87軒目口車上下
「何をごちゃごちゃと話しているんだ。変身だ」
ドアの向こうで、口車が叫んだ。
「建築戦隊、口車不動産レンジャー 口車上」
「建築戦隊 口車不動産レンジャー 口車下」
庄司ビルの前に4階建ての細長いビルが二棟建てられた。横幅は、人一人程度のスペースしかないビルだった。
「大成は二階で変身するんじゃ」
寛子はそう言って、大成に鍵を渡した。ずっと空家になっている、庄司ビルの2階。大成は走って二階へ行った。
「建築戦隊 3階建て商業ビル 庄司ビルX円ジャー」
寛子は玄関で庄司ビルに変身した。建物の中で変身したので、寛子の見た目は何も変わらないが、変身した能力は使える。
「口車上〜。」
口車上はそう叫ぶと、庄司ビルが浮かんだ。どんどん上って行って、口車ビルの屋上まで来た。
「ひ〜」
寛子は怯えた。
「建築戦隊 二階建てアパートショージコーポ 家賃二万ジャー」
大成は二階建てアパートに変身した。大成も見た目は変わらないが、能力は使える。
「うわ、ふらつく」
庄司ビルは宙に浮いているので、足場が不安定だ。間もなく、急降下。
「口車下〜」
口車下は、庄司ビルを急降下させた。口車上は上にしか行かないエレベータを持っている。口車下は下にしか行かないエレベーターを持っている。
「何だあのビルは、上にしかいかないエレベータと、下にしか行かないエレベーターって変なビルだな」
大成は窓から口車ビルを見て、驚いた。
「ふっ、これは戦闘用のビルだ。実在はせぬ」
口車上が言った。
「実在しないのじゃな。ならば突然来る固定資産税請求通知に戸惑え攻撃」
寛子が口車に請求書を突きつけた。
「更に、町内会費も請求しておこうか、10年分くらいじゃな」
寛子は電卓を叩いた。大成は急に強くなった寛子に何もできずにいる。
「うぐぐ」
口車は請求書の束に首が回らない様子だ。
「しかしこちらには最強の口車がある、必殺、口車上下動」
口車上下は気を取り直し攻撃を開始した。
「いや、素敵なビルですね、ここなら家賃100万はないとねえ」
「本当に、駅前だし古いのに綺麗な建物だ」
口車上、下は口々に庄司ビルを褒めた。寛子はいい気分になった。
「でも、ここはもう少し。ここをこうして、ああしたら、やはり家賃は1万くらいかな」
口車は急に褒めるのを止めて、批判し始めた。これが口車上下動。
「壁ドン攻撃」
大成は攻撃をした、口車には届かなかった。
「大成、音楽では攻撃できないのか」
寛子が言った。大成はギターを引く。
「音楽で、攻撃、どうしたらいいのか…」
大成は音楽での攻撃が思いつかない。
「そうじゃのう。建築戦隊たるもの、好きや得意で攻撃の一つもできんとのう」
寛子がしみじみそう言うと、大成ははっとした。
「建築戦隊 庭付き一戸建て3000万ジャー」
口車の後ろに一戸建てが建った。
「一斗」
「班長は町内会費の集計が仕事だ攻撃」
3000万ジャーが攻撃、口車は集金の金額の重圧に負けた。
口車は去り、寛子、大成、一斗は元の姿に戻った。
「古民家さんの家から出たら、ちょうどだった。間に合ってよかった」
と一斗。
「一斗、オレ、建築戦隊辞める」
大成は真剣な目つきで言った。




