源雅信さまの求婚
何とも素晴らしい歌が送られてきた。
今回は、全力で返歌を差し上げた。
あちらからも、打てば響くように心を打つ歌が送られてくる。
使われている紙も、たきしめられたお香も、美しい文字も、非の打ち所がない。
彩乃からの情報によると、源雅信さまは、宇多天皇の孫、皇孫であられる。父君は式部卿の敦実親王。承平6年(936年)臣籍降下されて、現在 蔵人頭につかれている出世頭。将来有望で、大納言か左大臣・右大臣まで登られるであろう、とうわさされていらっしゃるそうだ。和歌の名人であるだけでなく、琵琶の腕前は、父君の敦実親王に勝るとも劣らない名手と言われていらっしゃるという。
ただ、源氏物語の光の君のようにプレーボーイっぽい。まだ、この時代源氏物語は書かれていないから、読んだのは私だけだけど。
彩乃の話を聞いているうちに、目がハートになっていくような心地がする。そうだ、私はこの貴公子の北の方になるために生まれ変わったのだ。
もう、源公忠さまの娘を妻になさっていて男の子も生まれているが、源公忠さまの娘は、たった一人。公忠さまがおそばから離されるわけもなく、北の方になられることはないであろう。
歌を送りあい、頃合いを見て、三日の餅を食べ、所顕をした。
しばらくして、雅信さまがお住まいの土御門邸に移り、玉のような女の子を出産。この女の子が後の倫子。あまりにもかわいらしく、天皇の后にするべく、私も、雅信さまも、大切に大切にお育てすることとなる。