-A New Enemy-
「話はNETEROの風間司令から、伺っております。
剣持少尉は直ちに紅蓮丸乗り込み発射準備場まで、来てください。
まもなく、風間司令たちが到着するので詳しいことは
そのときにお話ししますので」
「はい、了解しました!」
飛鳥は二つ返事でその場で振り返り、再びゲキガINして紅蓮丸に乗り込み
NETERO御一行が到着するのを待った。
すると、赤いスポーツカーが爆音ともにドリフト走行で発射場に到着した。
あの『豆腐屋さん』もビックリですごいドリフトであった。
「飛鳥君、飛鳥少尉?! まったく、一人で飛び出して」
「そうよ。飛鳥君ったら、また一人で行っちゃうだもん!」
飛鳥を見守り、支援してきたメカニックレディーこと【藤崎蘭大尉】。
飛鳥の長馴染みで飛鳥が所属する、剣道部のマネージャー。
【風間命】が直立する紅蓮丸に近寄って、飛鳥に詰め寄った。
「ごめんなさい、蘭大尉に命ちゃん。僕は……いても立ってもられなくて」
紅蓮丸から音声のみだが、飛鳥は素直に命たちに謝罪の言葉を口にしていた。
「はは。英雄の『紅蓮の飛鳥』もこの二人には、太刀打ちできねぇか!」
「その声と言動は、翼だね。裏に隠れてても無駄だよ!
こんな一大事に僕をからかわないでよね?」
飛鳥と命のやりとりを茶化す、蒼い髪の水城翼。
一見お茶らけた少年に見える翼だが、彼も飛鳥が通う高校の剣道部の副部長。
飛鳥とはなにかと縁がある、俗にいう腐れ縁の仲だ。
命と翼は先のマリア率いる、【銀河帝国メルディアス】との戦いで飛鳥の秘密を知り、
半ば強引にNETEROへと入隊するいきさつになった。
「君たち、その続きはこの作戦が終わってからだ。では、飛鳥。
早速だが、宇宙に出撃する流れに入るぞ!」
飛鳥の父、剣持博士がこの場をまとめて、飛鳥と紅蓮丸を残して、
一行は宇宙ステーションの司令室に向かった。
「では、手短に説明します……」
剣持博士と所長から、手短に説明された。
内容そのものは、単純明快であった。
スペースシャトルに紅蓮丸を括り付け、宇宙に運ぶという手法。
「聞いてると簡単に、聞こえるけど……」
「俺もそう感じた。現に人類は何度も宇宙に進出してるけど」
ただ、シャトルに繋がれた紅蓮丸を放すには、有人での工程が必要不可欠であった。
「宇宙空間に出ても、紅蓮丸は身動きができない。
故に誰かが、一緒に宇宙に上がられねばならんのだ」
時間にして、五秒ほどの沈黙だったが“刹那”翼が名乗り出た。
「その役目、俺が買って出たぜ。な~に戦う飛鳥に比べたら。大したことないぜ」
「私、藤崎も同行して飛鳥君をサポートさせていただきます!!」
黄色いツインテールの女の子も我と続いたが……。
「私も飛鳥君の傍で支えます。たとえ、力になれなくても」
待ったをかける、飛鳥の抑揚の効いた声が命の耳に触れた。
「ありがとう、命ちゃん。でもこれは僕たちで大丈夫さ。
命ちゃんは、地上から僕らを支えてくれ!!」
命は我に返り、ふと思いかえていた。
かつては、孤独な飛鳥の気持ちと立場を分かち合えなかった。
しかし、いまでは、正体を知った飛鳥、『紅蓮の飛鳥』と想いを共有できること。
「うん、そうだったね。飛鳥君。いや、紅蓮の飛鳥☆」
「うぬ。みんなの意思は、固まったところでいざ、宇宙へと」
またしても飛鳥は、『地球』の未来と運命を託された。
意思は一つになり、シャトルの発射シーケンスへと移行された。
「では、NETEROのみなさん、飛鳥少尉。準備はいいですね?」
「はい。これ以上、時間をかけられません。心構えはOKです!
所長にみなさん、お願いします!」
各自、持ち場につき発射体制は、最終段階に移行した――。
「飛鳥少尉に藤崎大尉。シャトルはコンピューターで制御され宇宙空間までは
目標の座標まで飛び停滞運動に移ります」
宇宙に上がってからは、有人手動でシャトルと紅蓮丸を開放する。
『はい、了解しました!』
飛鳥、蘭大尉、翼の三人は、同時に返答してシャトルにエンジンが
かかるのを数分間待った。
「では……カウントダウンをはじめます……。
1、2、3、4、5……」
命が飛鳥たちを、宇宙に打ち上げるまでの時刻の秒読み読みを開始した――。
決していまから、波○砲を撃つカウントダウンではなく
飛鳥たちが神秘の宇宙に誘う歌声であった。
「8、9……10! エンジンが臨界点です!!」
命は後ろに振り返り、剣持博士に目で合図した。
「テイク・オフ!」
その瞬間、飛鳥たちは大地震のような地響きを体感した。
いま、この瞬間地球を救う『刃』が放たれた――。
飛鳥はふと初陣の頃を思いふけっていた。
あのときも、いっても立ってもいられなくなった飛鳥は、『紅蓮丸の声』に
導かれその後、運命を決める“選択”をした。
そしていま、マリア率いる黄金騎士団を撃破した飛鳥は、
未知の宇宙へと飛翔している。
わずかに不安を抱きながらも、飛鳥たちを乗せたシャトルは、
見事に大気圏を突破して、未確認物体集団をその目で捉えた。
「ひや~、映画とかでは楽勝に宇宙に出てたけど、こりゃ、二度とごめんだぜ!」
「私もこの年でこんな『刺激的』な初体験を迎えるとは……」
頑丈そうな二人でも音をあげるほど、精神的に疲弊していた。
翼は蘭大尉のボケにすら、ツッコミをいれられないほどだった。
「僕も同じように思ってたよ、翼。宇宙戦艦ヤ○トやノーチラス号は、
いとも容易くやっていたが、これはなかなか気が滅入るね……」
すると、早速メルディアスの小隊に動きがあった。
「隊長! 例の『赤ツノ』がおいでなさったぜ!」
大気圏付近で停滞していた小隊は、真っ先に紅蓮丸を標的に構えた。
この小隊の構成自体、銀騎士一機。
青銅騎士二機の構成だった。
不幸中の幸い、最上位の黄金騎士の姿はなかった。
「蘭大尉に翼。紅蓮丸をパージしてください! 迎撃態勢に入ります」
「わかったわ。飛鳥君! 慣れない宇宙だけど努力と根性でファイト!」
飛鳥は静かに頷き、紅蓮丸は無限の大海原に解き放たれた。
『さぁ、行くぞ! 無限の彼方へ……!』
「っても、やみくもに動いてもダメだ……。となると、【奥義】を使うまでだ!」
無重力……『ゼログラビィティー』。
そして、絶対零度の空間。
飛鳥は未知の宇宙でも、持ち前の天性の才能で
紅蓮丸の体制を正常に維持しつつ、二本装備された、
刀を納刀したまま敵の強襲に合わせた。
まったく無策に思えないが丸腰で敵機と対面した。
「隊長どうやら、例の『赤ツノ』は、宇宙に対応できていないです。
我らの予想通りです」
「ならば、左翼から貴様が突貫していき、続いて右翼から、挟み撃ちで
最後は俺が止めを刺す!」
敵の小隊は、三方向に散開して、紅蓮丸に流星の如く、雪崩れ込んできた。
一機目の機体が紅蓮丸の間合いに詰め込んでも飛鳥は、
刀を抜刀しなかった。
その光景にシャトルに乗っている蘭大尉は絶句している。
「あ、飛鳥君……。やっぱり、紅蓮丸は宇宙で動けないの……。
こ、このままではなにもできずに」
「大丈夫です、蘭大尉。飛鳥はきっと考えがあってギリギリまで敵を自分の
間合いに誘い込んでいるんです!」
蘭大尉の心配をよそに翼は、飛鳥を信頼しきって静観していた。
「楽な仕事だったぜ。あばよ、赤クズがっ!!」
「……! いまが、『そのとき』だ」
青銅騎士の剣の刃が紅蓮丸の機体に触れるスレスレで
そんな、紙一重の間合いで紅蓮丸から、赤い煌びやかな一閃が放たれた――。
「!? な、なにが起こった……!」
青銅騎士のロボットと紅蓮丸が交差した瞬間、
青銅騎士の機体の腕が吹き飛ばされ、機体はキリモリになった。
それに連動してか、小隊の動きが止まり、
また紅蓮丸に視点を戻すと再び丸越しになっている。
「い、一体なにが起きたのかしら?」
自然と蘭大尉は、隣にいる翼にこの現象を訊いていた。
「多分ですが……あれは、抜刀術の【居合斬り】です」
剣術において、『最上位』に存在する奥義を超えた秘儀。
納刀された状態で一瞬にして、刀を抜刀して敵を斬る。
鞘をレール上にして加速させ、敵の攻撃より早く斬る『居合斬り』
「そ、そんなことが可能なの?! それにロボットに乗った状態で……」
「現実には、可能とされてます。それが、ラストサムライの“異名”を持つ
『神代大文字先生』の抜刀術・居合斬りです。
飛鳥は黄金騎士マリアと激戦のあと、真剣を学ぶべく
神代大文流に弟子入りしていたと聞いていたが……」
巷で飛鳥は、剣道の天才。二刀流剣士として『地位』と『名誉』を得ていた。
だがしかし、銀河帝国メルディアスの黄金騎士、聖騎士マリアの死闘で剣士として、
さらなる高みを渇望し、密かに真剣を学んでいた。
天才の飛鳥が血のにじむ特訓と努力により、紅蓮丸から紅蓮の一太刀が発動された。
「ふへぇ~、紅蓮の飛鳥さまさまね。でも、それって逆に相手待ちってことに……」
早くも戦術・戦略官の蘭大尉は、この先の展開を予知していた。
「どうにか……。実践でそれも紅蓮丸に乗ってできた。
でも、これで《切り札》はなくなった」
飛鳥の狙いとおり、敵の出鼻を挫いたが出せる
カードは出し尽くしてしまった。
それは、某漫画でいう【ざわざわ、ざわざわ】と擬音が聞こえているだろう。
「あ、あの技は?! 隊長どうしますか?」
「そう慌てるな。あれだけの剣技があれば、自ずと奴から、接近戦を挑んでくるはず。
これで憶測から、確信に変った。お前らデルタフォーメーションに移れ!」
一度集結した小隊は、再び散開して紅蓮丸を中心として三角形に展開した。
「な~に、奴の間合いに入れなければ、さっきの赤い一閃は怖くない。
各機、弓で奴を徹底的に打ち抜け! 仮に接近されても、退いて構わん!」
三機は一斉に弓を構えて、雨の如く放ち始めた――。
もちろん飛鳥も即座に迎撃態勢になり、必殺の『二刀流』を解禁した。
右手には、“灼熱の太陽刀”左手には、【月夜の小太刀、月詠刀】。
電光石火の太刀筋で紅蓮丸は、弓矢の矢を斬り落としていたが……。
「水城補佐官。このままでは、飛鳥君がじり貧に!」
「わかってます。しかし、現状で打開策は。お、俺はどうすれば……!」
歯がゆい思いで見守る二人の視線の先で、飛鳥は懸命に闘っていた。
「グっ! いまは大丈夫でも、このままだと……。
せめて、満足に移動させできれば! 宇宙仕様は叶わなかった。
そして、超新星機関も稼働率10%。
さらに母さんもいない状況……」
将棋やチェスなら、この盤面だと詰んでいる。
さすがの飛鳥でも、逆転の策は考え出せずいた。
人類初の宇宙戦。紅蓮丸の不調。
そして、飛鳥の心の支えであった『エンゲージ・リンクシステム』
生体コアである母、渚の凍結。
飛鳥は王手を宣言され、最後の一手を待ち構える心境だった。
それでも、飛鳥はあきらめず、ある思考にいたった。




