本当に怖い復讐の仕方
誤字脱字報告をたくさんいただき、ありがとうございます。助かります。
「なんてことをしてくれたんだ」
従兄のモーリスが怒りをにじませてアニスに怒鳴った。
「この家が、子爵家が、お前の姉にどれだけの迷惑がかかるのかわかっているのかっ! もう少し淑女としての立ち振る舞いはできないのか、その年齢になって」
ばん、と机を叩きながらさらに告げる。
礼服を着て髪を整えているのだから黙ってその場に立っていれば貴公子然と見えるはずなのに、とアニスは見当違いのことを思いながら従兄を見上げていた。
モーリスが荒ぶっている理由は自分にあるという自覚はあるが、あれは正当な行為だったとアニスは思う。
アニスは今日、結婚式に参列していた。
知人、いや顔見知り、……いや、名前だけ知っている人の結婚式に招待された。
行きたくはなかったけれど家の面子や諸々の事情込みで参列せざるを得なくなった。
なので、子爵家を継いだ姉が依頼した従兄がエスコートという見張り役で同行することになったのだ。
そこでアニスは花嫁のブーケを差し出された。花嫁から直接だ。
「次に幸せになるのは貴女よ」という伝言付きで。
思わずそのブーケを花嫁の顔面に叩きつけてお返ししてしまったのだ。
「寝言は寝てから言って」という返信付きで。
周囲は騒然とした。
花嫁の化粧が崩れたから、ではない。花嫁が鼻血を出したから、でもない。
顔面に叩きつけられたブーケが落ちた瞬間、花嫁がアニスに掴みかかったから、でもない。
アニスに掴みかかる花嫁が「何てことしてくれるのよ。人の幸せを祝えないそんな性根だから、クリスに捨てられるのよ」と叫んだからだ。
クリスは新郎の名前である。当然、花嫁の隣に立っていた。
そしてそれは、まことしやかに囁かれていた噂が事実であったという裏付けにもなった。
「はぁ? 婚約者同士の交流のためのお茶会に毎回乱入して、勝手に喋って飲み食いして帰っていく自称友人と、お茶会の意味すら忘れたアンポンタン男がいつの間にか心を通わせたので穏便に済ませてくれ、と頼まれたから婚約そのものを白紙撤回してやっただけじゃない。そもそも最初から心通ってないわよ、そこの男とは。ただの一度も。貴女が毎回口を挟んで邪魔しに来たから、最初から最後までひとかけらも相互理解してないわ。捨てられたんじゃなくて頼まれたから捨ててやったのよ」
そう、最初に新郎のクリスと婚約をしていたのはアニスだった。
両家から婚約の通知も送られてきていた。
なのにどうだろう。結婚式の招待状は新婦の名が変更されていたのだ。
何の報せもなくしれっと変更になっていた。
誰もが「……え?」と思いながらも口を出せず、家の付き合いもあるから参列していたにすぎない。
そこでアニスが招待客席に座っていたのを見て、更に何も聞けなくなった。
聞きたくても聞けない状況にもやもやとした何かを抱え、笑顔で拍手をしていたのだ。
「じゃあ、祝ってくれても良いじゃない。友人でしょ?」
「自称友人の間違いね。どうでもいいからご祝儀もって祝いに来てやったでしょ、何が不満なのよ」
「親友にブーケをおくるっていう私の夢を受け取らないなんて、ありえないわ」
友人と言う言葉がやけに軽く感じる本日、視線を落としたくなった参列者が幾人かいたが、あまりの衝撃に視線は逸らせなかった。
婚約者がいる男性と心を通わせた、までは若気の至りとして何となく理解できる。
が、婚約者を入れ替えるとかまでは理解できないし、その結婚式に元婚約者を招待する、という配慮のなさには首をかしげたい。
「友人にブーケを渡したいのなら止めないわよ。どうぞ渡して。でも、それは私ではないはずよ」
堂々と言い放つアニスにあちこちから小さな拍手が起きた。
「私はね、家のために婚約したの。だから家のために婚約がなくなっても構わないのよ。惚れあった相手でもあるまいし、未練なんてこれっぽちもないわ。だから、お互いの家が不仲になっていない証として結婚式に参列する、までは承知で来ているの。でもね、私に不誠実だった人達の幸せを祈れるほどできた人間じゃないし、ましてやそんな相手から幸せを分け与えてもらって感激できるほど心は広くないの。貴方達の幸せ演出に使われるのは真っ平ゴメンよ。他所で勝手にやってちょうだい」
重たい純白のドレスをまとった花嫁と身軽なワンピースのアニスでは、アニスに分があった。アニスは掴みかかろうと伸ばされた腕をひねり上げ、背後に回って蹴り飛ばしながら理路整然とした反論を述べていた。
「酷いわ、親友なのに」
「貴女と私では親友の定義が違うようね」
更に口を開きかけたアニスを羽交い絞めしたのは、同行していたモーリスだった。
さすがに衝撃から立ち直り、この場をおさめようとしたのだが、如何せん、全てにおいて手遅れだった。
「私の従妹は気分がすぐれないようだ。失礼だが下がらせてもらいたい」
モーリスの手で口を塞がれているアニスは、何事か言っているが誰にも聞き取れない。まあ、これまでの経緯からいって、碌なことは言っていないだろう。
「待って……」と引き留めにかかった新婦も、背後まで来ていた自分の身内に押さえ込まれて手を伸ばせないでいた。
「どうぞ、こちらのことはお気になさらず。本日はご足労頂きありがとうございます」と返事をしたのは新婦の母親だった。
なので、モーリスもアニスも、その後のことは知らない。
文字通り引きずられて家まで戻ってきたのだから、知る由もない。
そうして出迎えてくれた姉の執務室まで直行し、アニスよりは冷静に出来事を説明できるモーリスが姉に詳細を告げた。そしてモーリスの怒りの矛先がアニスに向かった。
今ここ、というのが現状である。
「困ったわねぇ」
事情を聴いたアニスの姉がおっとりと告げた。
確かにそうだ。困った。どうしよう。
「姉さま。私のワンピースがボロボロになっちゃった。着替えてきても良い?」
薄紫のワンピースには花粉の黄色がまだらに飛び散って汚れている。折角新調したのにもったいない。急いで洗えば落ちるかもしれない。
「そこじゃない。お前はもう少し反省しろ」
「なによ。マディ伯母様だって『遠慮なくやっちまいな』って言ってくれたのに、どうしてモーリスが邪魔するのかわからないわ。あと折角の新品のワンピースが一度で着られなくなるのは大問題だわ。モーリスの生え際が後退するよりも私には大事なことなのよ」
「はぁ!」
「あ、後頭部が薄らってきた、のほうが大事だった?」
「どっちも違う!」
収拾のつかない喧嘩が勃発しそうな気配に、子爵家の女当主は薄く笑った。
昔からアニスはモーリスの理性を踏み抜く能力に図抜けていた。少しは仲良くなってもらいたいと顔合わせをしても、いつも不調に終わる。
「いいわよ、アニス。着替えていらっしゃい。ついでにそのワンピース、洗ってきても良いわ」
「ありがとう、姉さま」
当主の許可が出たのでいそいそと退出するアニスを見送る、不完全燃焼で苛立ちを滲ませるモーリスと、笑顔の子爵家当主がそこにいた。
「悪かった、アニスを止めきれなくて」
「いいのよ。貴方達二人を送り出した時から穏便に済むとは思っていなかったから。それに私、毛髪の量で愛情が変わったりもしないから安心して」
アニスの付き添いにモーリスを選んだのは、姉の婚約者だから邪推されない、それだけだ。血縁関係だし身内になる予定の相手だし、憶測や推測で余計な埃が立たない相手。一番無難だった。
「そして、アニスを止めてくれてありがとう。自由に口を開かせていたら、もっと困ったことになったと思うの」
「いや、手遅れだろう」
「そうでもないわ」
「どこが?」
「だってあの子、家と私のために泥を被ってくれたのよ、二回も連続で。三回目まで黙って呑み込む必要があって?」
一度目は相手都合の勝手な婚約の撤回。
二回目は両家の面子と言いながら、相手の面子を保つためだけに招待された結婚式。
どちらもアニスにとっては屈辱だったに違いない。
好意を抱いていない相手だったとはいえ、理不尽に傷つけられる謂われはない。
相手の伯爵という爵位を加味しても、元婚約者のアニスに花嫁のブーケを渡して「幸せになって」などと言うのは善意をはき違えている。
「私、ちょっと出かけてくるわね」
「どこに?」
「ちょっと」
笑顔で告げる女子爵に、モーリスは降参した。
「わかった、気を付けて」
婚約者がいそいそと出て行く後ろ姿を見ながら、その時モーリスはようやく思い至った。
ああ、こっそり出かけたいからアニスに洗濯までしろ、と暗に匂わせたのだな、と。
「本日は妹が大変失礼をいたしました」
女子爵が出向いたのは伯爵家、そう、新郎クリスの家である。
一応礼儀として、妹の粗相を詫びにきた、と告げたら家の中には入れてもらえた。
「本当に、大変なことをしでかしてくれましたな」
「そうですわね。元婚約者に花嫁のブーケを手渡しさえしなければ、妹もこんな愚挙には及ばなかったことでしょうに」
誰が見ても配慮が足りない、と思われる相手の欠点を披露しながら貴族としての体面を保ちつつ、トゲトゲとした空気がそこかしこに見えそうな居室で女子爵は伯爵家の当主と向かい合っていた。
「我が家の花嫁は泣いておりますよ。親友に心ないことをされた、と言って」
「まあ、伯爵家で親友とは、他人の婚約者と仲良くなる方のことまで含まれるのですね。寛容でございますこと。当家では、とてもとてもそのような言葉で表現できる相手ではございませんの」
「とにかく、一世一代の披露の場が滅茶苦茶になったのは間違いない」
「左様にございますわね」
ただ、滅茶苦茶になった原因は一方だけにあるわけでもない。
お互いにそこを承知しているので落としどころを探っているのだ。
「当家は先に二回、婚約の白紙撤回と結婚式への招待、この不必要な二回、そちらの顔を立てております」
子爵家としては別に、伯爵家と縁続きにならなくても問題ない。事業の提携があるわけでもない。
なので、特に顔を立てる必要はなかったのだ。
アニスが「構わない」と言ったので引いただけ。
「これ以上そちらさまの都合で振り回されるのは困りますわ」
「そうは言うが、女の当主は軽く見られるだろう。我が家と縁続きになれなくて悔しいのはわかるが、醜聞はお互いに困るはずだ」
「いいえ、特に」
女子爵として立って十年。これまでに当主が女だから、と軽く見られることは多々あった。今までだってどうにかしてきたのだ。これからだってどうにでもなる。
「強がりはよせ。なにも険悪にならなくて良いだろう。そうだな、改めて好意としてブーケは受け取ったとか」
「必要ありませんの。私達姉妹を軽んじている方の後ろ盾など」
「なに?」
気色ばんだ伯爵よりもさきに、女子爵が口を開く。
「私達にも縁者はおりますのよ?」
「縁を切られているだろうが」
親世代では有名な話で、子爵家は元々高位貴族の分家にあたる。
駆け落ち同然に夫婦となった二人に与えられた、余っている爵位の一番下位が渡された、それが子爵家の成り立ちだ。
十年前に両親が事故で亡くなった。同乗していた妹が奇跡的に助かり、家に残っていて無事だった成人を迎えた姉が当主になった。
誰もが知る子爵家の内情はこのあたりだろう。
「表向きは、ですね。今でもちゃんと季節ごとの挨拶状くらいは交わしております。よもや、成人を迎えたばかりの私が一人であの家を切り盛りして妹を育てた、などと買いかぶっていらっしゃったのですか? 生憎と私、そこまで有能ではございませんの。助けを求めましたわ、両親の実家に」
両親の実家と言っても世代交代は進んでいて、当主は伯父伯母になっていた。
彼等は祖父母世代と違い、姪達への助力を惜しまなかった。
弟妹は罪を犯したわけではない。親の勧める縁談よりも自分達の気持ちを優先しただけで、その結果に生まれた姪達の窮状を助けることに異はなかったのだ。
「妹が言いましたわ。『マディ伯母さまが遠慮なくやっちまいな、と言ってくれた』と」
「え……?」
子爵家と縁続きでマディと略して呼ばれる伯母といえば、社交界を仕切る公爵夫人しかいない。彼女の夫はこの国の宰相だ。
「私自身はダグラス伯父さまに相談申し上げていたのですけれど……」
軍務をつかさどるもう一つの公爵家当主の名がダグラスだった。
政務と軍務。相反する二つの公爵はすこぶる仲が悪い。その子息と令嬢が結婚したいと申し出たところで大反対にあうのは必然だった。
駆け落ち同然に両親が結ばれたのは両家の仲が悪い、それだけだ。
家格や素行に問題があったわけではない。
一つの不幸をきっかけに両家が吹けば飛ぶような子爵家を助け始めた。
表立って言えないのは、やっぱり今でも仲が悪いせいだ。
「ですから、困りましたわね。伯父も伯母も容赦ない方たちですもの」
必要ならば苛烈な判断ができるから、大きな家を支えていけるのだ。
「今回の騒動は……」
「伝わっておりますわよ。私の婚約者が誰か、あの場に、アニスに付き添っていたのが誰か、お忘れですの?」
モーリスはダグラスの末の息子だ。あまりにも武術に才能がないので軽んじられていたが、頭は割と良かったので若い女子爵からの要請で貸し出された。
始めはただのお手伝い要員だったのだ。
彼を徹底的に使えるように扱いたのはマディ伯母から遣わされた官吏である。彼はいわば両公爵家の指導を受けたハイブリッドな人材だった。
武術の才能がないとはいえ、標準は超えている。抜きんでていないため目立たないが文武両道なのだ、あれで。
「伯父も伯母も、割と簡単に踊ってくださいますのよ。あちらの家はこうしてくださったのですけれど、と言えば面白いように」
ころころと笑う女子爵を、伯爵家の当主は化け物だと思った。
だが、その血筋を考えれば不思議でもなんでもない。器を備えていても不思議ではない。
血筋だけで言えば彼女は、二大公爵家の直系に近いのだから。
「ですから、私に他家の後ろ盾など必要ありません。勿論アニスにも」
どこからか落ちた冷気が体中を駆け巡るような、そんな悪寒を感じた伯爵は唾を飲み込んだ。
二大巨頭に睨まれて生き延びるだけの才覚はないことを、伯爵は自覚していた。
「取り成しなどは……」
「あら、困りましたわね。取り成す理由が一つも見当たらないのですもの」
理不尽を押し付けた。一度ではなく二度も。三度目があるはずがない。
「では、本日はお時間を取っていただきありがとうございます」
用事は済んだと言わんばかりにさっと席を立つ女子爵を止める術を、伯爵は、伯爵家は持ち合わせていなかった。
「ねえ、モーリス。姉さまは?」
汚れたワンピースが綺麗になって満足したアニスは、居間で紅茶を飲む従兄に声をかけた。
「出かけた」
「どこに?」
「教えてくれなかった」
「ふーん。……別に良いのに」
多分、姉の行先は伯爵家だろう。二人ともわかっているのに口にせず、黙っている。
「そう言うな。貴族としての体面もあるし、面子もある。軽んじられてばかりだと困るんだ」
「そんなもの?」
「ああ、そういうものだ。それよりもアニス。お前の淑女教育はどこで迷子になったんだ。俺達はちゃんと教師を雇って身につけさせたはずなんだが」
姉とモーリスで一応、それなりの教師を雇い貴族としての教養をアニスに身につけさせたはずだったが、どうにもアニスの言動はそれっぽく見えない。
「それはね、胸の奥の大事なところに仕舞ってあるの」
「即時取り出して装備しろ」
「またまたぁ。私が淑女になったら困るのはモーリスだよ? 妹が嫁に行くまで結婚しないっていうの、姉さまの嘘だから」
「知っている」
即答したモーリスを見て、アニスは瞬きを繰り返した。
「知ってたの?」
「ああ」
「知っていて待ってるの?」
「ああ。なにせ『ねえたま、ねえたま』と泣きながら夜中廊下を歩くお前を一緒に育てた仲だからな」
アニスの人生の半分以上にモーリスはいた。
馬車の事故から一人生還したアニスは精神的に不安定で、一人になるのを怖がった。
手を繋いでくれたのも、一緒に寝てくれたのも、姉とモーリスで丁度半分くらいだ。
怖いものを自分でやっつけられるように、と武術の基礎をアニスに教えてくれたのもモーリスだった。
めきめきと腕を上げてモーリスを転がすようになって久しいから忘れがちだが、アニスの武術の師匠は最初、モーリスだった。軍務の血が強く出たアニスに目を付けた伯父が、婚姻でアニスを本家に取り込もうとしたのが切っ掛けだった。
「妹が嫁に行くまで結婚しない」と姉が言い出したのは。
「私ね、別にダグラス伯父さまの所に行っても良いんだ」
「お前の嫌いなむさくるしいのしかいないぞ、俺の実家には」
アニスの好みの異性は線の細い文官系の外見らしい。王子様系なのかと思いきや違うらしく、モーリスには何度説明されても理解しがたい何かが違うそうで、とにかく筋肉は見たくないそうだ。
「うーん、それはちょっとだけれど、線の細い人が良いって言い張って紹介されたのがあれだったし、それで結末がこれだったし、細マッチョくらいなら妥協できるかなって」
「お前の人生なんだから簡単に妥協するな。どこかにいるかもしれないだろう、理想の相手が」
「それはそうだけれど……」
いつまでも姉さまとモーリスが結婚できないのは嫌かな、とアニスは続けた。
「お前を無理に結婚させなくても、俺はここにいるよ」
「……そう?」
「ああ。いざとなったらお袋のほうからねじ込んで、無理な縁談は断ってやるよ」
アニスが日常でも淑女のように振る舞う、要するに姉のようになれば、伯父の家から縁談が持ち込まれ、援助を受けていた姉は断り切れなくなる。
そうなれば姉は力の限りしぶとく駆け引きをするだろうし、伯父の息子であるモーリスとの仲もどうなるかわからない。
そう思っていたが、モーリスも無理な婚姻は止めてくれる気でいたようだった。
「いいの?」
「なんだ、急にしおらしくなるとか気持ち悪いぞ、お前。やっぱり無理に結婚式に行ったのが良くなかったんじゃないのか?」
気を遣っているのかデリカシーがないのか知らないが、モーリスの発言は最低だった。
「無理になんか行ってないもん。大丈夫だもん。モーリスのくせに生意気っ!」
「はいはい」
子供の駄々を聞き流す態度でモーリスは適当な相槌を打つ。
「他人の結婚式で取っ組み合いの喧嘩をしない淑女になってくれ、早く」
「するわけないでしょ、今回は特別なのっ!」
「だと良いな」
「あら、二人とも楽しそうね」
モーリスが笑いながらアニスを揶揄っていた時、姉の声が響いた。
「姉さま、聞いて。モーリスが酷いの」
「あらぁ、それは困ったわね」
「まだ何も言ってないよ」
とある子爵の家は、何時も笑い声が響いている。
どこかの伯爵家が没落しかけているという噂が流れたが、一時的なもので終わった。
どこかの令嬢に「伯父さまも伯母さまも、勝手なことしないで。私が仕返ししたくなった時にその家がなかったら困るっ!」と直訴されたそうだ。
存続は許されたそうだが、それが果たして良かったのかどうか、誰にも分らない。
ざまぁとか婚約破棄とか、読んでいて何が面白いのかいつになってもわからなかったので、自分で書いてみたら面白さがわかるかな、と思ったのですが、やっぱりわからないままでした。
ただ本当に怖い復讐と言うのは、いつ来るかわからないことのほうだと思います。
やらかした直後に相手の反撃を警戒しない人はいないので。




