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帰れない
どうしよう。帰れない。
いずれ新しい人が住むようになるとは思っていたけど、ベランダとか隅っこにいて、プライバシーを侵害しなければぎりぎり許されると思っていた。でも、あの子には私が見える。私がいるのは迷惑だ。
とりあえず、道に出た。アパートと働いていた会社をつなぐ道、オフィス内、そしてアパートの303号室、私はそれ以外の場所には行けない。生前社畜だったせいだと思う。通勤に使っていたバスには乗れる。でも通勤に関係ないバス停までは行けず、なぜか降りてしまう。
会社とバス停の間にある公園は、よく行っていたからか今でも行ける。とりあえず今日はここで過ごすことにした。空がオレンジ色に染まりだし、子どもたちが帰りだす。
幽霊だけど、ベンチで一晩過ごすのは変な感じがする。睡眠という概念がないので、夜が長くてしょうがない。社畜のときから眠気がなければ便利だったのに。