65軒目 つながる野望
久しぶり過ぎて、内容を思い出すのが大変でした。
今回いつもより長いです。切ろうかとも思いましたが、不自然になりそうなので、このままで行きます。
今回は敵のドア(1軒目に登場)視点です。
また、建築戦隊にやられた。
僕は、粉々になって消えた。ここは○○区内の公園。いつもの習慣で、通りかかった建築戦隊、庭付き一戸建て3000万ジャーを襲った。で、あっさり倒された。いつもの事だ。しばらくすると、僕は元通りの
鉄製のドアになって、3000万ジャーと戦った公園に帰ってくるんだ。
いつも、同じ事の繰り返しだ。このままではいけない、もっと強くなって、建築戦隊を倒し、人間を倒し、この世界をドアだらけの国にするんだ。ドアだらけの国にするのは先祖代々からの言い伝え。だけど全然建築戦隊にはかなわなくて、言い伝えは守られない。
「君、大丈夫?」
僕の体が元通りになるのは、翌日の事だ。目が覚めると、黒くて固いスタンドマイクが目の前にあった。そのマイクから僕は声をかけられたようだ。しばらく考えて、僕はマイクと会った事があるのを思い出した。
「ああ、誰かと思ったら、スタンドマイクくん。建築戦隊の二軒目で登場していたね」
「覚えていてくれたんだね。ドアくん。また、建築戦隊にやられたのかい?」
「大丈夫だ、いつもの事だから」
僕はさらりと答えた。しかしマイクは真剣な声で話し始めた。
「なんか今まで、俺達、バラバラに建築戦隊と戦ってきただろう?ドアはドア、マイクはマイクでさ。このままだといつまでも建築戦隊に勝てないとは思わないか?どうだろう、俺達、一緒に組まないか?できれば、俺達の他にも、滑り台とか砂場なんかも誘ってさ」
突然の申し出に驚いたが、僕はそうしたくはない。
「でも、僕は全世界をドアにするという先祖代々の野望があるんだ。君の力を借りたら、世界がドアとマイクになってしまうではないか」
「そうだろうな。だが、現状はどうだ? いつも建築戦隊にやられてばかりではないか。俺達『物人間』は弱いんだよ。でも俺達が集まれば、強くなるかもしれないじゃないか。先ずは、俺達物人間が協力して、建築戦隊、そして人類を倒し、それから物人間達の一番を決めようではないかと、俺は考えるよ」
物に人格があって、動く生き物は『物人間』という。昔から地球に住んでいたり、他の星からやってきたり、それぞれ違うが、人間達は物人間と呼んでいる。
マイクは熱く語りだした。音量が大きすぎて、耳が痛くなりそうだ。僕の耳がどこかっていうのは、突っ込まない方向で。
痛い所を突かれた気分だ。マイクは遊んでいそうな感じだったが、色々考えているんだな。僕は、マイクの考えもありかもと思えてきた。僕は言った。
「物人間同士、仲良くなるのもいいかもな。だが、ブランコ達とはどう接触するんだ?」
公園の遊具は普段は静かで、人を襲う事はない。何かの拍子に、遊具に人格が生じ、人を襲う。彼らの通常時を見かけた事がない。
「遊具達とも、接触できそうなんだ。ちょっと俺と一緒に来てくれ、飛べるか?」
復活したばかりで、飛ぶのきついんだけど、一体どこに連れていくつもりなんだ? 僕もマイクも手足がないから、長距離の移動は飛ぶのが一般的だ。人間の背丈より、少し高いくらいの位置を、さっと飛んでいくんだ。
しばらく飛んだ所で着いた場所は、○○本庫商店街の中の角地、新築3階建てのビル。赤いのぼりがビルに貼ってあり、「口車塾○○本庫校 開校 生徒募集中」と書いてあった。
「塾って、勉強する場所だろ?」
僕は何故ここに連れてこられたのか、さっぱりわからない。
「いいから」
マイクは僕をビルの中へと引っ張った。
「こんにちは。口車塾の説明会にようこそ」
ビルの入り口で出迎えたのは、人間の男一人、物人間?2人。人間の男は、灰色のスーツに眼鏡をかけた痩せ型の中年。物人間は、ストライプのハンカチに手足の生えた生き物、背丈は男の膝くらい。ちょうちょ結びの赤いリボンに、結び目に顔が付いた生き物。ハンカチとリボンは大きさが同じくらい。
その3人に案内された教室は、机といすとホワイトボードのある20人くらいは入れそうな部屋だった。一見普通の教室のように見えるが、教室の後ろには机がなく、ブランコと砂場と滑り台があった。もしかして、物人間の公園遊具達か? それ以外の席には、物に顔が付いた物人間達がいすに座っていた。箱、電話、バナナ、水道の蛇口など。僕とマイクは、ハンカチに案内された空席に着いた。
ハンカチがホワイトボードと教壇の前に立つ、しかしハンカチは背が低いので、教壇に乗って話し始めた。
「では、これから口車塾の説明会を始めます。僕はこの塾の、生徒兼マスコットキャラクターをやらせてもらっている、ハンカ・チーフと言います。よろしくお願いします」
ハンカ・チーフがおじぎした。ハンカチを半分に畳んだ感じになるんだ。ハンカ・チーフは続けて話し出す。
「今日は僕のような、物人間の皆さんの為の説明会です。先ずは塾長の口車乗、通称ジョー先生お願いします」
教壇には、ハンカ・チーフに代わり、中年の男が立った。男は教壇の前に普通に立っている。
「こんにちは。私が口車塾長の口車乗です。ジョー先生と呼んでください。乗を漢字で書くと『じょう』とも読めるからね。それはそうと、君達物人間のみんなの、目指したい物、やりたい事はなんですか?」
「はい、世界征服です。人間達を追い出し、僕たちだけの世界を作ります」
箱型の物人間が、手を挙げて発言した。
「箱型箱男君、そうだね。その為には何かが必要かな。ではリン・ボンさん」
ジョー先生は、出迎えに出ていた、リボン型の物人間を指名した。
「人間の勉強です。人間が何をして生活しているのか、学校で何を勉強しているのか。人間を知らないことには、世界征服はできません」
「正解!そうせめて高校卒業程度、できれば大学卒業程度。それと人間の世界の習慣や常識なども知らないとなりません。これを君達だけで勉強するのは大変です。ここに来てみんなで勉強しませんか? そして、みんなで一丸となって、世界征服をしましょう。そうすれば、きっと勝てます」
そうか、ここにいる人達は、目的が同じなんだ。
「すいません、お金はどのくらいかかるのですか」
ブランコが質問した。物人間だったか。ブランコはどうやってここまで来たんだろう。
物人間のたいていは、衣食住が必要ない。だからあまりお金を必要とはしない。マイクはパソコンを使うから、お金が必要との事でアルバイトをしていると言っていた。ライブハウスのマイクになってアルバイトしているらしい。
「大丈夫。口車塾のお手伝いをちょこっとしてもらえれば、お金はいりません。むしろお小遣いも上げます。お小遣いで、ご自分のメンテナンスをして、もっと強い物人間になれます」
メンテナンスか、僕も高級ドアになれるかな。うまい話で、騙されるかもしれないけれど。どうせ僕には、失う物もない。このままではダメだから、取りあえず口車塾の話に乗ってみよう。口車乗せられてみよう。僕は口車塾の申し込みをした。マイクも、他の物人間達も。
でもただ一人、申し込みの時間になったら、すっと帰っていった物人間がいた。
灰色で人間並みの大きさの、水道の蛇口の物人間。みんなは気にしていないようだけど、何故か、気になる。
次回明かされる蛇口の謎。




