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銀河機動戦記~紅蓮の飛鳥~  作者: 恥骨又造
第一章:『地球激闘』篇
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誰だって一度くらい

「飛鳥君、ごめんね。私なんかが首をツッコンでも……」

蘭大尉の優しさに彼の心は少し浄化された。


「蘭大尉にも、知っていてもらいたいです。ですから、気にしないで下さい」


でも、答えが出ている、問題に長々と時間をかけ飛鳥は躊躇して、

目を背けて自分でも嫌悪する、答えに終着していた――。


「父さんたちは、とりあえずこの部屋から出て言って下さい。

蘭大尉も申し訳ないですが、やはり母さんと二人きりにして欲しいです」


彼の申し出に父たちは、素直に従い退室した。

蘭大尉は心配そうな、眼差しで飛鳥を見て出てすぐ扉の横に

立って待っていてくれるようだった。


「ふふ、何年ぶりかしらね。こうして、飛鳥と二人きりなんて。

とは言っても、飛鳥が知らない間に私たちは……」


いざ、楽天的な母を前にすると、いままでの緊張感や怒りの

感情がなくなってしまう。


だけど、飛鳥は言わなくてはいけない。


「か、母さん……。僕は……」

彼はいま心に思っている、素直な気持ちを言葉にした。


「……しばらく、考えてもいいかな。

少し頭の中や気持ちを整理したいんだ」


飛鳥は幼い頃のように母へわがままを口にしていた。

いまの彼は天才高校剣士で『人類の運命』を握る、紅蓮丸のパイロット。


しかし、飛鳥の心は半ば砕けそうだった。


隠されていた自分の運命を受け入れることができない。

また、生まれてはじめて勝てない相手の壁に恐怖心が隠せなかった。


「いきなり、死んだ母親が現れて、飛鳥が乗っていたロボットの

生体コアでしたなんて、悪ふざけも大概よね……」


母は悲しそうな表情で下を向いてしまった。

だけど、彼女から飛鳥は思いがけないことを言われた。


「それにしても、飛鳥。大きくなって、イケメンに成長したわね!

顔や目元なんて、私にそっくりで中性的で可愛いわ。

お父さんとは、瞳が似ていて優しさが出てるもんね?」


母は赤茶の髪の毛に白いワンピース姿だった。

飛鳥自身で言うのもなんだが、かなり母、渚似で細かいパーツは父に似ていた。


ただこのあと、気まずい沈黙のあと。

やっと、昔のように親子は普通に会話していた。

皮肉にも、母が紅蓮丸の生体コアになったから実現された。


「うん、よく言われるよ。友達には父さんと似てないって言われるよ。

でも、命ちゃんだけは母さんのことを覚えてて、

美人で優しい人って言ってくれるんだ」


さっきまで、やつれてア○ロやシ○ジ君みたく、腐っていた。

でも、母とこうして過ぎ去った時間を取り戻していった。

飛鳥は無邪気に命や自分の功績を自慢げに渚へ報告していた。


「飛鳥は私の自慢の一人、息子ですもの! ハハん。命ちゃんとは

変わらず仲がいいのね? すると、チュウぐらいはしたの……。

それとも、それ以上の……。お母さん、生体コアでお祖母ちゃんは嫌よ?」


飛鳥は頬を赤く染め上げ、額に汗を垂らして手で否定のジェスチャーで

必死に否定した。


そもそも、彼はまだ……。


「ふふ? いつかはそうなるかもね。まぁ、ほどほどに仲良く。

男女の『愛』を育んでちょうだい?」


苦笑いで受け流して、このあとも他愛もない会話が続いた。


「それじゃ、母さん。僕は父さんたちに告げてくるよ。

また、必ず母さんに会いにきますね」


母さんに手を振り、セントラル・サタンをあとにした――。

渚は息子の帰りを待つのであって。


NETEROのみんながいる前で飛鳥は父たちへ、

先ほど母に言ったことを素直に告げた。


「僕をしばらく、休ませてください。正直、復帰は未定です……」


彼の荒唐無稽な発言はみんなのやる気なくさせ士気を確実に下げた。

セントラル・アースはざわめいた。


「おいおい、これって事実上のパイロットをやめるってことだろう。

一体、風間司令や剣持博士は……」


事情の知らない彼らには、しょうせん高校生。ましては親の七光りで

調子に乗っている子供に見えていただろう。


……でも、そのとおりだ。


「あ、飛鳥考え直してはくれないか……?」

父からの悲痛の心の底から出た、飛鳥へのお願いだった。


「紅蓮の飛鳥。いや、飛鳥少尉。

それは、私たちNETEROでは認可できません」


狼狽える父親を前にして蘭大尉は心を鬼にして、飛鳥にきつく当たり、権力を行使していた。

でも、蘭大尉と言えど、彼の決意はゆるがない。


飛鳥の強情さに、蘭大尉は涙目ながらに平手打ちの構えになり

右手から、放たれた瞬間――。


「藤崎君。やめたまえ! 飛鳥君を叩いても無駄だ。

それに、乱暴だが、使えない子供はここにいても邪魔だ。

君の言い分は理解した。金輪際、NETEROにこなくていい!

それで、いいな。十三博士?」


彼の要望は実現した。その代償として、飛鳥はもう一つの顔であった

『紅蓮の飛鳥』という、夢のひとときの幕はあっけなく降ろされた。


「飛鳥もし、考えが変わったらいつでも、『ここに』帰っておいで」

彼はお辞儀をして、最後に蘭大尉へ腕輪を返却した。


「いままで、お世話になりました。林さんや634君によろしく

お伝え下さい。それでは、さようなら……」


こうして、飛鳥は地上に繋がるエレベーターに乗り

夜の街頭に照らされた、静かな地上に出た。


彼の足取りは前を向き、一切後ろを振り返りはしなかった。

今日から、普通でオタク気質な天才剣士に戻っていた。


普通の生活に戻ってから、命や翼からは心配され、怒られたけど

高校生生活を満喫して、毎日剣道に打ち込んでいた。


家に帰ってからも、至福のときであるアニメや漫画で時間を過ごしていた。

それでも、ふとした瞬間に紅蓮……丸……。


NETEROのことを考えては、自分を抑制していた。

学校や町では、連日紅蓮丸のことや『銀河帝国メルディアス』の騎士ロボットで

持ちきりだったが幸、敵の目立った動きはなかった。


ただ、翼は飛鳥の『心』を見抜いていた――。


「……飛鳥。やっぱり、お前俺たちになにか隠してるだろ?

言いたくないなら、しょうがねぇ。

でもな、俺や風間マネージャーなら飛鳥の力にいつでもなるからな。

それだけは、覚えていてくれ!」


二人に気づかれないよう、平気をよそって、いつも能天気で

周りを置きざりにする、ジョークを言っていた。


「……そのときは、お願いするね。翼……」


彼は翼や命にそろそろ、伝えるべきか葛藤していた。

だが、それももう不必要かも知れない。


NETEROのことや紅蓮丸のことは時間が解決してくれる。

心残りなのが母だけだった……。


それでもしだいに、忙しく重圧の使命から解放され

失われていた時間を大切な人やこの町で過ごしいくうちに、

紅蓮丸やNETEROのことを忘れかけていた。


しかし、飛鳥は再び、自分の『運命』を選ぶ場面に直面することになる――。


あの黄金の騎士との激闘から一か月が過ぎ

平和ボケしていると、そのときは訪れた……。


『住人の皆様! 緊急事態です。 

ただちに、指定の避難場所に避難してください。繰り返します』


午後の授業を受けていると、あのときのように非常警報が鳴り響いていた。

だが、あのときの比ではなく、この東京の街当たり一面の人たちが

地球防衛軍に誘導され、避難をはじめていた。


――すでに、町の中には敵の騎士ロボットと地球防衛軍の防衛ロボットが

戦闘をはじめて、戦果に見舞われていた。


飛鳥の高校も一斉に避難を開始した。

彼らは二駅ほど離れた『あそこ』に、収容されることになった。


「みなさん、落ち着いて。ここは安全でいまから、地下に避難します。

地下都市ですので、みなさん全員、収容できます。

焦らず、押さず、静かに避難してください!」


皮肉な運命のもと、飛鳥は自分の意志と関係なくNETEROに再来している。

でも、いまの飛鳥ではなにもできない。ちょっぴりオタクで天才剣士なだけの飛鳥だ。


「大丈夫よね? 飛鳥君……」

命の声と体は震えていた。


飛鳥も自信はないがNETEROのことを、良くも悪くも信用していた。

だから、即答してあげた。


「大丈夫だよ、命ちゃん。ここは、安全な要塞さ!」


さも知ったような口ぶりで、飛鳥は命を諭して落ち着かせた。

NETEROの超ド級の避難シェルターへ避難を完了させた。


だが、地上では爆発音が響き渡り、戦闘は激化していた。

地下にいても、振動や衝撃波は体で感じられた。


――そして、この地下でもただならぬ、爆撃音と悲鳴が聞こえた。


飛鳥はいっても、立ってもいられず命や翼が止める手を振り払って、

いつの間にか無意識の内にシェルターを抜け出していた――。


「飛鳥、待てよ! どこにいきやがる!」

翼の右手が飛鳥の姿を見送り……。


「あ、飛鳥君。駄目よ、また私たちを置いてけぼりにして……」


身勝手な飛鳥だった。けれど飛鳥は予感していた。

だから、彼自身の眼で確かめて守る。


彼が爆心地に着くと、見慣れたつなぎを着た艶やかな髪に妖艶な

お姉さんと背が大きくて、いかにも技術者かぶれの

やさしい雰囲気の男性とロボットがいた。


「蘭大尉……に林さん。それに、634君……」

武装を済ました、三人が一斉に飛鳥の方に振り返った。


「おやおや? どういう風の吹き回しかな? そこの少年……?」


蘭大尉ははじめて出会った、いじわるな口調で話しかけている。

それをみて、もう! と言わんばかりに林のカットインが入った。


「蘭大尉は意地悪です。だから、男が寄り付かないですよ!」


久し振りの二人の鉄板の絡みを見て、飛鳥の表情は緩んでいた。

しかし、呑気に笑っていられる事態ではない。


NETEROの地下通路の横穴からは、

地下シェルターに近づく、足音が無数に聞こえていた。


「紅蓮の飛鳥『これヲ』」


634の4次元ポケット(仮)から、

二本の紅蓮の日本刀とハンドガンが出され、飛鳥に渡された。

蘭大尉は彼の顔を見て言った。


「飛鳥君。この場は協力でOKね? だったら、

それを受けとって、協力してちょうだい!」


悩み葛藤をしたが、飛鳥は武器を受けとった。


「はい! ただ、いまは命ちゃんや翼たちを守るから

あくまで、一時的な協力かもしれません」


少し前までの蘭大尉に戻った。そのまま、飛鳥は豊満の胸で顔を押さえつけられ

いつもみたく、汗をかき顔が紅潮していた。


「くく。飛鳥君に『ツンデレ属性』は反則だよ!」


いつだかの訓練で飛鳥は真剣を使用していた。

ある程度まで扱えるようになっていた。


さらに刀は改良され、軽量かつ殺傷能力が格段に

研ぎ澄まされ、紅蓮の二本の刀は煌めいていた。


これから、飛鳥はこの刀と銃を使って

迫りくる敵と戦い命のやりとりをしなくてはいけない。

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