打算
入学式まであと数日だし、周辺を探索しようと思っていたんだ。でも本当は、幽霊のことが頭を離れなくて、どこかにいないか探していたんだ。彼女は公園のベンチに座っていた。整えていない長い黒髪、こけた頬、幽霊らしい?暗い雰囲気。もし私以外に見えたら、逃げるか腰を抜かすかのどちらかだろう。しかし周りにいる誰も、彼女に気づいていないらしい。
私は、いつの間にか思いついていた。私以外に見えない幽霊なら、私の話し相手になってくれるのではないかと。
高橋さんは帰る気がないと言う。でも、前々から物件の下調べをしていた母によると、少なくとも2ヶ月前から空き部屋だったらしい。だから、帰りたい気持ちがないなんて思えなかった。
それで考えた結果、あんなことを言ったのだった。私は、ここに住まわせる代わりに、話し相手になることを要求したようなものだ。高橋さんがどう思っているかわからないけど、優しさだと思っているなら違う。
昔から友だちをつくるのが苦手だった。周りの子は、明るかったり、運動ができたり、絵が上手かったり。私は少し勉強ができるだけの陰キャだった。アニメとかの知識がすごいわけでもなかったから、そういう友だちもできなかったし。みんな、私と仲良くしてくれるわけない。そう思っている。
私以外と話せないなら、なんて浅い考えだ。わかってる。でも、なぜかわからないけど、これで何かが変わるんじゃないかって、そう思ってる。