93軒目 飛ぶ家
真由がワンピースを披露していた時、その頃、一斗は?
真由のマンションに、レイナ、秀、華子、えりかが集まっていた昼間の事だった。
上空2000メートル、庭付き一戸建て3000万ジャーは、レーアントシティ隣の山をゆっくり飛行していた。家を操縦するのは、家の主である丹羽一斗。しかし家が動くのは、一斗の意思ではない。
家の中には、家を操縦艦で操縦する一斗、そしてリビングでくつろいでいるのは、ドア、マイク、蛍光灯の3体の物人間。
「この家は古いけれど居心地がいいなあ。おい、一斗、もっと早く飛べ! 法務局へ行くぞ」
マイクはそう一斗に告げた。
「ワカリマシタ」
一斗は表情のない声でそう言い、スピードを上げた。
二日前、一斗は物人間に捕えられた。そして物人間に洗脳されて、感情をなくした。そして、これまでの事、大成を探しに口車塾に来た事を忘れてしまっていた。自分がなんであるか、それすらも忘れてしまっている。一斗は元から感情が乏しく、意思を表すことが少ない為、物人間の洗脳にかかるのは容易だった。物人間達は、一斗を庭付き一戸建て3000万ジャーに変身たままにさせた。物人間は3000万ジャーに住み着き、移動手段とした。○○区の土地を口車の土地とする為に、物人間があちこちに看板を備え付けているのだ。
物人間は生理活動、つまり食事、風呂、トイレ、睡眠が必要ない。個体差もあるが。対して一斗は生身の人間。元から欲は少ないほうだが、2日間まともに食事や睡眠をとっていないのは、堪えるはずだ。しかし、物人間に洗脳されている為、一斗本人は空腹や眠気感じていない。
「お、法務局に着いたな。駐車場に家を着陸させろ」
法務局○○出張所は、一斗が務める区役所の裏にある。○○本庫商店街もすぐ近くだ。一斗は法務局の駐車場に3000万ジャーを着陸させた。
「よし、俺様はレーアントシティ裏山の登記に行ってくる。フフフ、これで裏山は口車の物だ」
マイクは書類をたくさん持って、法務局へ入っていった。
その頃、法務局裏の公園にて。物人間の砂場、滑り台、ぶらんこ、そして逸花大成がいた。公園には普通に砂場、滑り台、ブランコがあるので、突然遊具が二つ出来たので、公園を訪れた人は、戸惑っているようだ。大成は物人間の指示で、口車塾のチラシを、物人間の滑り台達に張り付けていた。
一週間前○○レンジャーは苦明寺を訪れた。その帰りに大成は寛子に呼ばれて、庄司ビルへ寄った。そこで寛子は大成に、大成の住むショージコーポを手放すから自立するように言った。大成は急な寛子の発言に混乱し、一人で海の公園でさまよっていた。そこで滑り台、砂場、ブランコの物人間に襲われた。口車塾で勉強して強くなった物人間に、大成一人ではかなわなかった。大成は物人間に洗脳されて口車塾で働くことになった。一斗も口車塾で働いているが、働く場所が違うので、お互いの存在に気づかずにいた。
物人間は、大成は変身して飛行するよりも、生身で働かせた方がよいと判断した。変身してもアパートの一室しか使えなくて狭いからと、大成は掃除、洗濯、料理と家事も出来て顔もそこそこいいからだった。ちなみに大成は、夜は口車塾に戻って、食事をとって寝ている。口車の食事の用意も手伝わされているが、衣食住には困っていない。今大成が着ているのも、口車にもらったスーツだった。
法務局から出たマイクは、憮然とした顔をしていた。マイクは3000万ジャーの中に入った。
「マイクくん、登記はどうでした?」
ドアが聞いた。
「これじゃあ、認められませんだってよ。まだ書類が足りないんだ」
マイクが怒って、書類をぶちまけた。
「そうか、どこがダメだったのか、また一緒にやりましょ。一斗ここ片付けて」
ドアはマイクを落ち着かせて、ダイニングの椅子に座らせた。
「ワカリマシタ」
一斗は紙を拾い集めた。それから、物人間の指示の元、また家を上空に上げた。
長いので分けました。




