聖騎士ふたたび……
「しかし! そんな戦力を誇る、黄金騎士団がいま連合を組んで
地球に迫っています。それも地球に到着するまで二か月を切っています……」
「故に我々は、彼らを中間地点で迎撃する作戦を展開することにしました。
そのためには、これが……必要なのです!」
一気にカメラワークが移動して、暗闇のなかを映し出していた。
そこは、セントラル・マーズにも似た空間だった。
「『機動戦艦ノア』。我々、NETEROはこの宇宙戦艦で迎撃作戦に出て、
彼らの母星、銀河帝国メルディアスに乗り込み和平交渉を持ちかけます」
この二人のSF空想話に世界……NETEROの面々も唖然とし、
絶句していた。
「宇宙戦艦……! それに銀河帝国メルディアスへの進撃作戦。
こんな重要なことをいままで隠していたなんて!!」
「私もここまでの展開は、予想できずにいたわ。
剣持博士に風間司令もなかなか、大胆不敵だわ……」
今日の今日までこの事実を、ひた隠しにしていたのは、
第一に混乱を避けるためだった。
だが、それも限界に達していた。
『機動戦艦ノア』。その名とおり、この船には限られた人しか乗れない。
だから、ごく一部の人間を除いて、暴動を起こさない配慮でもあった。
「これは映画やSFでは、ありません。ですから我々は、
NETEROの独自権限を発動して、一週間後地球を離れ
黄金騎士連合との決戦に臨みます」
「決してこれは、亡命するための船ではありません。
だから、このロボットたちのパイロットやノアの船員を募ります。
ですが、それは過酷になると思います……」
またしても、カメラが変わって二百機近い紅蓮丸に似た
機動機甲兵器サムライ型ロボットたちを飛鳥の目がとらえていた。
「宇宙戦艦ヤ○トどころの騒ぎじゃない! これは現実なのか」
すでに人類は戦う準備は済んでいた。
あとはその覚悟をもった勇士だけだった。
「それでは、我々の声明を終わらせてもらいます!
みなさま、ご静聴ありがとうございました」
嵐のようにざわめいているなか、この二人は冷静に世界への発信をやめた。
そして――数時間後。
二人は、飛鳥たちの前に出現した。
「父さん、あの話は本当なんだよね?」
「パパ~。いきなりすぎて、私は……私は……」
偉大で破天荒な父親を持つ、飛鳥と命。
二人は一斉に父親の元へと詰め寄った。
幼き日によく見かけた光景だったが、さすがの二人も動揺が隠せず額に汗を垂らし
剣持博士は、癖である右手で眼鏡の位置を直していた。
「飛鳥君。賢い君なら、もうわかってるはずだ。いままでの体験を振りかえれば……。
それに『紅蓮の飛鳥』として君には、見せたいモノがあるッ!」
飛鳥は風間司令が対応して、命には剣持博士があたった。
「命ちゃんもあの戦いを目の当たりにして、あの黄金騎士マリアに匹敵する
騎士団が三つの連合軍でやってくるんだ! もう避けられない現実なのだ」
父から発せられる言葉を一つ一つ、真剣に聞いて
飛鳥と命は真実を受け入れられた。
だが、あることが命の脳裏によぎった――。
「ま、マリアさん……。“あの人は”このことを知っているの……?」
「……把握してるだろう。だから、命に飛鳥君。少し彼女の様子を見て来て欲しい。
飛鳥君は、そのあとセントラル・マーズに来てくれたまえ!」
飛鳥と命は互いに目線を交わして、小さく頷き黄金騎士、マリアが隔離されている
地下の特別室に歩いて行った。
マリアがいる地下の空間は、外部とは一切遮断され殺伐としていた。
だがそれも仕方がなかった。
一方的に戦争を仕掛け敗北した身でありながら、生きながらえたマリアにとって
屈辱的で騎士道精神に傷を負ってしまったが、
彼女の扱いは、捕虜を超えた手堅い配慮だった。
そもそも、マリア自体、銀河帝国メルディアスの重要参考人として
NETEROで保護されている。
しばらくして、『コンコン』とドアをノックする音が虚無な空間に響いた。
「あっ、あの……風間命です……」
……。
ワンテンポ置かれて、「はい、どうぞ」と作業的なトーンで帰ってきた。
「失礼します……」
命が先頭を行き、飛鳥がその後ろを追って二人は入室した。
「命殿、久しぶりですね!」
命の顔を見るとマリアは先ほどのような暗さはなかった。
そうなると、原因の可能性は一つだった。
「フっ。貴様も来ていたのか、『紅蓮の飛鳥』。どおりで足音が……」
「マリアさん。こんにちは! そう怒らないで下さいよ」
マリアは、命に銀色で綺麗な髪をなびかせながら、笑みであいさつした。
反対に飛鳥には、憎まれ口を叩き、意地の悪い口調で飛鳥を出迎えた。
「まぁまぁ、マリアさん。飛鳥君もイチイチ反応しちゃダメだよ!!」
「命殿はわかっておられる。こやつは、私の生理的に受け付けんのだ!」
このあと飛鳥は、終始この二人から、責め続けられた。
マニアックな人なら快感だが、幼馴染で鋭い勘を持った女の子と
隠れ巨乳だけど、性格がディープでキツイ娘たちからの責め『継続』。
飛鳥の精神ゲージが大きく削り取られた。
「ぼ、僕は……。一体……」
「《紅蓮の飛鳥》も命殿には、敵わないようだな! これは貴重な情報だ☆」
たとえ、殺し合いをした仲でも、こうして冗談を言い合ったり
命とマリアは友情を感じあえるように、
不思議な関係があの戦いのあと築き上げられた。
いまもだが、当初、NETEROでマリアの単独行動が禁じられていたとき、
命は率先して、マリアとともに同じ刻を共有してきた。
だから、マリアは命を信頼して、学校にいる友達のようになれた。
飛鳥も命の行動を見かねて、最初は気まずいなか心を通わせていった。
「へへ。それにしても、マリアさん。元気みたいで安心したよ!
でも……マリアさん。お父さんたちの声明を聞いて……」
さすがにNETEROの職員たちも動揺が押さえ切れず、
あの二人の声明は、NETERO中に響いていた。
「私も最初聞いて、驚きが隠しきれませんでした。
ですが、私がこの蒼き星にやってきた以上。これは宿命だと思います。
だから……命殿はお気になさらず!」
また、愛想よくマリアは命に笑って見せた。
命もその笑みに安堵しているが。
「ただ、この者と少しだけ、話がしたいので
命殿は席を外してくださいますか?」
一瞬、マリアの顔つきと気配が変わり飛鳥の体は
自然と反応しかけた。
刹那、マリアは普通の女の子の雰囲気に戻った。
「命、了解しました! でも飛鳥君、マリアさんにエッチなことしたら
ダメだからね。それじゃ、マリアさんまた今度ね~!」
「命殿。お気使いありがたく思います。
私はいつでも命殿なら、歓迎です。ではお気をつけて!」
黄色いツインテールをフサフサさせ上機嫌で命は退出していった。
しかし、命の最後の言葉は、今後あながち嘘ではなかった。
命の勘がそう感じていた。
その内、主人公補正のある飛鳥には、『選択』をするときがくると。
いまはそのときではないので、後に語ることになるだろう。
「それで僕に話したいこととは?!」
「そう急かすな。もう少し、雑談でもしようではないか?」
先ほどとテンションが変わらず、マリアは飛鳥と会話のキャッチボールを望んだ。
「そういえば、こないだ貸した聖闘○星矢はどうでした?」
「実にくだらない娯楽だな。あんなことで原子や光速攻撃などと。
にしてもあの神々しく、黄金の聖闘○はなんだのだ! つ、強すぎるっ!!」
活き活きと自分と同じ黄金に包まれた戦士に対して、マリアは興奮を隠せず
飛鳥に対して、【彼らに】引きをとらない小宇宙を開放していた。
「彼らは最強の戦士です。偶然にも、マリアさんと同じ黄金の衣を着てますがね?!」
飛鳥は微笑でマリアに対して、際どい質問を投げかけた。
しかし、答えは決まっている。
昔から、黄金の戦士は強い。
それは、漫画でもアニメ、ギャンブルでも頼もしい。
だから、牙○も金ピカなのだ。
まぁ、あまり関係がないが。
とにかく、Zガン○ムに登場する、百○を除いて金色は、最強の象徴なのだ。
「それは、私にもわからん。遥か昔から、あの黄金の鎧は受け継がれてきた。
それゆえ、メルディアスでは誇りと強さを持った『十二人』の者にしか纏えない!
まぁ、貴様に我が鎧の一部を破壊されたが……」
天才剣士、飛鳥もギリギリ、紙一重でマリアに勝利を治めた。
そんな死闘をした、二人が地球の日本のサブカルチャーを
語り合っているさまは、一つの可能性を感じられた。
だがそれでも、次の話題から殺伐とシリアスな展開になる。
「それにしても皮肉だな……。今度はこちら側が
侵略される番か。フっ……!」
「そ、それは違うんだ。マリアさん。
僕たちは……君たち、銀河帝国メルディアスとの対話。
そのために、黄金騎士連合を止める!!」
遠回りをして行きついた終点駅だった。
マリアは何事にも動じず、飛鳥に“真理”を問う。
しかし、この物語の主人公、『紅蓮の飛鳥』は嘘がつけない。
ゆえに心の底から出た言葉こそ、飛鳥の本心だった。
だが、少しばかり戦争という視点から目を背けている。
「貴様は相変わらず能天気だな。しかしあのとき、私は予知していた。
私の騎士団が敗れた暁には、他の黄金騎士がくると!
まさか、三人も。もしかたら……」
「わかってます。あくまでも正々堂々と戦って僕らは、
メルディアスと相互理解するんだ」
もう無血犠牲なくして、互いを理解するのは不可能の領域。
それでも、飛鳥は悲観的ではなかった。
むしろ、瞳には希望の輝きが宿っている。
マリアの言いかけた語尾が気がかりだが、
このあと、マリアは少し思い出話に浸り、話を元に戻した。
「とにかく、貴様らは黄金騎士を本気にさせた。
私は蒼き星に住む人の本心と剣持飛鳥、『紅蓮の飛鳥』の
決意を見させてもらうっ!」
「わかってるよ。僕は運命……。手にした力のあり方を間違えない。
それじゃ……僕はこの辺で失礼させてもらいます」
ペコリとお辞儀して、飛鳥は部屋を退出した。
次に飛鳥が目指すべき座標は、セントラル・マーズ。
すなわち、格納庫。
飛鳥は例の『戦艦』を考えながら、歩幅を大きくした。
「来たね、飛鳥君! 命が先に帰ってきたから少し心配したよ」
「お待たせしてすみません。少し、マリアさんと世間話を……」
ふむふむと、意味深に深く頷く風間司令を横目に
飛鳥は先導され、格納庫の最深部まで進んだ。
「父さんに風間司令。早く僕にあの戦艦を見せて下さいよ☆」
文字とおり飛鳥は目をキラキラ輝かせ、父たちを急かせていた。
普段は美少年で天才剣士だが、この状態になると『モード』が変わる。
モード反転! 裏コード、ザ・オタク。
飛鳥の真名たる姿。
翼や命。近い人間にしか見せないもう一つの仮面。
このギャップこそ、飛鳥の真髄なのだ。




