定子登場
永祚2年(990年)正月、一条帝が元服され、定子さまが皇后となられる。定子さまは、道長さまの長兄である道隆さまの娘。女房に、あの『枕草子』を書いた清少納言がいるはず。そのあたりは、何となく覚えているが、詳しいことはわからない。ええと、中学二年生あたりの国語の教科書に載っていたかなあ。
父君の兼家様は先日お亡くなりになっているから、これからは道隆さまの天下だ。定子様は、愛らしく闊達で一条帝に深く愛されているといううわさだ。源氏物語の桐壺の更衣のモデルかしら。いえ、父君の後見がしっかりしているから、藤壺の女御のほうかしら。今のところ、女御は定子さまお一人。この状況では、だれも自分の娘を女御にすることはできない。
道長さまは、定子さまの中宮大夫となり、道隆さまの政権を支える地位に就く。翌年には、権の大納言となる。しかし、5年後、道長様を超え、道隆さまの後を継ぐ伊周さまが内大臣となる。
正暦4年(993年)、伊周さま優勢のまま、雅信さまはお亡くなりになった。道長さまの勝利は間違いないのだが、それを見届けていただけなかったのは、返す返すも残念なことであった。