<↑危→険↓考←察↑>
見えないがわかる。
彼女。憂鬱そうな顔の。彼女。
「みんな、危険というものに対してもっと敏感になるべきだと思う」
「へえ」
駅のホーム。相づちを打つ僕。 黄色の線/点字ブロック の半歩後ろ。それに少し乗ったスニーカーの足裏。ゴム。掻痒。
三歩後ろ一歩左の彼女の言。アナウンス:急行通過の旨。ゴウゴウと近づいてくる音。続きを促す。彼女は続ける。
「たとえば、」
たとえばの話。危険についての話。
「私がここで高い回し蹴りを放ったら、どうなる?」
電車が迫る。喧しく音。かき消されない大声。後ろの気配、彼女。
「うん」
「どうなる?」
聞いているのか。想像する。危険。危険について。閃く結論。振り返る。
「ぱんつが見えるだろうね」答える。視認する。三歩後ろ一歩左の彼女。黒のフリルスカート。
刹那・急行通過→轟音。揺れる髪。瞳、美貌。
<sound> <sound> <sound> <sound> <sound>
全ての音は轟音が塗りつぶした。<sound>が塗りつぶした世界のさなかで目が合う。
電車。 通過する。通過する。通過する。 通過した。 音が遠ざかる。
彼女は間を取る。
取る。
たっぷり取る。
溜めた溜め息ひとつ+かぶりを振る←彼女。
「聞いた私がバカだった」
溜め息で俯いた顔。ゆっくり持ち上がる。
彼女の目。前髪の合間で開かれる。睫毛の一本まで注目させる。黒い。
僕を<focus>する目。ばちりりと目が合う。
「答え:あなたは倒れる→電車にぶつかる→頭が飛ぶ→死ぬ。以上。おわかり?」
「I see.」
応える。僕は 苦笑×満面の笑み→くしゃっとした笑顔 で。
彼女は相変わらず憂鬱そうな顔。
「見てると危なっかしいから下がれって言ってるのよ。わかる?」
「ありがとう」
下がる僕。脚を動かす。たっぷり三歩。彼女の隣。
隣の彼女が口を開く。
「心配してるわけじゃあ、ないんだけどね」
彼女の指が、僕のそれに絡んだ。
→脳が青白くスパークする。+目の裏で閃光が無限の乱舞。
僕、死ぬんじゃなかろうか。
自然とその指を握り返した。