神剣勝舞
「飛鳥、もういいんんだ。それは、手でパンの部分をちぎって
中のチョコを『ちょっこと』つけて、食べるんだ!」
飛鳥は後ろから、翼に肩を叩かれた気がした。
翼が言うようにパンの部分を手でちぎり、チョコにつけて口にした。
当たり前だが、甘くておいしかった。
適度に甘く、いくらでも食べられそうなおいしさだった。
飛鳥はこのチョココロネに虜にされた。
「あ……。剣持君! 今度から、正解が出るまでやり続けるのは禁止です。
それにしても、よく水城副部長は知ってたわね?
ぶっちゃけ、私は知らなかった」
翼は大人のマナーだと、鼻にかけて命ちゃんに説教口調で教えていた。
その口調に命ちゃんは、イラ立ちをみせていた。
「今回は剣持君の病気を、救ってくれたからよしとするわ!」
ハハと、飛鳥と翼は笑い合いこのあとも楽しく昼食を食べて
午後の授業も午前同様に積極的に参加して、勉学に励んだ。
「では、みなさん明日は小テストなので勉強してきてください!
特に剣持君は、手を抜かずちゃんと受けてください」
いつもより、飛鳥は一生懸命授業を受けていたのに、
なぜだか、先生は機嫌がよろしくなかった。
「飛鳥、やりすぎだぜ! さすがに、あの先生も困っただろうに。
そりゃ、ちょいちょい間違えた教えもするけど。可哀想だろ?」
飛鳥は先生が間違えたりした箇所を指摘したり、正しいことを
言って人から注意されるとは思いもしなかった。
しかし、命は彼を擁護して、褒めてくれた。
「まぁまぁ。あの先生もプライドはあるでしょうけど。
いい薬になったはずだから……」
担任の先生が教室に入ってきてクラスは静かになった。
手短にホームルームを済ませ、この日の学校を終えた。
けれど、大半の生徒はここから張り切る子もいれば
嫌々と仕方なく学校に残ることになる。
飛鳥ら三人は机の上を片付けて、剣道の道場に向かった。
彼らの足取りは軽く、マ○オのようにいまにも飛び出しそうだった。
道場に着いてからは、命が先に道場に入っていき
飛鳥と翼は学ランから、道着に着替えた。
それにしても、やけに最近、よく着替えるなと自分で思いつつ
更衣室を翼と一緒にあとにした。
入り口や道場でぞくぞくと、後輩や仲間たちと出会い
久しぶりにみんなと会えて、話せることに彼は感謝していた。
「それじゃ、みんな集まって! 今日は部長の剣持君が
みんなに一言あるらしい。心して聞くように」
こ、これは想定外の命のフリだったが、みんなに
ちゃんとお詫びして、剣道部の士気を高めるにはちょうどいいと思い
気合いを入れて、逆シ○アの大佐みたく演説した。
「……みんな。最近、部活に出れなくてごめんさない。
でもどうにか、一段落してまた剣道に打ち込めそうです
頼りない部長だけど、次の大会に向けて一致団結して頑張ろう!」
真剣に後輩たちは、聞いてくれていて暖かい拍手で飛鳥を迎えてくれた。
どこか旅に出て、何年かぶりに家に帰った気分だ。
「飛鳥さん。僕らも飛鳥さんに負けないように鍛練します。
だから、よろしくお願いします」
この日の稽古の流れが命から伝えられ、
飛鳥らはまず道場周りを走り、体のエンジンを温めはじめた。
「みんな、頑張って! あえて、今日は回る回数を決めなかったわ。
時間制限のなかで、自分の限界と戦ってもらうために」
早くも命による、ドS稽古だった。
彼女はストップウォチと名前が書かれた名簿を持ち
一人一人、計測して管理していた。
飛鳥は先頭を走りながら、命のマネージャー姿が
板についてきたと思いふけっていた。
「剣持部長! 一位は、俺だぜ。お先に~」
彼をあざ笑うかのように、背後から風のように翼が飛鳥を抜き去った。
飛鳥も心のギアを変動させ、心で『ギア・セカンド!』と唱えた。
「飛鳥さんと副部長は化け物だ。でも、あの二人を超えなくちゃ!」
みんなも、二人の姿に感化されて、ペースが上がった。
命は嬉しく手を口に当て、みんなに激励している。
ただ、命一人では手が足りず、アタフタして
時間と道場を回った計測は、手いっぱいに見えた。
たまらず飛鳥は笑っていた。
いやいや、いけない。
本来なら、自分で計測してやらなければいけないのに。
少ないとはいえ、十四人の部員をケアするには、命でなければ
今頃、飛鳥らはただの男くさい集団にすぎなかっただろう。
「はーい。終了。五分、休憩入れたら二人組で打ち込んでいってください!」
みんなで他愛のない、会話や剣道の話で休息を終えて
実践的な稽古に突入した。もちろん、飛鳥のパートナーは翼だった。
最初は各々、野球でいう素振りを竹刀でおこなった。
彼は念入りに、普通の竹刀と小太刀で使う竹刀を使い稽古に励んだ。
幸いNETEROで蘭大尉との格闘戦訓練が生かされまったく
運動能力は劣れずにいた。むしろ、身体能力は向上していたかもしれない。
「全然、劣れていない。むしろ、オラ。強くなってんぞ!」
飛鳥は翼に調子がいいのを囁いていた。
「はは。確かに、前より『二刀流』の弱点だった、パワーが補うばかりか
確実に強化されてんな。うれしいような、厄介だぜ……!」
飛鳥は早くも二刀流を試してみたいと、思っていた。
それでも、基本の鍛練を疎かにしては、剣士失格である。
「素振りを百回終えた、人はパートナーに打ち込んでちょうだい!
強く、早く、相手に敬意を持って打ち込みことを忘れずに」
「よーし。それじゃ、みんな。打ち込んでいこう!
それじゃ、翼。僕から、打ち込んでいくね。
いまは基本のスタイルでいくから!」
飛鳥は翼に敬意を持って全力で面を捉えている。
一回、二回と竹刀で翼の面、胴、小手を懸命に打ち込んだ。
「よくもまぁ。そのガタイから、こんな威力が出るぜ!」
小太刀により、打ち込みもしっかりおこない。
飛鳥は翼と変わり、責める側から受けに回った。
普段のほほんとしていて、飛鳥の性格とのギャップもあるが、
飛鳥は竹刀を両手で扱う『二刀流使い』超攻撃的な剣士タイプだ。
しかし、意外に思うが翼は飛鳥と真逆で『防御型の剣士』だ。
普段の翼からは想像できないが、堅実に守り抜き相手の太刀筋をさばいて
緩急入れて、鋭い一撃が翼の戦い方。
まさしく、難攻不落の要塞。
風林火山のような兵法を身に着けている。
飛鳥は何度もこの戦略により、模擬選では負けそうになった。
「今日の俺は、攻めて攻めて、攻めまくるぜ!」
体感的に翼の打ち込みは、飛鳥に匹敵する重たさと衝撃を生じていた。
少なからず、頭や手足が痺れている。
「このあと……。模擬選戦があるなら、楽しみだよ。翼?」
翼が放つ一つ一つの打ち込みをその目に焼き付けて、
飛鳥たちは打ち込みを終えて、休息に入った。
「飛鳥君。久しぶりの剣道はどうだった?」
命は嬉しそうな表情を浮かべて、飛鳥に感想を尋ねてきた。
当たり前だった、剣道部の活動に心の底から彼は楽しんでいる。
「楽しい。とっても、剣道って楽しい。まだまだ、やりたいよ!」
腕を組み、得意げにポーズをとって命はノートに指を指した。
なにやら、細かく書き込まれているようだ。
「私も楽しいわ、飛鳥君。みんな、日を追うごとに成長してる。
さっきの走り込みの時間もそうだし。打ち込みを記録してきて
目標の飛鳥君に近づいてきてる」
部長って役所だけど、飛鳥より命はみんなのことを考え
いつも見守っている。後輩たちや飛鳥の癖や弱点が事細かく書かれた
ノートは命マネージャーとしての賜物だった。
「こうやって、記録してると楽しいし、きっと形として記憶に残るからいい」
みんな打ち込みが終わると、命のもとに駆けより
各々自分の欠点や伸ばすべきところを聞きにいっていた。
飛鳥はこの光景に安心いている。V2を達成したいま。
正直、自分だけが孤高に感じていた。
翼や命はよかったけど。
後輩や同級生たちのモチベーションや気がかりだった。
でも、この思いは飛鳥の思い込みで、つけ上がっていた。
みんな着々と彼に近づいてきて、それこそ亜門や
翼たちを凌駕する『好敵手』になりえるかも知れない。
「はいはい~。分析はそこまで。これからは、模擬選による
実践的な稽古で培っていくわよ!」
飛鳥は待ち望んでいた、模擬戦。
命の声に反応してみんなに対して、熱い思いを伝えた。
「風間マネージャーいいかな? これからやる、摸擬戦だけど
完全ランダムな組み合わせにしてもらるかい?」
みんな飛鳥の発言に唸り、驚いていたが目は輝いている。
いまにも喰ってかかってきそうな、後輩たちの覇気が伝わった。
「みんな、やる気みたいだし。ああ、言ってる部長を倒すチャンスよ!
それにアクビをして余裕こいてる、副部長には下剋上よ」
これにより、実力を無視した戦いが決まった。
不思議と翼に対してはみんな、飛鳥に向けられている尊敬や憧れの想いではなく、
内に秘めていた戦意が向けられ命ちゃんも語尾が強くなっていた。
「いいぜ! 燃えてきた。これこそ、戦いだ。早速やろうぜ?」
闘志みなぎる翼の一言で、道場を半分に割って
飛鳥と翼が下級生たちとの模擬戦がはじまった。
「それじゃ、早速。僕と戦おうか!」
飛鳥は『二刀流』を解禁して、後輩たちと汗をかいた。
一人、二人と電光石火の勢いで一本を取ってみせた。
だけど、さすがに五人目からは疲れがみえて
限界を感じていたが、NETEROやあの試練を乗り越えて
心身共に剣技と心は自分が思うより、進化して
容赦なく、『二刀流』で突破した。
「飛鳥部長さすがです。いい勉強になりました」
倒れ込んでいる、田中君に飛鳥は手を差し伸べて、
互いにいま一度試合前どうように敬礼した。
「田中君よくやったわ。あの飛鳥君をあそこまで追い詰めるなんて
さて、水城副部長の方はと……」
軒並み後輩たちを圧倒していた翼だった。
しかし、その連勝の前に最強の一年が立ちはだかり
幾度なく、凄まじい竹刀の太刀筋が交差していた。
「チっ! 黒崎。お前は生意気だから、おれが修正してやるぜ」
飛鳥は一息ついて、道場の隅で座り込んでいた。
そんな翼の鬼気迫る、気迫にも動じず何食わぬ表情で黒崎は
翼との間合いを詰めっている。
「……私は手負いの副部長だろうが、容赦しません。
これで決まりです……! 覚悟」
黒崎は疲弊している翼にも容赦しない眼差しだった。
翼は深く深呼吸して、竹刀を握り直している。
「嬉しいね。俺も飛鳥も後輩たちの成長を感じれてる。これ以上の
やりがいはないぜ! でも、まだお前たちの壁でいるぜ! どりゃあぁぁあ」




