定子の悲劇
関白の父を失った定子は、血のつながった、定子を利用し権勢をふるおうとする身内に散々な目にあわされる。
まず、政権争いに負けた兄伊周さまが、道長さまを呪い殺そうとされたらしい。いや、呪ったくらいで、人は死なないと、平成・令和で育った記憶のある私は思うけど。
さらに、弟の隆家さまの従者が道長さまの随身を殺害するという事件も起きた。
そして、致命的だったのが、伊周さまが隆家さまに頼んで、花山院を弓矢で打ったという事件だった。
なんでも、花山院が自分の思い人の三の君に通っていると思い込んで、脅かそうとはなった矢が院の袖を射抜いたらしい。一つ間違えば、前の帝の命を奪いかねない蛮行だ。しかも、院は出家の身でありながら女通いをしていたという不名誉と、実は四の君に通っていたのだという笑えないおまけつき。
この時、この不心得者の兄弟は、こともあろうに定子様のところに逃げ込んだということだ。
目の前で、兄弟の大捕物を見てしまった定子さまは、この世に生き永らえたくないとでもお思いだったのであろうか、その場で髪を切ってしまわれた。
実は懐妊されていたので、姫皇子を産まれた。
尼になってしまえば、もう一条帝にお会いすることはできない。ところが、一条帝の思いは深く、いや、髪を切っただけで出家したわけではない、という詭弁としか言いようのないことをのたまって、定子さま母子を内裏に呼び戻される。
定子さまはこの状況にあっても、明るく、美しく輝いていた。しかし、これには、ほとんどの貴族が反発する。
そんな中、道長さまは、次の手を打たれた。