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会社ではできる女、家では同人作家。 私の描いた衣装が地下アイドルのステージで輝き始めました 〜衣装は物語を着る〜  作者: かも@ろん


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第2章 動き出す衣装

第6話 ‐ デザイナーの目


朝倉凛はスマホを机に置いた。

画面に映し出されていたのは、ひときわ目を引くイラスト。


夜空のような深い青を基調としたステージ衣装。透明なマント。煌めく星刺繍。


「……面白い」


凛は椅子に深く座り、腕を組んで目を細めた。

この衣装がただの二次創作にとどまらないことは、彼女の鋭い感覚が即座に捉えた。

細部まで計算された構造を感じ取ったのだ。


「三層構造か……」


凛はペンを取り、デザイン画に目を落とした。

まず、内側は光沢のあるサテン。動きに合わせてライトを反射する特性。

次に、チュールの層。空気を含み、ふわりと広がる。

そして最後、外側に透明なオーガンジー。そこに、精緻に刺繍された星々が散りばめられている。


「なるほど、これはただのドレスじゃない」


発表会のオリジナル衣装は、ただ歩くためのものだったが、

このイラストは明らかに踊りやすくデザインされている。


「面白いじゃん」


凛は椅子を立ち上がり、作業机の前に向き直った。

その机には、サテンやチュール、オーガンジーといった布サンプルが山積みになっている。

手に取ったのは、群青色のサテン。

ライトを当てると、まるで海のように光り輝くその布に、彼女はしばらく見惚れる。


「これだな」


その瞬間、神谷が声をかけた。


「本気で作るのか」


凛は振り返らずに答える。


「作る」


「アイドル衣装に?」


「そう」


そして、彼女の目が輝く。


「絶対綺麗になる」


第7話 ‐ 衣装は物語を着る


凛はデザインを始めた。

最初に取りかかったのは、シルエット。

ウエストを高めに設定し、脚を長く見せることで、アイドルらしいダンスパフォーマンスが映えるように。


次にスカート丈。膝上まで短くし、動きが際立つように。

そして三層構造。内側のサテン、チュール、中間層、外側のオーガンジーを重ねたデザインに決定した。


だが、凛はそこで止まらなかった。


「星は刺繍じゃ足りない」


神谷が尋ねる。


「どうする」


「ラインストーンを使う」


凛はペンを走らせながら答えた。

星の中心に小さなクリスタルを配置し、ライトで反射するようにする。


さらに、マントのデザイン。

透明なオーガンジーが肩から背中へと流れ、縁には銀糸刺繍。小さな星が散りばめられている。


「ターンしたら綺麗だぞ、これ」


神谷は微笑んだ。

凛はその表情を無視するかのように続けた。


「衣装ってさ」


ペンを止め、彼女は少し視線を上げる。


「ただ着るものじゃない」


そして、凛は言った。


「衣装は物語を着るんだ」


第8話 ‐ 作家を探せ


数日後、凛はスマホを見ながら呟いた。


「この作家、誰?」


神谷はスクリーンを覗き込みながら答える。


「分からない」


SNSのアカウント名は「桜咲」。それだけ。

プロフィールには「同人作家」とのみ記載されていた。


凛はスクロールし、過去のイラストを次々と見ていった。

アイドル衣装のデザインや、コンサートのシーン、ステージ演出が描かれている。


凛は目を見開きながら、言った。


「……これ、全部この人?」


神谷は頷く。


「この人」


凛は画面を指差す。


「衣装の構造、分かってる」


さらにスクロールしていくと、フリルの配置や宝石の配置、スカートの重なり方が描かれている。


「この人……」


凛はその才能を感じ、思わず呟いた。


「プロだろ」


神谷は少し驚いた様子で答える。


「でも、同人作家らしい」


凛は意外そうに笑う。


「面白い」


そして、彼女は決意を込めて言った。


「神谷」


「なんだ」


「この人の同人誌、手に入れたい」


神谷は少し考えてから、頷く。


「探してみるよ」


第9話 ‐ 幻の同人誌


神谷恒一の得意技、それは情報収集。

社内でも名の知れたスキルだが、今回はどうしても苦戦していた。


「完売か……」


神谷がつぶやく。

探していた同人誌はすでに売り切れ。中古市場にもほとんど流通していない。


神谷はオタク仲間や同人ショップ店員、イベント常連に連絡を取るが、結果は同じ。


「桜咲?」「人気あるよ」「でも持ってる人は手放さない」


神谷はスマホを机に置いた。


「参ったな」


その時、凛が言った。


「なら本人に直接聞け」


神谷は顔を上げて、凛の言葉を咀嚼した。


「何を」


「衣装、使わせてくれるかどうか」


凛が言うと、神谷は少し黙った。

確かに、このデザインが参考にされている以上、許可を取る必要がある。


神谷はスマホを手に取り、SNSを開く。

そしてメッセージを送る。


「突然のご連絡失礼いたします」


そのメッセージが、後に自分の人生を大きく変えるとは、

この時の神谷は全く予想もしていなかった。


第10話 ‐ 作家へのメッセージ


その夜、美咲はスマホを開いた。

通知が一件、届いている。

メッセージの差出人は見慣れないアカウントだった。


美咲は警戒心を抱きつつも、メッセージを開いた。


「あなたの衣装デザインを参考に、地下アイドルの衣装を制作したいと思っています」


美咲は目を見開き、思わず声を出した。


「……え?」


地下アイドル?

衣装?

三次元?


画面を見つめる美咲の頭の中で、一つの考えが浮かんだ。

自分のデザインが、実際のステージで動く。

スカートが広がり、マントが揺れ、星が光る。


彼女は静かに呟いた。


「……見てみたい」


そして、キーボードを打ち始める。

その一通のメッセージが、物語を大きく動かす最初の一歩となる。

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