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大罪の娘  作者: 武部恵☆美
第19章 必要不可欠
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第251話

 鈴の課題は、魔力感知と魔法を飛ばすことだ。今までサボっていたわけではないが、必要に迫られてからやるのでは遅いという典型だろう。正しい指標があるわけではないので、どうすれば伸ばせるのかが分からない。

 魔法も射程内ならかなり自在に操れるようになってきた。素早く動かすことも、直進だけでなく自在に操ることもできるようになってきた。火力を上げたければ送る魔力を増やせばいいが、出力調整はまだ課題が残る。

 射程内で操ることはできる。が、未だに射程外に飛ばすことができない。水玉や風ならば飛ばすこともできるが、炎は中々難しい。


「魔力を乾電池のようにすることはできませんか」

「乾電池?」

「乾電池は電気を蓄えています。線を繋げば空になるまで電気を放出します。鈴様の場合、焚き火にガソリンを放り込んでいるようなものです」

「ガソリン……」

「そ。だから魔力の乾電池、つまり乾魔池を創りましょう」

「乾魔池……」

「そのものを創るのではありませんよ。あくまでそういう感じのものという雰囲気ですからね」

「魔石的な感じ?」

「あー、物語だとよく魔力の貯蔵庫的な扱いをしている作品が多いですね。それでも構いませんが、そうなると火球(ファイヤーボール)を対象に当てたとき、炎より魔石による打撃が致命傷になると思います」

「そっかー」

「因みに、現実世界に魔石なんてものはありませんからね。結晶化するほど濃い魔力も、魔石を身に宿す魔獣や魔物も居ませんから」

「そ、そうだね」

「魔石が実在すれば、人柱(使い捨て乾魔池)なんて使わなくて済んだかも知れませんね」

「使い捨て……」

「もっとも、あったところで守人が隠蔽して利権を貪っていることに変わりはないでしょうけど」

「そうなの?」

「当たり前ですっ。人死には減るかも知れませんが、利権は減りません。減らすはずがありませんっ」


 イーリンはまた守人に対して嫌悪感を露わにした。


「そ、そうなんだ」

「そ! そんな世界なんてさっさと壊してしまいましょう! ね、鈴様!」

「そ、それはまだ確定じゃないでしょ!」

「あたしの中では確定してるんですっ」

「確定しないで!」

「その為にも訓練あるのみ! さ、鈴様!」

「その為……じゃないけど、頑張る。でも結晶化か……」


 鈴は本当に魔石が作れないか、興味が湧いた。魔石、魔晶石、魔結晶と色々呼び名がある。それらを創れないものだろうか、と試してみる。

 手始めに魔力を圧縮してみる。いつものように魔力粒が出来上がる。更に魔力を加えて圧縮していく。


「鈴様?」


 イーリンが訝しげに鈴を見ている。魔力粒は徐々に輝きを増していった。


「鈴様、なにをしてるんですか?」


 イーリンが少し慌てたように早口になる。その声は鈴に届いておらず、魔力を加え続け、圧縮していく。すると、ある程度の輝きに達すると、それ以上輝きが増すことはなかった。


「鈴様!」


 イーリンは鈴の肩を掴もうと手を伸ばしたが、掴まなかった。掴みはしなかったが、掴もうかどうか悩んでいるらしく、一定の距離を保って手が宙を舞っている。


「ダメかー」


 そう言って鈴は魔力を圧縮することを止めた。すると魔力粒は急激に大きくなった。とほぼ同時にイーリンが魔力粒を空高く弾き飛ばした。


「きゃっ、ひゃあ!」


 急なイーリンの行動に驚いた鈴だったが、直後に魔力粒が大きな音を立てて弾け飛んで更に驚いた。すると周囲に居た鳥たちが一斉に飛び立って森の木々をざわめかせた。


「わんわんわんわんっ!」


 突然の爆音に、庭で寝ていたゼリーも飛び起きて空に向かって威嚇しているようだ。


「なに? 一体」


 鈴はなにが起こったのか分からず、キョトンとしている。


「なにじゃありませんっ! なにやってるんですかっ!」


 いつになくイーリンは血相を変えて怒鳴り散らした。


「なにって……」


 あまりの豹変具合に、鈴はすっかり萎縮してしまう。


「圧縮した魔力の制御を緩めたら膨張するのは当たり前でしょ! 爆発はしなくても、同じことが起こるんですよ」

「そ、そうなの?」

「爆発は、圧力の急激な発生や開放によって起こる現象です。魔学反応こそ起こってませんが、制御を()めれば圧力の解放が起こるのは直ぐ分かったでしょ。まったく……」


 イーリンは頭を抱えた。


「う……ごめんなさい」


 反省の態度を見せる鈴を見て、イーリンは溜息をついた。少し落ち着きを取り戻したようだ。


「それで、なにをしようとしたんですか?」

「う、うん。魔力結晶を作れないかなって」

「そういうことですか。なら恐らく作り方が間違っていたのかも知れません」

「作り方が?」

「物質を固体にするのは温度です。ですが魔力は物質的なものではありません。どちらかといえば電気のようなもの。電気は結晶になりません。しかし蓄えることはできます。それが電池です。魔力も同じように魔池があるでしょ」

「なるほど?」

「つまり、電池のように魔力を蓄えるためのものが必要になります。現代では、それが人間なだけです。尤も、どちらかというと人柱(あいつら)は小型発魔所(はつましょ)なんですが……そんなことはどうでもいいんです。なにが言いたいかというと、守人ですら魔池が作れていないんです。そんな簡単に作れたらさすがに人外認定させて……って、鈴様? なにしてるんですか?」


 鈴はキョロキョロと地面を見て、その辺に落ちていた石を拾うと握りしめていた。


「ん? 要するに、なにかに蓄えればいいんでしょ。だったら石に蓄えれば魔石になるかなーって」

「はぁー。そんな簡単に石に魔力を蓄えられたら、守人も苦労しませんよ」

「そっかー」


 と納得しつつ、鈴は拾った石に魔力を込め続けている。


「そもそも目的は魔石を創ることでありませんよ。分かってますか?」

「あ、そっか」


 鈴は石に魔力を込めるのを止めると、ポイッと捨てようとした。

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