圧倒的な強さと気高さ
飛鳥の人生ではじめての経験……息苦しくなり戦慄を覚えていた。
「目撃例は極めて少ないが、あの『金色の騎士タイプ』は間違いなく
この地球を狙う、指揮官の機体だ。紅蓮の飛鳥、即退避するのだ!」
風間司令がいつになく、命令口調で事態が急をようすると理解した。
彼の予感は的中していた。
いまの飛鳥と紅蓮丸では戦っても、勝てる見込みはない。
「はい、僕もそのつもりです。
ですから、みなさん。サポートをよろしくお願いします!」
不幸中の幸い、『エンゲージリンクシステム』と
超新星機関は良好だった。
やるなら一瞬だ。
飛鳥は緊張で汗ばんだ顔を右手で拭った。
二刀流を鞘に納刀して、フルスロットルで紅蓮丸は駆け出した。
「はは。まさか、このエネルギーは我らと同じビッグバンエンジンか!
だが、察するにその機体は未完だな? この黄金騎士
の『エクスカリバー・クィーンナイト』からは、逃げれんよ!」
紅蓮丸の性能がいともたやすく見透かされた。
敵の黄金騎士とやらが搭乗している機体は、武装解除したまま腕を組み威圧していた。
「このまま、勝負を挑んでも、疲れ切った相手に……。
私の騎士道精神が納得できん。ときに貴様の名はなんと言う?」
……。
この場面で意味が理解できない。
飛鳥はなにを口にするか、わからなかった。
「なぜ? 黙り込むのだ! 貴様、答えられない訳でもあるのか?」
どうやら、先ほど敵の黄金騎士が口にしていた聖騎士という通り名。
この人物はそれをいま飛鳥に求めていた。
セントラル・アースにいる人たちを無視して、意をけして飛鳥は『真名』を唱えた。
「僕は……紅蓮の飛鳥。そして、この機体は『紅蓮丸』人類の希望です!
あなたの目的はなんですか?」
直感的に飛鳥は今回の一連の事件の真相を知っているのに違いないと確信していた。
それにしても、綺麗で澄んだ声だった。
「貴様らも知っているだろう。私たちの目的はこの蒼き星、地球の『略奪』にある。
だが、思いのほかこの星の悪あがきに苦戦を強いられている。
欧州や南米などは容易かったが、この『日本』は強固だな……」
飛鳥は世界社会情勢や各国の軍隊たちが乱れているとニュースや
TVはなんとなくわかっていた。
でも、日本だけは違った。
世界で最初に富士山を奪われてからは、NETEROの地道な活動により、
仮初の平和にいた。
「――でだ、私から一つ提案がある。この私と一騎打ちをしてもらいたい。
貴様を打ち取れば、この戦いが終わると確信している。どうだ?」
すっとんきょうな声がコックピットから聞こえていた。
それは蘭大尉たちがいる、セントラル・アースからだった。
しかし、しばらく虚無な雑音だけが聞こえている。
「風間司令や父さんたち……」
この間に飛鳥はすでに答えを出していたかも知れない。
「紅蓮の飛鳥、よく聞いて。あなたがこの戦いを引き受ければ
世界……人類の運命決めるわ……」
命や翼たち、『この星』に住む、人々に幸せに暮らして欲しい。
母さんが生きていた、事実を残すためにも……。
守らなくてはいけない!
「『父さん!』」
「風間司令……おじさん、ごめんなさい。
父さん。僕は――この戦いを引き受けていいかな?」
紅蓮丸のパイロットでもなく、剣道部の部長でもない。
ただの息子、剣持飛鳥として父への投げかけだった。
「……私は飛鳥を信じるよ。きっと、母さんだって生きてたら
飛鳥を尊重して、全力で応戦するさ。それに……」
風間司令も飛鳥の熱意に負け、諦めて渋々承認した。
「これは、起死回生の場面だ。これからは、私たちが攻める番だ。
紅蓮の飛鳥、頼んだぞ!」
先ほどのため息や悲痛の声が打って変わり、
飛鳥を応援する無数の声が聞こえている――。
それは、飛鳥に『勇気』と『力』を授ける声援だった。
「では、一週間後の今日。深夜十二時。運命を決める戦いは、
貴様らの象徴であった、あの山でどうだ?」
闘志と気迫を乗せて、敵の黄金騎士へ飛鳥は頷いた。
黄金の騎士型ロボットが指揮して、一斉に鉄くずの集団の姿はロストされた。
聖騎士と名乗る、黄金騎士は多くの謎を残しつつ……。
飛鳥の紅蓮丸も帰投した。
ただ、NETEROについてからが大変だった。
尋問に近い形で飛鳥は質問攻めにあっていた。
「へへ。僕は本当に大きな賭けに出たかな……!?」
自嘲じみた、表情で誤魔化して飛鳥は後頭部をかいていた。
このとき、NETEROの大人たちは冷静になり困惑していた。
一週間後の戦いで、地球の運命を決める戦いに高校生が……。
でも、父と風間司令は飛鳥を見る目が違っている。
「飛鳥君。単刀直入で言うが。なにか、敵を倒す策はあるのかね?」
そんなやりとりに蘭大尉や林が彼を心配して目線があった。
二人の眼差しは、まるで弟を心配して胸が苦しい、
お姉さんやお兄さんのような心境だったはず。
「紅蓮丸のなかで言ったとおりです。あの人の戦力は未知数です。
でも、いまの僕は不思議と怖さとワクワク感が両方あります!」
飛鳥はいつの間にか、ロボットのパイロットになりきり
ロボアニメの『主人公』へなりきっていた。
「……だから、僕は本気でぶつかり合って勝ちたい。
父さん。いまから、一週間学校を休んで
NETEROに泊まり込んで特訓します!」
息子の提案に父は耳を傾けて承諾した。
むしろ、そのつもりだったらしい。
――その後、十三博士は声を高らかに上げて、
NETEROの職員全員にこう頼み込んだ。
「親馬鹿かしれないが、飛鳥のサポートを全力でお願いします!
きっと、『この子』ならやってのけると信じてる!」
久しぶりに父の表情が父親の顔になっていた。
このとき飛鳥は恥ずかしくもあり、父の背中が誇らしく思えた。
体中に力。心には勇気が宿された。
『剣持少尉……。紅蓮の飛鳥は俺たちが支え、運命をともにします!』
風間司令や父の激で士気が上がり、全ての人たちが立ちあがり
来る『決戦の刻』にみんなの意思が一つになった。
彼らとの最終決戦がはじまった。
でも、このとき飛鳥はまだ自分の『運命』。
紅蓮の飛鳥を名乗る、過酷さと現実を知らなかった。
この段階はのちのち換算すると、『序章』に過ぎなかった……。
とにもかく、飛鳥は林に連れられ、セントラル・ヴィーナスに来ていた。
以前、蘭大尉が言っていた、NETEROの温泉施設。
温泉地もびっくり仰天で見事な『温泉』だった。
機動戦士ガンダムS○EDの永遠の戦艦も驚愕。
この湯にあたれば、心が洗濯される……。
林は頭にタオル乗せて、温泉に浸かり心地よさそうにしている。
「あらためて、NETEROは凄いですね。人類の英知とそれを
支える人たちには感心しました」
林と肩を並べて、飛鳥は熱心に話し込んでいた。
すると、ドアがガチャと開く音がして、湯影のなかに人影が見えた。
その人影は、どうやら全身をタオルに包みこみ、ボディラインは
見事なまでに、ボン・キュ・ボン。
「……林に飛鳥君もいたのね? こりゃ、ラッキーだわ。へへ……」
その人影は数メートル歩き、その人は軽くシャワーで全身を洗い流して
飛鳥の目の前にくっきりエンハンスした。
「ら、蘭大尉どうしてここに……?」
ん? と、蘭大尉は飛鳥にその疑問を返していた。
「それは、お風呂だからよ。あっ! そういうことね。
ここ、NETEROの温泉施設は男女兼用。私たちはそうして、
互いを知り理解を深めてきた」
プルンプルン胸を弾まして、蘭大尉は楽しそうに飛鳥の右隣に座り込んだ。
こうして、飛鳥は二人に挟まれる形になった。
「飛鳥君。男のロマンがここでは許されるのだ。いいだろう?」
蘭大尉の視線を感じつつ、飛鳥は素直に林に頷いていた。
「飛鳥君ったら、女の子みたいに色白で透きとおった肌ね。
それにこないだから思ってたけど、意外と筋肉質だわ!」
ただし、蘭大尉の前では、立場が逆転してしまう。
いままでに感じたことがない、卑猥で妖艶な大人の色香が彼を襲った。
「蘭大尉。おじさんみたいですよ! 変な目で僕を見ないでください」
照れ隠しで飛鳥は口先を尖らせているけども、『あいつ』が
尖りそうな予感を感じ彼は林へ助け船を出した。
「そろそろ、熱いので僕は先に上がりますね。林さん?」
タオルでよそよそしく、隠して上がり林に無言で飛鳥は微笑みかけた。
『二人でごゆっくり☆』
飛鳥はこれ以上いると、『狂戦士の甲冑』が暴れ出すので。
気持ち急ぎ足で男性用の脱衣所に向かった。
「チェ、惜しかった。しかし、飛鳥君は凄いわ。あの子は、世界の運命を
背負ってもケロとしてる。でも、不安はあるはず。だから、少しでも…」
少し二人の会話には、気になったがパンツ一丁で
無料のコーヒー牛乳を勢いよく、飛鳥はあおっていた。
「紅蓮の飛鳥でもなければ、普通の少年ですものね。
俺は飛鳥君が可愛いです。それは変な意味ではなく、弟みたいで、
紅蓮丸を大切にしてくれる。だから、勝ってもらいたい……」
コーヒー牛乳を飲み、マッサージ器で体を数十分揉んでいるが、
一向に二人が上がってくる気配がなかった。
「ふふ。それは私もよ、林。……てか、林。さっきからお前の視線は、
私の胸に向いているが……。お前の狙いはこれだったか、早く上がれ!」
パチンと軽快な衝撃音がなり、顔を腫らした林が慌てたようすで脱衣場に現れた。
「ハァハァ……剣持少尉。我、作戦失敗であります! ひとまず、部屋を案内するね」
セントラル・ヴィーナスを出て、セントラル・マーズの近くにある
部屋に案内され、今日から一週間飛鳥が寝泊まりする部屋にきた。
「綺麗だけど、少し生活感が残ってますね。でも、いやな感じがしないや」
どうやら、数十年前の部屋の状態のままらしい。
多分だが、女性が使用していただろう。
それはいいとして、飛鳥は明日のスケジュールを確認して林とお別れした。
ラフな服装で腕を組み、飛鳥はベッドで寝ころびイメージしている。
もちろん、『黄金の騎士型ロボット』について。
考えれば考えるほど、勝つイメージが思い浮かばない。
はじめて自分の『二刀流』をいとも容易く見切られた。
でも、絶望感はなかった。
一人の剣士として、本気の力をぶつけてみたい。
きっと、そうすることで彼らとわかり合えるはず。
この日は、疲弊しきったため、いつの間にか眠りについていた。
朝はアラームで起こされることなく飛鳥は自然と目が覚めた。




