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異世界で生活することになりました  作者: ないとう
人は見かけによらないこともある
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5

「いや~、着いたね」

「本当にありがとうございます。ユートさんとエルシディアさんのおかげで凄いものを見ることが出来ました」

「ほんとね。果たしてほかの人に信じてもらえるか微妙なくらいよ」


馬車を走らせること一日と半分。ようやく僕らは王都に帰還。

学生二人組みとの付き合いはごく短い期間だったが、イベント自体は胸焼けしそうなほどに盛りだくさんでおなかいっぱい。

クレー射撃モドキで遊んだりとかエル以外の精霊が居たりとかバクバクと料理を食べる三人組とか。


終始そんな感じだったものだから、終わってしまうのが少しさびしい。


「ユートさん。依頼の証明書を出してもらっても良いですか? そういえばすっかりサインするタイミングが無くて今になっちゃいました」

「あ、そうだった。よろしくお願い」


バッグから依頼の証明書を取り出してウィルに渡すと、ボールペンのようなものでさらさらとサインを書いて渡してくれる。・・・おお、達筆だ。読みやすい。

前の依頼のときはハンコで今回はボールペン。

ファンタジーな世界だけに違和感が凄いのだが、たぶんこれを感じるのは僕だけか。


ついでに前回と違う点はほかにもあって、証明書がちゃんと紙で出来てるのだ。

ガルトだと木札だったのに王都だと紙。

なんだか田舎と都会の技術格差を見せ付けられた気がするぞ。


「ありがと。にしても字綺麗だね」

「ありがとうございます。字の練習をしていたときはこんなのが役に立つのかと思っていましたが、こういう機会が増えるたびに練習していて良かったと思います」


子供の頃に思った“こんな勉強が何の役に立つんだ?”っていうタイプの知識は大人になると意外と役立ことを知って驚くよね。

漢字はもちろんのこと三角関数とかもたまに使うし、歴史なんかも話のネタになって大変便利。

受験に不要だった地理をちゃんと勉強しなかったから大学で恥をかいて赤面したこともある。

ホント勉強って奴は馬鹿にならない。


「子供の頃の勉強は大事だよね。僕も21になっていまさら実感してるよ」

「そうで・・・え?」 「は?」


おうふ、久しぶりのこの反応。

そろそろ慣れてきたけど旅をする間は永遠にこの反応を見続けることになりそうだ。


「21ってことは・・・ひょっとしてユートさんって学園の卒業者ですか?」

「んにゃ、違うよ。二人の通ってる学園じゃなくてもっとずっと遠くの学校を卒業してる」


大学は留年か中退になりそうだけどね。

それでも高校はちゃんと卒業してるし、今言ったのはたぶん嘘じゃない・・・はず。


「そうだったんですか。すいません、驚いてしまって」

「このナリなのは自覚してるし、慣れてるから大丈夫だよ。でも実際一番年齢と外見がかけ離れてるのはエルだと思――イタッ! ごめんっ! 足踏まないでっ!」

「いくら主でも言っていいことと悪いことがある。妾は永遠の15歳なのだぞ」


ジト目でこちらを見つめるエルだが、その口調は軽快そのもの。

おかげで気にしてるんだか気にしてないんだか良くわからん。

大体15歳ってナニさ、冷静に考えなくとも60倍もの開きがあるぞ。


「あはは、それにしてもユート達ってなにか目的があって旅してるの?」

「古代遺跡に行ってみたいなんて思ってはいるものの、ほっとんど観光目的だよ。基本的に美味しいものがあるところと観光名所は回るつもり」

「じゃあそのうちにウィスリスにも来る?」

「うん、そのつもり。古代遺跡のヒントがあるかもしれないし、何より都市全体が教育機関って聞いてるから凄く興味がある」


さらに馬車の乗り心地とかを考えれば技術レベルがほかの場所に比べて優れている可能性が高い。

それならば当然興味が沸く訳で、行かないという選択肢はありえないだろう。観光の常識的に考えて。


「ならそのときは是非僕のところに来てください。名所の案内くらいならきっと出来ると思います」

「そうね、ユート達にはかなり世話になったから私も歓迎するわよ」

「今地図を渡しますのでちょっと待ってください」


素早くメモを取り出したウィルがガリガリという表現がぴったりな速度で筆を走らせている。

・・・子供の頃の訓練の賜物ってレベルじゃないぞこれ、僕がこんな速度でモノを書いた日にはあらゆるものがスプーのようになってしまうがな。


「どうぞ。ちょっと大雑把に描いてしまったのでわかり辛いかもですが、たぶん大丈夫だと思います」

「ありがと。多分そんな遠くないうちに行くことになると思うけどそのときはよろしくね」


一分もしないうちに書きあがった地図は確かに大雑把な感じなのだが、曲がる場所などを比較的詳しく書いてあるので意外とわかりやすい。

字が綺麗なだけじゃなくて絵心まであるのか、正直うらやましい。


・・・あ、そうだ。

エルのことは黙っておいてもらうようお願いしておかないと。

あんま目立っても意味が無い上にトラブルの種になりかねない。

もっとも精霊が居るっていって信じる人間がどれくらい居るのかよくわからないけどさ。


「そうだ、ちょっと今後つながりで最後に2点ほどいいかな」

「別にそんなかしこまったような言い方しなくてもいいんだけど。たまにユートって変ね」

「かしこまったっていうか、人にモノを頼むときはいつも大体こんな感じだよ。最初に重要な点がいくつあるのか言っておくと話がわかりやすくてすっきりするからね」

「そうなの? なら今度私も使ってみようかしら」

「結構オススメ。特に目上の人と交渉ごとをするときに便利だよ」


だが2点といっておきながら3点4点話すと激しくげんなりされるから使用には若干の注意が必要。

少なくとも前もって話すことはきっちりまとめておかないと逆に悪印象となってしまうだろう。

ちなみに頭がまとまってないときに話す場合は“ちょっといいですか”でゴリ押しすると楽かも。


「とりあえず一点目。馬車の食料は好きにしてもらって構わない。僕らが持って歩くにはいささか重過ぎる」

「それは助かります。でもスパゲティはちょっと食べられそうに無いですね・・・」

「あはは・・・。スパゲティは水がむちゃくちゃ必要だから確かにきついかもしれないね。ともかくそれが一点目で、二点目はエルのことは内々に収めてもらいたいんだ。悪目立ちするのはトラブルの種みたいなものだし、そういうのはあんまり好きじゃない」

「わかりました。有名になるのは利点もありますが、ユートさん達の場合それ以上に欠点のほうが目立ちそうです。特に精霊とその契約者なんて事実が大っぴらになったら・・・」


能力的にたぶんどこかの軍属にされてから火力支援役になるんだろーなー。

給金はいいかもしれないがアチコチ回れないといつまでたっても自宅に帰る目処が立たないので困る。


「そそ、意外と面倒なことになりそうだからよろしくね。さて、それじゃあそろそろ僕らはギルドに戻るよ。二人とも気をつけてね」

「はい、ユートさん達もお気をつけて」

「いい経験させてもらったわ。またね」


馬車に乗る二人を見送って今回の依頼も無事に完了!

あとはギルドに行ってお金を貰ってからご飯だな。


「僕らもギルドに行って換金してからご飯を食べに行こうか」

「うむ。了解だぞ」

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