第6章 二次元の翼
第23話‐運営からの連絡
神谷の携帯が震える。画面には運営事務所からの着信が表示されている。
「……もしもし、神谷です」
電話の向こうから落ち着いた女性の声が響いた。
「神谷さん、先日のイラスト集ですが、アイドル本人たちも含め、公式に二次元キャラクターとして認めることになりました」
神谷は思わず息をのんだ。
「え……公式にですか?」
「はい。ページの中の表現や衣装の再現度、そしてアイドルたちの魅力を最大限に引き出している点を評価しました。参考資料としても活用したいと思います」
その言葉を聞いた神谷の胸は高鳴ったが、同時に重圧を感じる。
美咲が描いたイラストが、公式の一部としてアイドルたちに関わる──その責任感が、神谷の中に深く染み込んでいった。
第24話‐佐倉さんへの報告
会社を出た神谷は、夜の街を歩いていた。
すると、美咲が一人でビル前を歩いているのを見かけた。
「佐倉さん、少しお時間いいですか?」
声をかけると、美咲は驚いたように立ち止まる。
「はい、少しなら……」
神谷は手元のスマートフォンを軽く握り直し、言葉を選ぶように話し始めた。
「運営から連絡がありました。あなたのイラスト集、公式に二次元キャラクターとして認められることになりました」
美咲は一瞬、目を見開く。
「公式に……私の描いたイラストが……」
「はい。ページの表現、衣装の動き、アイドルたちの表情まで、すべて評価されています」
神谷は続けて言った。
「でも、現実のアイドルに関わる以上、同人誌活動とは区別する必要があります。そこで、作成者名は本名で登録してもらうよう運営にお願いしました」
美咲は少し考えてから、深呼吸するように言った。
「わかりました……同人誌ではペンネームを使っているので、区別するのは重要ですね」
神谷は柔らかな微笑みを浮かべて頷いた。
「その通りです。僕も公式キャラクター化のサポートは協力します。プログラム面でも、問題なく管理できるようにします」
美咲は少し笑みを浮かべて、肩の力を抜いた。
「ありがとうございます……不安もあるけれど、こうして支えてもらえるなら、頑張れそうです」
神谷も安心した様子で頷く。
「これから世界が少し広がりますが、美咲ならしっかり歩いていけます。公式キャラクターとしても、作成者としても」
短い立ち話の間に、二人の間に静かな信頼感が芽生えた。
目の前には、公式として羽ばたくキャラクターたちの可能性が広がっている。
第25話‐新しい世界の始まり
夜の街灯に照らされながら、美咲はバッグを肩にかけて歩いていた。
手には、公式認定されたイラストの余韻が残っていた。
神谷は自然に声をかける。
「今日はこれで解散です。無理に急ぐ必要はないので、自分のペースで進めてください」
美咲は小さく頷いた。
「はい……でも、公式になるというのは、少し不思議な気分です」
「不安に思うのは当然です。けれど、僕がサポートします。描いた世界を、現実のキャラクターとして形にする手伝いは任せてください」
神谷の声には落ち着いた安心感があった。
美咲は夜風に吹かれながら、深呼吸する。
「わかりました……神谷さんに支えてもらえるなら、頑張れそうです」
二人の間に、言葉にならない信頼が静かに交わされた。
美咲の世界が広がり、創作と現実の狭間で新たな一歩を踏み出す瞬間。それは緊張と期待が入り混じった、光に満ちた始まりだった。




