表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

<↑危→険↓考←察↑>

作者: 苛性ソーダ


 見えないがわかる。

 彼女。憂鬱そうな顔の。彼女。

「みんな、危険というものに対してもっと敏感になるべきだと思う」

「へえ」

 駅のホーム。相づちを打つ僕。 黄色の線/点字ブロック の半歩後ろ。それに少し乗ったスニーカーの足裏。ゴム。掻痒。

 三歩後ろ一歩左の彼女の言。アナウンス:急行通過の旨。ゴウゴウと近づいてくる音。続きを促す。彼女は続ける。

「たとえば、」

 たとえばの話。危険についての話。

「私がここで高い回し蹴りを放ったら、どうなる?」

 電車が迫る。喧しく音。かき消されない大声。後ろの気配、彼女。

「うん」

「どうなる?」

 聞いているのか。想像する。危険。危険について。閃く結論。振り返る。

「ぱんつが見えるだろうね」答える。視認する。三歩後ろ一歩左の彼女。黒のフリルスカート。

 刹那・急行通過→轟音。揺れる髪。瞳、美貌。

<sound> <sound> <sound> <sound> <sound>

 全ての音は轟音が塗りつぶした。<sound>が塗りつぶした世界のさなかで目が合う。

 電車。 通過する。通過する。通過する。 通過した。  音が遠ざかる。

 彼女は間を取る。

 取る。

 たっぷり取る。

 溜めた溜め息ひとつ+かぶりを振る←彼女。

「聞いた私がバカだった」

 溜め息で俯いた顔。ゆっくり持ち上がる。

 彼女の目。前髪の合間で開かれる。睫毛の一本まで注目させる。黒い。

 僕を<focus>する目。ばちりりと目が合う。

「答え:あなたは倒れる→電車にぶつかる→頭が飛ぶ→死ぬ。以上。おわかり?」

「I see.」

 応える。僕は 苦笑×満面の笑み→くしゃっとした笑顔 で。

 彼女は相変わらず憂鬱そうな顔。

「見てると危なっかしいから下がれって言ってるのよ。わかる?」

「ありがとう」

 下がる僕。脚を動かす。たっぷり三歩。彼女の隣。

 隣の彼女が口を開く。

「心配してるわけじゃあ、ないんだけどね」

 彼女の指が、僕のそれに絡んだ。

 →脳が青白くスパークする。+目の裏で閃光が無限の乱舞。

 僕、死ぬんじゃなかろうか。

 自然とその指を握り返した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 自分は技法に関する知識を持っていないので専門的なことは言えませんが、文体のリズムと記号的な表現はともに読みやすく、試みとしても面白かったです。 定規で測ったように距離感が示されていることや…
[良い点]  非常に面白い文体。表現の壁を突き破ろうとする、意欲的な姿勢を感じました。  タッタッタといった音が聞こえてきそうなほどに、句点で区切れた文章は、抽象的に徹し、そのために非常に読みやすくな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ