I don't hand over.
拙い文章しか書けませんが、よろしくお願いします。
プロローグ
好き。大好き。
離さない。絶対に離さない。
貴方は私のもの。違う、私のもの。
…貴方は私のもの?
1
れいなは、スクールバックの中を探りながら、駐輪場へと歩きだした。暗い学校の廊下に、足音が響く。バックの中で、自転車の鍵が手に当たった。
「あ、あった。」
れいなは呟き、鍵を握りしめた。
昇降口でローファーへ履き変えている時、微かな頭痛を感じた。
「うぅっ。」
れいなはわずかに呻きながら、頭を抑えた。すると、意識が遠退くのがわかった。
「玲奈、大丈夫?」
気がつくと、玲奈は駐輪場に立っていた。
同じ演劇部の彩実が、不思議そうに顔を覗き込んでいる。
「あぁ…大丈夫。ちょっと、考え事してて。」
「そう?」
彩実は納得していないようだが、それ以上は聞いてこなかった。
じゃあ、先に帰るね。彩実はそう言って、自転車に乗り、行ってしまった。
「彩実ちゃん、もう行っちゃったの?」
背後から声がし、玲奈は振り返った。そこには、同じ部活の貴彦がいた。
「うん。私達も帰ろう。」
玲奈と貴彦は、自転車で走りだした。
玲奈は、高校の一年生。貴彦とは、小学校、中学校も一緒であった。高校になり、偶然にも部活まで同じになった。そしていつの間にか、互いに惹かれ合い、交際を始めた。
「今日は、玲奈の家に寄ってもいい日だよな?」
「うん。大丈夫だよ。」
時々、貴彦はこうして、玲奈の家へ来ることがあった。
「ただいま。」
家では、中学生の妹と、母親がリビングにいた。
「お帰り。あぁ、貴彦君も。」
「お邪魔します。」
母親は、挨拶のできる貴彦が、お気に入りなようだった。
二階の自室へ行くと、貴彦はいつものように、扇風機の電源をいれた。そして、風が自分のところへくるように、調節をした。
「玲奈って、学校と家で、性格が全然違うよな。」
「え、そうかな。」
「別人って訳じゃないけどな。」
玲奈は、妙に上擦った声になってしまった。玲奈は、昔のことを思い出した。
実は、玲奈の中には、もう一つの人格があった。その人格が現れたのは、中学二年生の頃からだ。
−玲奈、今日はお疲れ様。
「誰!?」
−私はれいな。貴女よ。
「私?」
−そう。貴女は私…。
れいなと名乗る人格は、私とよく似ていた。れいなは、私より少しだけ外向的であった。
私は学校にいる時、無理をして、全員にいい顔をしていた。疲れるが、慣れたのか、気にはならなかった。
学校での性格が、人格になってしまったのではないか、と私は思っている。それからは、学校にいる時はれいな。家にいる時や部活の時は私が、体を使った。私達は、意識の中で話しをできたし、一人が見たり聞いたりしたことも経験できた。なので、生活上、困ることはなかった。だが、自分達で人格の交代はできなかった。交代する時には、微かな頭痛を伴った。頭痛が起きている間は、意識がなくなった。
私は、いつでも素の自分でいられるのが楽だった。
「玲奈、こっち来て。」
玲奈は、我に返って貴彦を見た。すると、貴彦は真っ直ぐな目で玲奈を見つめていた。胸が高鳴り、体が震えるのを感じながら、貴彦の胸板へ顔を埋めた。
このような文章にお付き合い頂き、ありがとうございました。