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2日

9月2日の夜。占いサークルの部室はざわついていた。


エミリのはたらきかけで、9月2日の夜から9月3日の夜までみんなで部室に詰めようという話になり、旅行中とか実家に帰省中などの人以外は、午後から少しずつ集まり始め、夕方には全員参加していたのだが、

「……あれ? 一人いなくない……?」

 エミリは気付いてしまった。 おとめ座の女子部員が一人、姿を消していることに。

「え、ちょっ……単独行動しないように言ったよね!? 特におとめ座女子! ていうか……」


 8月までの傾向から、次はおそらく9月3日でおとめ座の女性部員だろうと、推測はできていた。

 そのためエミリはみんなで部室に詰めることを提案したのだ。

 それなのに、一人いなくなってしまった。

 

 しかも、

「今まだ、9月2日だよね……? どういうこと?」

 時計はまだ0時を回っていない。

 全員でひとしきり探したが、どこにも見当たらなかった。


 推測が誤っていたのか、エミリとカイを中心に、再び検証の場が設けられた。

「みんなの話をまとめると、今日はだいたいこんな感じか。誰か、気付いたことあったら何でも言ってくれ」

 カイはホワイトボードに、いなくなったおとめ座女子の今日の動きをざっくりまとめた。

 ホワイトボードを見ながら、エミリは確認のためにカイにいろいろ問いかける。

「ねぇ、カイ。彼女は今日、あんたと一緒に学校に来たってこと?」

「ん? ああ、そうだ。俺、男だし、おとめ座じゃねえし。ふたご座だからな。もう終わったっつーか……ま、今後も何もないはずの安全パイだから、一緒に行こうって俺に声かけてきたんだと思うぜ。一応、用心はしてたんだろうな」

「で、来たはいいけど」

「問題はその後だった」

「なんでその後も一緒にいなかったのよ? 占いはヘボでも、カイだってサブリーダーなんだしさ」

「誰がいなくなるのかなんて分かんねえし、みんなと一緒にいりゃ平気だと思ったんだよ。実際、一人で来て今ここにいるっていうおとめ座女子だっているんだろ?(つーか、いちいち占いがダメダメってうるせえよ)」

 カイの問いかけに、全員が周りの人と顔を見合わせながらそれぞれにうなずく。

 それでも全員の中からモヤモヤは消えない。

 エミリも、なんで一緒にいなかったのかなんてカイに食って掛かったところで、結果論でしかないことくらい頭では分かっている。

「なんで今日なの明日じゃなかったの一体どうなってんのよ……」



 嘆いていても仕方がないので、みんなで再検証をする。

 占いサークルでは、西洋占星術だけでなく、他のさまざまな占いを研究している。

 ある者は九星気学、またある者はタロットカード、他にも数秘術や姓名判断など、それぞれ得意ジャンルの占いごとに集まり、検証をし始めた。


 西洋占星術専門のグループは、エミリとカイを中心に意見を出し合っていた。

 姿を消した部員たちのホロスコープに、これといった共通点は見当たらない。生まれも育ちも学年もバラバラだ。

「同じ日に同じ病院で生まれたって、生まれた時間が4分も違えば、まったく別のホロスコープだしねぇ……」

「当日のトランシットってどうだったんだろ?」

 姿を消した日の星回りが本人のホロスコープに与えていた影響はどうかという観点から見ても、特に何もなさそうだ。


 それにしても……


「いなくなった人たちって、ホントいかにもその星座って感じですよね。かに座の人は海が好きとか、しし座の人はなんかこうゴージャスっていうか」

 いろいろ聞きながら検証をしていたリサがつぶやく。

 その言葉に弾かれたように、黙々と検証していた西洋占星術のグループが口々に話し出す。

「ああ、ふたごって、神経系とかでしたっけ? 確か水星支配の」

「え、でも、病院ってふたごじゃないよね?」

「うん、病院はうお座。おうし座の彼女は、甘いものに目がなかったんだっけ?」

「おひつじ座のやつも、頭狙われたしな。出血沙汰にもなって」

「今日のおとめ座の人はかなり潔癖症でしたよね」

 話が盛り上がっている中、エミリが、

「うんうん、みんな普段から占いの勉強してるだけあっていろいろ頭に入ってるのはいいんだけど、無駄話はやめようか。解決しないままだったら、来月はてんびん座の男子部員に警戒してもらわなくちゃなのに、もう日付もわけ分かんないし」

 両手で静かにするように制しながら収拾をつける。

 そこにカイが付け加える。

「そーいや、夏休み明けたら、学生部も本腰入れるって話、出てるみたいだぜ」

「え? あんた学生部は嫌いで寄りつかないくせに、なんでそんなこと知ってんの?」

「いや別に……俺にだってそれなりに情報は入ってくるんだよ」



 各占術ごとに、いろいろ意見が飛び交っていた。

 ただ残念なことに、手相専門のグループには出る幕がなかった。

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