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異世界で生活することになりました  作者: ないとう
備え無ければ野垂れ死ぬ
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4

厄日のような昨日から一夜明けて本日。

僕は太陽の光に当てられて目が覚める。

個人的にあまり目に優しくない起き方だと思うが、そうしなかった場合起きるのは多分昼過ぎになるので仕方ない。


いつものようにとっとと宿から出てギルドに向かおうとすると出口で衛兵の一人に止められる。

周りを見回すと宿には衛兵が何人もいて、そのうちの一人が泣いている女将さんと何かについて話している。

エルのことがばれると金銭的にまずいことになるからお金渡して鍵をもらうくらいの接触しかしていなかったけど、女将さんかその関係者で何かトラブルがあったみたいだ。


僕を止めた衛兵の人がずいっと近づいて口を開く。


「宿のオーナーであるタミナさんの御息女であるリーナさんが西の森に向かってから行方が分からなくなっている。何か知っていることがあれば教えてもらいたい」


メット被った衛兵っていうのは威圧感があるので出来れば接近はやめてもらいたい。意味も無くどもってしまう。


「えっ・・と・・・、申し訳ないですが昨日は特に何も無く一日を終えました。特に知っていることっていうのは無いですね」

「そうか・・・。答えてくれてありがとう。もし何かあれば各門の周辺に私たちの詰め所があるので報告してほしい」


情報が無いことを本気で残念がる衛兵の方と視界の端に映る弱弱しい雰囲気のタミナさんを見ると何とか協力したい気分になる。

僕が出来ることといえば薬草採取の依頼とあわせての捜索ぐらいか。


「分かりました。僕は冒険者で依頼の都合、外に出ることも多いので可能な範囲で僕も協力します。リーナさんの容姿をうかがってもよろしいですか?」

「年齢は13歳、身長は君より少し小さいくらいで髪と瞳は薄い水色。最後に目撃されたときは白のワンピースを着ていたそうだ」

「分かりました。もし何かあればすぐに報告します」

「重ね重ねありがとう、よろしく頼む」


忘れているつもりは無いし、油断するつもりもないけどやっぱりこの世界の治安は悪い。

おいしい食事と綺麗な風景で忘れがちだったがここは異世界、気をつけないと。







時刻はおよそ10時。

僕はギルドでアトードナの根を採取する依頼を受けてから西の門を抜けて森の中へ。

ガルト西の森は木々の間隔が比較的大きく鬱蒼とした雰囲気は全く無い、それどころか太陽の日差しと相俟ってまるで憩いの場のようだ。


「それにしてもタミナさんもタミナさんだよ。なんでこんな危険地帯に娘を送るかな」

「ここは危険地帯ではないぞ、奥に入り込まない限り危険な生物などは存在しない」


ただ、現実には彼女の行方が分からなくなっているわけで。

エルの話を聞くと昨日の僕のように野生生物に襲われたということは無いということになる。

その場合は可能性が高いものとして誘拐か人身売買か。

年端もいかない少女に興奮する下種な金持ちなんていくらでもいるだろう。

嫌な想像が頭をよぎる。

・・・あー、やめやめ、考えてもナーバスになるだけ。



「どうして主はそんなに知らぬ人間のためになれるのだ?」

「んー、特に理由はないんだけどあえて言うならできるから、かな」

「できるから?」

「うん、僕は今冒険者としてこうやって薬草採取をしているじゃない? んで、その際あまった時間とかにちょっと気を配ればひょっとしたらリーナさんを見つけられるかもしれない。そんなわけで、僕は自分の目的から逸脱しない範囲で手伝うことが自分の周りの最大幸福につながると思うんだよ。それにほら、今朝のタミナさんの姿みたら何とかしてあげたいって思うでしょ」


僕がちょっと長いセリフを言い切ると、エルはニコッと笑って口を開く。


「主は優しいのだな。妾は誇らしいぞ」

「誇らしいってそんな大げさな」

「大げさなものか、主が言ったことと同じことは教会にでも行けばいくらでも聞ける。ただ、それを実行できる人間はそうおらぬ」

「なんだかハードルあがっちゃった気がするけど、エルの思う主像を目指してがんばるよ」


あんまり考えなしに放った一言でなんだか妙に感動しているエルを見つつ、アトードナの花を探す。

素早く終わらせればその分早くリーナさんの捜索にリソースを割けるしね。




薬草を捜索すること約2時間、昨日も驚いたがエルの薬草採取能力は凄まじい。

僕が一つ取る間にエルは二つくらい採取している。

エルにおんぶに抱っこでかなり申し訳ないが、この調子で行けば13時前にはリーナさんの捜索に移れるだろう。


・・・あ、アトードナみっけ。

タンポポに近い見た目のこの薬草は、根を摩り下ろして使うことで痛み止めになる。

回収部分は根っこなので、見つけた場合まずは辺りの土を掘る。

このとき根を傷つけないように注意することが重要で、大きな傷がついてしまうと納品対象にならなくなってしまう。

その後長さ20cmくらいの根をゆっくりと慎重に取り出して完了。

根っこは比較的しなやかなので、ドロップポーチの中に突っ込んでも中で根っこ同士がぶつかりあって破損する心配は多分ない。


よし、おっけ、これで5本目。

うまいこと進んでいればエルのほうも10本近く回収しているはずだ。


『エルー、そっちはどんな感じ?』

『こちらは9本回収して10本目を探しているところだ、主は?』

『恥ずかしながら僕はようやく5本目を採取し終えたところ。数は揃ったからお昼を食べよう』

『わかった』




僕は魔術で精製した水を使って手を洗う。

手がきれいになったらバッグからグリル台を出して組み立てる。炎の魔術をグリル台の下で発動。ガスコンロ(魔力コンロ?)がコレで完成。

コッフェルの中に固形鶏がらスープと魔術によって精製した水を入れ、グリル台の上に乗せ、ナイフで干し肉を短冊状に切ってそのままコッフェルに落とす。

まな板が無いのでちょっと作業がしにくいが、さすがにバッグにまな板は入らない。


一煮立ちした段階で火を止めて完成。

温度が下がるにつれて干し肉にスープが染み込んでうまみが増すが、おなかが減っているので待たずに食べる予定。


さらにバッグの外側に拡張されたポーチからナルゲンボトルを取り出し、中に入っている大型で分厚いクラッカーを取り出して皿に並べる。


お店で食べるような料理とは比べるべくも無いが、それでもこの世界の携帯食料に比べればはるかにマシな食事になる。


カップにスープを注ぎ、エルに渡す。


「主、ありがとう」

「どういたしまして」


早速スープを飲む(食べる)。

元の固形スープは若干うまみが薄いところがあるが、干し肉を入れることでうまみ成分が補完されて随分とおいしくなったと思う。


町から持ってきたクラッカーはスープにも合うし、若干ある塩気のおかげでそのまま食べても悪くない。

比較的淡白な味わいなため、蜂蜜やジャムなどもきっとよく合うだろう。

今後小さいほうのナルゲンボトルに蜂蜜とか詰めておきたいな。



「おいしかった。ご馳走様だ」

「お粗末さまでした」


食事を終えて食器、グリル台を片付けて出発の準備は完了。

早速リーナさんの捜索を開始しよう。

何かヒントになるものが見つかるといいんだけど。







「随分暗くなってしまったな、そろそろガルトに戻ろう」

「わかった」


時刻は18時、草原ならともかく日の入らない森の中では随分と暗く感じる。

途中からはたいまつ代わりのライトの魔術とサーチライト代わりの軍用懐中電灯で捜索を行ったが何の痕跡も見つけることができなかった。


エルによると無理やり人を連れて行く場合、暴れた形跡が残るのでそれさえ見つかればといっていたが、残念ながら痕跡の発見はできず。

また、森の中で野盗が生活している場合、食事などのために火をおこせば煙がでる。

そこでこの世界ではありえないほどの出力を誇る軍用懐中電灯をサーチライト代わりに使って炊煙を探す作戦だったが、失敗。




僕とエルは町に戻ってギルドで薬草を換金、食事を取って宿に戻る。

リーナさんは戻ってきていなかったので、明日も捜索を続けるつもり。


さすがに今日は疲れたので明日のためにも魔術の練習などはしない。

水でぬれたタオルで体だけ拭いてベッドに入るとすぐに意識が無くなった。

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