試練の洞窟 4
「海魔法って知ってます?」
ダンジョンからの帰り道におれ鬼に聞いてみた。
「さぁ?聞いた事無いな、俺たちはそっちは詳しく無いからな、帰ってから他の奴に聞いた方がいいぞ」
「そっかぁ」
「…っち」
えぇ!舌打ち!
入り口まで戻って来たらいきなり舌打ちされた!
俺なんか気に触る事言ったかな?
そう思ったら、どうも視線の先が俺じゃなかった。
「なんでお前らここに居るんだよ」
鬼が鬼の形相で相手に話しかけた。
「いやぁ、今までにはなかなか無かった高ランクモンスターと実践訓練をしたいと思ってな」
ニヤニヤしながら、近づいてくる。
勇者パーティだ。
前回よく見てなかったけど、残り2人は盾職と魔法職っぽい。
「こっちはダンジョンあがりだ、するわけねーだろ」
「勇者特権の教導願い使うわ」
さもバカにしたように笑いながらこう言って来た?
「教導願いって何?」
隣のニコ鬼に聞いてみた。
「勇者って希少な上に味方の数が多ければ多い時ほど有利になるスキル持てるのよ、だから国家戦略的に他国に行かないように色々優遇措置取るのよね、亡命されたら止められないから。
その優遇措置を通称『勇者特権』って言うのよ。
とは言え、彼はまだBランクだから与えられる特権も少ないんだけどね。
で、その中に勇者は自身の成長の為に他の探索者から教えてもらう権利を与えられてるの。
教導願いを出されたら、指名された人は指導しないといけなくなるの」
「教える事なんて無いですよ」
「それを決めるのは向こうなのよね、それで実践訓練で指導してほしいってのが向こうの願い」
「それって、教導願いって書いて、お前らムカつくからボコるって読みません?」
「そうねその通りよ、自分たちが気に入らない相手に教導願い出して、心が折れるまで痛める事が出来るわね」
「しょうがねぇ、受けて立ってやるよ!誰に喧嘩売ったか分からせる!」
おれ鬼が最初からクライマックスだぜ!
こういう時は頼りになる!
「は?何言ってるんだ?お前らまだ正式にパーティ組んで無いだろ?」
あれ?なんか雲行きが怪しくなって来たぞ?
「これは我々だけで対処しなくてはならなそうですね」
ゴブゴブさんがやる気だ!
ゴブ男もランク6になったし、結構な戦力だぞ!
「残念だな、お前らはここのダンジョン攻略までという条件で入って居ただけだろう?」
あれ?嫌な予感しかしないぞ。
それにしても…
「仕掛けてるタイミングがピンポイントすぎない?」
ニコ鬼に小声で話しかけた。
「探索者の方がそういう傾向多いけど、協会内部にも勇者絶対主義の人けっこう居るのよ」
「勇者絶対主義?」
「勇者こそ至高、勇者の機嫌損ねる奴は排除って考えの人の事ね」
最悪だな!
完全に内部からの手引きじゃねぇか!
「しょうがない、逃げられないならやるしか無いよ、俺とたかしだけで良いか?」
「いーや、聖女とそっちの一般職も入ってもらわないとな!そうじゃなきゃお前らの戦い方が変わるだろ?
いつも通りにやってもらわねぇとこっちも勉強にならねぇんだわ」
「勇者特権作った奴1回ぶん殴ってやりたい」
「気持ちは分かるけど、それは難しいわね」
ニコ鬼さん、俺の独り言にリアクションしなくても良いんだよ。
「どうせ、こっちに拒否権無いんでしょ?3対5で戦えば良いんだね」
「いーや、こっちは4人だな」
そういう時影が滲むように現れたかと思うと、それが人型になって色が付いていく。
「まいど!恵比寿言います!よろしゅー」
エセ関西風味満載の小柄な男?女?どっちか分からないやつが現れた。
格好は七福神の恵比寿の服装を今風にコスプレしたみたいな服を着ている。
細目でご丁寧に釣り竿まで持ってる。
「お前がなんでここに居るんだよ!」
鬼の形相がより一層鬼になってる。
ていうか、何かきっかけあったら乱闘しそうな雰囲気だ。
「そら、お金貰えるなら、どこにでも行きまっせ!商売繁盛笹もってこい!」
ニコニコと惚けた雰囲気でそんな事を口走る。
「知ってるんですか?」
ニコ鬼に解説を求める。
「金の為ならなんでもする、最悪の探索者よ」
こっちも苦虫を噛み潰したような顔になってる。
「強いんですか?」
「Sランクよ」
…
…
…
え?
「それは…やばいんじゃ…」
「そうね」
「えーっと出来るだけ情報欲しいんですが…」
「関西圏中心に活動してる人だからあまり情報無いわ、ただ」
「ただ?」
「クラスは日本でただ一人、グリムリーパーってクラスよ」
「グリム…リーパー?」
「そう、彼のクラスは死神よ」
背中に嫌な汗がどっと出てくる。
恵比寿の張り付いたような笑みから目を離すことが出来なくなってしまった。
「稼がせてもらいまっせぇぇ」
恵比寿は整った綺麗な顔で嗤った。




