決断
『死』を感じたのは、あの自爆を思い出し緊張と恐怖心が走った――。
でも、飛鳥はそれ以上に大切な人を守りたい。
偽善ではどうにもならない……。
「ごめんなさい、飛鳥君。結局、あなたには大人の都合を押し付けて。
しかも、人殺しをさせるエゴをやらせようとしてる……」
飛鳥の認識は人一倍甘かった。
これは、戦争である。
勝つためには、犠牲が出る。
現に地上では双方とも死者は出ている。
それでも、『飛鳥』はやらなくていけない。
「できれば、平和的に解決はしたいです。でも、無理なら人は争って
互いを理解しないと、次にはいけません」
優しい笑みとちょっぴり、儚い表情の蘭大尉だった。
待ったなしで、彼らは煙のなか姿を現した。
「団長は本気だぜ。命令は『奴を洗い出すこと』
それと、この地下にある組織の壊滅が団長の命」
彼らは洋風の甲冑の頭部を被り半透明になり、一斉に攻撃に出た。
彼が有する、『ステルスアーマー』プレ○ターのように、
姿をくらませ、風景を反転させる技術。
飛鳥は蘭大尉からは、聞いていたが初見だった。
――しかし、 具体的な対策はなかった。
蘭大尉たちは必殺のクロスファイヤー作戦に出た。
三人はハンドガン、ライフルを三位一体で鉄の雨をお見舞いした。
弾丸は敵の半透明のステルスアーマーを貫通させた。
火力武器の前では無意味だった。この狭い立地では、ステルスアーマーはあまり効果がなかった。
地の利を得た蘭大尉の作戦勝ちだった。
それでも、敵は九人ほど生き残り屍と硝煙のなかを
同志に目もくれず、斬り込まれ飛鳥たちは乱戦になった。
「彼らも本気ね。こちらが弾切れの装填中のスキを衝いて、
恐れず切り込んできたわね。林、飛鳥君。
ここからは乱戦だから、互いをカバーして」
学ラン姿に日本刀を二本構えて、BLOOD×の女の子ように
飛鳥は鬼気迫る、『フォルム』になった。
飛鳥が一度に四人と戦うことになり、
戸惑いもしたが 問題はなかった。
彼は躊躇せず、敵を切り裂き血が飛び散っている。
それでも、飛鳥は敵を殺すことができずにいた。
四人まとめて、切り裂き赤い刀はより一層
敵の返り血で、赤く刀身が染め上っていた。
紅蓮刀は殺戮の炎を宿し、悲鳴を上げていた。
「もはや、鬼神だわ。それに、急所まで外して。
こっちは、二人がかりで撃破したけど」
ようやく、NETEROに静寂が訪れた。
しかし、その光景に言葉が出ずにいた……。
彼らは勇ましく、『騎士道精神』で生き恥じらい
飛鳥が切り裂いた者たちは彼に「殺せ」と命じたのだった。
……だけど、彼らの瞳に映る『家族や恋人』を思うと
飛鳥はトドメを刺せなかった。
そんな彼らに敬意を払いつつ、飛鳥らはみんなが待つ、
退避シェルターへと駆けていった――。
「みなさん、すみません。せっかく地下のNETEROに避難して
いただきましたが、ここも襲撃され危険です。
ですから、街外れの場所に移動してもらいます」
飛鳥も含めて、全ての人たちが避難することになった。
「責任を持って私がみなさんをご案内します!」
セントラル・アースから風間司令が顔を出し飛鳥の前に現れた。
「お、お父さん。どうしてここに?!」
命の疑問に飛鳥は聞こえないフリをして、風間司令を見た。
「飛鳥君、久しぶりだな。まさか、このような形で再会するとは……。
君の『お父さんたち』は心配してる。み、命……!」
文脈的には間違いはなかった。
これだと、本当に数年ぶりに再会したような、
シュチュエーションだから。
「風間おじさん。『父さんたち』はまだ、ここにいますか?」
飛鳥は何気なく両親の居場所を風間司令に尋ねた。
命は彼の父さんたちというフレーズに
一瞬眉をひそめて首を傾げていたが。
「……あぁ。いるとも、場所は……」
風間司令の言いたいことは理解し、
飛鳥はもう一度だけ、両親と話すことを決意した。
「命ちゃん。僕は用事ができたから、風間おじさんと一緒に逃げて。
翼も忘れず連れてってね。
それじゃ、風間おじさん命ちゃんを頼みました」
避難シェルターの扉を押し開け、避難する人たちを逆走して、
飛鳥は運命にケリをつけるため、命たちと一時的にお別れした。
「あ、飛鳥君! また、一人で勝手に……お父さん。
私になにか、隠してたでしょ?
どうして、NETEROにいるのよ。ちゃんと、説明してよね?!」
「命。いままで、すまなかった。だけど、お前を守るためではあった。
一段落したら、飛鳥君のことや私のことを話す。いまは、地上に逃げるぞ」
NETEROは見るも無残な姿だったが、ギリギリ設備を維持している。
そんななか、セントラル・サタンは無傷だった。
「父さん、母さん……!」
父と立体映像に映し出されている、母の姿が見えた。
「飛鳥、無事だったのね? よかったわ……」
「やっと、紅蓮丸に乗る気になってくれたのか飛鳥……?」
飛鳥も二人の顔を見られて安堵したが、
紅蓮丸に乗るためにきたわけではない。
「たまたま、避難してNETEROに来ただけだよ。
まぁ、派手な戦闘があったにせよ。命ちゃんやみんなを守れた」
この状況下で飛鳥はいまだにウダウダと考えていた。
この最中にも戦いが行われ、命が消えていっている。
きっとそのうち、あの『黄金騎士』も現れて、
さらに戦況が悪化するだろう。
このままでは、みんなやこの街があぶないと頭では理解できていた。
「NETEROでは、風間司令。丈さんが前線で指揮して、
いま地下から地上へと誘導している。飛鳥も理解していると思うが、
こないだの黄金騎士との戦いでの逃走経路から探知され
私らの拠点がバレ、こうした事態になった」
『銀河帝国メルディアス』の行動からして今回の襲撃は
おそらく、最終決戦の全戦力の投下のはず。
それもそのはず、敵の拠点をわかったいま。
時間をかけて、ダラダラと攻撃する意味もない。
――いつの時代も戦争とは、歩兵が敵の拠点を制圧してこそが『勝利』
「でもあれは、みんなの責任だわ。飛鳥の責任ではないわ。
こうして、また家族三人で出会えたし、辛気臭くなっちゃうからやめましょう。
でも、飛鳥。ここはもうじき危ないわ。逃げなくていいの?」
こんなときでも渚は飛鳥の身の安全を一番に気にかけている。
飛鳥も飛鳥でみんなの期待や思いを裏切っていまこの場にいた。
『NETEROの全員に告ぐ! 現在、地上では風間司令たちが
敵の部隊に囲まれ、緊急事態である。『例』の黄金騎士タイプの
ロボットも確認できている。至急! 地球防衛軍は急行してくれ』
――そして、恐れていたことが現実になった。
地下にもぐり込んだ、みんなを罠にはめて地上はすでに制圧されていた。
NETEROへの攻撃は、囮で地上への誘いだった。
人類はまんまと陽動作戦に乗せられた。
「命ちゃんたちが危ない。それに、あの黄金の騎士もいるのか。
ぼ、僕は……どうしたら……」
これまでの彼なら、さっきみたく自分を犠牲に真っ先に向かっただろう。
さっきも人殺し未遂をしてまで命を救った。
しかし、今度は生身ではどうにもならない。
だけど、方法は『一つだけ』存在している。
飛鳥の運命を変えた二人を前にすると、
気持ちはやるせない思いと、怒りと儚さに支配されていた。
「卑怯で無責任だけど、父さんや私は飛鳥の決断を尊重します。
飛鳥がこのまま、自分にできることを逃げても誰も咎める資格はないわ。
それが私たち親子の償いであるように。飛鳥には選択の『自由』がある」
母たちはぐうの音も出ないくらい、飛鳥を追い詰めた。
全ての選択の権利と人類の『運命』を飛鳥に委ねた。
「いまさらだが、飛鳥すまなかった。だが、私はお前が紅蓮丸に乗って、
渚とともに世界を駆けていくのが、切なくもあり、嬉しかった。
父親として家族がまた、一つになれた瞬間だったからだ」
飛鳥はあのとき、はじめて紅蓮丸に乗った瞬間から、
本能で懐かしさを思い出していた。
「飛鳥は優しくて、カッコいい私の自慢の息子だもんね☆
私との約束を覚えていて、弱い人や大切な人の盾と剣になれた。
だから、もう一度紅蓮丸に乗った熱意を思い出してみて!」
二人の言葉は嬉しくもあり残念な気持ちでいっぱいだった。
だけど、それは結果に過ぎなかった。
父は彼に母の愛と大切な人を守る力を与え、
父は一人でいつも飛鳥のことを一番に考えていた。
形はどうあれど奇跡的に、剣持親子はこうして『再会』できた。
「ハハ。やっぱり、母さんには勝てないや……。
ごめんね、父さん。多分これが、人生で最後の反抗期だったかも。
僕は……僕にしかできないことを精一杯やるよ!
大切な人や世界を守るんだ! だから、父さん、母さん力を貸して!」
「ふふ。待ってました! 飛鳥なら、自分で答えを
出せると信じてたわ。そうとなれば、急ぐわよ?」
「はは。渚は美味しいところをいつも持っていく。これでは私の立場はない。
だが、そう言っていられない。
この続きは、君たちが勝ってからしようか!」
母は先に紅蓮丸の生体コアへ転送した。
飛鳥と父さんは全速力でセントラル・サタンを抜け、
紅蓮丸が待つ、セントラル・マーズこと格納庫へ――。
久し振りに飛鳥は紅蓮丸と対面した。
姿形が変わっていた。
「飛鳥よ。私らは、お前を信じていた。
いつの日か、帰還してくる息子のために紅蓮丸を改造しておいた。
これで、あの『金ピカ』と互角以上に戦える! 林君と634も協力してくれた。
だが、くれぐれも無茶をするなよ」
紅蓮丸の肩には、近未来を思わせる、キャノン砲が二門とりつけられ
腰の位置には、太陽刀と月詠刀の他にミサイルポッドが追加されていた。
機動機甲兵器サムライタイプ『紅蓮丸』+近未来装備といった具合だ。
それは、まさしく、ロボアニメの王道花形最終回、『フルアーマー装備』
「ありがとう、父さん。うん、任せて。この紅蓮丸で勝って
全てを守って、母さんと一緒に帰ってくるからね!」
父さんと握手を交わして、飛鳥は紅蓮丸のコックピットまで
エレベーターで上がり、ハッチを開いた。
「ただいま! 紅蓮丸。さぁ、母さん。いこう!」
椅子には綺麗に折りたたまれた、パイロットスーツが置かれていた。
飛鳥はすかさず、着替えて出撃体制に入った。
ちなみに、渚も飛鳥のパイロットスーツに酷似した服装にチェンジしていた。
「エンゲージリンクシステムも良好。いや、いままでで最高の数値かも。
超新星機関も五十%まで稼働。
解放状態も可能よ、飛鳥。細かいことは、
紅蓮丸に委ねて。私がサポートするから!」
二刀の紅蓮刀を端に置き、飛鳥は射出口に寄りかかり、地上に押し出された。
心と体は飛翔し、紅蓮丸と飛鳥は完全に”一体化”されていた。
稲妻が走る、レールを駆け抜けていた。
――その最中、コックピットからは飛鳥と渚以外いないのに
声が聞こえてきた。




