webる神
神は意思疎通の波長と現代の無線通信の波長が合い、片田舎にいながら世界を覗き見出来るようになる。
かくして神は、ネットを活用し今世のことを知識として得ることが出来るようになった。
この地に降りて幾許かの時を経た。
ぼんやりと時の流れを感じながら過ごしておると、いろんな思念が飛び交っておるのがわかる。
人の子の営みにおける会話やら、打ち合わせのような物、破廉恥な妄想やら、意味不明で支離滅裂な物。
今の世はやたらと喧しい世になっておる。
全部を拾っておったら神とてくたびれるでの、普段は聴こえんようにしておる。
じゃが今世を知るには非常に便利で、実に面白い。
今の世は知識の倉のような物に簡単に入り込めるようになっておるのじゃな。
そこに繋がれば人の子の歴史がいくらでも見える。
わしもそこにあくせすして、今言葉や人の子の歴史、情勢を見させてもらっておる。
わしが在る秋津洲以外のクニの人の子とも、今は簡単に繋がり意思疎通できる時代となっておるのじゃな。
まぁ内容を見る限り、良かれ悪かれではあるな。
じゃが、これだけ容易に知識に触れられるというのは、ある意味で恐ろしいことでもある。
邪な者どもも等しく情報を得てしまい、なお複雑な悪行を重ねていくであろう。
物心付ききらぬ童には、受け止め方を間違えて道を踏み外す者も出てこよう。
まだまだ神たる器に達しておらぬ人の子には、少々過ぎた物のように思うのう。
早いこと仕組みを構築して、自らを滅ぼさぬよう精進して参れよ。
人の子のおらぬ世には、わしの居場所も無くなってしまうでの。
とはいえ、便利なことには違いない。
この情報の海には、飽きることなく浸っておれるわ。
当たり前のように使っている便利は、かつては夢のまた夢と言えるほどに非常識な高等技術で作られている。
果たして人は、この技術に見合う程に進化できるのだろうか...?
神でさえ案じるほどに人は、身の丈に合わぬ程に発展してしまっていた。