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出会い
あれ、目が合った?
私は死んでから数ヶ月、誰にも認識されていなかった。寂しいけど、それにも慣れてきたところだった。
ところが先程部屋に入ってきた女の子と目が合ったのである。女の子は何度かまばたきした後、一緒に部屋に入った大家さんに声をかけた。
「お、大家さん、その人は…?」
その直後、部屋の真ん中に座っていた私を、大家さんが通り抜けた。
「……」
驚きのあまり声が出ないみたいだ。悪いことをしてしまった。すぐ隠れて、気のせいということにすればよかった。私自身、見える人が現れたことに驚いてしまっていた。今更ながら、屋根の上に隠れる。呆然とする彼女をよそに、引っ越し作業が始まるようだ。