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銀河機動戦記~紅蓮の飛鳥~  作者: 恥骨又造
第一章:『地球激闘篇』
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―運命の時―

「こうして、二人きりで帰宅するなんて懐かしいね」


幼い頃や小学生の間は、毎日こうやって一緒に仲良く帰宅していた。

ただ、中学に上がってから命とは少し距離が疎遠になっていた。

思春期特有の異性への照れの表れだった。


高校で再会してからは、またこうして隣で肩を並べて、

お互いを名前で呼び合う関係に戻れ、おしゃべりできるようになった。


「僕も嬉しいよ! 命ちゃんと一緒に帰れて」


飛鳥にとって、命は大切な幼馴染なのだ。


「そ、それって……!?」


ただ、最近『ツンデレキャラ』が様になっていた。

それもそのはず、金色に艶がかかった髪色。

釣り目にお約束のツインテール。


この装備で綾○や○門のような、キャラクターは連想されないだろう。


「僕は『いい友達』に出会えてよかった」


そのとき、発動された――。


「もう、期待した私が馬鹿でした。

飛鳥君は昔から鈍感。ぷい!」


頬を膨らませ、命はそっぽを向いてしまった。


――あぁぁ。


どうやら、またしても地雷を踏んでしまった。


「ふん! どうせ私は友達A、Bのモブキャラですよ」


彼女は皮肉を利かせて、飛鳥へ鋭い眼光を飛ばした。


「そ、それは言葉のあやだよ。命ちゃんには……感謝してる。

いつも僕らを支えてくれて、女性一人で剣道部の面倒を見てくれる頼りのスーパーマネージャーだよ。

命ちゃんがいなかったら、僕のV2はなかったよ」


飛鳥は自然とそう口にしていた。

彼女は慌てて、恥ずかしそうに言った。


「えっ? そ、それは……!」


たちまち表情が変わり命は笑顔になった。


「わ、わかればいいのよ、飛鳥君。でも、私も感謝してる。

飛鳥君のおかげで学校が楽しくなった。友達もたくさんできた。

だから、ありがとうね!」


飛鳥は命の笑顔に一瞬、ドキっとしていた。

先ほどの感謝の労いを思い出して、彼はふと我に返り慌てて目線を逸らした。


甘酸っぱい青春アオハルな時間は過ぎて――。


「あれ? もう家だね。み、命ちゃん!」


ワザとらしく飛鳥は棒読みで言っていた。


「それじゃ、今日はこの辺でお開きとしましょう。おやすみ、飛鳥君!」


彼も『おやすみ』と言い返し命は隣の家へ帰っていった。

そうそう、なにを隠そう飛鳥たちは親同士が仲良く、みんなが羨む『最強設定』を手にしていた。


飛鳥は帰宅すると、誰もいない家に『ただいま』と言って、手洗いうがいを済ませて自分の部屋へ向かった。


お気に入りの寝巻に身を包み、新しく始まろうとする

待望の『ロボットアニメ』に備えていた飛鳥だった。


しかし、突然睡魔に襲われ意識はどこか彼方へと……。


「ハッ!」と、目を覚ますと時計の針は夜中の時刻を指していた。


後悔と劣等感でいっぱいだったが、飛鳥は空腹に勝てず台所に向かった。


――すると、明かりがついていた。

いま、彼しかいない状況でこの展開だと……。


「おお、飛鳥。起きてきたか。おはよう! そんな時間でもないか、ワハハ」


珍しく父・十三が家に帰っていた。


前会ったことを覚えていないぐらい、久しぶりの再会だった。


「夕食は食べたかい? まだなら、一緒に食べないかい」


父がやつれた表情ながら、笑みで飛鳥に訊いてきた。


もちろん飛鳥は、「うん」と即答した。

彼がキッチンに立とうとしたとき。


「飛鳥はあっちで、待っておればいいのだ。

たまには、父親らしいことをやらせてくれ!」


父は飛鳥の両肩に手を添え半回転させて、リビングの椅子に座らせた。


こ、これって某格闘漫画でいうところの『エアー味噌汁回』か。

そう父に雑念を抱きなら、飛鳥は遅めの夕食ができあがるのを待った。


「お待たせしました、飛鳥。さぁ、食べようか?」


ちゃぶ台ではなく、綺麗に拭き取られた机に十三お手製の料理が並べられた。

飛鳥は最初にみそ汁を手にして啜った。


いつもと同じ市販で売られているインスタントみそ汁のはずが、『とても美味しく』感じられた。


「飛鳥、口に合うかな? 父さん久しぶりに作ったら……。

母さんがいれば、毎日美味しい料理を食べられたけどな」


「……美味しいよ。母さんがいたら、きっとビックリだよ!」


この光景は『見慣れて』いる。

――そう、この家には母親がいない。


飛鳥が幼い頃、『事故』にあって死んでしまったらしい。

十三曰く、優しく綺麗でエッチな体つきだったらしい。


正直、飛鳥は断片的な記憶しかない。

それでも、とても暖かくていい匂いがして彼は母が大好きだった。


「……すまんな、飛鳥」


悲しげな表情で父が息子に謝ってきた。


「僕は大丈夫だよ、父さん。

そりゃ、母さんがいなくて寂しいときもあったけど剣道を通じて友達と出会えた。

父さんに育てられて、いまがある」


飛鳥は静かに箸を置いた。

このとき、十三の頬は熱を感じていた――。


「ありがとう、飛鳥。本当に優しく、たくましく育ってくれた」


一転して父の表情は晴れて、この日一番の満面の笑みを息子へ見せてくれた。


「そ、それじゃ父さん。ご馳走様! 

もう、遅いから明日も学校だし風呂に入って寝ます」


飛鳥は残された料理を一気に口へと運び食事を終えた。


父も照れたようすで「おやすみ」と呟いた。


こうして、飛鳥の濃密で『摩訶不思議アド○○チャ―』な一日を終えた……。


次の日の朝もハイカラかつなにかの名前を連呼している歌が流れていた。

どうやら、男女によるデュエットソングらしい。

サビに差しかかったところで――。


「燃えて、燃えて! 突き進め我らの覇道を~~♪」


飛鳥は目を覚まして携帯のアラームを止めた。

いつもの日常とおり洗顔と歯磨きを一番に済ませた。


「あとはこの食パンを食べながら、登校すれば問題ない!」


不敵の笑みで勢いよく家を飛び出し、剣道の朝練に向かったのだ。


飛鳥をはじめ、世界はいつもとおりの日常を営むと思っていた。

それゆえに、ごく一部の人間を除いて、あと数時間後に起こる出来事によって、

世界……地球の『真実』を彼は知ることになる。


「やっぱり、朝練はいい~」


汗ばんだ体に制汗スプレーとボディシートで心身共にリフレッシュして飛鳥は教室へ向かった。


「おはよう、みんな!」


クラスメイトがあいさつを返してくれた。

こうして、飛鳥の一日がチャイムの音色によってまたはじまった。


不思議と飛鳥は朝から『違和感』を覚えていた。

こう口では、表現しにくいがこうなんと言うか……。


飛鳥がニユー○イプなら、この気持ちをみんなへ伝えられるのに……。

病的な空想と妄想に浸っていたら、午前の授業を終えていた。

命や翼と一緒に昼食を済ませた。


午後は悪魔的な睡魔に襲われ、ウトウトしつつも授業を耐え抜いた。

放課後に訪れる至福のときを飛鳥は迎えた。


『頭カラッポで夢詰め込める』状態で、彼は剣道部の部室で着替えていた。


よくある校庭から少し離れた場所で、体育館とは別で階段を下りた先に剣道部や柔道部が使用する道場がある。


鼻歌交じりに着替えていた矢先――学校の外からウィーン、ウィーンと避難警報のような爆音が響いていた。


飛鳥は着替えを中断して、校庭のようすを見に行くことにした――。


飛鳥が校庭に着いた頃、事態は深刻化していた。

サイレン音が小さくなるどころか、大きくなり学校周辺からドゴゴ、シューシューと金属が削れて

火花散る音と大型トレーラーが近づいていた。


みんなあっけにとられ、訓練だとそう認識していた。

しかもこの日、先生たちは大事な会議があるため、ほとんど学校から出払っていた。

よって今日は原則的に、学校への居残りは禁止されていた。


その最中、飛鳥はのんきに「ずいぶん、大がかりな訓練だな~」と呟いていた。

彼も日本で起こっている事件に気づけずにいた。


――そして、この平和を壊す者たちが校庭めがけてやってきた。


大型トレーラーが逃げるように猛スピードで走っている。

その後方を青銅の金属に身を包んだ十メートル~十五メートルの人型ロボットが追従していた。

大型トレーラー、人型ロボットが雪崩れ込む形で校門を破壊し飛鳥の前に現れた。


「……!? いったい、どうなってだ。それにあの『ロボット』は!!」


数分後……。

横転した大型トレーラーと謎の人型ロボットたちが再び動きはじめた。


「ケヘへ、団長の言うとおりだぜ。これが、『奴らの切り札』か……!」


ロボットを通じて、かん高い声が聞こえていた。

無抵抗にも見える大型トレーラーに対して、謎の人型ロボットは無情にも攻撃した。


「や、やめろ! これ以上、邪魔してそれを破壊するな!」


いかにも、メカニックな人たちが着ていそうなつなぎに

妖艶の香りが漂う女性が重々しい銃を持ち抵抗している。


「じゅ、拳銃を持って……。いや、それでも相手は鉄くずのロボットだ」


他の生徒たちが思考停止して立ち止まっているなか、飛鳥は冷静かつ正確に戦況を分析していた。


「飛鳥。こりゃ、まずいな……!」


そう、呟きながら彼の肩を誰かが叩いた。


「つ、翼! 無事だったの? よかった……」


飛鳥の親友であり、好敵手の副部長、水城翼であった。


「俺は夢でも、見ているのか……。それだったら、悪夢だぜ!」


この二人のやりとりの最中にもメカニックレディーは臆することなく、

発砲を続け硫黄の匂いが校庭に広がっていた。


「くひひ、諦めろ。おとなしく、投降するなら手荒な真似はしねぇ」


メカニックレディーが放った銃弾はロボットに命中するも、まるで効果がなかった。


「林、もう限界だ。『あれ』を使うぞ!」


怒号にも似た声が、大型トレーラーの運転部に轟いた――。


「で、ですが大尉。これは、『適任者』にしか操縦ができません」


よくロボットアニメで見られがちな、展開が繰り広げられた。


「どうやら、あのお姉さん。なにか『策』があるみたいだな」


翼が頷きながら、飛鳥に投げかけた。


「うん、そうみたい。まず、校庭にいるみんなを避難させよう!」

「さすが、飛鳥だぜ。俺も同じことを考えてた。そうと決まれば……」


この二人は震える体を押し殺して行動に出た。


「みんな、避難するんだ。さぁ、早く! こっちの校門へ」


彼らの声はよくとおり、校庭中に響き渡った。


「あ、飛鳥君に水城副部長? 一体、どうなってるの?」


飛鳥たちが避難を誘導するなか、剣道部のマネージャー命と出会った。


「み、命ちゃん。まだ、学校にいたのか……!」


焦った表情で飛鳥は命に訊いた。


「……少し居残して、お友達と話し込んでたのよ」


命にしては、歯切れが悪い返事だった。


そして――。

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