に絶句している。
それを見かねて、神代大文字が解説をしてくれた。
「坊ちゃんの付き人さん。多分あれは、二本同時による抜刀ですわ~」
飛鳥の師匠である、神代大文字は二人の決着の瞬間を見逃さなかった。
ルカの稲妻のような鋭い閃光――。
飛鳥は、予想とおり【居合斬り・抜刀術】で迎撃した。
しかし、ルカの予想は大きく覆った。
飛鳥自身も両手で刀を掴んだまま、大きく踏み込み
両手で抜刀して、左手の小太刀でルカのレイピアの勢いを殺しつつ、
ルカ最後の攻撃にも、反応して右手の刀でレイピアを吹き飛ばし
いまのように飛鳥は、倒れ込むルカの喉元で刀を停止させた。
「紅蓮の子が坊ちゃまを……。じいは信じられません」
「自分とて、弟子の飛鳥を全て知ってる訳じゃない。
まさか、己の『二刀流』と神代流の【居合斬り・抜刀】を融合させるなんて!」
飛鳥は、戦いのなかで進化した。
戦闘民族サイ○人のように日々強くなっていく。
「……認めよう、『紅蓮の飛鳥』。私の負けだ」
「……はい。ルカさん……」
ルカの敗北を認める言葉に飛鳥は、静かに刀を帯刀した。
そして、飛鳥はそっと手を差し伸べた。
「……ありがとう」
勝敗は決したが、二人の目線は同じ高さになった。
「二人とも見事だったぞ! 特に飛鳥ハン最後の攻撃は、よかった。
坊ちゃんの方も、あの稲妻のような突きは私でも称賛するよ」
「坊ちゃま、お疲れ様です! じいは感動いたしました」
ここにいたるまでの経緯は、決してよくはなかった。
しかし、二人の天才剣士に言葉は不要だった。
「それにしても、私は生まれてはじめて負けたよ。
だが意外と清々しい、気持ちだな。紅蓮の飛鳥?」
「そ、そうだったのですか? ルカさん。
僕は影で挫折と努力を積んでいまがあります。
全てを出しきったら、そうなります☆」
生まれも育ちも違う天才剣士。
ルカは、天性の才能でE.U最強の称号を手にした。
飛鳥もいまでは、天才高校剣士と謳われているが、
幼少期や影で、人一倍努力と汗をかいてきた。
鉄下駄を履き、階段を駆け上がったこともあったかもしれない。
『あぁぁ~、お姉さまッ!』
とりあえず、二人の死合いは終了した。
すると、再びルカは右手を飛鳥に差し伸ばしてきた。
「最後は紳士らしく、拍手をしよう! 紅蓮の飛鳥」
「僕も日本男児ですから! よろこんで」
飛鳥の右手とルカの右手で握手が交わされた。
それは、力強く美しくもあった。
一部の人からだったら、需要がハンパないだろう……。
いけない妄想に浸る余裕もなく、ぎゅっ! 力強く握る擬音が聞こえた。
「フハハっ! 紅蓮の飛鳥! 今回たまたま、君に軍配が上がっただけだ。
この次は機動機甲で真の決着をつけようぞ!
では、じいよ。ズラかるぞ」
「はは。ルカ坊ちゃま! ではでは、ごきげんよう~」
嵐のように過ぎ去り、飛鳥と神代大文字はその場で立ち尽くした。
「まぁ、ともかく飛鳥ハン見事でしたよ。
しかし、新たなるライバル出現どすな。
マリアハンもそうとうの使い手らしいけど、あのルカ坊ちゃんもやる」
「正直、僕は天狗になってました。マリアさんや先生と出会って
もう地球にあんな猛者がいると思っていませんでした。
今後もルカさんとは、切磋琢磨していきますよ。先生!」
飛鳥の心情を聞き、優しく微笑む神代大文字。
「ほな、出航まで飛鳥ハン。自分と稽古や!」
「ゲゲ。まぁ、鉄は熱いうちに叩けって言いますしね。
それなら、とことん殺り合いましょう!!」
息つく間もなく、ビッグカードが実現された。
飛鳥VS神代大文字の真剣による稽古。
天才剣士と常識外れの達人。
張りつめた空気が道場中に一気に伝わり、飛鳥と神代大文字は衝突した。
鉄と鉄が凄まじく、ぶつかり合い火花を散らした。
互いに急所は外しながらも致命的なダメージは与えないが
確実に服や肉を斬り裂き、互いに流血している。
それでも、飛鳥はさらなる高みを目指して達人に喰いかかった。
「あれだけの死闘を演じてもこの覇気と勢いとは……。
飛鳥ハン。本物になりつつ、ありますな~」
「僕もウカウカしてられません。この先――宇宙では、
マリアさん以上の実力者が、出てくるかも知れません。
僕は大切な人や紅蓮丸に乗って戦うからには、強くなりたいッ!」
その純粋の想いを胸に飛鳥は、さらなる進化を求めていた。
時間の概念を忘れ去り、二人が打ち合い続けるなか、命の声が艦内に響いた。
『これより、本艦は宇宙へと出航いたします。剣持飛鳥少尉、
また、《紅蓮の飛鳥》は直ちに第一艦橋へと急行してください!
繰り返します……』
「やばば! 先生、僕は第一艦橋に行きますね。
ご指導ありがとうございました!」
汗だくな飛鳥は、さらに額に汗を流しつつ丁寧に
神代大文字に一礼して、第一艦橋へと瞬歩した。
「はよ、いきなはれ飛鳥ハン。こちらこそ、おおきに~」
飛鳥を見送って神代大文字は、余韻に浸り想いふけっている。
「こりゃ、神代大文字の名も安泰かも知れまへん。
飛鳥ハンには、将来流派を……。自分は……戦いのなかで、
自分を見失ったかな……」
歴戦の戦士なら、誰もが一度は口にしたい『哀愁』漂う呟き。
はたから見ては、悲しみと哀に満ちた表情だった。
しかし、別の角度からは飛鳥の成長と自身への道を決めて
凛として慈愛に満ちた女性の顔にも見えた。
こうして、超次元バトルは終了した。
「す、すみません……!」
全力疾走で飛鳥は、第一艦橋に飛び込んできた。
すでに風間司令をはじめ父、剣持博士や蘭大尉たちは準備できていた。
もちろん、翼や命の姿もあった。
「天才剣士も遅刻するのだな、ハハ。それにしても、飛鳥君は
戦闘服がボロボロに汗だくで……。大丈夫かね?」
「チョッチ、夢中になり過ぎてしまいました。それは、後ほど説明します!」
その姿を見かねて、蘭大尉は飛鳥に新調の制服を渡した。
「飛鳥少尉。これを着なさい! 機甲部隊の隊長としてこの制服と
紋章を付けて。それに若干、死に設定の腕輪も忘れずにね☆」
「はい。ありがとうございます、蘭大尉。
これが、おニューの制服ですね。俗にいう、
戦闘班、班長の証の紋章に懐かしい腕輪ですね!」
本来なら、ちゃんと制服を着飾りたい飛鳥だったが時間がないので
制服の上だけを羽織、腕輪を装備した。
「では、諸君。いよいよ、宇宙に旅立とうか! その音頭は、
飛鳥君に任せるよ。これは、私からの粋な計らいだよ!」
飛鳥は、目を煌めかせ風間司令に敬礼して、緊張気味だが艦内すべての
乗組員に伝える思いで告げた。
「機動戦艦ノア! 出航ッ!!」
飛鳥の掛け声とともにうねり声を上げ、ノアは機動して宙に舞いあがった。
それからは、ノアの心臓部である『コスモブラックホールエンジン』を
一気に稼働させ、ノアは瞬く間に地球の大気圏を突破した。
NETEROの人々は、ほぼ初の宇宙体験。
飛鳥とごく一部の人を除いては、人類史上大規模な宇宙進出。
それどころか、いまから未知と神秘の宇宙の彼方へと突き進む。
「諸君。どうやら、宇宙に出られたみたいだ。感動する間もなく我々は、
銀河帝国メルディアスと、地球を結ぶ一直線上の中間地点で黄金騎士連合を
阻止しなくてはいけない。では、これよりワープに移行する!」
風間司令の指示を聞き、機関室の林技術長や第一艦橋の
メインオペレーター命は、一斉に自分の仕事に手を付けた




