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第8文節 信用(クレジット)について

 私は勘違いをしていた。多分ほとんどの経済学者はすでに知っていて私の考えを聞いたら鼻で笑うと思うが、この世はカネが全てなのではない。信用こそ全てなのだ。


 この信用クレジットと言う奴は現在世界を支配している唯一無二の原理である。冷戦は資本主義が勝った。共産主義が負けたという話という単純な話ではない。信用主義が二つの主義の横合いから殴りつけて勝利をもぎ取っただけなのだ。そうして信用主義はアメリカという新興国が発明した初めての神話である。


 とはいえ信用は実際昔からあった。虐げられてもいなかったはずだ。主義の中で言えば古い方に属する。しかしいまはこの神しか息をしていないのだ。神々が死に絶えたとき、信用はカネと手を結んで生き残ることに成功した。いやむしろカネが金本位制度の崩壊という死に瀕して信用という古き神々を呼び覚ましたのか。それは私にはわからない。


 とにかくクレジットヒストリーと呼ばれるアメリカ特有のシステムも、リーマンショック、サブプライムローンなどのアメリカで起きた事象もこれによって説明できるように思えるのだ。そして信用=カネ。アメリカらしい単純な論理である。アメリカのCEO達が退職に辺り莫大な金を貰うのは別にそれだけの立派な仕事をしたわけではない。ただ単純にそれだけのカネを渡さないと信用できないからである。年俸も高額なのも同様である。彼等は全く信用されていないのだ。誰から? 彼等の上に立つものはもう一つしかいない。すなわち株主からである。よって信用度が高い一般の労働者は安い給金しか貰えないというわけだ。


 一般労働者の信用度が高いだって? と不思議に思われる方もいらっしゃるかも知れない。だが実際高いのだ――集団で見た場合。取り替えが利き、大した機密も持っていない。実に信用できる。会社の実権を握っている株主に取ってしてみれば。


 つまりもはや彼等は――株主は人間と個としてみていない。全ては信用の大小によって見分けられる。会社のさまざまな機密を握るCEOに高給を。そうでない一般労働者には薄給を。すべては信用度のなせる業である。


 信用=カネであるがゆえにアメリカでは献金が重要である。大統領選挙などでいくら金を集められたかが話題になるのはアメリカぐらいである。それはいくら信用しているかを形で示すことになるからである。もっともそのカネは大抵はくだらないコマーシャルに費やされるのであるが。


 そして一番やっかいな問題はこのアメリカ固有のシステムが世界中に広がっていると言うことである。アメリカは民主主義を広めようとしているのではない。信用主義を広めようとしているのだ。それもアメリカでいびつに育った信用主義を。少なくとも私にはそう見える。


 いまや信用は巨大になりすぎて信用を信用しなければやっていけない状況にすらなってしまった。彼等は信用を信じよ! と呼びかける。それはもはや宗教と何も変わらない。いやむしろネズミ講に近いものがある。


 そしてその信用が失われたとき、何が起きるかは実のところもはやみんながわかっているのだ。紛争地域を見ればそれが明らかである。あれが信用が信用を失った状況である。


 平穏に生きたければ汝信用を疑うこと無かれ。また平穏に逝きたければ信用を疑うこと無かれ。


 また信用はカネであるがカネであるが故に形で示さなければならない。信用を沢山持っている者(つまり金持ち)は、自家用ジェット、大型クルーザー、豪奢な車、豪邸などをそろえなければならないのだ。別にいらなくてもである。また下の階級もそれなりの物をそろえなければならない。しかしそれはソーシャルゲームに金を費やすことと何の違いがあるだろうか? 


 つまりアメリカは今後ゆっくり時間を掛けて貴族主義に移行するだろう。もうしているだって? そうかも知れないね。

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