第21話
夕飯の間、オバさんはテレビを消したままだった。
「「いただきます」」
二人はそう言って食べ始めたが、オバさんと男は特になにを言うでもなく、静かに食べ始めた。オバさんがなにかを聞いてきたり、男がなにかを言い出すなんて事もない。みんな静かに、ただ食事という作業を行った。
「「ごちそうさま」」
夕飯を食べ終えると、男は無言で仕事に向かった。兄はついてこいと言われるかもと警戒していただけに、拍子抜けした。
男が居なくなると、オバさんは食器を片付け、再び茶菓子を持ってきた。
「さ、お食べ」
「はぁ」
「ありがとうございます」
オバさんはお茶を淹れると、テレビを点けてまた大笑いしている。
鈴は塩せんべいを一つ手に取り、カリカリと齧りながらお茶をすすった。
「リィン、行くよ」
兄がそう言うと、鈴は塩せんべいを咥えながら兄の方へ振り向いた。
「なんだい、もう部屋に行くのかい?」
鈴は兄をジッと見つめながら大きな口を開いて塩せんべいにガブリと齧り付き、バリバリワシワシと食べ始めた。
それを見て、兄は急がせてしまったかと後悔し、鈴の頭を撫でた。
「ゆっくりでいいよ。はい、使わせて頂きます」
「遠慮しないで、ゆっくりしておいき」
「いえ、二人っきりで話したいこともありますから」
「そうかい? ならこれ、持ってお行き」
オバさんが茶菓子の入った器を差し出してきた。器ごと持って行きなさいということらしい。
「いえ、オバさんの分が無くなってしまいますから」
単純に要らないだけなのだが、一応建前として言っておく。
「あっはははは。子供が心配するようなことじゃないよ。オバさんの分はまだ沢山あるから大丈夫。ほら、持ってお行き。ほぉーら」
オバさんが器を摘まみ、カタカタと揺らして催促をする。これは持っていかないと余計面倒になりそうだ。なので兄は持っていくことにした。
「では、頂きます」
「ありがとうございます」
「足りなかったら言うんだよ」
二人は軽く会釈をすると、部屋を出た。そして二階に上がるための階段へ向かうと、玄関がガラガラと音を立てて開いた。
「ん?」
そこには小柄のオジさんが立っていた。
「あ、お邪魔してます」
兄が挨拶をし、鈴は兄に隠れながら会釈をした。
「イカヅチ君とリィンさんだね。息子から話は聞いてるよ」
入ってきた男は、オバさんの夫だ。帰宅したタイミングに出くわしたらしい。
オジさんはそれ以上なにを言うことも無く、靴を脱いで上がると、二人の横を素通りして食卓に入っていった。
「ただいま」
「あらお帰り。早かったわね。お風呂にします? ご飯にします?」
「風呂」
「あいよ」
オバさんと違い、オジさんは干渉してこない性格のようだ。




