自己嫌悪の花火
唐突に花火をしようと思った。
大学生活最後の夏くらい変化が欲しかったのだ。
私の貧困な想像力ではこの程度のささやかな変化が精一杯。それでもすぐさまコンビニで花火を買い、こうして半月に見下ろされつつ川へ歩く私の行動力は誇ってもいいだろう。
人とは一切すれ違わない。そろそろ日付も変わる時刻だから当然か。
こんなに星空も綺麗なのに誰もが見上げずに寝てしまう。輝くからといって誰もが手を伸ばすとは思うなよと、私は空に笑いかけた。
子供の頃に見上げたのと変わらない星の光。私はこんなにも変化に飢えているのに彼らは何も変わらない。基本的に怠惰なのだ、彼らは。
ようやく川にたどり着き、私は暗い足下を注意しながら進む。砂利が私に踏まれて抗議の声を上げている。
この砂利が私の放つ明かりの観測者と考えると私が先ほど星に向けた評価に後ろめたくなる。彼らは変わるための準備中かもしれないのだから。
買った花火に火をつける。青く輝き緑に移り黄色になって、燃え尽きた。
呆気ない。
別の花火に点火する。赤から橙色へ移り変わって見所らしい所もなく燃え尽きた。
それは何かの暗喩ですか?
私は肩を竦めて次を手に取る。先が二つに分かれている不思議な形。両方に灯してみる。根本で燃える赤と青、それらが先で混ざり合う。同時に三色が楽しめるよう工夫してあるようだ。
一人花火に味気なさを感じていた私はもう一つないかと袋を漁る。一つだけのようだった。ならばと二つの花火を同時につけて再現を試みる。
何度かやってみたものの失敗に終わった。どうしても交差するだけで上手くいかない。気付けば線香花火だけが残っていた。
やはり最後はこれになったかとため息をつく。変化を求めて始めたのに締めが甘い。残して置いても仕方がないので楽しむことにした。
ぼんやりと光る線香花火はパチパチと音を立てる。この花火は何故こうも不安を呼ぶのだろうか。未だに決まらない就職先、疎遠になった高校の友人。私は必要とされているのか。変えるべきは日常ではなくて自分自身だろう……。変えていけるのだろうか?
青から黄色へ鮮やかな変化は出来ない。赤から橙へのささやかな変化すら無理だ。私と三色目を色づける人もいない。仮にいたとして交差するだけですぐに仲違い。線香花火のようにぽとりと落ちるだけの私に星を笑う資格はないと今更に気付く。
所詮は似たもの同士、仲良くしようと空を見上げると一筋の流れ星が一瞬の変化を与えて消え去った。
どうやら、振られたらしい。




