35軒目 JKあやか覚醒
久しぶりの○○区。
あたしはスーツケースを引きながら電車を降りた。
あたしは、丹羽あやか、16歳、高校一年生。○○区から電車で二時間くらいかかる全寮制の中高一貫校「緑海学園」に通っている。今は夏休みだから、久しぶりに実家に帰ってきた。
○○本庫駅前にて、父の迎えの車を待つ。うちは駅から遠い。帰ると連絡したら、父が車で迎えに来てくれる事になった。実家には一週間滞在するから、結構荷物が多い、
駅のロータリーにうちの車が見えた。赤いから目立つ。赤は正義の色だから、車も赤いのにしたのだとか。にしてもこの車、遅くない?うまく流れに乗っていないような、そんな感じ。私の前に赤い車が来た。
「父さん、ただいま…ってあれ?」
あたしは運転席に座る男を見つめた。
「兄さん…」
運転しているのは、父ではなく、兄だった。
「父さんから頼まれて来た。乗って」
…なんだかなあ。兄の丹羽一斗20歳。会社員。5学年上の兄に、あたしは複雑な気持ちを抱いている。
あたしは、トランクにスーツケースを詰めて、助手席に乗った。後ろの席がよかったけれど、そうすると兄は
「タクシーじゃないんだから、こう言う時は助手席だろ」
とか色々細かく言われそうだ。
「兄さん、免許持っていたんだ」
兄が運転するところは初めて見る。
「二年前、高校卒業する時に取った。3月生まれだから、一か月で取ったけれど」
あたしは中学の時から寮にいるから、家の事や兄弟の事はわからない事も多い。
「ごめん、運転、慣れてないから、話しかけないでね」
怖!頼まれても、話さないわよ。
車は家とは違う方向に向かって行った。オゾンショッピングセンターの駐車場に入って行く。不審に思いながらも、兄の話しかけるなオーラにやられて、聞けずにいた。車は何度も切り返しながら、屋上の屋根のない駐車場に止まった。
「一時保育に預けている、えりかを引き取りに行くから、一緒に来て」
もう突っ込みどころありすぎ。何で説明もないのかとか、オゾンに保育園があったんだとか、何故えりかが保育園にとか、何故えりかを兄が引き取るのかとか。
あたしが不審な顔をしていると兄が、
「母さんから頼まれた、用事があって預けていたけれど、間に合いそうにないからって」
えりかは、あたしの妹、2歳。あたしが寮にいる間に、年の離れた妹ができて、びっくりした。あまり会った事がないから、人見知りとかされそう。
「えりかちゃん、お父さんとお母さん迎えに来たよ」
保育士さんがあたし達をそう呼んだ。違うって…
えりかは兄に駆け寄った。あたしに気付くと、兄に隠れた。やっぱりな…と。まあいきなりできた妹に、あたしもどうしていいかわからない。
駐車場に戻ると、うちの車の前に、スーツ姿の中年男性と、着物姿の女性が立っていた。暑くないのかしら。車が出せないので、どいてもらおうとしたら、中年男性が話しかけてきた。
「君は、丹羽一斗だね」
「何故、僕の名前を…?」
「僕の名は、口車乗。口車塾で世界征服を目指している。それには、建築戦隊の存在が邪魔だ」
「うちは口車舞。面白そうなので、ついてきてしもうた」
建築戦隊。我が家は代々家に変身して悪と戦う、建築戦隊の家系。長男である兄が今建築戦隊を継いでいる。兄は家の鍵と車の鍵をキーケースにつけて、ズボンのポケットに入れている。家の鍵を握ると、庭付き一戸建て3000万ジャーに変身する。庭付き一戸建てというのは、我が家だ。変身するのは家のコピー。
えりかがおびえて、兄にしがみつく。その時
「いただき!」
舞が兄のポケットからキーケースごと奪い取った。
「建築戦隊、鍵を取られたら、変身できへんわね」
子どものころから、建築戦隊を継ぐ兄ばかり親の手間暇かけられていた。あたしはほったらかし。なのに兄は、いつも淡々としている。父の言うなりで自分の意見を言わない。今だって、鍵を取られて何もできずにいる。どうするのよ!
あたしは自分の服のポケットに鍵が入っている事に気付いた。大きさから、学校の生徒会室の鍵を持って帰ってしまったんだ。あたしは鍵を確かめようと、ポケットに手を入れて、鍵を握った。
ボンと音がして、あたしは生徒会室の中にいた。
なに…これ…
会室の窓を見ると、オゾンの駐車場、兄とえりかと口車が見える。
あたし、生徒会室に変身したんだ…
何故?
「新しい、建築戦隊か?」
口車が驚いていた。
あたしは、学校で生徒会会計をしている。先生に頼まれて、何となく引き受けただけだけど。
変身した生徒会室は、本物そっくりの物がある。これを使って攻撃かな。攻撃に使えそうな物、ボールかな。生徒会室では、昼休み遊ぶ用のボールを貸し出している。バスケットボール、ドッチボール、バレーボール、サッカーボール。バドミントンや卓球のセットなども貸し出している。ボールと言えば、あたしはこれ、バスケットボール。あたしは中学からずっとバスケ部だ。
「兄さん、ちょっとそこどいて」
兄はえりかを抱っこし、よけた。
「シュート」
会室の窓を開けて、口車にシュートした。顔面はさすがにまずいだろうから、足を狙った。
何度もボールをぶつけるわよ。
「髪が乱れてしもうた。ジョー兄さん、帰りましょう」
舞が乗の手を引っ張る。
「帰る前に、鍵を返しなさい。返すまで、投げるわよ」
口車は鍵を落として去って行った。
変身が解けたあたしは、その場にヘナヘナと座り込んだ。
「変身した…」
実は結構憧れていた。戦隊物とか好きだったから、建築戦隊になりたかった。女だから無理だって、あきらめていた。夢なのかな。
「あやか、大丈夫?」
兄が近づいて来た。
次回は、夏の特別話、あやか編はしばらくお待ちを。




