蒼き星と銀河帝国メルディアス
宇宙空間を星々が煌めくなか、蒼く輝く星が『そこ』には存在した。
生と死が行き合うなか、奇跡の星であり、その星にはたくさんの命が宿っている。
蒼き星に住む人たちは、互いに協力し合い共存していた。
争い……戦争とは無縁で平和であった。
しかし、太陽の如く燃えさかる戦果が『地球』に迫っていた。
――そのときだった、一つの流れ星が黒き混沌とした果てへと姿を消していった。
中世紀を彷彿させる、数々のオブジェクトがいたるところに飾られている。
その気品に反して、堅物で恐々しい、声が響いていた。
「我が騎士たちよ。いまこそ、命ずる! 軍勢を率いて、蒼き星を侵略してまいれ」
この声と共に、一斉に場が静まり返った。
「はっ! エリス姫様。
ご期待にそうべく、聖騎士クリスティーヌが志願いたします」
号令に勢いよく答えた者がいた。
その者の身なりは、神々しく『黄金の鎧』を纏っていた。
「よかろう。そなたに、今回の『地球侵略作戦』の指揮権を委ねようぞ」
「では、続いて……。
共に今回の作戦を遂行する黄金騎士はと……」
エリス姫様は首を傾け、人差し指を下顎につけあたりを見回した――。
「エリス姫様。お言葉ですが、今回の作戦は私の『騎士団』だけで十分です」
「なにを言う。貴様だけであの『星』を侵略して、姫様に献上できるのか?」
背中に大きな弓矢を抱えた、『黄金騎士』が聖騎士に問い詰めた。
「『聖血のグース』の言うとおりであるぞ。
今回の作戦こそ、我が一族いや、この『銀河帝国メルディアス』が抱いた宿願なのだぞ?」
狼狽した表情でエリス姫様は考え込んだ。
「私、率いる精鋭たちにより、迅速かつ圧倒して無傷で蒼き星を征服して参ります。
いささか他の者たちがいては、邪魔になりますので……」
自信に満ち真っ直ぐな瞳で、ぐっと目に力を入れて、クリスティーヌはエリス姫に告げた。
「そこまで聖騎士殿がおっしゃるならば、『黄金騎士長』であるバーンにお手並みを見せてもらうか?」
声の主は大木のような体つきで、自分の背丈をすら超える巨大な斧を手に持ち合わせていた。
豪快な男バーンによって、他の黄金騎士たちは静まり返った。
「ふっ、よかろう。ならば、クリスティーヌ率いる騎士団で作戦を遂行してまいれ」
聖騎士は華麗に美しくその場で膝まずいた。
「ありがたき幸せです。では、出撃して参ります!」
笑みを浮かべ、マントを得意げにひる返し聖騎士は去っていった。
――そして、数ヶ月後。
蒼き星『地球』が危機に瀕していた。
「ここが、この国の象徴であり誇り……。容易いものだ……」
日本の象徴と言うべき、富士山に巨大な鉄の塊が降りたったのだ――。
これを機に大きく”運命”が変わっていく少年がいた。
初夏が感じられ、今年も灼熱の暑さを予感させていた。
この暑さに負けない、熱気に満ちた場所があった。
「これより、全国高校剣道の決勝戦をはじめる。両者前へ!」
審判のかけ声と共に、勇ましく肉つきのいい男と赤髪に茶色がかった
瞳が印象的でスラッとした、『美少年』が決勝戦の舞台に上がった。
「亜門、負けるな。お前の剣は無敵だ!」
亜門サイドはむさ苦しい集団による声援が飛び交っている。
「きゃー。飛鳥君頑張って♡ あんな奴倒してV2よ!」
対照的に赤毛の美少年サイドは真逆に黄色声援一色だった。
「さて、その端整で綺麗なお顔をどうしてやろうか……」
いかにも、悪い顔で亜門は向かい側の美少年飛鳥を睨みつけた。
「いえいえ、僕なんて。
頑丈な防具がありますし。お互いに悔いが残らないように全力でやりましょう!」
互いに闘志ぶつけ合った。
審判『はじめ!』の声が轟いた。
騒がしい会場が定期試験のように沈黙の空間になった。
開始同時に、亜門は一気に距離を縮め飛鳥に急接近した。
見た目とおり亜門がパワープレイに出た。
「グハハっ。もらった、胴――!」
パワーが乗っかった亜門の竹刀が飛鳥を襲った。
しかし、彼は瞬時に対応して、胴回りを守り華麗にさばいた。
いつしか、両者の竹刀と竹刀がバチバチとぶつかり合う音だけが響いていた。
「さすが、亜門さんです。でも、僕は負けません!」
そう呟き、赤毛の美少年、飛鳥は構え直した。
原則剣道において、一刀流が基本的だ。
だが、『剣持飛鳥』は他の剣士とは違った。
――そう彼こそ、実践的に可能にした『二刀流』の使い手だった。
「ここから、一気にいくよ! てりゃぁぁあ!!」
一般的な大きさの竹刀と小さい竹刀を両手に持ち上下に構えて、
烈火の如く飛鳥は反撃に出た。
「ついに二刀流での攻撃か……。だが、それも今日まで……」
「剣持君、がんばれ! いっけ~、必殺の『二刀流』よ」
飛鳥の幼馴染で剣道部のマネージャー、風間命の声援が沈黙を破り飛鳥へ直撃している。
「ありがとう、命ちゃん。ただ、耳元で怒鳴るな……チ○ム」
風間命は、決して耳元では怒鳴っていない。
彼は得意げに小さく語尾を呟いていた……。
飛鳥が攻撃に転じてから、刹那的な間で二刀流からの連撃が放たれた。
「ひぃぃい! ううっ。こ、これさえ、た、耐えぬけば……」
飛鳥は左手の竹刀、小太刀を逆さに持ちかえた。
「はぁぁあ! 最終奥義『絶・天上雷神剣』」
完璧なまでに面と胴を斬り裂きえぐった電光石火によるすさまじい十二連撃だった。
ただ、彼の頭のなかでは、『絶・天上雷神剣』といった具合に脳内変換されていた。
「また、つまらぬものを斬ってしまったか……!」
またしても、誰にも聞こえないように飛鳥は低いトーンで呟いた……。
固唾を飲んで見守っていた、観客や審判たちはドット一斉に沸いた。
この瞬間、剣持飛鳥の全国大会での『V2』が確定された。
こうして、美少年でオタク気質の天才剣士は優勝旗を学校へと持ち返るのだった。
それから、数週間の月日が流れた――。
剣道大会後から、特にかわることなく飛鳥は毎日をほほんと過ごしていた。
いまさらだが、飛鳥は東京都内でも有数の高校に通っている。
こんな風に普通に暮らしているが、数ヶ月前富士山に謎の戦艦が降ってきていた。
しかし、その『戦艦』は沈黙のまま日本は変わらず平和的だったが、
世界では不思議な事件が多発していた。
――ときは二〇九九年。
ネコ型ロボットや人間の『感情』を持ったロボットはいまだ現れず、
車でさえ道路を走り空も飛べずにいる。
一昔の社会情勢とまったく、変わらずいた。
それでも飛鳥の父、剣持十三博士は毎日忙しそうにしていた。
飛鳥はそんなありきたりな日常に感謝しつつも疑問は抱いていた。
これから新しく始まる『世紀末大戦』には心躍らされていた。
ん? これは、王道の『ロボットアニメ』だ。
彼は表向き天才剣士や美少年だと、言われている。
飛鳥は自分自身でそこそこ、重度なオタクだと自負している。
『スパーロボット』や『ガン○ム』。
とにかくロボットアニメやサブカルチャーが大好きだ。
幼い頃から、剣道と同じぐらい見ては憧れていた。
「え~では、この問題を……。剣持飛鳥君、答えてみなさい」
おっとと、先生からお決まりの不意打ち。
彼はいつも授業中や寝る前など、妄想に浸ってしまう癖がある。
これくらいの問題ならば――。
「X=4を代入してY=7を二乗計算しまして……」
飛鳥のマザーコンピューターにかかれば造作もない。
「ほう、正解ですな。さすが剣持君だね」
と冷静を装っているが、内心焦っていた。
「あぁぁあ。飛鳥様カッコイイですわ」
飛鳥へ好意を抱いて、褒めてもらえるのはありがたい。
でも時々、内面を知らないで、表向きの表情しか知らないでいる人たちへ彼は罪悪感によって胸が痛む。
と、哲学的なことを考えていた。
キーンコーンカーンコーンと、一日の学校に終わりを告げるチャイムが鳴った。
飛鳥は一目散に机の上と、身の回りの掃除を済ませて、剣道部の部室へと駆けていった。
「あ、待って! 剣持君。私との日直の当番を……」
歴戦の汗と涙でコーティングされた剣道着に着替えて道場に一番乗り。
この日も約二時間、仲間たちと青春の汗を流して稽古を終えた。
いつもの流れで、部の仲間たちと一緒に飛鳥は帰り道についた。
「おう! 飛鳥。たまには、少し寄り道してこうぜ?」
うぅ……。
行きたいのはやまやまだが、彼にはやらなくてはならぬことがある。
たとえ、ノリが悪くとも。
「ご、ごめん。翼! また今度にしてくれるかい?」
「う~ん。了解! なら、週末は絶対に遊びに行こうな、飛鳥」
彼を誘ってくれているのは、剣道部の副部長で蒼く澄んだ瞳が特徴的で太陽のように暖かくて優しい水城翼である。
飛鳥のよき理解者であり、『好敵手』でもある。
彼の裏の顔も少なからず、知っている。
ちなみに、飛鳥は一応、剣道部の部長なのだ。
きっと、翼は彼の情熱的かつ、真っ直ぐな瞳を見て察してくれたのだろう。
「ただ、そんときは、風間マネージャーも一緒だからな? 二ヒヒ……!」
なぜだか、翼はいつもこのパターンになると、風間命を話に上げる。
「もう、水城副部長は……私をすぐ、からかうんだから!」
命はなぜだか頬を赤めて、飛鳥を横目で見ていた。
「二人とも、気をつけてな! それじゃ、また明日学校で」
翼や後輩たちに見送られ、飛鳥と命は二人きりになった。
「それで……飛鳥君。今日私との、日直当番、サボったでしょ?!」
二人きりそうそう、飛鳥は命に痛いところを突かれた。
「そ、それはごめんなさい……!
いち早く剣道の稽古をしたいがゆえに」
飛鳥は素直に謝罪を口にし反省した。
「うっ! 今度はちゃんとして下さい。
飛鳥君は部長で優秀者だから、しっかりしてね!」
彼女は機嫌を直して、可愛い笑みを飛鳥に見せた。




