68軒目 伝わる野望
口車の野望進行中。
「丹羽さん、いらっしゃるかしら。建築戦隊の」
○○区役所の案内所にて、丹羽一斗をさがしている3人の女性達。40代から50代くらいだろうか、3人とも困った様子でいる。案内所は、区役所に手続きに来た住民に、どこのフロアに行けばよいか案内する場所だが、職員個人を指名するケースは少ない。ただ一人を除いては―――
「丹羽ですね。少々お待ちください」
案内所の職員は、慣れた様子で丹羽一斗を探す。一斗は案内所と同じ階に勤務しているので、すぐに見つかった。
「すいません。今、丹羽は電話対応中ですので、お待ちいただけますか? あ、終わりました。呼んでまいります」
一斗は3人の女性達を連れて、隅の応接コーナーで話していた。地域住民の困り事を聞くのも区役所の仕事の一つだが、建築戦隊の丹羽一斗を指名する住民もみられる。
「そーなの、私達だまされちゃったのよ。口車塾に。実際よりも値段は高いし。希望した時間の授業はないし。退会するといっても返金しないし。うちの子もこの授業はわかりにくいって」
「そうよ、私も。説明会ではうまいこと言って、実際は手のひらを返したような態度ね。口車乗!」
「建築戦隊さん、口車塾を倒してください」
3人の女性は一気にまくし立てた。大学受験を控えた子どもを口車塾に入れたら、説明会と実際に入塾してからの話がかなり異なると、女性たちは主張している。
一斗はメモを取りつつ、一通り話を聞いた後、言った。
「わかりました。建築戦隊でも調べますが、区役所の管轄ではなく、消費者センターの管轄になるかと思いますので……」
一斗は消費者センターの場所の書いている紙を女性達に渡した。一通り話して満足したのか、女性達は帰っていった。
口車は市民を騙し始めている。さっきの電話も、口車塾の苦情だった。これは、建築戦隊としても放置してはおけない。と一斗は思った。
夕方、帰宅の途に就く一斗。ここでまた、黒い影が一斗の周りを忍び寄る。口車の事を考えながら歩いていた一斗には、忍び寄る影に気づくのが遅れた。影は、更地になった。更地は空中に浮いている。
なんの脈略もなく、土地が浮いているなんて、まさか。
一斗は身の危険を感じたが、遅かった。
更地に建物が建築されていく、建設車両も出てこずに、いつの間にか木が組み立てられ、小さな平屋建ての小屋を作り出した。看板も出てきて、店舗のようだ。屋根につけられた看板委、「コインランドリー kutiguruma」と書かれた。その間数分ってところだ。
「ふふふ、丹羽一斗よ、どうだい、段々と変身していく建築戦隊は。我が名は建築戦隊 コインランドリーkutiguruma」
完成したコインランドリー店がしゃべりだした。
「だから、何だよ。そっちがその気なら」
一斗は鍵を握った、その時、コインランドリーから洗濯物が舞った。強風と竜巻とともに。
「うう、目が……」
洗濯物には強力な洗剤が付いていて、一斗は目も開けられない。どうにか手探りで、鍵を握り。
「建築戦隊 庭付き一戸建て3000万ジャー」
庭付き一戸建てに変身できたものの、一斗の目は洗剤でふさがれている。
「洗いの次は、すすぎだ」
コインランドリーは大量の水を発生させた。洗濯物が回る。庭付き一戸建てもぬれる。しかし家は雨から守れるから、たいしたダメージにはならない。
「すすぎの次は乾燥と」
コインランドリーは、熱風を吹き付ける。庭付き一戸建てが熱風でゆがんでいく。
家が、壊れる……
「乾燥機能を使うと、しわになるから、とどめはアイロンだ」
コインランドリーは庭付き一戸建ての壁にアイロンをかけていく。暑くて、家が燃える。
ボン
反撃のできない一斗。庭付き一戸建ては消え、元の姿に戻った。
家が急になくなった衝撃で、一斗は激しく飛んだ。このままだと、どこかにぶつかって衝撃で大けがだ…と思いきや、
「セーフ」
どこからともなく、黒い仮面をかぶり、全身黒衣服を着た人が一斗を受け止めた。
声からすると、若い女性のようだ。よく見ると、二人は体形も顔もそっくりで双子のようだ。
「私が、一斗さんを助けるわ。お姉ちゃんはコインランドリーを」
「わかった。魔法でトンカチを出すわ」
お姉ちゃんと呼ばれた方は、コインランドリーの看板を、魔法? で出したトンカチで叩き壊した。コインランドリーは更地になってしまったのに、びっくりし消えてしまった。
妹?の方は、一斗を魔法で手当てしたようだった。
「?あれ?」
一斗が気付いた時には、コインランドリーも双子の女?も消えていた。
確か、強い衝撃を受けたはずだけど、どこもけがをしていない。
謎の双子は、何なんでしょう。




